2024.11.14
断熱性能についてある程度勉強してきた方であれば、「そもそも”断熱材”って何を選んだらいいんだろう…?」と疑問に思う方もいると思います。
そこで今回は、よく使われる断熱材の種類やそれぞれのメリット・デメリット、断熱材の選び方について解説していきます。
断熱材のメリット・デメリットを把握しておこう!
まだ断熱性能や断熱等級に関する基礎が抑えられていない場合は、以下記事から読むことをお勧めします。
関連記事:『断熱等級5を推奨!UA値の基準値と断熱性能の上げるために抑えるべき点を徹底解説!』
目次
【結論】「断熱材」はUA値・C値を担保できればなんでもOK!
断熱性能(UA値)と気密性能(C値)が担保されていれば、「断熱材は何でも良い」が結論です。
このように「断熱材の種類」はさほど重要ではありませんが、その分数値だけは担保しておく必要があるので、良い断熱材であれば薄くてOK、断熱性能が低いものであればその分ぶ厚くしないとだめ、というのは抑えておくべきですね。
またBE ENOUGHで推奨している断熱性能(UA値)と気密性能(C値)の推奨値は以下の通りです。
- UA値:断熱等級5クリア
※4地域のみ、断熱等級5より厳しい「UA値0.5以下」を推奨 - C値:1.0以下
関連記事:『C値(気密性能)の測定基準・推奨レベルとは?よくある質問にも回答!』
断熱性能をメインに考えた場合、上記のように「断熱材の種類は問わない」が結論ですが、当然断熱材によって、コストや防音性、防蟻性、施工性などの様々な違いがありますので、断熱材を検討する際には、これらの「断熱性能以外の要素」を基準に選んでいくのがベストでしょう。
断熱材は大きく分けて「3種類」
断熱材①:繊維系(グラスウール/ロックウール)
(出典:旭ファイバーグラス株式会社)
断熱材としてよく使われるのが「グラスウール」や「ロックウール」などの繊維系ですね。
これは何よりコストが低いという点がメリットです。一方デメリットとしては、「きちんと施工しないと気密性能が担保できない」という点。
グラスウールでいうと、袋に入ったグラスウールを敷き詰める施工方法が主流なんですが、この場合綺麗に隙間を埋めて…というのが非常に難しいんです。当然隙間ができてしまうと、その分気密性能は落ちてしまいます。
北海道みたいな寒い地域では、袋に入れていない状態の「裸グラスウール」を敷き込む、または吹き込むタイプの施工方法が一般的なんですが、これであれば優れた施工ができる職人も多いです。(ただ本州は少ないと思います)
そのためグラスウールのような繊維系断熱材を使うのであれば、「裸グラスウール+良い職人」っていうのが条件になりますね。
気密性能(C値)は、「現地測定」の数値
<実際の気密測定の様子>
断熱性能(UA値)は、建物の仕様を元に算出される数値ですが、気密性能(C値)というのは「実際に現場で計測される数値」です。
当然、家にすき間が少ないほど優秀な数値になるわけですが、これは断熱処理を含む「現場の施工品質」によって大きく変わってしまいます。
そのため断熱材に関わらず、「しっかりと施工してもらう」というのは必須条件になります。(住宅会社側に断熱処理が完了後に気密測定を行ってもらうようお願いしておけば、万が一数字が悪くても手直しが可能なのでおすすめです)
断熱材②:発泡ウレタン吹付
発泡ウレタンは、壁に直接吹き付けて膨らむタイプの断熱材です。
メリットととしては、「断熱性能も良く、気密性能も同時に担保できる」という点ですね。
ただこの発泡ウレタンであっても、下手くそな職人が施行すると、断熱が薄い箇所ができてしまったり、うまく膨らまずに隙間ができてしまったり、とグラスウール同様「施工職人によって性能の良し悪しが大きく変わってしまう」というのがデメリットですね。
「スキンカット」は問題ないの?
発泡ウレタンは吹き付け後に膨らんでくるのですが、これが柱よりも膨らんだ場合ははみ出た部分をカットして厚みを整えます。
これを「スキンカット」というのですが、このスキンカットについては「やらない方がいいんじゃないの…?」っていう質問をよくもらいます。
具体的には、以下のような感じですね。
- 結露を防ぐためにも、硬くなった表面部分は残しておくべきでは?
- カットしてしまうと、湿気が入り込んでカビちゃうんじゃないの?
結論としては、「しっかりと吹き付けた上で、スキンカットする方が良い」というのがBE ENOUGHの見解です。
「スキンカットをしない」という前提の場合、ウレタンが柱から飛び出ないように吹き付けないといけなくなるので、その分吹き付けが薄くなってしまいますし、部分的に分厚さもまばらになってしまいます。そのため断熱性能の担保という観点からは、スキンカットを前提としたウレタン吹付がベストです。
またスキンカットをすると、「湿気が内部に入ってしまうのでは…?」という意見もありますが、実はスキン(硬くなった表面部分)の「湿度をブロックする機能」というのはそれほど高くありません。なのでスキンカットを行った結果、湿度が入り込んでしまって致命的な問題につながる…というのは考えづらいです。
これらも踏まえると、断熱性能の担保のためにも、スキンカットよりも「厚みの確保」を優先した方がよいでしょう。
”発泡ウレタン吹付”のよくあるQ&A
断熱材③:セルロースファイバー
(出典:日本製紙木材株式会社)
最後に紹介するのが「セルロースファイバー」。
これは、断熱材としての性能も優れているのですが、加えて遮音性が高く、外からの音もブロックしてくれます。さらに「ホウ酸」が入っているため、シロアリやゴキブリなどの虫を寄せ付けにくいというメリットもあります。
このようにセルロースファイバーは断熱性能+αの要素において優れているのですが、その分「コストが高い」というのがデメリット。
また他の断熱材同様、気密性能の担保のためには「職人さんの腕」もネックになってくるので、その点も抑えておいた方がよいでしょう。
「断熱材」のメリット/デメリット(まとめ)
- 繊維系(グラスウール/ロックウール)
メリット:コストが低い
デメリット:すき間を埋めるのが難しい=気密性能が担保しづらい
⇒繊維系を採用するなら『裸グラスウール+良い職人』で! - 発泡ウレタン吹付
メリット:「気密性能+断熱性」の両方を担保しやすい
デメリット:職人の腕次第で、性能の良し悪しが変わる
⇒「コスト」と「性能」のバランス◎ - セルロースファイバー
メリット:断熱性能だけでなく、遮音効果・防虫効果に優れる
デメリット:コストが高い+職人の腕次第
⇒遮音効果・防虫効果を取るなら採用も選択肢
まとめ
「断熱材」を選ぶ際に押さえておくべきことは以下の5点。
「断熱材」を選ぶ際のポイント!
- 断熱だけを考えるなら、「断熱材」は何を使ってもOK!
⇒ただし、「断熱等級5+C値1.0以下のクリア」はマスト! - 断熱材を選ぶ際には、「断熱性能以外の要素」で選ぶ
⇒コストor遮音性or防虫性など - よく使われる断熱材は「3種類」
⇒繊維系(グラスウール/ロックウール)・発泡ウレタン吹付・セルロースファイバー - どの断熱材であっても「職人の腕」が重要
⇒断熱処理後に気密測定+必要なら手直しが理想 - 発泡ウレタンの場合、スキンカット前提で断熱材の分厚さを優先した方がいい
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合わせて読みたい記事:『営業マンより「家の性能」に100倍詳しくなる方法|せやま性能基準』
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