2024.11.14
エアコン計画を考え始めるのは、家づくりの中でも終盤。そのためつい適当になってしまいがちですが、エアコンは家の性能・快適さにも直結する”超重要要素”です。
本記事では、エアコン計画で後悔しないためにも抑えておくべき重要ポイントを網羅的に紹介していますので、ぜひエアコン計画を考える際の参考として役立ててください。
家づくり終盤でも油断は禁物!
目次
新築の「エアコン計画」を考える前に…
日本の家は”寒すぎる!”
快適な暮らしのためには、暑すぎず寒すぎない「快適な室温」がマストですが、実は日本の家って寒すぎるんです。
上記は世界各国の真冬の時の「室内温度」に関するデータなのですが、アメリカは「20度」、フランス・ドイツは「17度」と各地域それぞれ「18度から20度前半」ぐらいに収まっていますが、日本は「10度」とその中でも群を抜いて室内温度が低い傾向にあります。
リビングは温かいけれども、廊下は寒いとか、寝る時にも寝室は寒いけど、布団かぶってるから大丈夫、そんな家がめちゃくちゃ多いんですね。
室温18度以下は健康リスクが高くなる!
(出典:国土交通省)
実は先述のように「室温:10度」というのはめちゃくちゃ危なくて、2018年にWHO(世界保健機関)が「室温が18度を下回ると健康を害する」として警告を行ってます。
そのため室内温度を考える際は、「18度以上を保つ」というのを一つの基準にして考えるとよいでしょう。
ヒートショック予防のためにも、「室内温度を一定に」!
ヒートショックで亡くなる人は「年間2万人弱」
ヒートショックとは、身体が冷えることで血管が収縮+血圧が上がり、逆に体温が上がると血管が拡大+血圧が下がる…、こういった寒暖差による急激な血圧変動が心臓・血管への負担となり、心筋梗塞・脳卒中を引き起こす、といったものです。
そしてこのヒートショックで亡くなる方は「年間2万人弱」と非常に多く、これは交通事故で亡くなる方の「約6〜7倍」だそうです。
室内が寒いと、20~40代でも突然死のリスクが…
(出典:公益財団法人 日本心臓財団)
またヒートショックというと、「おじいちゃんおばあちゃんが風呂上がりに…」というイメージだと思いますが、働き盛りの世代(20~40代)であって同様のリスクはあります。
実際に働き盛りの世代における突然死は少なくなく、そのうち34%が「就寝中の突然死」。そしてこの原因の一つになりうるのが「寒い部屋で寝ている」ということです。
(出典:BBC)
上記は室温を「21度」から「10度」まで下げたときの身体の変化を示したデータですが、室温が低下すると「呼吸数:30%増加、心拍数:20%増加、血圧:10%上昇」したそうです。
いろんな実験があるので、「絶対こうなる!」というわけでもありませんが、このデータからも「寒い部屋で過ごす=体に負担がかかる」というのは間違いないでしょう。
部屋を暖めればいいってこと?
ヒートショックは「室温の差」が原因なわけですから、このリスクを減らすには単純に部屋を暖めればいいというわけではなく、「家中の温度をなるべく一定にする必要」があります。
例えば「リビングは石油ストーブで暖かいけど廊下はめちゃくちゃ寒い」とか「脱衣所はめちゃめちゃ寒いけどお風呂に入れば温かいから~」とかは、ヒートショックが起こりうる条件を満たしてしまっているので絶対NGですね。
室温を一定にするためにも、「家の性能+エアコン計画」で考えよう!
これまでは「家の性能担保」に重きを置いてお話ししてきましたが、快適な住環境のためには家自体の性能だけでなく、適切なエアコン計画も不可欠です。
断熱性能・気密性能を抑えたうえで、エアコンで過不足なく室内を温め、換気システムで家中の空気を適切に換気・循環させることで、ようやく室温を均一にする仕組みが完成するわけです。
なのでヒートショックのリスクを減らしたいのであれば、「家の性能だけ担保してれば十分でしょ」、「エアコンや暖房器具で温めればいいでしょ」とどちらかに傾倒するのではなく、家の性能を担保したうえで適切なエアコン計画を考えるようにしましょう。
家の性能は「ちょうどいい塩梅」を目指そう!
ただ家の性能の話になると、住宅会社の多くは「オーバースペック」を推奨しがち。
これはコストを抑えて提案するよりも、「お金をかけて良い性能を目指しましょう!」というスタンスの方が契約を取りやすいからですね。そのため施主側では、「まだ上もあるけど、1番費用対効果がいい”ちょうどいい塩梅”であえて止める」という選択をとれるようしっかり勉強しておきましょう。
抑えるべき「家の性能」についてはコチラ:『最重要記事一覧|BE ENOUGH』
STEP1:エアコン計画を考えてみよう!
壁掛けエアコンor全館空調、どっちを導入すべき?
「家中の室温を一定に…」という点だけを見ると、全館空調システムに軍配が上がりそうですが、結論断熱・気密・換気など家の性能面をしっかり担保できているのであれば「壁掛けエアコンで十分」。(むしろBE ENOUGHでは、全館空調システムは非推奨です)
全館空調システムのデメリットや非推奨の理由については、以下の記事でまとめていますのでこちらも併せて参考にしてみてください。
関連記事:『致命的なデメリット!「全館空調システム」を絶対におすすめしない”3つの理由”とは?』
間取りも踏まえて「エアコンの取り付け位置」を考えよう
冬の寒さ対策、夏の暑さ対策を踏まえると、エアコンは以下のように設置してもらえればOKです。
- 1階:LDKの長手方向に1台設置(14畳用 200V)
- 2階:屋根裏エアコンの設置or各部屋に1台ずつ設置(屋根裏エアコンの解説はコチラ)
関連記事:『【新築戸建向け】冷暖房効率を上げる最適な「エアコンの取りつけ位置」は?』
”床暖房”を採用するのはアリ?
冬のことも考えて「床暖房」を検討される方もいると思いますが、床暖房は導入コストが高いうえ、壊れても修理ができないためおすすめしません。
そもそも性能面がしっかり担保されていれば床暖房がなくても十分快適に過ごせるのですが、足元を温かくしたいのであれば、性能面の担保に加え、「基礎断熱+無垢床(浮造り)」にするだけでかなり暖かくなりますよ。
STEP2:エアコンの購入を進めよう!
購入するエアコンの「畳数」を考えよう
エアコンの畳数表示は、「断熱性能」という概念が存在しない時代の古い基準のため、この畳数表示通りに購入してしまうと、めちゃめちゃオーバースペックになってしまいます。
結論、手っ取り早く購入モデルを決めたい!という場合には、「14畳用(200V)のエアコン」を購入してもらえればOKですが、住んでいる地域の最低気温や断熱・気密性能によって、「畳数表示の何倍まで対応できるのか?」が変わってくるので、より詳しく最適なエアコンサイズを見極めたい場合には、以下の早見表を活用してみてください。
最適な畳数がわかる!エアコン容量早見表はこちら
ダウンロード(無料):『エアコン容量早見表のダウンロードページ』
会員登録なしですぐに使えます
早見表の使い方はこちら:『何畳用のエアコンを買うべき?畳数から最適なエアコン容量を計算する方法!』
エアコンの購入先、購入モデルを考えよう
エアコンを購入する際、設置工事もセットで行うケースがほとんどですが、設置工事がずさんだとせっかくの気密性能が台無しになってしまうため、BE ENOUGHでは、原則工務店経由の購入・設置依頼を推奨しています。
購入モデルを検討する際のおすすめ機能などについては、以下を参考にしてもらえればと思います。
- 購入店舗は?
- 「工務店経由」を推奨(設置工事の質も担保されるため)
- エアコンの”おすすめ機能”は?
- ロング気流機能(LDK用エアコンならマスト)
- フィルター自動お掃除機能
関連記事:『量販店orネット通販?エアコンは”どこで”、”どういう機種”を買うべき?』
STEP3:エアコンの設置・運転をはじめよう!
設置工事前に注意点を抑えておこう
エアコンの設置工事は、家の性能だけでなく、外観などにも影響する重要事項です。
そのためエアコン設置前には、施主側でも最低限以下の内容を抑えておきましょう。
エアコン設置前に抑えておくべき事
- 貫通部には「気密施工」がマスト!
- 「化粧カバー」と「壁」の色を合わせる
- 「ドレン管」経由での虫の侵入対策
関連記事:『”穴開け”が肝!新築のエアコン設置工事で抑えておくべき「注意点」とは?』
エアコンの電気代を抑える方法を知っておこう
「寒いor暑いけど我慢」というような節約はおすすめしませんが、エアコンは「使い方次第」で運転効率も変わってくるため、そこまで頑張らなくても意外と節約できたりします。
無駄な出費を抑えるためにも、実際に使い始める前にエアコンの電気代を抑える方法について知っておきましょう。
エアコンの電気代を抑えるためのテクニックは?
- 快適さ×節約効果を踏まえると、「つけっぱなし」が推奨(条件アリ)
- 電気代を抑えるための推奨対策は?
- 室外機は日陰+近くに物を置かない
- フィルター掃除をこまめに行う
関連記事:『つけっぱなしが正解?エアコンの電気代を安くする”4つのポイント”は?』
性能で迷ったら「せやま基準一覧表」
BE ENOUGHでは、住宅会社選びのための補助ツールとして、「せやま性能基準」と「せやま標準仕様」の2つからなる「せやま基準一覧表」を無料配布しています。
「せやま性能基準」を使えば、上記で紹介したように各建材について、「完全に不足→少し不足→ちょうどいい塩梅→余裕が余れば」と家づくりで抑えておくべき性能レベルを検討できます。
詳しい使い方に関しては、下記リンク先の記事をご覧ください。
ダウンロードページ:『せやま基準一覧表|お役立ちツール|BE ENOUGH』
合わせて読みたい記事:『営業マンより「家の性能」に100倍詳しくなる方法|せやま性能基準』
解説動画(YouTube):『家づくりの超実践ツール「せやま基準一覧表」の使い方<総集編>』