「屋根・ルーフィング・バルコニー防水」のメンテナンス費用を抑える方法|ガルバリウム?瓦?スレート?選んではいけない建材とは?
投稿日 2020.09.27 / 最終更新日 2023.04.17

雨漏りを防ぐために重要な「屋根・ルーフィング・バルコニー防水」について、解説していきます。
YouTube動画でも分かりやすく解説していますので、こちらもご覧ください!
目次
絶対に選んではいけない屋根材が、いまだに使われている
雨漏りは、家の寿命を縮めるので、屋根の建材選びはとても大切です。しかしながら、10年と性能が持たない粗悪な建材がいまだ使われている現状があるので、施主の皆さんは知識をつけて、間違った選択をしないようにしてください。
屋根材でいえば、「化粧スレート」は絶対に選んではいけないのに、いまだに使われています。ルーフィングであれば、「アスファルトルーフィング940」は絶対に選んではいけないのに、いまだに使われています。
10年と性能が持たない建材など、絶対に使ってはいけません。住宅業界の意識改革をするよりも、施主の知識を高めたほうが早いので、施主の皆さんはがんばって勉強してください!
屋根・ルーフィング・バルコニー防水については、選ぶべき建材というより、“選んではいけない”建材を理解することが大切です。
<絶対に“選んではいけない建材”を勉強しよう!>
【結論】ちょうどいい塩梅の『屋根・ルーフィング・バルコニー防水』は?
ちょうどいい塩梅の「屋根・ルーフィング・バルコニー防水」は、以下の通りです。
①屋根材 ⇒ 15年塗膜保証のガルバリウム鋼板
②ルーフィング ⇒ 改質アスファルトルーフィング
③バルコニー防水 ⇒ 板金防水
※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という”ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。
①屋根材の種類
以下、屋根材の種類と、それぞれのメリット・デメリットです。
・化粧スレート
最も安い材料ですが、基本的に10年に1回程度のメンテナンスが必要で、最もメンテナンス性能が低い材料と言えます。これだけは絶対に避けましょう。
強いてメリットをあげるとすれば、費用とデザイン性です。ですが、絶対に避けましょう。これだけ理解していただければ、この記事は読み終わったも同然です。絶対に避けましょう。
<化粧スレートは、絶対に選んではいけない>
・ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板のメリットは、軽さ、価格、耐久性など、全体バランスが良いことがあげられます。軽さは全種類中No.1で、地震の揺れには最も強いと言えます。価格は、化粧スレートに次いで安く、保証年数が長いガルバリウム鋼板を選べば、20年間以上ノーメンテナンスで性能維持可能です。
デメリットは、防音性・断熱性の低さです。ガルバリウム鋼板の中でも、グレードがあるので、詳細は後半に解説します。適正なグレードの選択と対策によって、ガルバリウム鋼板のデメリットのほとんどを解消することができます。
<ガルバリウム鋼板の採用率は、年々高まっている>
(出典:JFE鋼板)
・瓦
瓦は、和風建築には欠かせない材料ですが、費用が高く、耐震性が低いため(重量がガルバリウム鋼板の10倍)、最近の採用率はぐんと下がってきています。瓦自体のメンテナンスは基本的に不要ですが、下地のチェックは定期的に行う必要があります。
<瓦の採用率は、年々低下している>
屋根材は「15年塗膜保証のガルバリウム鋼板」を推奨する理由
ちょうどいい塩梅の「屋根材」は、15年塗膜保証のガルバリウム鋼板です。以下、屋根材のメリット・デメリットをまとめました。
<屋根材のメリット・デメリット(化粧スレート・瓦・ガルバリウム鋼板)>
まず、化粧スレートですが、寿命が短いだけではなく、塗り替え工事を数回行うと、素材の性質上、それ以上のメンテナンスができなくなり、化粧スレートの上に鋼板屋根をかぶせるカバー工法でのメンテナンスもしくは葺き替えが必要になります。
瓦は、決して悪い材料というわけではありませんが、初期コストの高さと耐震性の低さが目立ちます。和風の家を建てるのであれば、候補には入ってくるかと思います。
次に、ガルバリウム鋼板ですが、通常のタイプだと10年そこそこでメンテナンス工事が必要なため、おすすめできません。なので、15年塗膜保証の高耐久ガルバリウム鋼板をおすすめします。初期コスト・耐震性・寿命・デザインともに、バランスがとれています。
<賃貸物件に使われるガルバリウム鋼板屋根>
(出典:大和財託)
<15年塗膜保証のガルバリウム鋼板を選ぼう>
(出典:ニチハ)
「ガルバリウム鋼板は、雨音がうるさく、夏暑くなるのでないか?」に対して
防音性・断熱性の低さが、ガルバリウム鋼板のデメリット。これは事実です。事実ではありますが、対策を適切に行えば、支障がないレベルに持っていけます。
ガルバリウム鋼板の防音性・断熱性の低さの対策は、「屋根断熱の厚みを壁の2倍」にすることです。夏の暑さ対策になるだけではなく、防音材としても効果を発揮します。
関連記事:「断熱性能」を比較する基準と推奨レベル|UA値の解説と適正数値
可能であれば、0.5寸などの緩勾配を避けることも効果的です。雨が垂直に近い角度であたることで音は大きくなりますからね。
また、太陽光を設置すると副産物的ではありますが、防音・断熱性能up効果があります。太陽光パネルと空気層が、防音・断熱材の役割をしてくれるわけです。
<太陽光パネルは南側に設置するので、太陽光からの熱を緩和し、ガルバリウム鋼板のデメリットを軽減する>
「ガルバリウム鋼板って、トタンみたいでダサくない?」に対して
ガルバリウム鋼板には縦葺きと横葺きがあり、縦葺きの方がコストも雨漏りのリスクも低い為おすすめですが、年配の方を中心に見た目がトタンのようだと敬遠される場合もあります。
その場合は、コストは上がりますが、横葺きのガルバリウム鋼板にすると良いでしょう。横葺きは、基本的に3寸以上の屋根勾配が推奨なので、注意してください。
<横葺きのガルバリウム鋼板>
「化粧スレートの方がよく聞きますけど?高耐久のスレートは?」に対して
多く採用されているから、良い建材というわけではありません。冒頭にも言いましたが、はっきりと言っておきます。化粧スレートを絶対に選んではいけません!
10年と性能を維持できない商品が多く、ゆくゆくは塗りなおしだけではメンテナンスができなくなり、カバー工法による大規模工事が必要になります。化粧スレートは、10年以上たつと、徐々にこんな感じになっていきます。これを放置すると、雨漏りの原因になります。
<経年劣化した化粧スレート>
また、高耐久の化粧スレートもありますが、製品保証は最長でも10年なので、10~15年でのメンテナンス工事が必要になると考えられ、非推奨となります。
近年、化粧スレートの採用率は下がりつつありますが、分譲系の建売住宅や、ローコストの注文住宅会社では、まだ使われていますので要注意です。また、一部大手ハウスメーカーでも、採用されていることが確認できています。
<化粧スレートは、絶対にダメ!>
アスファルトシングル、スレート瓦はどうですか?
アスファルトシングルやスレート瓦を時々採用する住宅会社がありますが、推奨しません。化粧スレートよりも強度が高いので、その点はプラスですが、化粧スレートと同等のメンテナンスコストがかかります。
スレート瓦は、通常の和瓦と間違えて選択してしまう人もいるので、注意しましょう。スレート瓦は、セメントでできているので、定期的な塗膜メンテナンスが必要です。
②ルーフィングの種類
屋根の下に水が入ったときに、最後の砦となるのが、ルーフィング(屋根下葺き材・防水シート)。なので、屋根だけではなく、ルーフィングの選び方も地味に重要なのです。以下、ルーフィングの種類と特徴です。
・アスファルトルーフィング940
国の最低基準をぎりぎり満たすルーフィング。10年ほどで必要機能を失います。絶対に使ってはいけません。
・改質(ゴム)アスファルトルーフィング
アスファルトに、樹脂やゴムを混入して、止水性や耐久性を高めたルーフィング。
・マスタールーフィング ※商品名
高級な改質アスファルトルーフィングと思っていただいてOK。高価なため、ほとんど使われることはない。
ルーフィングの選び方で、重要なのはひとつだけ。「アスファルトルーフィング940」を選ばないこと。以上です!
<絶対に選んではいけないアスファルトルーフィング940>
(出典:テイガク屋根修理)
ルーフィングは、「改質アスファルトルーフィング」をオススメする理由
ちょうどいい塩梅の「ルーフィング」は、改質アスファルトルーフィングです。
アスファルトルーフィング940は、これまで説明した通りで、絶対に選んではいけません。
マスタールーフィング等の高級ルーフィングは、良い製品で、コストもそれなりに上がっていくので、ちょうどいい塩梅主義で考えると、おのずと、改質アスファルトルーフィングが、ちょうどいい塩梅の「ルーフィング」となります。
メンテナンス性能の目標は、20~30年のノーメンテナンスなので、改質アスファルトルーフィングで十分でしょう。「改質」という名前が含まれているか?で見極めてください。
<改質アスファルトルーフィング>
(出典:田島ルーフィング)
屋根に関しては、屋根材「化粧スレート」とルーフィング「アスファルトルーフィング940」を選ばないことに尽きます。ここだけ知識を持っていれば、屋根のメンテナンスで失敗することはなくなります。
<アスファルトルーフィング940は、絶対に選んだらダメ!>
「ルーフィングの仕様は、住宅会社から説明されますか?」に対して
ほとんどの住宅会社が、説明しません。契約書に添付されている仕様書には記載されていると思いますが、わざわざ説明はしないでしょう。
そんなに大事なら、ちゃんとやっといてよ!と思う気持ちは理解しますが、全ては施主の自己責任。知識で自己防衛するしかありません。大丈夫だと思っても、「ルーフィングは、改質アスファルトルーフィングですよね?」と、必ず確認するようにしましょう。
<「改質」という名前が使われているか?で見極めよう!>
(出典:常裕パルプ工業)
③バルコニー防水は、「板金防水」をオススメする理由
ちょうどいい塩梅の「バルコニー防水」は、板金防水です。
これまで一般的だったFRP防水・ウレタン防水・シート防水だと、どうしても10年に1回のメンテナンスが必要でした。
そこで登場したのが、「板金防水」という工法です。基本的に、大規模なメンテナンスは不要で、準防火地域での施工が楽ということもあり、都心部を中心に採用が拡大しています。
「板金防水」であれば、排水溝の掃除を定期的に行うだけで、30年程度は必要性能を維持できるとされています。
そもそもバルコニーは、屋根に比べると雨漏りリスクが高い場所なので、必要ないなら無くしてしまいましょう。バルコニーを設置する場合でも、必要以上に大きくしないようにご注意を。
<これまで一般的だったFRP防水は、10年に1回のメンテナンスが必要>
「板金防水にデメリットはないの?」に対して
もちろんデメリットはあります。板金防水のデメリットは、FRP防水に比べて若干費用が高いことと、バルコニーの排水溝が詰まってオーバーフローした時に漏水してしまう点です。
まず、初期コストは、メンテナンス費用を考えると費用対効果の伴う投資と言えます。基本的に、大規模なメンテナンスは不要と考えてもらってOKです。
もう一つのデメリットであるオーバーフローは、排水口に落ち葉などが詰まらないようにしてもらえればOKです。注意してほしいのは、排水口のメンテナンスができない位置に、板金防水を使ったバルコニーを配置しない事です。
排水口のメンテナンスができないと、バルコニーがプール状態になり、水漏れが発生します。なので、板金防水を使ったバルコニーは、排水口を目視できる位置にのみ設置するようにしてください。
<排水口が目詰まりすると水漏れが発生するため、定期メンテナンスが必要>
(出典:栄住産業)
まとめ
ちょうどいい塩梅の「屋根・ルーフィング・バルコニー防水」は、以下の通りです。
①屋根材 ⇒ 15年塗膜保証のガルバニウム鋼板
②ルーフィング ⇒ 改質アスファルトルーフィング
③バルコニー防水 ⇒ 板金防水
※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という”ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。
【文責:瀬山彰】
PROFILE

せやま大学の人
瀬山 彰
大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。
「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。
娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。