「賃貸VS持ち家」タイプ別に徹底比較!あなたはどのタイプ?|経済性と住環境で比べると!?
投稿日 2019.12.06 / 最終更新日 2023.02.22

よく話題になる「賃貸VS持ち家」論争ですが、どっちが得か?なんて、将来の不確定要素があるので、明確な答えは出せません。
私は、賃貸派でも持ち家派でもなく、「誤った情報に振り回されないように、最低限の知識を付けて、自分で決めるしかない派」です。無責任ですが、おそらくこれが最適解です。
目次
「賃貸VS持ち家」議論に不足している観点
「賃貸の家賃は使い捨てで、持ち家は資産になる」とよく言われましたが、これは嘘です。建物の価値は年々目減りし、最終的には0に。維持費や固定資産税を踏まえると、実質マイナス資産(負債)と言えます。資産性の観点のみで、持ち家が良い!という意見は間違っています。
「賃貸の住環境(住み心地)の悪さ」も、あまり触れられないですね。賃貸住宅の大家さんは、ビジネスでやっているので、なるべく安く、見栄えだけ良い家を建てます。目に見えない住環境にこだわらないのは、当然です。住環境の観点に触れずに、賃貸が良い!という意見は、考察不足です。
<ベストセラー本「金持ち父さん貧乏父さん」にも、持ち家は“負債”と書かれています>
(出典:Amazon)
【結論】「賃貸VS持ち家」タイプ別に徹底比較!あなたはどのタイプ?
【「賃貸VS持ち家」3タイプ別の選び方】
①今の場所で暮らし続ける&持ち家が欲しい ⇒ 持ち家
②住む場所が変わるかも&持ち家が欲しい ⇒ 賃貸 or(条件付)持ち家
③持ち家にこだわらない ⇒ 賃貸
【賃貸と持ち家を経済性で比較】
■賃貸が勝っている点
・維持費
・収入が減少した時の対応力
・家族構成が変化した時の対応力
・住む場所が変わった時の対応力
・初期費用
■持ち家が勝っている点
・老後の心配が少ない
・土地の資産性
・税制の活用
■どちらともいえない点
・月々支払い額
・総支払い額
【賃貸と持ち家を住環境で比較】
賃貸で、住環境を構成する「窓・断熱・気密・換気システムの基本性能が整った家は、存在しない。
持ち家は、施主の意識次第で、住環境を構成する「窓・断熱・気密・換気システム」の基本性能を整えることができるので、良い住環境の家を建てることが可能。
①今の場所で暮らし続ける&持ち家が欲しい人は?
一瞬で、持ち家に決定。
持ち家の最大のデメリットは、住む場所が固定されてしまうこと。今の場所で暮らし続けるなら、そのデメリットがなく、持ち家が欲しいのであれば、迷う必要はありません。
<都道府県別の持ち家比率:地方の比率が高い>
(出典:大和ハウス工業)
②住む場所が変わるかも&持ち家が欲しい人は?
転勤や実家の都合で、住む場所が変わるかもしれないけど、持ち家が欲しい場合。基本的には、賃貸で様子を見るのが無難。持ち家を買った途端に、転勤になりました…なんて話はよく聞きます。
それでも持ち家が欲しいという人は、「賃貸で貸せる持ち家」を買うという方法があります。事前に家賃相場を調べ、ローン支払い額の110%~120%で貸せる家を建てるという方法。このとき重要なのが、立地(ロケーション)と大きすぎる家を建てないことです。
このスキームの注意点は、転居に伴う持ち家の賃貸を、認める銀行と認めない銀行があるという事です。「転勤等で、やむを得ず賃貸に出すのはOKですか?それとも全額返済を求められますか?」と、事前に銀行に確認しておきましょう。
関連記事:「住宅ローン」の基礎知識と失敗しない銀行の選び方(前半)|5つのパターン別に解説
関連記事:「住宅ローン」の基礎知識と失敗しない銀行の選び方(後半)|よくある質問19選
<持ち家の事情は、転勤判断に考慮されない>
(出典:東洋経済 ※一部加工)
余談ですが、望まない転勤って最悪だと思ってます。なくなればいいのにと思いますが、たぶんなくなりません。ならば、転勤を命じられた時に、会社を辞められる状態を作っておきましょう。
「転勤しろと言うなら辞めることも検討します。私が辞めてもいいんですか?」と強気に言えるくらいのスキルと選択肢を持つことが、根本的な解決方法です。
<1~2週間前に転勤打診とか、ひどすぎる…>
(出典:東洋経済)
③持ち家にこだわらない人は?
迷わず、賃貸で行きましょう。
<持ち家にする理由がないなら、迷わず賃貸!>
(出典:京急不動産)
賃貸と持ち家を「経済性」で比較
賃貸と持ち家を、「経済性」で比較していきます。こうしてみると、やはり賃貸の可変性の高さが、際立ちますね。
■賃貸が勝っている点
・維持費
賃貸は、ほぼ維持費ゼロ。家の設備が壊れたら、0円で大家が直してくれます。固定資産税もゼロ、修繕費もゼロ。ただし、駐車場・駐輪場は実費がかかるので、台数が多い場合は注意が必要です。
・収入が減少した時の対応力
収入が減れば、家賃が低い家に引っ越せばOK。持ち家のように、住宅ローンに縛られることはありません。
・家族構成が変化した時の対応力
家族が増えれば広い部屋に、家族が減れば狭い部屋に引っ越せばOK。賃貸は、可変性が高く、実に気楽でいいですね。
・住む場所が変わった時の対応力
当然、賃貸なら自由に移動可能。賃貸の最も大きなメリットは、住む場所を限定されないことだと思っています。
・初期費用
賃貸も敷金・礼金等かかりますが、持ち家の諸費用(数百万円)に比べたら、小さい金額です。
<賃貸なら、地方移住によって家賃を下げることも可能(仕事の問題はあるが…)>
(出典:ホームアドバーク)
■持ち家が勝っている点
・老後の心配が少ない
賃貸だと、年金生活等で収入が少ない場合、賃貸契約をしてもらえないリスクが出てきますが、持ち家にその心配はありません。
・土地の資産性
家は資産になる!は嘘でしたが、土地は資産として残ります。資産として残らない家を大きくしすぎず、資産として残る土地は、ロケーションの良い場所を選択しましょう。
関連記事:土地購入前に確認すべき6つの「土地造成費用」|安い土地にはワケがある
・税制の活用
特に、ローン控除が活用できるのは大きいですね。一般住宅なら、最大で400万円+増税分が還付されます。これはでかいです。他に、住まい給付金や各種補助金を活用することできますね。(長期優良住宅の場合は、最大控除額500万円)
(出典:産経新聞)
■どちらともいえない点
・月々支払い額
表面的には、賃貸より持ち家の方が、多くなる傾向にありますが、土地分の支払いは貯金と考えると、「家賃」と「建物分の支払い+維持費」を比較するのが適正です。
建物2,300万円・維持費月1.5万円とすると、およそ月々8~9万円くらいなので、この金額と家賃を比較するの適正ということです。ただし、持ち家の自己資金額等にもよってくるので、正確に比較することは不可能です。
・総支払い額
住む場所が変わらなければ、持ち家より賃貸の方が、総支払額は多くなる傾向にあります。が、月々支払いと同様に、不確定要素によってくるので、正確に比較することは不可能です。
ネット上にも様々な比較記事がありますが、前提条件がばらばらで、正しい評価はできていません。以下グラフも、「リフォーム費用・管理費・修繕積立金のアップは考慮しない」と書かれています。この手の記事を、あまり当てにしないほうが良いでしょう。
<様々な比較記事があるが、正確な比較は不可能>
(出典:プレシデント)
持ち家と賃貸を「住環境」で比較
賃貸で、「住環境」を構成する「窓・断熱・気密・換気システム」の基本性能が整っている家は、おそらく存在しません。冒頭でも触れた通り、賃貸は見栄え重視で、大家が住むわけでもないので、住環境にお金をかけることはしません。
一方、持ち家であれば施主の意識次第で、住環境を構成する「窓・断熱・気密・換気システム」の基本性能を整えることができるため、住環境こそが、持ち家の最大のメリットと言えます。健康であることが、人生を豊かに生きる基本中の基本です。
関連記事:第1章 「断熱・気密・換気性能」について|記事まとめ
ただし、すべての持ち家の住環境が良いわけではなく、基本性能を整えることができれば、の話です。最悪のケースは、賃貸マンションから、基本性能の低い新築戸建に引っ越した場合。確実に、住環境が悪化します。
戸建住宅はマンションと違い、四方を外気に囲まれ窓が多いため、基本性能が低いと住環境は劣悪になります。基本性能が低い戸建の住環境は、賃貸マンションより数段下。持ち家(特に戸建)を買うときは、絶対に住環境を整えましょう。
関連記事:「換気システム」選びに失敗すると室内の空気環境が悪化する理由|高気密高断熱住宅のデメリット
<省エネ・断熱性は、後悔ランキングの上位>
(出典:旭ファイバーグラス)
『持ち家は、住宅ローンの支払いが終われば、ただで住める?』に対して
残念ながら、ただで住めるわけではありません。
土地の固定資産税/都市計画税は、永遠にかかりますし、建物の固定資産税/都市計画税も、価値の目減りとともに年々下がっていきますが、新築時の20%で下げ止まり、その金額の支払いが永遠に続きます。修繕費もかかりますね。
<固定資産税の減額率(経年減点補正率)は、0.20で下げ止まる>
(出典:総務省)
『実際、固定資産税ってどれくらいかかるの?』に対して
瀬山家の固定資産税/都市計画税をシミュレーションしてみました。
最も多い時で13万円以上、最も少なくなっても6万円以上かかっています。平均10万円くらいでしょうか。最初の10年間(13年間)はローン控除があるので気楽ですが、それ以降の負担感はそこそこありますね。
最初の3年間は優遇で安く、4年目が最も高く、そこから少しずつ下がって、25年目以降は変わりません。税額は、3年ごとに見直されます。(土地評価額1,000万円、建物面積86㎡、再建築費用が変わらなかった場合)
<瀬山家の固定資産税/都市計画税の見込金額>
『持ち家はオワコンって言いますよね?』に対して
最近、「賃貸がトレンド!」「持ち家はオワコン!」という記事が多いですね。確かに、これまで述べてきたように、資産性を背景にした「持ち家神話」は、住宅会社が営業トークとして使ってきた、ほぼウソであると言えます。
ただし、繰り返しになりますが、この「持ち家オワコン!」には、住環境の観点が抜け落ちています。あえて言うなら、「住環境が悪い持ち家はオワコン!」です。
住環境が悪い持ち家は、持ち家にする最大のメリットである「住環境の良さ」が失われているので、もはや持ち家を選ぶメリットがありません。
まとめ
【「賃貸VS持ち家」3タイプ別の選び方】
①今の場所で暮らし続ける&持ち家が欲しい ⇒ 持ち家
②住む場所が変わるかも&持ち家が欲しい ⇒ 賃貸 or(条件付)持ち家
③持ち家にこだわらない ⇒ 賃貸
【賃貸と持ち家を経済性で比較】
■賃貸が勝っている点
・維持費
・収入が減少した時の対応力
・家族構成が変化した時の対応力
・住む場所が変わった時の対応力
・初期費用
■持ち家が勝っている点
・老後の心配が少ない
・土地の資産性
・税制の活用
■どちらともいえない点
・月々支払い額
・総支払い額
【賃貸と持ち家を住環境で比較】
賃貸で、住環境を構成する「窓・断熱・気密・換気システムの基本性能が整った家は、存在しない。
持ち家は、施主の意識次第で、住環境を構成する「窓・断熱・気密・換気システム」の基本性能を整えることができるので、良い住環境の家を建てることが可能。
【文責:瀬山彰】
PROFILE

せやま大学の人
瀬山 彰
大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。
「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。
娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。