「気密性能」を比較する基準と推奨レベル|C値とは?

「気密性能」を比較する基準と推奨レベル|C値とは? | 最重要記事

高気密高断熱住宅は、断熱性能だけではだめですよね?

断熱性能を表すUA値(ユーエー値)に続いて、気密性能を表す数値「C値(シー値)」について、詳しく解説していきます。

気密性能を比較する基準と推奨レベル|C値の解説と適正数値

本記事の内容は、YouTube動画でも分かりやすく解説していますので、こちらもご覧ください!

関連動画:C値は0.7以下を推奨!気密性能が国の基準に入っていない理由

断熱だけでは片手落ち

高気密高断熱住宅という言葉はもう一般的になりましたが、断熱性能が良くても、気密性能が低いと様々な問題が発生します。まずは、なぜ気密性能が大切か?を解説していきましょう。

気密性能が低いと、まず断熱性能が落ちます。どれだけ上等なダウンジャケットでも、前のファスナー全開では寒いのと同じです。

次に、気密性能が低いと壁内結露の原因になります。気密性能が低い=隙間が多いということなので、その隙間から空気が漏れ(漏気)、漏気によって壁内が冷やされ、壁内に結露が発生してしまうわけです。

また、気密性能が低いと、その隙間から水が入り込み、雨漏りの原因にも。隙間が多いと空気だけでなく、水も入りやすくなります。

最後にもう一つ。気密性能が低い(隙間が多い)と、その隙間から空気が漏れて、適切に換気が行われません。C値が1.0を超えると、どんな換気システムであっても、適切な換気が行われないとされています。換気の重要性については、以下記事で詳しく解説していますので、参照ください。

関連記事:換気システム選びに失敗すると室内の空気環境が悪化する理由|24時間換気システムの重要性

注文住宅の「隙間」は致命的な欠陥となる

C値(シー値)とは?

C値(シー値)とは、家の大きさに対して、どれくらいのスキマがあるかを表した数値です。C値が小さいと高気密(気密性能が高い)となり、C値が大きいと低気密(気密性能が低い)となります。例えば、延床面積100㎡の家全体のスキマ面積が200㎠であれば、C値は2.0というわけです。

また、C値を出すためにはは、「気密測定」という現場での検査を行う必要がありますが、何%くらいの家で実施されているかご存知ですか?どの会社も「高気密高断熱住宅!!!」とPRしてるわけなので、ほとんどの会社が行っているのでは?と思うかもしれませんが、実際は10棟のうち1棟も実施されていないと言われています。

多くの会社が、高気密高断熱住宅!とPRするのに、気密測定を実施しない(C値を出さない)のは、詐欺に近いですよね。気密測定をしない住宅会社の家は、高気密高断熱”風”住宅と呼ぶべきです。

<気密測定の様子>
気密性能を測定する気密測定(C値測定)

【結論】ちょうどいい塩梅の『気密性能(C値)』は?

ちょうどいい塩梅の「気密性能(C値)」は、以下の通りです。

C値 ⇒ 0.7以下

余裕があれば、さらに低いC値を目指してもらえればと思いますが、こだわりすぎに注意してください。

※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。

気密性能は「C値0.7以下」を推奨する理由

ちょうどいい塩梅の「気密性能」は、C値0.7以下です。

気密性能も断熱性能と同じで、「どこまでやるか?」という問題です。C値は低ければ低いほど良いのですが、お金を掛け過ぎてもいけません。そこで、以下3つの条件を踏まえ、ちょうどいい塩梅の数値を設定しています。

・気密性能が担保できる
・正確な施工が担保できる
・さほどお金をかけなくても達成できる

木造住宅で気密住宅の施工に慣れている会社であれば、C値0.7以下は普通に出せます。さほどハードルの高い数字ではありません。(ただし、複雑な形状の家や3階建ての家は、数値が悪くなる傾向があるので、その場合は住宅会社と相談しながら進めてください。)

以下C値は「内断熱のみ(ウレタン吹付)+気密テープ無」の一般的な断熱工法の家の気密数値です。付加断熱(内断熱+外断熱)や気密テープの施工などしなくても、C値0.7以下は余裕でクリアできることを証明してくれています。

<一般的な断熱工法の家の気密数値(C値0.2)>
気密測定結果

もちろん、もっと低い数値を目指してもらってもOKですが、気密性能ばかりがんばるのではなく、窓・断熱・気密・換気システムの4要素の「ちょうどいい塩梅の●●」をもれなくクリアすることを、まずは意識してくださいね。

関連記事:窓の種類と失敗しない選び方|サッシ・窓ガラス・スペーサーの推奨レベル
関連記事:断熱性能を比較する基準と推奨レベル|UA値の解説と適正数値

 

気密性能にこだわる最大のメリット

気密性能にこだわるメリットは、断熱性能向上や内部結露対策の面もありますが、最も大きなメリットは、正確な施工が担保されるという点です。施工が雑だと気密性能は出ません。

そのことは職人が一番よく分かっていますので、気密測定を行う現場は、気密測定を行わない現場より緊張感が増すのです。職人も人間ですからね。

また、注文住宅会社のカタログに書いてあるC値はあまり意味がありません。C値は、間取りや施工の質で1棟1棟変わるからです。大切なのはカタログのC値ではなく、あなたの家のC値ですよね?

高気密高断熱宅を建てたいのであれば、必ず気密測定を行い、あなたの家のC値を測定するようにしてください。

<気密測定の風景>
気密測定器の設置風景

『大手ハウスメーカーの多くがC値に言及してませんよね?』に対して

住宅業界の闇に触れる質問ですね、お答えしましょう。

これは、おっしゃる通りです。大手ハウスメーカーの多くが、C値に言及しません。断熱性にも、結露対策にも、雨漏り対策にも、大きな影響を与える気密性能(C値)なのに、なぜ言及しないのでしょうか?

まず、多くの大手ハウスメーカーが扱う鉄骨住宅は気密性能が低い性質があるということです。

そもそも鉄骨住宅の性質上、C値は良くて2.0程度。ちょうどいい塩梅の「気密性能」のC値0.7以下に遠く及びません。大手ハウスメーカーの苦手分野なので、あまり大々的に取り上げられていないといえます。

次に、気密性能は、工事現場で1棟1棟実際に測定しなくてはならないので、手間なんですね。手間とか言ってる場合じゃないくらい、気密性能は大切なんですが。

さらに、どれだけ良い断熱材や窓を使っていても、正確な施工がなされないと気密性能が出ないということがあります。図面上ではなく現場で測定するので、正確な施行に自信がない会社は測定したくないわけです。

関連記事:ハウスメーカー・工務店・分譲ビルダー・設計事務所のメリット・デメリット

<隙間なく丁寧に施工された屋根断熱>
職人が丁寧に施工しないと気密性能は担保されない

『そんなに大事な数値なら、国の基準に入っているのでは?』に対して

話は少し脱線しますが、次世代省エネ基準、ZEH基準、HEAT20基準など家の性能を示す基準がたくさんありますが、全てにおいてC値は必要項目に入っていません。断熱、日射、太陽光、冷暖房設備・・・とあるのに、気密の文字はどこにもないですね。

<住宅の省エネルギー基準に「気密性能」の項目がない…>

ZEH基準を満たすために必要な項目に気密数値が入っていない不思議
(出典:建築省エネ機構

実に不思議ですよね?各社、高気密高断熱住宅とPRしておきながら、C値の基準がない。個人的な推測ですが、大手ハウスメーカーへの配慮ではないかと思われます。

また、省エネ基準においては、平成11年基準ではC値は項目に含まれていたのに、平成25年基準では削除されるという、魔訶不思議な現象が起きました。C値は重要ではない!という専門家は皆無なのに、省エネ基準からは削除されるというこの業界の闇です。

平成11年の基準も、C値5.0以下(寒冷地は2.0以下)という、とんでもなく低いハードルだったので、意味をなしていたとは言えませんが。

『C値を測定する気密測定は、いつ実施するのがベスト?』に対して

ベストは、断熱施工後と完成後の2回ですが、以下理由により「断熱工事後のみ1回」で十分だと思います。

・断熱工事後より完成後の方が、気密性能は上がる(C値が下がる)ことが多い
断熱工事後にボードやクロスなどを施工していくので、気密性能は上がっていきます。
次の質問でも解説しますが、エアコン設置の気密工事を怠ると当然C値は落ちますが、正確に工事すれば、総じて気密性能は上がることが多いです。

・完成後だと手直しできない
断熱工事後の気密測定でC値が高ければ、断熱補強でC値を下げることができますが、完成後はほとんど手直しができません。

気密測定も費用がかかりますので、「断熱工事後に1回」が、ちょうどいい塩梅と考えてもらってOKです。

<気密測定は「断熱工事後に1回」が、ちょうどいい塩梅>
気密測定は断熱工事後に一回で十分

『エアコン設置工事で気密性能が下がるのでは?』に対して

その通りです。エアコン設置工事で気密性能は若干下がりますが、きっちり施工すれば大きな影響はありません。逆に、雑なエアコン取付工事をされると、気密性能が大きく下がり、せっかくの高気密高断熱住宅が台無しです。

エアコンの施工の注意点は、以下の通り。

・貫通部のウレタン断熱処理+パテ埋め
・化粧カバー回りの防水処理

構造的にも、筋交いや柱を貫通させてしまう業者もあるので、できれば住宅会社から紹介してもらった施工会社に依頼することをおススメします。

<エアコン貫通部のパテ埋めの様子>
新築住宅へのエアコン設置時の気密性能確保は重要
(出典:THS

まとめ

ちょうどいい塩梅の「気密性能(C値)」は、以下の通りです。

C値 ⇒ 0.7以下

余裕があれば、さらに低いC値を目指してもらえればと思いますが、こだわりすぎに注意してください。

※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。

 


【文責:瀬山彰】

PROFILE

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せやま大学の人

瀬山 彰

大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。

「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。

娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。