【新築戸建向け】冷暖房効率を上げる最適な「エアコンの取りつけ位置」は?

エアコンの取り付け位置を間違えてしまうと、冷暖房効率が悪くなり電気代が必要以上に上がってしまうだけでなく、部屋・場所によって室温にムラができてしまうため、最悪の場合ヒートショックにもつながりかねません。

ヒートショックによる死亡者数は年間2万人弱と、交通事故で亡くなる方の6~7倍ですから、他人事と思わずしっかり対策していきましょう。

取り付け位置は、暖気・冷気の性質を理解した上で!

新築住宅でエアコンを考える際に抑えておくべき点については、以下記事で網羅していますので、まだの方はこちらから読んでみてください。

関連記事:『【完全攻略】新築で抑えておくべき「エアコン計画」のイロハを徹底解説!

 エアコンの取り付け位置を考える前に…

エアコンよりも、まずは「家の性能」が最優先!

どれだけいいエアコンを買って、適切な位置に配置したところで、家の断熱性能・気密性能が低ければ、外から熱や空気がガンガン出入りしてしまうため、計画通りに冷房・暖房が機能しなくなってしまいます。

そのためエアコン計画を考える際には、大前提として「家の断熱性能・気密性能が担保されており、最適な換気システムが採用されていること」が必須です。

まずは、「家の性能面」を担保しよう!

エアコンは、「家の性能」を担保した上で使わないと十分な能力を発揮できません

そのためエアコンだけで快適な住環境を目指すのではなく、断熱性能や気密性能など「家の性能面」をしっかり押さえたうえでエアコンの取り付け位置を検討するようにしましょう。

暖気は上に、冷気は下に溜まりやすい!

ご存じの方も多いと思いますが、「暖気は上に、冷気は下に溜まりやすい性質」があります。

そしてこれがエアコンの設置場所を考える際に、非常に厄介な点です。

例えば冬は暖気が上に滞留しやすいため、1階LDKに大きめのエアコンを設置すれば、2階もある程度温まるのですが、夏はLDKをキンキンに冷やしても、冷気が2階まで上がらず、2階だけ灼熱地獄になってしまいます。

夏のことを考えながら冬のことも考える…というのは少し複雑ですが、鉄板パターンをご紹介していきますので早速見ていきましょう。

最適なエアコン取り付け位置は?~1階・平屋編~

とりあえず「LDKにエアコン1台」でOK!

1階に主寝室・居室がある場合、つい各部屋に設置したくなると思いますが、「まずはLDKのエアコン1台いけるかどうか?」を試してみましょう。そこから、暑い・寒い部屋が出てくるようであれば追加設置を検討するのが理想です。

これはBE ENOUGHが推奨する「せやま基準」に則った性能水準であれば、14畳用200Vのエアコンで『70畳程度』、つまり計算上は「1階すべて」をLDKのエアコン1台で賄いきれるからです。

ただ換気ムラなどによっては、うまく温まらないor冷えないところも出てくると思いますので、そういった場合はサーキュレーターで冷気・暖気を送ると良いですね。それでもうまくいかない場合のみ、追加でエアコンを設置したり、脱衣所などであれば電気ヒーターの導入を検討してみましょう。

本当に14畳用のエアコンで大丈夫?

エアコン購入時の目安となる「●畳用」という基準(畳数表示)は1964年に作られたものなのですが、実はこの基準、60年経った現在でも当時のまま。つまり断熱・気密性能が優れた現代の家に、畳数表示通りのエアコンを導入してしまうとオーバースペックになってしまうんです。

よく「エアコンは大きめがおすすめ!」とか言われますが、断熱・気密などの”性能面”がしっかり担保されているのであれば、「14畳用のエアコン(200V)」で十分でしょう。(繰り返しになりますが、UA値・C値などの性能面が担保されている大前提です)

関連記事:『何畳用のエアコンを買うべき?畳数から最適なエアコン容量を計算する方法!

LDKにエアコンを設置する際の「最適な設置箇所」は?

LDKのエアコンは「長手方向」に設置しよう

失敗しない夏のエアコン計画|5つの方法を徹底比較!LDKにエアコンを設置する際、長手方向に風を吹かせる」とよいです。

特にキッチンや洗面室など、エアコンから遠い場所は暑くなりがちなので、そちらに向けて空気を送れる方向に設置しつつ、「風量:10m以上」と送風距離に長けた機種にするのがベスト。

また先に述べたように、冬の場合暖気は上に溜まりやすいため、LDKの中心などに「リビング階段」を配置すれば、2階もある程度暖めることができます。(当然1階よりも温度は寒くはなりますが、せいぜい1~2度ほど下がる程度だと思います)

しかし夏の場合、1階のエアコンで冷やした冷気が2階に上がることはありません。そのため冬はLDKに1台で何とかなりますが、夏のことを考えると、2階は別途エアコン設置を検討する必要があります。

風が届きにくいところに「排気口」を付けるとベスト!

失敗しない夏のエアコン計画|5つの方法を徹底比較!

大抵の場合、1階はLDKにエアコン1台で賄えますが、家の間取りによっては洗面所やキッチンなど、エアコンの風が届きにくい場所があると思います。

そういったエアコンの風が届きにくい箇所には、換気システムの「排気口」を作っておきましょう。そうすることで、排気口から空気が排出される際に「空気の流れ」が生じるため、よりエアコンの冷房・暖房の効率が良くなりますよ。

関連記事:『「換気システム」の正しい知識と失敗しない選び方(後半)|熱交換・給気フィルターの推奨レベル

最適なエアコン取り付け位置は?~2階編~

正直冬であればLDKのエアコンだけでもそれなりに温まりますから、2階のエアコン設置場所を考える際に最優先すべきは「夏の暑さ対策」ですね。

マンションとかであれば、最上階でない限り気にならないかもしれませんが、2階は屋根と近い分、太陽による照り付けが各部屋の室温に影響しやすいんです。パターンとしては、ざっくり3通りありますので、それぞれメリット・デメリットを見ていきましょう。

パターン①:各部屋に1台ずつ設置する

各部屋に1台ずつエアコンを設置することで、どの部屋も確実に冷やすことができますが、実はデメリットもあります。

それは、「冷えすぎてしまう」こと。

例えば、寝る時に冷房をつけっぱなしにしたら、寒くて夜中に起きてしまったり、かといって消してみたら早朝暑くて起きてしまったり…などの経験ありませんか?

このように各部屋にエアコンを1台ずつ設置する場合、かえって冷房が効きすぎてしまうため、調整がめちゃくちゃ難しくなってしまいます。

また台数が多いということはその分電気代もかかりますし、このようにオン/オフを繰り返していると運転効率も悪くなるため、電気代もさらに嵩んでしまいます。加えて、1部屋ごとにエアコン+室外機を設置することになるため、見た目もあまりよくありませんし、修理の時にも費用が掛かるなど、オーソドックスな設置パターンなんですが意外とデメリットが多いんです。

パターン②:屋根裏エアコン1台でまとめて管理する

 

暑さ対策・底冷え対策に!「屋根・床下」における断熱処理の”最適解”を紹介!

屋根裏エアコンはその名の通り、「屋根裏にエアコンを設置し、その冷気を各部屋に落とす」という方法です。

屋根裏は全ての部屋に繋がっていますから給気口を設置しておけば、屋根裏で冷やされた空気が各部屋に落ちていきますし、屋根裏空間自体を冷やすことで、「天井が冷えると涼しく感じる」という輻射熱効果にも期待できます。

ただ施工難易度が若干高いので、「導入のためには工務店を選ぶ」というのが難点ですが、BE ENOUGHが紹介を行う「せやま印工務店」であれば、屋根裏エアコンの施工マニュアルをお渡ししていますので、問題なく施工できると思います。(一部非対応の工務店もアリ)

「せやま印工務店」って何?

「せやま印工務店」とは、家づくりにおける“ちょうどいい塩梅”を実現する工務店認定プロジェクト。

家の4大要素「性能」×「標準仕様」×「価格」×「人」に関する厳しい基準(全77項目)をクリアした「せやま印工務店」と、日本全国の施主(通称:クルー)を橋渡しする、”ちょうどいい塩梅の家づくり”を実現するためのプロジェクトです!

詳しい説明・クルー登録はコチラ:『せやま印工務店とは?』

関連記事:『2階はエアコン1台でOK!夏の暑さ対策に最適な「せやま式屋根裏エアコン」とは?

パターン③:階段or2階の廊下を冷やす

 2階の廊下を冷やす(通称:ホールエアコン)

失敗リスクの高い夏のエアコン計画3選|全館空調の問題点とは?

少し変化球ですが、2階の廊下(ホール部分)を冷やして、その冷気を各部屋に送っていくという方式(通称:ホールエアコン)もあります。

このホールエアコンの場合、屋根裏エアコン同様「設置台数を1台に抑えられる」というメリットがありますが、冷気を全部屋に行き渡らせるためにも各部屋のドアを開けっ放しにしないといけないというのが難点

さらにホールエアコンの場合、エアコンを設置する廊下部分が冷えすぎてしまうという懸念点もありますので、BE ENOUGHとしては非推奨ですね。

ホールエアコンは「間取りも制限される」!

廊下が狭い家の場合、無理にホールエアコンの設置しようと思うと、「隠蔽配管」といって家の中にエアコンの配管を通す工事が必要になるケースがあります。

これをやってしまうと、万が一エアコンが壊れてしまったときなどの取替工事も追加費用になってしまいますし、ホールエアコンの導入を前提に進めてしまうと、このエアコン配管問題から間取りにも制限がでてきてしまいます。

こういった点も踏まえると、ホールエアコンはあまりおすすめできませんが、これらのデメリットを許容できる場合のみ検討してみてください。

1階と2階の間を冷やす(通称:階間エアコン)

階間エアコンは、「1階」と「2階」の間となる階間空間を冷やして、「1階に冷気を落としつつ、2階には冷気を上げる」という方式ですが、正直これを上手くできる工務店はめちゃくちゃ少ないと思います。(施工難易度がめちゃめちゃ高いので)

なぜ難しいか?ですが、先にもお話ししたように「冷気は下に溜まる性質」があるので、そのままだと1階と2階の階間空間を冷やしても2階が冷えないんです。

なのでファンを使って空気を上に引き上げる必要があるのですが、下に下がろうとしているものを無理やり引き上げる形になるため、使用するファンにもかなりのパワーが要求されます。加えて冷気を2階まで上げたとしても、冷気は横に広がりにくいという性質もあるため、今度は各部屋にファンを付けて全部屋に行き渡らせる必要があります。

このように施工面・設計面の難易度が高いのもありますが、階間空間のように狭い空間を冷やしてしまうと、結露リスクを上げることにもつながってしまうので、考え方自体は非常に面白いんですが、とにかく失敗リスクが高いのでおすすめしません。

 

まとめ

エアコンの取り付け位置を検討する際に抑えておくべきは、以下4点。

エアコンの取付位置における最適解は?

  • 1階のエアコン取付位置は?
    • LDKに「1台のみ」でOK
      ⇒送風性能も加味して「14畳用(200V)のエアコン」を推奨
      ⇒風が届きづらい場所には「排気口」を設置しよう
    • その他空間は、実際に住んでみてからの検討でOK
  • 2階のエアコン取付位置は?(夏を重視!) 
    • せやま印工務店の場合;「屋根裏エアコン」を推奨
      ⇒「せやま印工務店」に関する詳細はコチラ
    • その他工務店の場合:無難に「各部屋に1台ずつ」を推奨

性能で迷ったら「せやま基準一覧表」

BE ENOUGHでは、住宅会社選びのための補助ツールとして、「せやま性能基準」「せやま標準仕様」の2つからなる「せやま基準一覧表」を無料配布しています。

「せやま性能基準」を使えば、上記で紹介したように各建材について、「完全に不足→少し不足→ちょうどいい塩梅→余裕が余れば」と家づくりで抑えておくべき性能レベルを検討できます。

詳しい使い方に関しては、下記リンク先の記事をご覧ください。

ダウンロードページ:『せやま基準一覧表|お役立ちツール|BE ENOUGH

合わせて読みたい記事:『営業マンより「家の性能」に100倍詳しくなる方法|せやま性能基準
解説動画(YouTube):『家づくりの超実践ツール「せやま基準一覧表」の使い方<総集編>

PROFILE

【新築戸建向け】冷暖房効率を上げる最適な「エアコンの取りつけ位置」は? | エアコン計画・湿度管理を学びたい

せやま大学の人

瀬山 彰

大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。

「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。

娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。

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