せやま式屋根裏エアコン 設計マニュアル 概要版|夏の暑さ対策
投稿日 2023.06.12 / 最終更新日 2023.09.21

夏に家全体を冷やすのは難しいですよね。たとえば1階でエアコンを作動させても、冷たい空気は下にいくので2階は涼しくなりません。そこで、今回は屋根裏にエアコンを取りつけることで家を涼しくできるのか、その方法やメリット・デメリットを紹介していきます。
実際に私の家で検証してみました!
本記事の内容は、YouTube動画でも分かりやすく解説していますので、こちらもご覧ください!
参考動画:せやま式屋根裏エアコン 設計マニュアル 概要版|夏の暑さ対策
目次
夏のエアコンの注意点とは?
夏のエアコンの使い方は難しいですよね。そもそも冷気は下に溜まる性質があるので、1階でエアコンを使って空気を冷やしても、2階に上がってきません。さらに屋根自体が熱くなるので、家の中も暑くなってしまいます。
その対策としては、下記のことを考える人が多いのではないでしょうか。
各部屋エアコン
1つ目は各部屋にエアコンを1つずつ設置する方法。ただし、これは各部屋が冷えすぎてしまうというデメリットがあります。また、エアコンの運転効率も悪く、室外機も増えて邪魔になりますよね。夜には寒くなるし、寒いからといって切ると暑くなり、調整が難しいという問題もあります。
全館空調システム
全館空調システムで家の中の温度を一定にしようとする人も多いですが、これはメンテナンス面に問題があります。修理費用にお金がかかったり、ダクト内の汚れが心配になってしまいますよね。
全館空調システムのデメリットに関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。
・全館空調システムをおすすめしない理由|致命的なデメリット
ホールエアコン・階間エアコン
これらは新しいシステムです。ただし、技術が難しく、失敗してしまうリスクがどうも高そうだぞ、と言われています。
ではどうするんだ、と考えるとおすすめは屋根裏エアコンです。その屋根裏エアコンについて、詳しく紹介していきます。
屋根裏エアコンの3つのパターン
屋根裏エアコンは、大きく分けて3つのパターンがあります。
屋根裏エアコンの3つのパターン
- 屋根裏エアコンで屋根裏空間だけを冷やす
天井が冷えると人間は涼しく感じるという輻射熱という現象を利用 - 屋根裏を冷やして天井に穴を開け、冷気を落とす
給気口のような穴を開け、そこから冷気を下の階に落としていく - 天井にファンをつけて強制的に上の冷気を下に落とす
穴を開けるよりも冷気が下にいきやすい
これらのパターンのどのパターンがいいのか、全て私の家で検証しました。約3年間かけて、毎シーズン夏が訪れるごとに実験したんです。その結果、結論を言えば「ファンを付けて強制的に冷気を下に落としていく」というパターンが良いことが分かりました。
実は1つ目と2つ目は、思ったより冷えないんです。7月頭の初夏くらいまでは良いのですが、8月で38度を超えるような猛暑になると、もう無理!暑くてダメだね、ということで「屋根裏の冷気をファンで強制的に落とす」という方法を使ったんですが、これがめちゃくちゃ快適です。昼でも平気で2階で過ごせますし、1番良いのは夜です。弱冷房でぐっすり眠れるんです。夏バテというのは睡眠不足が原因じゃないかと思うくらい、睡眠の質も爆上がりしました。
ただし、このせやま式屋根裏エアコンに関して、紹介するのはあくまで概要です。完全版のマニュアルは、せやま印工務店の方にのみ公開します。もしせやま式屋根裏エアコンを導入したいという施主の方は、「せやま印工務店」経由でお願いします。せやま印工務店とは、私が定めた厳しい審査を通過した全国の登録工務店の呼び名です。せやま基準の必須項目を全てクリアした高性能な家を、せやま基準価格以下の適正価格で提示してくれるせやま印工務店。そこなら、経験が必要な屋根裏エアコンも、間違いなく施工することができます。私としてもお金と時間をかけて出した新案をせやま印工務店を増やすために役立てたいと思っているので、ご理解ください。
せやま印工務店に関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。
・せやま印工務店とは?|家づくりに、いい塩梅を。
せやま式屋根裏エアコンのデメリットは?
最初に、せやま式屋根裏エアコンのデメリットを紹介していきます。せやま式屋根裏エアコンの決定的なデメリットは、以下の3つです。まずはデメリットを把握していきましょう。
デメリット①各部屋ごとに温度が変えられない
エアコンが一台なので、各部屋ごとの温度調整は苦手です。もちろんファンのオン/オフは部屋ごとにできるので多少の調整はできるんですけども、すごい暑がりさん・寒がりさんがいるような家庭だと、なかなか対応が難しいんです。
その時は、暑がりさんのところに各部屋エアコンをつけるという形で対応はできますが、屋根裏エアコンだけで解決しようとすると難しいでしょう。
デメリット②暑がりな人には向いていない
めちゃくちゃ暑がりで、設定温度はいつも20度くらいっていう人もいますよね。ただし、屋根裏エアコンはそこまでの温度には対応していません。無理に持って行こうとすればなんとかなりますが、冷やしすぎると明らかに屋根裏が結露してしまいます。そうなると家が傷んでしまうので、そういう人には屋根裏エアコンは向きません。
デメリット③屋根裏空間が全くないような屋根の形状にできない
あと、そんなに大きなデメリットではありませんが、屋根裏エアコンはどうしても屋根裏空間が必要になります。そのため、屋根の形状に制限があります。キューブ型のような屋根裏空間が全くないような屋根形状にはできません。
せやま式屋根裏エアコンのメリットは?
次は、せやま式屋根裏エアコンのメリットを紹介していきます。実際に私の家でやっているので、ぜひ皆さんにも教えたいメリットなんですよ。メリットは色々あるので、お金的なメリットと、性能的なメリットに分けて紹介していきます。
メリット①お金的なメリット
各部屋に3台設置した時の値段と同じくらいの値段でできる
屋根裏エアコンは、特別なシステムを入れていないので安いのが大きなメリットです。各部屋に3台のエアコンを設置した時と同じくらいの値段でできるんです。点検用のはしごや給気口、ファンといった設備が必要ですが、それでも安いんです。
お金をかければなんぼでもいいものはできますが、それをなるべくコストを抑えて質を担保する、というのが私のこだわりです。なので、これは大きなメリットですよね。
メンテナンスコストが安い
また、屋根裏エアコンは1台しかないので、メンテナンスコストもめちゃくちゃ安いんです。壊れたら1台直せば良いだけです。しかも普通の壁掛けエアコンなので、普通に電気屋さんにお願いするだけ。特殊な工事も要りません。このコスト的なメリットも大きいですよね。
エアコンの容量が適度
壁掛けエアコンを各部屋にかけると、コストがかかりますよね。実は6畳用のエアコンは、実質30畳を冷やす性能があります。そのため「30畳用のエアコンで4.5畳を冷やす」というめちゃくちゃ非効率なことをして、電気代がかかってしまいますよね。だからエアコンのオン/オフをする人が多いんです。
その点、屋根裏エアコンなら容量も適度なんです。私は8畳エアコンを屋根裏エアコンにしていますが、これでスペックに応じたちょうどいい空間を冷やすことができるので、非常に効率が良いんです。なので、つけっぱなしにしても電気代を抑えることができます。
エアコンの最適な容量に関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。
・何畳用のエアコンが最適か?一瞬で計算する方法|エアコン容量早見表
メリット②性能的なメリット
夜、適度な温度で眠れる
これ、一番良いのは夜に適度な温度で眠れるんです。熱帯夜ってめちゃくちゃ暑いですよね。最高気温が38度の日なんて夜が27度~28度になってしまいます。そういう熱帯夜でもぐっすり眠れるのが屋根裏エアコンのメリットです。
各部屋エアコンだと、どうしても部屋が冷えすぎてしまいます。だけど消したら暑くなるし、暑くなってつけたら寒いし…と寝苦しくなりますよね。一方、屋根裏エアコンなら弱冷房。適度に弱めにずっと冷房してくれるので、夜に適度な温度でぐっすり眠れます。これはせやま式屋根裏エアコンの最大のメリットだと思います。
天井が冷えるので、体感温度が下がる
屋根裏が冷えるということは、天井が冷えるんです。これは輻射熱という現象ですが、上が冷えることで人間というのはめちゃくちゃ涼しく、快適に感じます。日陰や洞窟の中が涼しいのと同じ理由ですね。太陽は暑くても、上が冷えていれば涼しく感じますよね。
屋根裏エアコンも、天井が冷えてくれて輻射熱効果によって実際の温度よりも体感温度が下がるというメリットがあります。
屋根裏と2階の空間を空気が周り、気流感で体感温度が下がる
また、屋根裏エアコンは屋根裏と2階の温度をぐるぐる回しています。これは気流感というんですが、空気がじわ~っと流れることによって、体感温度が下がるんです。そよ風みたいなものですね。
つまり、実際に見えている温度や湿度の数値よりも、輻射熱による効果と気流感による効果によって体感温度が下がるんです。しかも人工的に作られてキンキンに冷えた空気ではなく、そよ風のように身体に優しい仕組みなので、夏バテ防止になるんです。家というのは健康的に過ごすためのツールですので、このように快適に過ごすことはとても大切ですよね。
具体的な設計方法は?
屋根裏エアコンは、点検用のはしごの真上にくる位置に設置します。ある程度の高さが必要なので、切妻の棟の近くに設置しています。
サイズとしては、大体が8畳用で良いと思います。厳密に言うと、たとえば2階の畳数が25畳くらいなら、25畳+屋根裏空間で30畳強くらいですよね。そうすると6畳用~8畳用のエアコンで十分なので良いと思います。それで、私は8畳用の普通の壁掛けエアコンをよく使います。
フィルターの掃除も年に1回くらいでいいですよ。使う環境にもよりますが、屋根裏はそんなに埃が溜まらないので、それほどメンテナンスの必要もありません。最低レベルの機種で良いと思います。
設定温度は23度にしていますが、22度~23度くらいに設定しておくと良いでしょう。それ以下にすると、結露のリスクが高まるので注意してください。
また、各部屋の天井には、こうしてファンをつけます。屋根裏で冷やした冷気を、各部屋のファンで落としていくんですね。主寝室や子ども部屋、廊下にもファンを付けることができます。また、廊下の場合はトイレの近くにつけることで、トイレが暑くなることも防げます。このように、ファンは各部屋+廊下に設置してもらえば良いでしょう。
屋根裏エアコン、実際の温度結果は?
屋根裏エアコンを使ってみると、実際の温度はどのくらいになるのでしょうか。主寝室の温度を見てみると、24.6度くらいです。温度が下がっているので相対湿度は高く見えますが、それでも全然過ごしやすいです。
また、子ども部屋は24.6度~25度。外の気温は38度、時間は13時くらいと、警報級の暑さですが、家の中は快適ですね。廊下も24.6度と、廊下も含めて各部屋大体同じ温度になっています。
大体、日中は屋根裏エアコンの温度設定から、+1.5度~2度くらいになります。夜は+1度~1.5度くらいですね。だから部屋を25度にしたいなら23度設定にしておく、というイメージですね。ただし、さっき言った通り22度よりも下回ると結露のリスクが出てくるので、温度設定をあまり下げすぎないようにだけ注意してください。
給気口
給気口の場所としては、なるべくエアコンの近くにつけるのがおすすめです。これにより、効率的に空気を上にあげることができます。さらにエアコンのリモコンも給気口を経由してきくので、できるだけエアコンと給気口は近くに設置してください。点検用のはしごは普段は閉めていると思いますので、その状態でも屋根裏エアコンの操作ができるようにしてください。
省令準耐火構造などにする場合は、法令に則って基準を調べてから設置してください。ダンパー付きのものを使うと、ロックウールのような不燃材を敷くとか、そういうことが必要になるので、確認しながらやってくださいね。
もちろん、排気口のファンも一緒です。防火ダンパーを設置しないと、省令準耐火が取れませんので、設計士の方としっかり打ち合わせをして法令を遵守してください。
点検用のはしご
そして、点検用のはしごに関してですが、これはなんでも良いです。屋根裏エアコンのフィルターを掃除しなければならない時や、壊れた時に直すようのはしごをつけておいてください。上がりやすい場所で、なるべくエアコンに近い場所にあげるようにしてください。ただし、下の部分には家具が置けないので、なるべく物を置かない位置に設置すると良いでしょう。クローゼットの中などはおすすめです。
まとめ
屋根裏エアコンのポイント
- ファンをつけて屋根裏の冷気を強制的に落とす構造がおすすめ
- 点検用はしごの真上に設置するとメンテナンスが楽
- 設置するエアコンは6畳~8畳用のエアコンで十分
- 各部屋に落とし口をつける
PROFILE

せやま大学の人
瀬山 彰
大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。
「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。
娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。