暑さ対策・底冷え対策に!「屋根・床下」における断熱処理の”最適解”を紹介!

「断熱性能のことだけを考えるのであれば、UA値・C値が担保されていれば断熱材は何でもOK」というのがBE ENOUGHの見解ですが、「断熱処理」についてはそうはいきません。

具体的に「どこに断熱処理を施すか?」を失敗してしまうと、せっかく建てた家が「夏は暑く、冬は寒い」という劣悪な空間にもなりかねませんので、この記事で屋根と床下、それぞれの「最適な断熱方法」について、しっかり押さえておきましょう。

「住みごこち」にも大きく影響するのでしっかり学んでおこう!

まだ断熱性能や断熱等級に関する基礎が抑えられていない場合は、以下記事から読むことをお勧めします。

関連記事:『断熱等級5を推奨!UA値の基準値と断熱性能の上げるために抑えるべき点を徹底解説!

「屋根」と「床下」の断熱処理は慎重に…!

実際の断熱施工の様子

断熱処理というと、まず一番に思い浮かべるのが「壁」だと思いますが、快適な家づくりのためには「屋根」「床下」の断熱処理もめちゃくちゃ重要です。

例えば屋根は太陽光を直接受けるわけですが、ここで屋根の断熱に失敗してしまうと屋根の熱が室内にも伝わり「2階がめちゃくちゃ暑い…」ということにもなりかねません。逆に床下であれば、断熱処理を間違えると床下空間が寒くなってしまい底冷え…と、「快適な住環境」とは程遠い家になってしまいます。

このように断熱処理は「壁」だけでなく、「屋根」や「床下」も非常に重要なんです。では、それぞれ具体的にどういった断熱処理が良いのか、解説していきますね。

「屋根」の断熱処理はどうすればいい?

【結論】屋根は「屋根断熱」で壁の2倍が推奨!

屋根の断熱処理には、「天井断熱」と「屋根断熱」の2種類あるのですが、BE ENOUGHでは屋根断熱(断熱材の厚さは「壁の2倍」)の採用を推奨しています。

ちょうどいい塩梅の「屋根の断熱処理」

  • 断熱方法は「屋根断熱」
  • 断熱材の厚みは「壁の2倍」で!

「天井断熱」ではなく「屋根断熱」を採用すべき理由

実際に施工された屋根断熱の様子

(出典:滋賀・屋根Q&A

まず「天井断熱」と「屋根断熱」の違いについてですが、これはそのまま断熱処理を「屋根側で行うか、天井側で行うか?」の違いと思ってもらえばOKです。

「屋根断熱」を推奨する理由についてですが、天井断熱だとBE ENOUGHが推奨する「屋根裏エアコン」が導入できないから、です。

もちろん天井断熱も施工しやすいというメリットもありますし、ダメというわけでもないんですが、屋根裏エアコンを除いて考えたとしても、天井断熱だと屋根裏の温度が上がりやすくなってしまいます。

「確実にこっちの方が良い!」とまでは言えませんが、正しく施工して気密測定を行ってもらえるのであれば、屋根裏が熱くなりづらい+屋根裏エアコンが導入できるという観点からも「屋根断熱」に軍配が上がるかな、と思います。

屋根断熱は施工ミスが多い?

実際に気密測定(C値測定)を行う様子

<実際の気密測定の様子>

確かに、屋根断熱は天井断熱に比べて施工難易度も高いため、施工ミスが起きやすい傾向にあります。ただ、これも「気密測定」を行う前提であれば問題ありません。

気密測定では、実際に建てた家の「隙間量」を測定するのですが、屋根断熱に施工ミスがあれば、この気密測定の結果ですぐにわかりますので、断熱処理後に気密測定を実施していればその直後に手直しを行うことも可能です。

気密測定の詳細については、別記事で紹介していますので、こちらも併せて参考にしてみてください。

関連記事:『C値(気密性能)の測定基準・推奨レベルは?よくある質問にも徹底解説!

断熱材の厚みを「壁の2倍」にすべき理由

次に大切なのは「断熱材の厚み」。たとえ適切な断熱方法で施工を行っても、断熱材の厚みがしっかり取れていなければ、その分熱を通しやすくなってしまいます。

BE ENOUGHが推奨する、屋根断熱における断熱材の厚みは「壁の2倍」

はじめにも触れましたが、太陽は真上にあるわけですから、夏の暑さ対策を考えるならば、壁の断熱よりも、より太陽の光を直に受ける「屋根側の断熱」の方が大切というわけですね。

もちろん断熱材は厚ければ厚い方がいいのですが、コストや施工上の問題もありますから、ちょうどいい塩梅として「壁の2倍」、これを目指してもらえればと思います。(壁の3倍以上を目指しても良いのですが、そこまでコストをかけるなら、「屋根裏換気」や「屋根裏エアコン」を導入した方が効果的です)

屋根裏が冷えると、「輻射熱効果」によって、2階全体がひんやり過ごしやすくなります。エアコンによる冷えすぎも防げますしね。

厚みはそのままで、屋根側の断熱性能を2倍にする」というのでもOKです)

BE ENOUGHが推奨する「屋根裏エアコン」とは?

屋根断熱+屋根裏エアコンで空調を行った事例

屋根裏エアコンとは、「各部屋の室温を、屋根裏のエアコン1台で賄うシステム」です。

「屋根裏空間」を冷やすことで、「天井が冷えると涼しく感じる」という輻射熱効果、さらには天井に給気口を開けて、屋根裏から冷気を落とすことで、1台のエアコンで各部屋を快適にできます。

屋根裏エアコンの施工マニュアルは、BE ENOUGHが定める厳しい審査基準をクリアした「せやま印工務店」のみへの公開となっています。(せやま印工務店の紹介希望は以下からお申込みください)

「せやま印工務店」の紹介希望者向けページ:『せやま印工務店とは?

関連記事:『せやま式屋根裏エアコン 設計マニュアル 概要版|夏の暑さ対策

 

「床」の断熱処理はどうすればいい?

【結論】床下断熱は「基礎断熱」を推奨!

基礎断熱と床下断熱の違い(図解)

<基礎断熱と床断熱>

(出典:有限会社喜々津ホーム

床下の断熱処理には、「床断熱」と「基礎断熱」の2種類があるのですが、BE ENOUGHとして推奨しているのは「基礎断熱」です。

基礎断熱の場合、床下に暖かい空気が流れるので「底冷え※しにくい」というメリットがありますし、加えてBE ENOUGHが推奨する換気システム「澄家」の設置も可能です。(逆に基礎断熱でないと、この換気システムは設置できません)

また床断熱は、「床下のシロアリ被害に気付きやすい」というメリットがあるものの、床下に冷たい空気が流れることになってしまうため、底冷えしやすくなってしまいます。

これらも踏まえると、床下断熱については「基礎断熱を採用したうえで、適切なシロアリ対策を行う」というのが最適解です。

「底冷え」とは?

「底冷え」とは、床下に冷気がこもり床が冷やされることで、「冷えが足元から体の芯まで伝わること」を指します。

床材に冷えづらい建材を使うことで底冷えを防ごうとする施主もいますが、底冷えの原因は「床下に溜まった冷気」なので、そもそも床下に冷気が入らないよう基礎断熱を採用するのが効果的です。(底冷え対策として、安易に「床暖房」を奨める住宅会社もありますが、そもそも「床暖房がなくても寒くない家」を目指すべきです。)

関連記事:『「換気システム」の正しい知識と失敗しない選び方(前半)|メンテナンス性能の見極め方

「床下断熱」に関するよくある質問

Q. 基礎断熱って、シロアリに弱いんですよね?

シロアリによって腐食してしまった木材

弱いというか、「基礎断熱にするとシロアリ被害に気付きづらい」というのが正確ですね。

基礎断熱の場合、基礎の内側に断熱材を敷くので、「基礎」と「断熱材」の間のシロアリが見つけづらくなってしまうんです。

じゃあ、どうやって対策するべきなのか?ですが、シロアリ対策の基本は、侵入路となる「基礎下の地中を封鎖すること」です。これは床断熱でも基礎断熱でも同じです。

また薬剤による防蟻処理は効果が不安定なうえに、定期的な薬剤再施工が必要になってしまうのでBE ENOUGHとしては推奨していません。

新築住宅における正しいシロアリ対策について、以下記事で解説していますので、ぜひこちらも見てみてください。

関連記事:『シロアリ対策・予防に!新築戸建てに最適な「防蟻処理」とは?

基礎断熱は、「基礎の内側」に断熱処理を!

基礎断熱で「基礎の外側」に断熱処理を行ってしまうと、シロアリの侵入路をわざわざ用意してあげることになってしまいます。(地中からの侵入が防げなくなってしまうため)

そのためシロアリ対策のためにも、基礎断熱を行う際には「基礎の内側」に断熱処理を行うことを推奨します。

Q. 床断熱で「床下を換気しないとシロアリが…」と聞きましたが?

床下空間の換気イメージ

<床断熱の場合の床下換気対策例>

(出典:大心産業

まず前提として、床断熱でも基礎断熱でも、「床下の換気対策」を適切に行わなければ、床下の空気はよどみ、湿気やカビの温床となってしまいます。そして湿気・カビができると、木材はどんどん腐り、腐朽菌の臭いでシロアリが寄ってきて…と悲惨なことに。

そのため「床下の換気」は非常に重要なのですが、床断熱を採用した場合、床下の換気方法は「自然通気」になります。

しかしこの場合、風が吹いていなければ床下の空気はよどんでしまいます。つまり家が近接する住宅地の場合、自然通気だけだと湿気・カビのリスクは避けきれないんです。(床断熱を採用する場合には換気を促すためにも、「床下換気ファンの導入」を検討してください)

逆に基礎断熱の場合は、基礎⇔外の換気ができないため、「床下⇔室内での換気」が必要になるのですが、これは先にも取り上げた換気システム「澄家」を採用すれば床下から家全体までの換気を一気に担ってくれるのでお勧めです。

まとめ

「屋根/床下の断熱処理」を考える際、押さえておくべきことは以下の3つ。

「屋根裏/床下」における断熱処理(まとめ)

  • 断熱処理は「壁」だけでなく、「屋根」と「床下」も!
    屋根は「夏の暑さ対策」床下は「冬の底冷え対策」に…!
  • 「屋根」の断熱処理は「屋根断熱」を推奨!
    ⇒暑さ対策のためにも、断熱材は「壁の2倍(もしくは性能2倍)」で
     ※施行が難しいため、気密測定で施工品質の担保は必須!
  • 「床下」の断熱処理は「基礎断熱(基礎の内側)」を推奨!
    ⇒シロアリ被害に気付きづらくなるので、
     「シロアリ対策を適切に行った上での基礎断熱」が推奨!
  • 床下の湿気・カビを防ぐためにも「床下の換気」は重要
    ⇒床断熱なら「床下換気ファンの導入」、基礎断熱なら「澄家」の導入を!

性能で迷ったら「せやま基準一覧表」

BE ENOUGHでは、住宅会社選びのための補助ツールとして、「せやま性能基準」「せやま標準仕様」の2つからなる「せやま基準一覧表」を無料配布しています。

「せやま性能基準」を使えば、上記で紹介したように各建材について、「完全に不足→少し不足→ちょうどいい塩梅→余裕があれば」と家づくりで抑えておくべき性能レベルを検討できます。

詳しい使い方に関しては、下記リンク先の記事をご覧ください。

ダウンロードページ:『せやま基準一覧表|お役立ちツール|BE ENOUGH

合わせて読みたい記事:『営業マンより「家の性能」に100倍詳しくなる方法|せやま性能基準
解説動画(YouTube):『家づくりの超実践ツール「せやま基準一覧表」の使い方<総集編>

PROFILE

暑さ対策・底冷え対策に!「屋根・床下」における断熱処理の”最適解”を紹介! | 家の性能

せやま大学の人

瀬山 彰

大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。

「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。

娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。

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