「断熱性能」を比較する基準と推奨レベル|UA値(ユーエー値)とは?|断熱等級の適切な選び方

「断熱性能」を比較する基準と推奨レベル|UA値(ユーエー値)とは?|断熱等級の適切な選び方 | 最重要記事

「断熱性能って、どこまでやればいいの?」「断熱等級が新しくなったけど、よくわからない!」という悩みを解決していきましょう。

本記事の内容は、YouTube動画でも分かりやすく解説していますので、こちらもご覧ください!(断熱等級5・6・7が未設定の時期に撮影しています)

UA値(ユーエー値)とは?まずは窓の断熱性能を担保してから、UA値(ユーエー値)考えよう

UA値(ユーエー値/外皮平均熱貫流率)とは、住宅の内部から、外壁・屋根・開口部などを通じて外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値のことです。 つまり、UA値(ユーエー値)が小さいほど、熱が逃げにくく、高断熱な省エネ住宅でということになります。

<UA値(ユーエー値)とは?>
断熱性能の基準値UA値とは?
(出典:旭ファイバーグラス

とても分かりやすく使い勝手の良さそうなUA値にも弱点があります。それは、断熱性能のばらつきが考慮されないこと。

UA値は「平均値」なので、例えば、窓の断熱性能が著しく低くても、壁の断熱性能をオーバースペックにして補うことで、UA値を良い数値にすることができてしまいます。当然ながら、窓の断熱性能が低いと、窓の表面の結露や内部結露の原因になり、どれだけ壁の断熱性能が高くても、良い住環境を創り出すのは難しくなります。

なので、まず窓の断熱性能を担保した上で、UA値を考えることが大切です。窓の性能基準を十分に理解した上で、UA値のちょうどいい塩梅な基準や、UA値以外でチェックすべき項目(屋根裏の断熱、床下の断熱、玄関ドアの断熱)を紹介していきます。

参考記事:窓の種類と失敗しない選び方|サッシ・窓ガラス・スペーサーの推奨レベル

断熱性能は地域に合わせて

大阪で北海道仕様はやりすぎだし、青森で全国共通仕様はやらなさすぎですよね。以下の省エネ基準地域区分を参考にしながら、各地域に合わせた、ちょうどいい塩梅の断熱性能(UA値)を理解していきましょう。

また、断熱性能(UA値)に限った話ではありませんが、マニア的なやりすぎは禁物。日本の住宅会社はなぜか、「驚くほど断熱意識が低い住宅会社」と「マニア的に断熱意識が高い住宅会社」に分かれています。

意識が低いのは当然だめですが、マニア的にやりすぎてもいけません。何事もちょうどいい塩梅を意識することが肝要です。

<省エネ地域区分>
省エネ地域区分
(出典:IBEC

【結論】ちょうどいい塩梅の『断熱性能』は?

ちょうどいい塩梅の「断熱性能」は、以下の通りです。

①UA値 ⇒ 断熱等級5クリア(4地域のみ、断熱等級5より厳しい0.5以下を推奨)
②屋根裏の断熱 ⇒ 壁の2倍(屋根断熱推奨)
③床下の断熱 ⇒ 基礎断熱
④玄関ドア ⇒ D2/K2

※「ちょうどいい塩梅の●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。

①2022年から始まった断熱等級5・断熱等級6・断熱等級7

これまで、UA値の基準が乱立しており、施主にとって分かりにくい状態だったのですが、2022年に断熱等級5・断熱等級6・断熱等級7が新設され、一気に分かりやすくなりましたので、ざっくり解説しておきます。(基準値はエリアによって異なるので、ここでは6地域の数値で紹介していきますね)

・断熱等級3
平成4年に制定された断熱基準。6地域の断熱基準は「UA値1.54以下」という驚くほど低断熱な基準になっており、まったく参考になりません。

・断熱等級4(省エネ基準)
2020年に完全義務化になる予定だった基準で、断熱基準は「UA値0.87以下」となっています。省エネ基準とは言っていますが、さほど厳しい基準ではなく、この基準をクリアしたところで、さほど省エネな家にはならないということは覚えておいてください。

・断熱等級5(ZEH基準)
2022年4月に新設された断熱等級5は、これまでのZEH基準と同じ断熱性能「UA値0.6以下」となっています。2022年10月には、長期優良住宅の必須項目に採用されます。

・断熱等級6(HEAT20G2相当)、断熱等級7(HEAT20G3相当)
2022年10月に新設される断熱等級6・断熱等級7は、これまでのHEAT20G2基準「UA値0.46以下」とG3基準「UA値0.26以下」にそれぞれ相当します。HEAT20とは、「もっと日本の家を高断熱にしていこう!」という民間団体が作った断熱基準のことですが、詳しくは知らなくて大丈夫です。

HEAT20には、G1・G2・G3の3つの基準がありましたが、今回、断熱等級6・断熱等級7に、G2とG3がそれぞれ採用されました。(断熱等級6・断熱等級7と、HEAT20G2・HEAT20G3の数値と若干異なる部分もありますが、そこは細かく理解しなくてもOKです)

<断熱性能(UA値)基準一覧>
UA値(ユーエー値)の基準一覧|断熱等級5・断熱等級6・断熱等級7の比較

<省エネ地域区分>
省エネ地域区分
(出典:IBEC

断熱性能は「ZEH基準クリア」を推奨する理由

ちょうどいい塩梅の「UA値(ユーエー値)」は、断熱等級5クリアです。※4地域のみ、断熱等級5より厳しい「UA値0.5以下」を推奨

<ちょうどいい塩梅の「UA値(ユーエー値)」>
断熱等級5クリア

1~2地域:UA値0.4以下
3~4地域:UA値0.5以下
5~8地域:UA値0.6以下

ちょうどいい塩梅のUA値(ユーエー値)|「せやま性能基準」推奨

「結局、UA値はどこまで必要なのか?」の答えですが、100%正しい答えはなく、費用対効果で考えていくしかありません。ざっと検証していきましょう。

断熱等級3は、あまりに基準が緩すぎるので無視します。

断熱等級4(省エネ基準)ですが、これはクリアして当たり前レベル。ここをクリアできていない住宅会社に、家の性能を語る資格はありません。と言いつつ、今なお多くの住宅会社が、全然厳しくない省エネ基準すら満たさない低断熱住宅を量産しており、日本の住宅業界の悪しき現状と言えます。

では、もっと高断熱な断熱等級6・断熱等級7までやったほうがいいのでは!?となりそうですが、問題はコストです。UA値0.5以下を目指すと結構お金がかかります。長い目で見たら省エネになるのでいいよね?という意見もありますが、それなりに初期コストも上がっていくため、“ちょうどいい塩梅主義”で考えるならば、そこまでやるのは、必須ではありません。

断熱等級6・断熱等級7を目指すことは当然良いことではありますが、お金に余裕がある人が取り組むマニアック基準と考えておくと良いでしょう。

ということで、断熱等級4はやらなさすぎで、断熱等級6・断熱等級7は費用かかりすぎと考え、その間の「断熱等級5」クリアが、ちょうどいい塩梅の断熱性能となります。断熱等級5(UA値0.6以下)にすると、断熱等級4(UA値0.87以下)の家に比べると、各段に住み心地が良くなりますよ。

ただし、UA値0.5前後までであれば、さほどお金をかけずに到達できるので、断熱等級5(UA値0.6以下)を必達すべき基準としながら、UA値0.5前後(だいたいHEAT20G1基準くらい)を狙うと良いと思います。

※ちょうどいい塩梅主義とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という考え。ある程度高いレベルを維持しつつ、やりすぎないことで費用を極力抑える、究極の最適バランス主義。

ちょうどいい塩梅のUA値(ユーエー値)|「せやま性能基準」と目指したいHEAT20G1基準

「でもやっぱり、断熱性能6・断熱性能7をクリアすべきでは?」に対して

前にも述べましたが、断熱等級6・断熱等級7を目指すことは、決して悪いことではありません。さらに断熱性能があがるということですからね。

ただし、断熱性能(UA値)ばかりこだわるあまり、窓・気密・換気システムをないがしろにしては意味がありません。他要素の「ちょうどいい塩梅の●●」をすべてクリアした上で、予算が余れば、さらに上を目指してください。

住宅業界には、断熱マニア、換気マニア、間取りマニア、地震マニアと言う具合に、特定の分野にだけ詳しい人が多いので、すごく偏った家が建ってしまっているのが現状です。

断熱だけこだわって、家全体のバランスが悪くなってしまったイメージ

『で、結局、断熱材は何がいいんですか?』に対して

断熱と聞くと、断熱材は何がいいの?という疑問をお持ちの方もいるかと思います。結論から言うと、断熱のことだけを考えると、「断熱材は何でも良い」とOKです。

良い断熱材は薄くてOK、悪い断熱材は厚くしないとだめ、ただそれだけです。最終的にUA値が適正であれば、断熱材の種類はさほど重要ではありません。

ただし、断熱材の選び方にはm断熱性能以外の要素も関係してきますよね。コスト、防音性、防蟻性、施工性など、様々な要素がありますからね。いずれの断熱材を選ぶ場合も、「断熱等級5クリア」は満たすようにしてください。

 

『UA値って、いつ・どうやって聞けばいいの?』に対して

もちろん、タイミングは契約前です。見積書の項目に「UA値●●以下」と入れておく必要があります。契約後に、「UA値●●以下」という条件を加えると、追加費用が発生します。

次に聞き方ですが、まず「UA値はだいたいどれくらいですか?」と聞きましょう。営業マンが「平均0.6くらいですかね~」と答えてくれると思います。ここで答えられない会社はアウト。この質問で、断熱性能の目安を知ることができます。

<UA値の目安は、カタログやHPにも記載>
注文住宅会社のUA値の目安
(出典:サンヨーホームズ ※一部加工)

続いて、「私の家のUA値を、0.6以下にしてもらうことはできますか?」と聞きましょう。UA値は、間取りや窓の数・種類によって変わるので、カタログ値ではなく、「私の家」のUA値が大切です。契約前の見積書に「UA値●●以下の保証」を入れてもらうようにしましょう。

UA値の計算に関しては、外部機関(性能評価証明、ベルス評価等)に依頼すると費用がかかるので、住宅会社内で計算してもらえばそれでOKです。なるべくコストは抑えつつ、性能を上げていきましょう。

②屋根裏の断熱を「壁の2倍」にすべき理由(夏の暑さ対策)

ちょうどいい塩梅の「屋根裏の断熱」は、壁の2倍です。

断熱と言えば、壁の断熱のイメージが強いかと思いますが、夏の暑さ対策を考えるならば、壁よりも屋根裏の断熱が大切です。太陽は上にいますからね。1階よりも2階が暑いという経験はありませんか?

屋根裏の断熱には、天井断熱と屋根断熱の二種類があります。天井断熱は施工はしやすいですが、屋根裏の温度が上がりやすくなります。屋根断熱は、屋根裏の温度を下げることができますが、施工が少し難しいです。

確実にどちらが良い!とまでは言えませんが、正確に施工して、気密測定を行ってもらえるのであれば、屋根断熱に軍配が上がるかなと思います。

<屋根断熱と天井断熱>
屋根断熱と天井断熱
(出典:滋賀・屋根Q&A

で、大切なのは断熱の厚みです。屋根裏は壁よりも太陽の影響をもろに受けるので、強力にしておかなくてはいけません。断熱の厚みは、厚ければ厚い方いいのですが、コストと施工の問題もありますので、最低でも「壁の2倍」は確保しましょう。厚みそのままで、性能2倍の断熱材を使うのもOKです。

もちろん「3倍以上」にしてもらってもいいですが、そこまでコストをかけるなら、屋根裏換気や屋根裏エアコンを導入しましょう。屋根裏が冷えると、輻射熱効果により2階居室がひんやりと過ごしやすくなります。エアコンによる冷えすぎも防げます。

『ガルバリウム鋼板の屋根は、断熱性能が低い?』に対して

その通りです。ガルバリウム鋼板などの金属屋根は、瓦屋根に比べて断熱性能が低いとされています。それなら瓦屋根にすればいいのか?というと、そうでもありません。何事も一長一短。

瓦屋根のデメリットは耐震性の低さとコストの高さです。詳細は関連記事を見ていただくとして、総合的に見てガルバリウム鋼板を選択することが多いため、屋根裏断熱が一層大切になってくるということです。

念のため言っておきますが、瓦屋根にしたら2階が涼しいわけでもありません。屋根裏断熱を怠ると2階は暑いので、屋根材が何であろうとも、屋根裏断熱はしっかり行うようにし、可能であれば屋根裏エアコンの導入を検討してくださいね。

関連記事:屋根・バルコニーのメンテナンス費用を安くするコツ|屋根材・屋根下葺き材・バルコニーの選び方

『屋根断熱は、施工ミスが起きやすいと聞きましたが?』に対して

確かに屋根断熱は、天井断熱に比べると、施工ミスが起きやすい断熱方法ですが、気密測定を行えば大丈夫でしょう。気密測定は、家の隙間量を測定するもので、屋根断熱の施工ミスがあれば、すぐに数値が跳ね上がります。気密測定の詳細については、別記事で紹介しますね。

関連記事:気密性能を比較する基準と推奨レベル|C値の解説と適正数値

<施工ミスをチェックできる気密測定の様子>
正確な施工を担保する気密測定の様子

③床下の断熱を「基礎断熱」にすべき理由(冬の底冷え対策)

ちょうどいい塩梅の「床下の断熱」は、基礎断熱です。

次に、冬の底冷えに直結する床下の断熱を考えていきましょう。床下の断熱選びに失敗すると、床暖房や電気カーペットに頼らざるを得なくなります。

床下の断熱は、床断熱と基礎断熱の2種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

床断熱は、床下のシロアリ被害に気づきやすいというメリットがありますが、床下に冷たい空気が流れるので底冷えしやすくなります。

基礎断熱は、床下に室内と同じ暖かい空気が流れるので、底冷えしにくいメリットがありますが、床下のシロアリ被害に気づきにくいというデメリットがあります。

<基礎断熱と床断熱>

基礎断熱と床下断熱の違い
(出典:有限会社喜々津ホーム

それぞれメリットとデメリットを考えた上での最適な答えは、「シロアリ対策を適切に行った上で、基礎断熱」です。床断熱は、底冷えしやすいので、その時点でアウト。安易に床暖房を奨める住宅会社もありますが、まずは「床暖房がなくても寒くない家」を目指すべきです。

『でも、基礎断熱はシロアリに弱いんですよね?』に対して

弱いというか、気づきにくいというのが正確ですね。基礎の内側に断熱材を敷くので、基礎と断熱材の間をシロアリに侵食された場合に見つけにくいのです。

で、どうするのか?ですが、シロアリ対策の基本通りです。シロアリの侵入路は、ほとんどが基礎下の地中からなので、その侵入路を封鎖することです。薬剤による防蟻処理は、効果が不安定で、定期的な薬剤再施工も必要になるため、推奨していません。

床断熱だろうが、基礎断熱だろうが、シロアリ対策の基本は同じです。

参考記事:新築時の正しいシロアリ対策|防蟻剤だけではシロアリ被害を防げない

もう一つ、基礎断熱に関して注意点を。基礎の外側に断熱材を施工するのはやめましょう。シロアリの侵入路を、わざわざ用意してあげる事になります。なので、基礎断熱の断熱材は、内側に施工することを推奨します。

『床断熱の方が、床下をちゃんと換気できると聞きましたが?』に対して

これは誤りです。床断熱でも基礎断熱でも、床下換気対策を適切に取らなければ、床下の空気はよどみ、湿気・カビの温床となります。湿気・カビができると、木が腐り、シロアリが寄ってきます。シロアリは、腐朽菌の臭いに引き寄せられます。

床断熱の場合は、自然通気による換気になるので、外部に風が吹いていなければ、床下の空気はよどみます。家が近接する住宅地だと、床下環境が悪化するリスクがあるので、その場合は、床下換気ファンの導入など、対策を検討してください。

基礎断熱の場合は、床下から室内に空気を循環させる換気が必要なので、床下を含めた家全体の換気計画を立てるようにしてください。(まともな住宅会社なら言われなくてもやってくれると思いますが)

<床断熱の場合の床下換気対策例>
床断熱の場合の床下換気対策

(出典:大心産業

④玄関ドアの断熱性能を「D2/K2」にすべき理由

ちょうどいい塩梅の「玄関ドアの断熱性能」は、D2/K2です。

窓が大切!という話は以前しましたが、玄関も同じです。玄関も、多くの熱が出入りする部分なので、窓同様に一定以上の断熱性能が求められるのですが、意外と盲点だったりします。

窓の断熱性能は気にするけど、玄関ドアの断熱性能は気にしない・・・とならないようにしましょう。

玄関ドアの断熱性能は、各メーカーごとに表現が変わりますが、玄関ドアのほとんどが、YKK AP製とLIXIL製なので、この2社の表現で解説していきます。以下、仕様と熱貫流率の表をご覧ください。熱貫流率は、小さければ小さいほど断熱性能が高いことを表します。

<玄関ドアの断熱性能グレード>

玄関ドアの断熱性能一覧と熱貫流率

リビングにつける大きな窓(テラス戸)の熱貫流率が2.0くらいなので、同等の断熱性能は欲しいところ。となると、D50/K1.5になるのですが、このグレードはほとんど売れてないので、かなりお値段が高いのがネック。

一方、値段だけのことを考えると、D3/K3が当然安いのですが、D3/K3の熱貫流率はアルミサッシと同じレベルです。窓は、オール樹脂にしたのに、玄関ドアがアルミサッシレベルで結露びしょびしょ・・・だと意味ないですよね。(※参考値:YKK AP「フレミングJ」引違い窓の熱貫流率=3.49程度)

玄関ドアの断熱性能が低いと結露する

となると、やりすぎずやらなさすぎずの“ちょうどいい塩梅主義”で考えると、おのずと「D2/K2」が最適解となります。予算に余裕があれば、「D50/K1.5」を検討してみてください。

※“ちょうどいい塩梅主義”とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という考え。ある程度高いレベルを維持しつつ、やりすぎないことで費用を極力抑える、究極の最適バランス主義。

『D2/K2仕様は、寒冷地仕様とあるのですが?』に対して

D3/K3仕様やD4/K4仕様を販売するための表現ではないかと推察します。もし仮に、D2/K2を一般仕様にしてしまうと、D3/K3仕様やD4/K4仕様が、一般仕様以下の劣悪仕様となってしまいます。

そうならないために、D2/K2仕様を寒冷地仕様としているのではないでしょうか。(あくまで推察です)

すでに解説した通り、断熱性能を表す熱貫流率で見ると、D2/K2仕様は、寒冷地ではないエリア(省エネ区分4~7地域)でも、必要な断熱性能です。D3/K3仕様やD4/K4仕様を選択してしまうと、寒冷地ではないエリアであっても、冬場には玄関ドアの結露発生が予想されます。

<ドア断熱D2仕様は寒冷地におすすめと記載されているが・・・>
玄関ドアの断熱性能一覧
(出典:YKK AP

まとめ

ちょうどいい塩梅の「断熱性能」は、以下の通りです。

①UA値 ⇒ 断熱等級5クリア(4地域のみ、断熱等級5より厳しい0.5以下を推奨)
②屋根裏の断熱 ⇒ 壁の2倍(屋根断熱推奨)
③床下の断熱 ⇒ 基礎断熱
④玄関ドア ⇒ D2/K2

※「ちょうどいい塩梅の●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。

 

PROFILE

「断熱性能」を比較する基準と推奨レベル|UA値(ユーエー値)とは?|断熱等級の適切な選び方 | 最重要記事

せやま大学の人

瀬山 彰

大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。

「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。

娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。