「換気システム」の正しい知識と失敗しない選び方(前半)|メンテナンス性能の見極め方
投稿日 2020.09.27 / 最終更新日 2023.04.17

換気システムのメンテナンス性能について、詳しく解説していきます。
YouTube動画でも分かりやすく解説していますので、こちらもご覧ください!
目次
換気システムに関する知識を持っていない住宅会社
前の記事で、換気システム選びの重要性はご理解いただいたと思いますが、問題なのは、この換気システムの重要性をほとんどの住宅会社が理解していないという点です。
換気システムの最も重要なポイントは、当然ながら、適切に換気し“続ける”ことなのですが、メンテナンスについての十分な知識を持っておらず、10年後20年後にも適切に換気し“続けられる”システムなのか?という点に、無頓着な住宅会社が多いのが現状です。
10年後20年後に換気が止まってしまったら、高気密高断熱住宅はどうなるか?詳しくは前記事を見てほしいのですが、臭くて、酸欠で、ハウスダストまみれの不健康住宅になります。
関連記事:「換気システム」選びに失敗すると室内の空気環境が悪化する理由|高気密高断熱住宅のデメリット
<換気が不足すると、高気密高断熱住宅は「不健康住宅」になる>
義務化された24時間換気システム
「24時間換気システムなんて、私には関係ない・・・」という方も時々いますが、24時間換気システムの設置は義務なので、これから建てる全ての家に何らかの24時間換気システムが導入されることになります。これから家を建てる人全員の問題ということですね。
換気システム選びに失敗すると、臭くて、酸欠で息苦しく、ハウスダストまみれの家に家族を住まわせることになります。こんなことにならないように、施主の自己責任で適切な換気システムを選べるように勉強していきましょう。
<24時間換気システムは平成15年に義務化された>
(出典:国土交通省)
メンテナンス性能が低い換気システムは、絶対に設置してはいけない!
本記事のメインテーマですが、24時間換気システムのメンテナンス性能は、めちゃめちゃ重要です。
換気システムが動かなくなれば、高気密高断熱住宅は「酸欠ハウス」となり、家族の健康に被害がでます。なので、絶対に換気システムは、正常に動き“続け”なくてはならず、メンテナンスに配慮していない換気システムは、絶対に設置してはいけません。
にもかかわらず、ほとんどの住宅会社が、換気システムのメンテナンスに関する知識を持ち合わせていません。知識がないので当然ながら、メンテナンス性能の低い換気システムを流通させてしまっています。
つまり、住宅会社に任せきりにしてしまうと、換気不足の不健康住宅になるリスクが高いので、施主自身が正しい知識を持つしかないということ。本記事では換気システムのメンテナンス性能について、解説していきます。
<メンテナンス性能の低い換気システムは、絶対にダメ!>
【結論】ちょうどいい塩梅の『換気システム』は?
ちょうどいい塩梅の「換気システム」は、以下の通り。①~④を本記事で、⑤⑥は次の記事で解説していきます。
①換気システム種類/ダクト計画 ⇒ ダクト排気型の第1種換気
②機械の修理費用 ⇒ 10万円以下
③給気フィルターの位置 ⇒ 家の外から掃除できる位置
④排気フィルターの位置 ⇒ 掃除しやすい手の届く位置
⑤熱交換システム ⇒ 全熱交換80%
⑥給気フィルター性能 ⇒ PM2.5対応
関連記事:「換気システム」の正しい知識と失敗しない選び方(後半)|熱交換・給気フィルターの推奨レベル
※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベルのこと。
ちょうどいい塩梅の『●●』をまとめた「せやま性能基準」の一覧表は、以下より無料ダウンロード可能です。
関連記事:【無料】家づくりツールを完全公開します|ダウンロードまとめ
①換気システムの種類/ダクト計画
換気システムは、「第1種換気or第3種換気」と「ダクト計画」によって、大きく6種類に分類できます。
「第1種換気or第3種換気」は、機械が使われている場所に違いがあります。第1種換気は、給気と排気の両方を機械で行い、第3種換気は、排気のみ機械で行います。※第2種換気は、住宅にはほとんど使われません。
<換気システムの種類>
(出典:LIFULL HOME’S PRESS)
「ダクト計画」は、給気(新鮮な空気を室外から取り込む)と排気(汚れた空気を室外へ吐き出す)に、それぞれダクトを使っているかどうか?に違いがあります。
ダクト計画に失敗すると、常に汚れた空気が室内に供給されてしまい、健康を害するリスクがあるので、とても重要です。では早速、分類を見ていきましょう。
<24換気システムの種類一覧>
換気システムの種類
①ダクト排気型の第1種換気【給気→ダクトレス/排気→ダクト】
ダクトレス(室内空間を経由)で給気を行い、ダクト経由で排気を行うシステムです。
<ダクト排気型の第1種換気イメージ>
(出典:マーベックス)
②ダクト給排気型の第1種換気(壁掛けエアコン利用)【給気→ダクト/排気→ダクト】
最も多く採用されている第1種換気システム。ダクト経由で各部屋に給気し、ダクト経由で室外へ排気します。
<ダクト給排気型の第1種換気のイメージ>
(出典:ダイキン工業)
③ダクト給排気型の第1種換気(空調室利用)【給気→ダクト/排気→ダクト】
壁掛けエアコンで空調室を温めて(夏は冷やして)、その空気を各部屋にダクト経由で供給するシステム。給気・排気ともにダクト経由で行われます。
④ダクト給排気型の第1種換気(特殊エアコン利用)【給気→ダクト/排気→ダクト】
いわゆる全館空調システム。特殊エアコンで温度調節された空気を、ダクト経由で各部屋に給気するシステム。排気もダクト経由で行われます。
<ダクト給排気型 特殊エアコン利用(全館空調)のイメージ>
(出典:三菱電機)
⑤ダクトレス型の第1種換気【給気→ダクトレス/排気→ダクトレス】
70秒ごとに給気と排気が入れ替わる機械で、換気を行うシステム。
<ダクトレス型の第1種換気イメージ>
(出典:アーキテリアル.jp)
⑥ダクト排気型の第3種換気【給気→ダクトレス/排気→ダクト】
各部屋に設置された排気口から、ダクトを経由して排気します。
<ダクト排気型の第3種換気イメージ>
(出典:ガデリウス・インダストリー)
⑦ダクトレス型の第3種換気【給気→ダクトレス/排気→ダクトレス】
お風呂やトイレの換気扇から排気し、各部屋に排気口はありません。
<ダクトレス型の第3種換気イメージ>
(出典:ガデリウス・インダストリー)
換気システムの種類/ダクト計画を選ぶポイント
換気システムの種類/ダクト計画を選ぶポイントは、2つあります。
■適切に換気が行われるか?(1種or3種)
換気システムの役割は、全室の換気を適切に行うことです。換気不足の原因は、気密性の低さ、冷気が不快で止めてしまう、メンテナンス不足、排気口の少なさ等いくつかありますが、そのリスクが高いのが3種換気です。
3種換気は、気密性が低いと家だと隙間から空気が入り、計画通りに家全体を換気することができません。また、冷気が入ってくるのでシステムを止めやすく、給気フィルターが小さいためフィルターの目詰まりも起きやすくなります。さらに、排気口の数が限られているので、排気口がない部屋の換気不足のリスクが高いという問題もあります。
これより、基本的に1種換気は推奨します、かと言って1種換気なら何でもよいわけではありません。1種換気の弱点「ダクト」に注意が必要です。
<1種換気なら熱交換システムで冷気侵入を緩和できる>
(出典:ダイキン工業)
■給気にダクトが使われていないか?
換気システムの最大の弱点は、ダクト(空気が通る配管)です。ダクトのメンテナンスを怠ると、どうなるか?
ダクトは、空気が通るので少しずつ汚れていき、「ほこりの道」となります。給気フィルターの性能が高ければ、ほこりの付着は軽減されますが、ゼロにはなりません。
そして、その「ほこりの道」を通って各部屋に空気が供給されてしまうと、当然ながら、ほこりも一緒に部屋に入ってきて、ハウスダストやカビによって、体調を崩す原因になってしまいます。
なので、給気にダクトを使うべきではなく、「ダクト給気型」の換気システムは非推奨となります。
<ほこりの道:汚れたダクト(左)と清掃後のダクト(右)>
(出典:住環境テクノライフ)
「ダクト排気型の第1種換気」を推奨する理由
ちょうどいい塩梅の「換気システムの種類/ダクト計画」は、ダクト排気型の第1種換気です。ダクト排気型の第1種換気が採用できない場合は、ダクト排気型の第3種換気を、条件付きでベターな選択として推奨します。
それぞれ、検証してみましょう。
①ダクト排気型の第1種換気【給気→ダクトレス/排気→ダクト】⇒ベスト(推奨)
「1種換気」かつ「ダクトを給気に使わない(ダクト排気型)」という、理想のシステム。
②ダクト給排気型の第1種換気(壁掛けエアコン利用)【給気→ダクト/排気→ダクト】
「1種換気」ですが「ダクト給気型」なので非推奨。採用せざるを得ない場合は、ダクトのメンテナンスへの高い意識が必要です。
③ダクト給排気型の第1種換気(空調室)【給気→ダクト/排気→ダクト】
「1種換気」ですが「ダクト給気型」なので非推奨。採用せざるを得ない場合は、フィルター数が多いので、こまめな掃除を忘れないようにしましょう。
④ダクト給排気型の第1種換気(特殊エアコン利用)【給気→ダクト/排気→ダクト】
「1種換気」ですが「ダクト給気型」なので非推奨。さらに言うと、特殊エアコン故障時の修理費用が高額なので、②③よりもさらに非推奨です。修理せずに放置して、壁掛けエアコンに切り替えると家全体の換気が止まってしまいます。機械の修理の章でも詳しく触れています。
⑤ダクトレス型の第1種換気【給気→ダクトレス/排気→ダクトレス】
「1種換気」かつ「ダクトを給気に使わない(ダクトレス)」ので、一見よさそうではあるのですが、結論、推奨していません。賛否両論あるので、最終判断は個人でするしかありませんが、現段階で、私が推奨できない理由は以下の通りです。
・熱交換能力の不足
切替直後は良いですが、徐々に熱交換能力が落ち、切替直前は熱交換能力が低くなってしまいます。
・切替時のショートサーキット
排気した空気をそのまま給気してしまう現象が起き、適切に換気することができません。
・ハウスダストの逆流
排気時にフィルタ―に付着したハウスダストが、給気に切り替わるタイミングで室内に逆流してくると考えられます。
⑥ダクト排気型の第3種換気【給気→ダクトレス/排気→ダクト】⇒ベターな選択
「3種換気」ではありますが、ダクト排気型なので、⑦ダクトレス3種に比べると適切に換気を行いやすくなります。3種換気の弱点を補うために、以下条件付で、ベターな選択肢としては推奨します。
・気密性を確保(C値0.7以下)
・給気フィルターを設置、こまめな掃除を行う
・給気口をエアコンの近くに設置して冷気対策を行う
⑦ダクトレス型の第3種換気【給気→ダクトレス/排気→ダクトレス】
適切に換気が行われないリスクが高いので、非推奨です。
『全館空調(特殊エアコンを利用したダクト給排気型の第1種換気)をすすめてくる会社が多くない?』に対して
確かに。今は、全館空調ブームと言ってもいいかもしれません。全館空調自体は、家中の温度を一定に保ち、快適な住環境を実現してくれる優れたシステムです。
しかし、メンテナンスを怠ると、ダクト給気型の全館空調は、無用の長物どころか、家族の健康を害する「厄介者」になりかねないので、導入前に、メンテナンスの手間やコストをしっかりと検討してください。
全館空調を使わなくとも、部屋中一定の温度に保ち、新鮮できれいな空気で過ごすことは可能なので、多大なメンテナンスコストや故障リスクを背負ってまで、導入するメリットは少ないと考えます。
関連記事:『全館空調って導入すべき?』~全館空調の問題点とリスクを考える~
②機械の修理費用
換気システムは機械なので、いずれ壊れます。そして故障を放置すれば、換気不足の不健康住宅になってしまうので、当たり前ですが、壊れたら修理することが大切です。
修理するに決まってるじゃん!と思うかもしれませんが、例えば15年後に換気システムが故障して、50万円かかります!と言われたら、どうでしょうか?エアコンのように、めちゃめちゃ困るわけでもありません。となると…
修理費用によっては、「まーこのままでもいいかなー」と考えてしまう事もあると思います。現実に、全館空調の修理費用が高額すぎて、壁掛けエアコンを設置して、換気システムが止まってしまっている家が結構あります。
なので、換気システムが故障した時に、安く、簡単に修理できる設計にしておくことが大切です。エアコン故障したらすぐに修理するように、換気システムも故障したら、すぐに修理しなくては!という意識も忘れずに。
関連記事:「換気システム」選びに失敗すると室内の空気環境が悪化する理由|高気密高断熱住宅のデメリット
故障時の修理費用は「10万円以下」にすべき理由
ちょうどいい塩梅の「故障時の修理費用」は、10万円以下です。
10万円という数字に特段の意味はないですが、修理に30万円!50万円!と言われると、換気の重要性を理解していても、二の足を踏んでしまいませんか?
一方、8万円!と言われると、安くはないけど、換気は大切なので、修理しよう!となってくれるはずです。(と信じています)
また、実際に10万円以下で修理できる設計が可能。システム自体は、いたってシンプルな構造なので、簡単に取り換えできる場所に設置することで、10万円以下で修理可能になります。
<換気システム故障時の修理費用は、10万円以下にすべき>
24時間換気システムの修理費用を抑えるために
大切なのは、機械の設置場所です。
理想的な場所は、床下点検口の真下。ここであれば、簡単に修理することができます。最悪なのが、1階の天井裏。1階の天井裏は、非常に狭く工事がしにくい場所です。ここに設置してしまうと、大工事になり修理費用が増えます。
<理想的な換気システムの位置は床下点検口の真下>
(出典:マーベックス)
また、別記事で触れますが、換気システムとエアコンが一体になっているタイプ(冷暖房一体型24時間換気システム、単純に全館空調と呼ぶことが多い)は、絶対に!絶対に!避けましょう。
エアコンが止まると、換気システムも止まり、修理費用も膨大です。で、結局、壁掛けエアコンを設置して、暑さ・寒さをしのいで、換気システムは放置・・・という未来が予想できすぎます。
関連記事:『全館空調って導入すべき?』~全館空調の問題点とリスクを考える~
『壁の中や天井裏に設置している住宅会社が多いですよね?』に対して
その通りです。だからこそ問題であり、施主が勉強する必要があるのです、と言うしかありません。住宅業界の取り組みの遅れや施主への説明不足に関して、同じ住宅業界の人間として、大変申し訳なく思っています。
本来は、住宅業界自らが「高気密高断熱住宅のデメリット」の対策に真摯に取り組むべきですが、残念ながら現実はそううまくは行きません。施主が賢くなること。まずは、ここから始めるしかないと思っています。
<24時間換気システムは平成15年に義務化された>
(出典:国土交通省)
③④給気・排気フィルターの位置
24時間換気システムが止まってしまう理由は、住人が止める、機械が壊れる、そして、フィルターが詰まるの3つです。
もし、フィルターが詰まってしまうと、家中が換気不足になり、室内の空気環境が悪化。酸欠で、臭くて、ハウスダストが充満する家になってしまうので、フィルターの掃除のしやすさは、とても重要です。
<フィルター掃除は絶対に必要。ならば楽に掃除できるようにしよう!>
フィルターは、給気フィルターと排気フィルターの2種類があります。
・給気フィルター
外気を室内に給気する(取り込む)位置に設置され、室外の花粉やPM2.5などが付着します。
・排気フィルター
室内の汚れた空気を室外に排気する(捨てる)位置に設置され、室内に浮遊するハウスダスト等が付着します。
それぞれ、掃除しやすくする方法を考えていきます。
<汚れたフィルターの目詰まりは、換気不足の主原因>
(出典:グッドハウス)
給気フィルターを「家の外から掃除できる位置」に設置すべき理由
ちょうどいい塩梅の「給気フィルター位置」は、家の外から掃除できる位置です。理由は簡単。
汚いからです。虫がすごいからです。ほこりや排気ガスによる黒ズミもすごいです。給気フィルターは、外部の汚染物質を室内に入れないための「家のマスク」ですから、汚れて当然だし、汚れることが役割そのものとも言えますからね。
虫や排気ガスで汚れたフィルターは、家の外から掃除するほうが良いに決まっています。
<給気フィルターが家の外に設置された良い例>
(出典:笠井工業株式会社)
しかし、そんな汚い給気フィルターを、家の中から掃除するタイプが多いのが現状です。
虫やらなんやらが付着したフィルターを家の中から掃除するなんて、想像しただけでぞっとします。で、掃除するのが嫌で面倒なので、放置されて目詰まりが起きるという流れになると思われます。
また、給気フィルターを家の中から掃除するタイプだと、外部から給気フィルターまでの間のダクト内が、虫や排気ガスでべとべとに汚れてしまいます。フィルターを通るとはいえ、このべとべとに汚れたダクトを通った空気を吸いたくはありません。
ということで、給気フィルターは家の外から掃除できる位置に設置すべきです。
<「家の外から掃除できる位置」に設置された給気フィルターの例>
(出典:オカトミ)
排気フィルターを「掃除しやすい手の届く位置」に設置すべき理由
ちょうどいい塩梅の「排気フィルターの位置」は、掃除しやすい手の届く位置です。理由は単純。
掃除しやすいからです。壁の低い位置か、床面に設置することを推奨します。排気フィルターを手の届かない位置に設置してしまうと、掃除の頻度も落ちますし、歳をとってからはそもそも掃除できない・・・という事態になりかねません。
<掃除しやすい排気フィルターの位置>
(出典:マーベックス)
一方、現状のほとんどの家で、排気フィルターは、壁の高い位置や天井についています。そして、排気フィルターの掃除やってますか?と聞くと、ほとんどの方が、やっていないと答えます。
お風呂の浴室乾燥機のフィルターも同様です。これではフィルターは確実に目詰まりを起こしています。
<排気フィルターを「手の届かない位置」に設置した悪い例>
(出典:マーベックス)
余談ですが、エアコンのフィルターの掃除していますか?きちんと掃除している方は、少数ではないでしょうか?フィルターが高い位置に設置されている弊害ですね。
エアコンのフィルター掃除を怠っても、換気に影響はありませんが、エアコンの効率は格段に落ちますので、定期的なお掃除は必要です。
<エアコンのフィルター掃除を怠ると、運転効率が落ちる>
『排気フィルターが低い位置にあると、ほこりがたまるのでは?』に対して
その通りです。むしろそれこそが、排気口を低い位置に設置する、もうひとつの大きなメリットです。結論から言うと、「ハウスダストが減る」ということです。
ハウスダスト(ほこりなど)は、どこに溜まりますか?天井ではなく、床ですよね?ハウスダストは、床上30cmに溜まりやすいとされています。なので、高い位置にある換気扇では、ハウスダストは十分に除去されないわけです。
<ハウスダストは床上30cmを浮遊している>
(出典:パナソニック)
「さっき掃除したのに、すぐにほこりがつく」なんて経験はないですか?これは、ハウスダストが約90分ほど空中の浮遊しているから起きる現象で、室内の空気が動いているとどうしても、ほこりは空中を舞い、しばらくして床に落ちていきます。
なので、最も効果的な掃除のタイミングは、空気が動かず、ほこりが床に沈む時、つまり人間が寝ている時です。
低い位置に排気口があれば、人間が寝ている間も、床に沈むハウスダストを効率よく集めてくれるわけです。喘息(ぜんそく)の方などは、このほこりが減る効果を実感しやすいかもしれません。
<低い位置から排気すると、家中のほこりを効率的に除去できる>
(出典:イシンホーム大阪HP)
『トイレも、その排気フィルターの位置でいいの?臭くならないの?』に対して
これまた、排気口を低い位置につけるメリットです。
排気口を低い位置につけると、トイレの臭いが劇的に減ります。実はこれ、もうすでに多くの場所で利用されていて、最近では、新幹線のトイレの換気扇も、足元の低い位置に設置されるようになっています。
<新幹線の排気口は、臭い対策として低い位置にある>
(お食事中の方はすみません。ここから、「うんこ」を連呼します。)
これはなぜかというと、うんこの匂い(インドール)は空気より重く、低い位置にたまるからです。低い位置にたまった臭いは、低い位置から排気してあげた方が効率的。とても理にかなった仕組みですね。
<うんこの臭いは空気より重いので、床付近にたまる>
(出典:日本医事新報社)
一方、これまでの高い位置に設置された排気口(換気扇)だと、うんこの臭いはどうなるのか?を考えてみます。うんこの臭いは低い位置に溜まるのに、天井の換気扇にわざわざ吸い上げられ、人間の鼻の高さを通過して、換気扇から排気されます。
今までの換気扇の位置は、うんこの臭いを助長する場所だったわけです。換気扇が低い位置にあると、臭いが消えるのが早いので、トイレの臭いのストレスを大幅に軽減できます。
さらにこだわる人は、トイレ内への給気を高い位置から行うと、上から下への気流ができてより臭いが軽減されます。トイレのドアが開き戸の場合、アンダーカットではなく、アッパーカットにすると良いです。
まとめ
ちょうどいい塩梅の「換気システム」は、以下の通り。①~④を本記事で、⑤⑥は次の記事で解説していきます。
①換気システム種類/ダクト計画 ⇒ ダクト排気型の第1種換気
②機械の修理費用 ⇒ 10万円以下
③給気フィルターの位置 ⇒ 家の外から掃除できる位置
④排気フィルターの位置 ⇒ 掃除しやすい手の届く位置
⑤熱交換システム ⇒ 全熱交換80%
⑥給気フィルター性能 ⇒ PM2.5対応
※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベルのことです。
関連記事:「換気システム」の正しい知識と失敗しない選び方(後半)|熱交換・給気フィルターの推奨レベル
【文責:瀬山彰】
PROFILE

せやま大学の人
瀬山 彰
大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。
「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。
娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。