全館空調システムをおすすめしない理由|致命的なデメリット

全館空調システムをおすすめしない理由|致命的なデメリット | 家の性能

「全館空調」という言葉に良いイメージを持つ人は多いですが、「全館空調」と「全館空調システム」の違いを理解しているでしょうか。実は全館空調は良いものですが、全館空調システムはおすすめできないんです。どんな全館空調は良くて、どんな全館空調が不健康の原因になるのか、気をつけておきたい点を紹介していきます。

「全館空調」について、正しく理解しましょう!

本記事の内容は、YouTube動画でも分かりやすく解説していますので、こちらもご覧ください!

参考動画:全館空調システムをおすすめしない理由|致命的なデメリット

良い意味での「全館空調」とは?

まず、全館空調というものについて解説していきます。全館空調とは、その名の通り家全体を空調していきます。

たとえば昔の家は家の性能が低かったので、長い廊下があり各部屋が仕切られていました。そして部屋ごとに空調を管理することで光熱費を削減するという考え方でした。「家全体を暖めたり冷やしたりするなんてもったいない!」という考え方ですね。

それに対して、今は「部屋ごとに温度差があるのは身体に良くない」という考え方です。特に洗面所と風呂場などの激しい寒暖差はヒートショックの原因にもなるので危険ですよね。だから今は「全ての部屋である程度温度を一定にする」という考え方になっています。

そういう意味での全館空調というものは、とても良い考え方です。

 

悪い意味での「全館空調」とは?


一方で、「全館空調システム」というのは、良くないものなんです。全館空調システムは、ある意味では「闇」なんです。全館空調システムとは何かというと、家のどこか(ほとんど内部)に大容量のエアコンを設置し、そこで集中的に外の空気を取り込み冷やしたり暖めたり、ダクト経由で各部屋に供給するシステムです。それで「全ての部屋を全館空調していきます」というシステムですね。

ただ、これは正直やめた方がいいシステムです。大手ハウスメーカーを中心に採用してるシステムですが、それでも全館空調システムはほんとやめた方がいいと思います。

 

「全館空調システム」を推奨しない理由は?

では、なぜ全館空調システムをやめた方が良いのでしょうか。その理由は2つあります。

  1. 修理費用が高く、修理の時間もかかるから
  2. ダクト給気だから

こちら、それぞれを詳しく見ていきましょう。

 

理由①修理費用が高く、時間がかかる

1つ目の理由は、業務用エアコンっていうのは、修理費用がめちゃくちゃ高いんです。10万~20万円というレベルではなく、50万~60万円…下手したら80万~100万円くらいの可能性もあるくらいです。

もちろん新しく家につけるだけでも高いんですが、そこから10年~15年経ってエアコンが壊れた時が大変です。「そんなお金かけて修理しますか?」という話ですが、実は修理しない人も多いんです。しかも特殊なエアコンなので、すぐに修理に駆け付けてくれるわけでもありません。つまり「3日後になります」や「1週間後になります」となるわけですね。

そうすると「真夏のクソ暑い時にエアコン壊れて1週間エアコンなしで過ごす」なんてできませんよね。それでどうするかというと「全館空調システムは無理!」となり、壁掛けエアコンにするわけです。

これで快適に過ごせるなら良いんですが、全館空調システムは換気システムも兼ねてるんです。だからつまり全館空調システムが止まると、換気もほぼ止まっちゃうんです。高気密住宅で換気システムが止まってしまうと、二酸化炭素濃度が上がり、部屋の空気がよどみ、ハウスダストが外に排出されず、アレルギー疾患が悪化するという、めちゃくちゃ不健康ハウスになります。

たまに「全館空調システムでは業務用エアコンが壊れても換気システムとして成り立ちます」という人もいますが、たぶん成り立ちません。エアコンってすごく空気抵抗があるので、稼働しなければ換気もできません。エアコン自体が送風する力を使って換気も一緒に行っているので、その送風機能が止まれば、ちゃんと換気はできません。だから「エアコンが壊れても換気できます」という言葉は信じない方が良いでしょう。

高気密住宅のデメリットに関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。
住宅業界がひた隠しにする高気密住宅の致命的なデメリット

 

理由②ダクト給気

また、全館空調システムを推奨しない理由の2つ目は、ダクト給気だからです。ダクトを通して各部屋に空気を送るシステムなので、ダクトの中が汚れてしまった時には汚れたダクトの中を経由して室内に空気を供給します。つまり、ダクトの中の汚れ(ほこりやカビ)が、そのまま各部屋に送られてしまうんです。

だからこそ、ダクトで各部屋に空気を持っていくダクト給気型の換気システムは推奨しません。全館空調システムは大体そうなっているので、やめた方が良いでしょう。

もちろん、ダクトの中が掃除できたり、交換できたりといったメンテナンスができる状態になっていれば、問題ないでしょう。ただし、日本の全館空調システムでダクトのメンテナンスができるようになっているシステムは、たぶんないです。大きな会社ではたぶん作っていないので、ほとんどが「汚れてしまったらおしまい」のダクト給気でしょう。

 

換気システムはどうするのがおすすめ?

こういった致命的なデメリットがあるので、全館空調システムの採用は辞めた方が良いでしょう。それでは、換気システムはどうすれば良いのでしょうか。

それは壁掛けエアコンを設置して、全館空調の考え方を実現することです。空調と換気は分けることが大前提。空調が壊れたら換気が止まってしまうと困るので、空調と換気は分けましょう。壁掛けエアコンで、ダクト給気じゃなくダクト排気にするんです。1種換気か3種換気を使って、全館空調すればいいんです。

冬なんかは、1階のエアコンをつけておけば、暖気は上に上がるので階段を通じて2階も暖かくなります。こうやっていい感じで全館空調ができるので、ダクト給気を使う必要はありません。換気システムはダクト排気の1種か、ダクト排気の3種に使ってもらったらいいでしょう。

一方、夏はちょっと難しいですよね。夏は1台のエアコンで全館空調をするのは無理です。1階で冷やした空気は上に上がらないので、2階は別でエアコンをつけなければなりません。各部屋にエアコンをつけるのか、屋根裏エアコンをつけるのか、そういう仕組みになるので、どうしてもエアコンは2台必要になります。

とはいえ、壁掛けエアコンで全館空調していくのが良いので、全館空調システムのように業務用エアコンを使ってダクト給気で空気を持っていく…みたいなのはやめましょう。

 

まとめ

全館空調システムを推奨しない理由は?

  • 理由①修理費用が高い
    故障したら壁掛けエアコンに切り替えるから
    換気システムが止まってしまうリスクもあるから
  • 理由②ダクト給気
    ダクトの中が汚れると、汚れた空気が永遠に各部屋に供給され続けるから
  • 部屋中の温度を一定にするのは健康にも良い
  • 壁掛けエアコンで全館空調の考え方を実現しましょう

 

PROFILE

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せやま大学の人

瀬山 彰

大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。

「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。

娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。

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