2024.11.14
ついつい「新築なら快適な家が手に入るはず!」と考えてしまいがちですが、実は間違いなんです。
住み心地を左右するのは「家の性能」。快適な暮らしを実現するためには、まず家の性能について学ぶ必要があります。
本記事ではそもそも性能とは何か?性能の違いとは何か?など、「家の性能」について一から解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
快適さのためには「性能担保」が大切!
目次
そもそも「家の性能」とは?
家の性能とは、窓や屋根などの建材の「グレード」や大工などの「施工精度」を指します。
冒頭にもお話したとおり、必ずしも『新築戸建=快適な暮らし』というわけではなく、「夏は涼しく冬は暖かく過ごしたい」、「メンテナンスにお金をかけたくない」、「地震に強い家にしたい」などの希望があれば、それを叶えるだけの「グレード(性能)」と「施工精度」が必要になります。
とはいえ、際限なくグレードを上げてしまうと、その分費用もかさんでしまいます。
そこでBE ENOUGHでは、家づくりにおける「性能選びの基準」として”ちょうどいい塩梅”を推奨しています。
「ちょうどいい塩梅」ってなに?
当然ですが、建材はグレード(性能)を上げるほどコストも跳ね上がっていきます。
これにより、「低レベル→中レベル」へのアップグレードであれば、お金をかけた分、性能による「快適さの違い」を実感できるのですが、実は一定のラインを超えると”違い”を感じづらくなるんです。
例えば、30キロの球が60キロになったらかなり明確に速さの違いを感じられると思いますが、170キロの球が200キロになったところで、前者ほどの違いは感じづらいと思うんです。
これと同じように、家の性能もある一定ラインを超えると、効果を実感しづらくなるため、性能をアップグレードするにしても「違いが感じられる”ちょうどいい塩梅”」で止めておくのが理想なわけです。
まずは「せやま性能基準」をチェック!
BE ENOUGHでは「完全に不足→少し不足→ちょうどいい塩梅→余裕があれば」の順番に、建材別に性能をまとめた「せやま性能基準」を作成しました。
より良い家づくりのために、誰でも無料ダウンロードできる資料にしましたので、ぜひ活用してください。
性能基準で見るべきポイントは3つ!
性能基準でチェックすべき項目は、大きく分けて以下の3つ。
- 「基本性能」に関する性能
- 「メンテナンス」に関する性能
- 「地震・シロアリ・災害対策」に関する性能
中でも、黄色背景になっている6項目は、家の性能の中でもトップレベルに重要な「最重要6大要素」となりますので要チェックです。
ここからは「せやま性能基準」の項目に沿ってそれぞれのチェックポイントについて詳しく解説していきます。
1.「基本性能」に関する性能
まずは基本性能から。家づくりの「最重要6大要素」のうち4つがぎゅっと詰まっています。
基本性能をしっかりと抑えられれば、夏は涼しく冬は暖かい「快適な家」に大きく近づける一方で、ひとつでも疎かにすると結露や雨漏りなどの重大なトラブルにつながるリスクが上がるため要注意。
「窓」、「断熱」、「気密」、「換気システム」の4つのポイントに分けて一つずつ解説します。
窓
家づくりにおいて見落とされがちな「窓」ですが、実は断熱性能の要。断熱材を敷き詰めた壁に穴を開けるという構造上、屋内の熱のほとんどは窓から出入りします。
性能が低いと冬は寒く、夏は暑い…。とはいえグレードが高すぎると重量が上がって開閉しづらくなるというデメリットもあります。とても快適とは言えませんよね。
そこで推奨する”ちょうどいい塩梅”の性能は以下の通り。
ちょうどいい塩梅の「窓」
- サッシ ★最重要6大要素★
→オール樹脂サッシ - ガラス
→Low-Eペアガラス - 中空層
→アルゴンガス - スペーサー
→樹脂スペーサー
窓選びについては以下記事で詳しく解説しています。
参考記事:『【完全攻略】新築の「窓選び」最適解は?窓の種類/性能/配置など徹底解説!』
断熱(最重要6大要素)
窓の断熱性が担保できたら、次は床や壁、天井にも注目。1年を通して快適な家づくりを叶えましょう。
もちろん断熱性能は高いに越したことはないですが、断熱性能は地域によって目指すラインが異なります。コストがかかりやすい部分ですからやりすぎは禁物です。
そこで推奨する”ちょうどいい塩梅”の性能は以下の通り。
ちょうどいい塩梅の「断熱」
- UA値 ★最重要6大要素★
→ZEH基準/断熱等級5クリア - 屋根裏の断熱(種類)
→屋根断熱 - 屋根裏・天井の断熱(厚み)
→壁の2倍 - 床下の断熱
→基礎断熱 or 気密処理ありの床断熱 - 玄関ドアの断熱
→D2・K2
断熱性能については以下記事で詳しく解説しています。
参考記事:『断熱等級5を推奨!UA値の基準値と断熱性能の上げるために抑えるべき点を徹底解説!』
気密
いくら断熱性能にこだわっても、家に隙間があっては元も子もありません。
子の隙間の有無については、断熱材の種類だけでなく、大工さんによる「施工精度」によって上下しますから、そもそもの建材のグレード選びというよりも、「工務店選び」の方が重要になってきます。
「実際にどのぐらいのC値を目指すべきか?」の推奨水準としては以下の通り。
ちょうどいい塩梅の「気密」
- C値 ★最重要6大要素★
→0.7以下
ただC値については、「モデルハウスのC値が0.7以下だからOK」とするのではなく、「0.7以下で建ててください」と営業マンに伝えたうえで、実際に建てた家で気密測定を行ってもらうようにしましょう。
詳しくは以下記事を参考にしてみてください。
参考記事:『C値(気密性能)の測定基準・推奨レベルとは?よくある質問にも回答!』
換気システム
ここまで断熱・気密性能をクリアしたら快適な家、ではないんです。特に気密にこだわるなら換気システムの性能チェックは必須。
「高気密=隙間がない」ですから、これを疎かにすると換気が不十分になるだけでなく、酸欠状態による頭痛や不眠などの健康被害にもつながりかねません。
そこで推奨する”ちょうどいい塩梅”の性能は以下の通り。
ちょうどいい塩梅の「換気システム」
- システム種類/ダクト計画 ★最重要6大要素★
→ダクト排気型 第1種換気、ダクト排気型 第3種排気
換気システムについては以下記事で詳しく解説しています。
参考記事:『第一種換気はマスト?換気システムの種類や選び方、メンテナンスについて徹底解説!』
2.「メンテナンス」に関する性能
戸建てを持つなら切っても切り離せないのが「メンテナンス」。長く住み続けるためには必要不可欠ですが、コストはできる限り抑えたいですよね。
実は建材の選び方次第でメンテナンスフリー期間を延ばすことが可能なんです。
「外壁」、「屋根」、「バルコニー」、「太陽光発電システム」の4つのポイントに分けて一つずつ解説します。
外壁
足場を組んで、シートをかけて…と大掛かりになりやすく、一度の工事でもかなりの費用がかかる外壁のメンテナンス工事。
しかし、採用する建材によっては頻繁なメンテナンスが必要になったり、一回当たりのコストが高くなってしまうことも。住み始めてからのランニングコストに大きく影響します。
そこで推奨する”ちょうどいい塩梅”の性能は以下の通り。
ちょうどいい塩梅の「外壁」
- 外壁材
→窯業系サイディング - セルフクリーニング機能(窯業系サイディングの場合)
→あり - 外壁材の保証(窯業系サイディングの場合)
→15年保証 - シーリング材の保証
→15年保証
外壁については以下記事で詳しく解説しています。
参考記事:『メンテナンス費用を抑える!「外壁材・シーリング材」の選び方とは?』
屋根
常に外気にさらされている「屋根」の選び方は超重要。定期的なメンテナンスを怠ると雨漏り必至です。
しかし外壁と同じように、選択する建材によっては高頻度のメンテナンスが必要になります。
劣化しやすい環境だからこそ、家づくりの段階で耐久性が高いものを選びましょう。
ちょうどいい塩梅の「屋根」
- 屋根材
→ガルバリウム鋼板 - 屋根材の保証
→15年保証 - 屋根防水シート
→改質アスファルトルーフィング
屋根については以下記事で詳しく解説しています。
参考記事:『新築必見!雨漏りしづらい「屋根材・ルーフィング」の種類と適切な選び方は?』
バルコニー
バルコニーは雨漏りしやすく定期的なメンテナンスが必要な設備なので、そもそもBE ENOUGHとしてはおすすめしていません。
だからこそ、導入するなら防水性能やメンテナンスのしやすさまで考慮するべきです。
そこで推奨する”ちょうどいい塩梅”の性能は以下の通り。
ちょうどいい塩梅の「バルコニー」
- バルコニー防水
→板金防水
バルコニーについては以下記事で詳しく解説しています。
参考記事:『新築必見!雨漏りしづらい「屋根材・ルーフィング」の種類と適切な選び方は?』
太陽光発電システム
高騰し続ける電気代の節約、災害時の自給自足などメリットがたくさんの太陽光発電システム。
満足度の高い住宅オプションですが、性能が低いと発電量が低いだけでなく、すぐにメンテナンスが必要になり、元が取れるどころか赤字になってしまう可能性も十分にあります。
せっかく導入するなら性能が担保された製品を選びましょう。
ちょうどいい塩梅の「太陽光発電システム」
- パネル(モジュール)
→高温高湿試験3000時間以上の「P型」パネル or 「N型」パネル - パワーコンディショナー(発電効率)
→マルチMPPT
太陽光発電システムについては以下記事で詳しく解説しています。
参考記事:『【マキシオン一択】太陽光パネル・パワコンの選び方・おすすめメーカーを徹底解説!(2024年版)』
3.「地震・シロアリ・災害対策」に関する性能
この国で暮らすなら誰もが避けて通れない「地震・シロアリ・災害」によるリスク。
本項目には、最重要6大要素のうち2項目が該当していますので、しっかりチェックしていきましょう。
地盤・基礎
基本的に地盤や基礎の工事は一度きり。家の寿命を高める重要な項目ですが、過剰設計になりやすいとも言われています。
もちろん簡単に済ませてしまうのは危険ですが、土台にお金をかけすぎて家にこだわれなくなってしまった…では困りますよね。
そこで推奨する”ちょうどいい塩梅”の性能は以下の通り。
ちょうどいい塩梅の「地盤・基礎」
- 地盤保証
→10年保証 - 基礎種類(木造の場合)
→ベタ基礎 - 基礎高
→40cm以上 - コンクリート強度
→設計基準強度:21N/㎟、呼び強度:社内基準あり - 基礎保護材
→弾性タイプの基礎保護材(外周部)
地盤・基礎については以下記事で詳しく解説しています。
参考記事:『【完全攻略】ベタ基礎VS布基礎!本当に災害に強いのはどっち?』
参考記事:『地盤改良の工事費用を抑える!コスパの高い調査会社の選び方とは?』
シロアリ対策
今や5戸に1戸が被害に遭うともいわれるシロアリ。シロアリ被害は耐震等級や基礎の強度に関係なく地震で倒壊しやすい家になる原因とされており、BE ENOUGHでは、家の性能の「最重要6大要素」の一つとして重視しています。
新築時だからこそできる抜本的な対策で被害を食い止めましょう。
ちょうどいい塩梅の「シロアリ対策」
- シロアリ対策 ★最重要6大要素★
→ピレスロイド系の防蟻防湿シート
シロアリ対策については以下記事で詳しく解説しています。
参考記事:【完全攻略】5人に1人が被害!新築戸建の「シロアリ対策(防蟻処理)」のイロハを徹底解説!
設計強度
地震に強い家づくりは大きな課題ですが、耐震性能に力を入れすぎると間取りの制限が大きくなるというデメリットがあります。理想の家づくりのためには間取りの自由度も捨てられませんよね。
そこで推奨する”ちょうどいい塩梅”の性能は以下の通り。
ちょうどいい塩梅の「設計強度」
- 耐震等級/構造計算方法 ★最重要6大要素★
→許容応力度計算による耐震等級2以上 or 性能表示計算による耐震等級3 - 壁直下率
→50%以上 - 偏心率
→0.2以下
設計強度については以下記事で詳しく解説しています。
参考記事:『本当に必要な4つの「地震対策」|耐震等級だけでは不十分!』
災害対策
地震対策ももちろん大切ですが、実は地震よりも被害確率が高いのが「火災・水災・風災」なんです。
身近な災害こそ万全に対策しておきたいところですが、自然相手に100%の対策はほぼ不可能。
そこで推奨する”ちょうどいい塩梅”の性能は以下の通り。
ちょうどいい塩梅の「災害対策」
- 火災対策
→省令準耐火構造 - 水災対策(開口のない基礎高さ)
→地盤から45cm以上開口なし - 水災対策(給湯器配管処理)
→シーリング処理あり - 水災対策(換気システム排気口)
→ハザードエリアのみ積雪地域タイプを使用 - 風災・空き巣対策
→LDの大きな窓:シャッターor防火窓
災害対策については以下記事で詳しく解説しています。
参考記事:『災害に強い新築住宅を建てる方法|火事・水害・台風被害から家族を守るために』
【まとめ】性能は「ちょうどいい塩梅」で!
ここまで「ちょうどいい塩梅」の性能基準を解説してきましたが、施主自身が納得して選択することが何よりも重要です。
自己判断するためにも、各建材がどんな役割を持っていて、性能のグレードで何が変化するのか、といった情報は積極的に収集しましょう。
住宅会社選びには「せやま基準一覧表」
BE ENOUGHでは、住宅会社選びのための補助ツールとして、「せやま性能基準」と「せやま標準仕様」の2つからなる「せやま基準一覧表」を無料配布しています。
「せやま標準仕様」を使えば生活の質を担保するために必要な機能が分かり、契約後の追加オプションを抑えることができます。
詳しい使い方は下記リンク先の記事をご覧ください。
ダウンロードページ:『せやま基準一覧表|お役立ちツール|BE ENOUGH』
あわせて読みたい:『住宅会社の「標準仕様」を見極める方法|「せやま標準仕様」19項目を徹底解説』
解説動画(YouTube):『家づくりの超実践ツール「せやま基準一覧表」の使い方<総集編>』