2024.09.07
当然ですが「快適な家」を目指すなら、断熱性能とあわせて「気密性能」もしっかり担保しなくてはいけません。
そこで今回はこの気密性能について、
- 気密性能を担保しないと、どうなってしまう?
- 具体的に、気密性能(C値)はどれくらいの水準を目指せばいいの?推奨レベルは?
本記事の内容は、YouTube動画でも分かりやすく解説していますので、こちらもご覧ください!
目次
「気密性能」が低いと生じる4つの問題
まずは「気密性能を担保しないと、どんな問題が生じるのか?」について、さらっとお話ししておきます。
①夏は暑く、冬は寒くなる
「気密性能が低い=隙間だらけの家」なわけですから、当然そこから空気が入りまくります。もちろん熱い空気も、冷たい空気も全部入ってきます。
そのため、いくら断熱性能にこだわったところで、気密性能が低いと、夏は暑く、冬は寒い家になってしまいます。
関連記事:『断熱性能(UA値)の推奨基準値は?断熱等級の適切な選び方も併せて解説!』
②内部結露によって、家の寿命が短くなる
家に隙間があると、特に冬場は隙間から空気が漏れ(漏気)、この漏気によって壁内が冷やされ壁内に結露(内部結露)が発生してしまいます。
そしてこの内部結露は「壁の中」なわけですから、濡れたまま放置されることで次第に木材が腐り、シロアリをおびき寄せて家の寿命を短くしてしまいます。
③雨漏りの原因にもつながる
当然「隙間が多い」ということは、空気だけでなく、水も入りやすくなります。
そのため気密性能が低いと、「雨漏りの原因」にもなり得るということも考えられます。
④「換気」が滞ってしまい健康被害にも…
当然ですが気密性能が低いと、その隙間から空気が出入りしてしまいます。
「これが換気になるのでは?」と思うかもしれませんが、逆に家に隙間があると、意図しない空気の出入りにより、換気システムが当初の計画通り機能しなくなってしまうんです。
そしてこれにより、換気が不十分な状態になると、空気は澱(よど)み、CO2濃度も上がり、ハウスダストは増え…、と健康被害にもつながりかねないわけです。
平成15年から換気システムの導入は「義務化」!
「換気システムってお金かかりそうだし、ナシでもいいんじゃない?」という方もいるかもしれませんが、平成15年以降、換気システムの導入は義務化されています。
「窓開けて換気すればいいじゃん」という意見もあると思いますが、義務化されるぐらいですから、軽視せず「換気は快適な住環境の実現に不可欠」と認識しておきましょう。
気密性能は「C値」を基準に判断を!
そもそも「C値」とは?
C値とは、「家の大きさに対して、どれくらいのスキマがあるのか?」を表す数値で、このC値が小ければ気密性能が高い、C値が大きいと気密性能が低いとなります。
例えば上画像であれば、延床面積138.77㎡に対して、隙間の面積(総相当隙間面積)が30㎠ですから、30㎠÷138.77㎡で「C値:0.2(小数点第二位以下切り捨て)」となるわけですね。
「C値に影響する要素」って何がある?
家の構造(鉄骨or木造)や窓などの仕様も影響しますが、一番は「職人さんの施工品質」ですね。
家のスキマは建付けなど施工品質次第ですから、気密性能(C値)を担保するためには「施工品質が重要」と覚えておきましょう。
C値を知るためには「気密測定」が必要!
「気密測定」とは?
当然ですが、「スキマがどのぐらいあるか?」なんて、実際に家が建たないとわかりません。
そのためC値は、断熱処理の完了後など、ある程度家が建ったタイミングで計測器具を持ち込んで測定を行います。こうしてようやくC値が出るわけですね。
最近では「高気密住宅」とPRする住宅会社も多いですが、そもそもC値は職人の施工品質に大きく依存するため、たとえカタログやモデルハウスのC値が優秀でも、皆さんの家が同じような水準になるわけではないんです。ですので営業マンから見聞きしたC値は参考程度にとどめ、必ず「自分の家」で気密測定を行うようにしてください。
また「気密測定を行って、C値が良くなかった場合どうすればいいのか?」についてですが、このような場合は「手直し」を行うことで気密性能の担保が可能です。詳しくは以下の記事でお話ししていますので、こちらも併せて参考にしてみてください。
関連記事:『”気密測定”はマスト!気密性(C値)の検査タイミングと数値が悪かった時の対処方法は?』
気密測定は「手抜き工事」の回避にも有効!
これは職人さん達が一番よく分かっていると思いますが、家のスキマを減らすためにはしっかり施工しないといけません。
そのため、「気密測定を行う現場」と「そうでない現場」とでは、現場の緊張感が全然違うんです。職人も人間ですからね。
だからこそ打ち合わせ時に、「しっかり気密測定してください」と伝えておくだけで、手抜き工事のリスクがグンと下げることにもつながるわけです。
気密測定って、何も言わなくてもやってもらえる?
気密測定って何も言わずともやってもらえそうですが、実際の実施率は「10棟のうち1棟も実施されていない」ほどです。
「高気密高断熱住宅!」といってPRしているのに、肝心な気密性能が数値として出さないのは、もはや詐欺ですよね。
そもそも住宅会社が責任を持って測定すべきですが、上記のような現状も踏まえ、必ず皆さんの方から「気密測定してください」と伝えるようにしてください。
関連記事:『”気密測定”はマスト!気密性(C値)の検査タイミングと数値が悪かった時の対処方法は?』
気密性能で「目指すべきC値の水準」は?
【結論】ちょうどいい塩梅の『気密性能(C値)』は?
ちょうどいい塩梅の「気密性能(C値)」は、以下の通りです。
ちょうどいい塩梅の気密性能(C値)は?
- C値 ⇒ 0.7以下
一般的には、C値1.0以下が「高気密住宅」とされていますので、それをもう少し下回る「C値:0.7〜0.5」を目指していただきたいと思います。
「C値=0.7以下(0.5以下を目指す)」を推奨する理由
C値は低ければ低いほど良いわけですが、当然さらに良くしようと思うと、その分コストもかかってしまいます。
C値=0.7以下であれば、気密性能も担保できますし、気密住宅(木造)の施工に慣れている会社であれば、付加断熱や気密テープなど追加費用になりがちな施工をせずとも現実的に達成できる水準なんです。(ただし、複雑な形状や3階建ての場合は、数値が悪くなる傾向があります)
「高気密住宅の水準(C値=1.0)」で十分じゃない?
なぜ「C値=1.0」ではなく「0.7以下」を目指すべきなのかというと、気密性能は経年劣化するからです。
特に窓サッシ回りは頻繁に開け閉めするので、少しずつ隙間ができたりします。しかし、やりすぎてもお金がかかってしまいます、「C値=0.2~0.1」とかを目指しても劇的に快適になるわけでもありません。なので目安としては、「C値=0.7以下(できれば0.5)」を目指していただければと思います。
気密性能(C値)のよくあるQ&A
まとめ
ちょうどいい塩梅の気密性能(C値)を目指す上で、抑えておくべきは以下の4点です。
ちょうどいい塩梅の「気密性能(C値)」のまとめ
- 快適な家を目指すなら、「気密性能」も担保を!
- 気密性能は「C値」で判断!(推奨水準は「C値=0.7以下」)
⇒C値は「職人の施工品質」に依存する(モデルハウス・カタログ値は参考にならない) - C値を知るためには、「現地での測定(気密測定)」が必要!
⇒【要注意】気密測定は言わないとやってもらえない可能性大! - 気密測定をすれば、「手抜き工事」も防げる!
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合わせて読みたい記事:『営業マンより「家の性能」に100倍詳しくなる方法|せやま性能基準』
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