【方角別】日射取得/遮蔽を踏まえた「窓の設置場所」と「窓の種類」を解説!

設置する窓の性能を抑えたら、次は「どこに窓を設置するか?」「どういうタイプの窓を設置するか?」を考えていきましょう。

窓は「窓の性能>設置箇所」の順で考えよう!

「まだ窓の性能を見直してない!」という場合は、まず先に以下記事で窓選びの全体像を把握しておきましょう!

関連記事:『【完全攻略】新築の「窓選び」最適解は?窓の種類・性能・設置すべき方角/配置など徹底解説!

「日射取得/日射遮蔽」とは?

優先すべきは、「夏の日射遮蔽」!

日射取得は「太陽の光を取り入れること(冬の寒さ対策)」、対する日射遮蔽は「太陽の光を入れないこと(夏の暑さ対策)」を指します。

この2つは相反する部分があるため、どちらかを重視する形になるのですが、優先するのであれば夏対策を優先すべき」というのが結論ですね

もちろん冬に日射取得することで、室内が暖かくなり光熱費も下がるというメリットもあるのですが、冬の日射取得効果には限界があります。特に都市部や土地があまり広くないと、リビングにさんさんと光が入ってくる・・・というのも難しいですし、曇りや雨の日もありますよね。

それに、いくら日射取得をしたとしても、「暖房を一日中つけずに過ごす!」なんてのは、ちょっと難しいんです。

そのため日射取得・日射遮蔽については、「夏の日射遮蔽を優先しつつ、冬の日射取得も狙っていく」というのが理想的な着地点だと思います。

窓ガラスも「日射遮蔽型」を推奨

窓ガラスの断面図

(出典:AGC

これはちょっとマニアックな話ですが、実はLow-Eペアガラス(窓ガラス)にも「日射遮蔽型」「日射取得型」の2種類存在します。

日射遮蔽型は、Low-Eのフィルムが外側についているので日射を遮蔽してくれて夏に強い窓です。一方で、日射取得側の窓はLow-Eのフィルムが内側についているので冬に強い窓ですね。

Low-Eとは?・・・断熱性能を高める特殊な金属皮膜のこと。

よく「南側には日射取得型、東西には日射遮蔽型をつけましょう」と言われますが、私としては先述した内容にもつながりますが、全部日射遮蔽型の窓にするのがおすすめです。夏の日射対策を怠るとマジで暑いですからね。結構致命的になるので、夏を優先するようにしましょう。

また南側の窓については、夏場は太陽が真上まで登るので、確かに直射日光も少ないんですが、実は夏の日射の半分は乱反射した光や、地面からの照り返しによるものなんです。なので直射日光が入らないから~と言って、南側の窓で日射取得してしまうと、夏場暑くなってしまうので方角問わず、日射遮蔽型がおすすめ、というわけです。

①窓を「どこ」に設置するか?を考えよう

【方角別】日射を踏まえた「窓の設置箇所」について

南側:「窓」を多めに設置すべき

夏と冬の太陽高度差(出典:ENERGY-PASS.JP

基本的に、南側については目いっぱい窓をとってOKです。

これは「冬の日射取得」を狙うというのもありますが、真南であれば太陽はほぼ真上に上るため、先ほどの「夏の日射遮蔽」を気にしすぎる必要もありません。

ただし南西・南東にちょっと寄ってしまう場合には、真上からではなくちょっと斜めから日射が入ってきてしまうので注意が必要です。

ちょうどいい塩梅の「軒(のき)・庇(ひさし)」

南側は、ある程度の「軒(のき)・庇(ひさし)」を出しておきましょう。長さの目安としては、「50~60cm」が理想

東・西・北側に関しては、雨よけとしてつけるのであれば良いですが、日射に関しては意味がないので特に考えてなくてもOKです。

東側・西側:「窓」は設置しない方がいい

これは、「朝日・夕日が暑いから」です。

特に2階だと、がんがんに日光が入ってきてしまうので、「とにかく窓をつけない」のが基本になります。

ただし東道路・西道路の場合は、大きな窓を付けないと家の中が暗くなってしまいますから、そういった場合であれ東側・西側でも大きな窓を設置してOKです。

ですがこの場合、太陽が低い位置から日射が入るので、庇や軒を出しても日射遮蔽になりません。

日射遮蔽を目的としたアウターシェードの例

(出典:YKK AP

なので、東側・西側に窓を付ける場合には「アウターシェード」を設置しましょう。外側につけるロールスクリーンみたいなやつですね。

ちょっと値段が高くて10万円くらいになってしまいますが、西・東に大開口の窓をつける場合は、日射遮蔽対策としてアウターシェードは必須です。費用対効果抜群ですよ。(1階であれば、住み始めてから「葦簀」や「簾」を設置する…という対策でもいいと思います)

北側:明るくしたいなら「窓」を付けるべき

北側上部につける採光用の窓

北側は、「直射日光がほぼ期待できません」。ですが北側の窓って、実はめちゃくちゃ良いんです。

太陽の光には、「直射日光」と「天空光」の2種類存在するのですが、この天空光とは、空気や雲の中で光が乱反射して、柔らかい光になったものです。曇りや雨の日の時、太陽が見えなくても明るいですよね。これが天空光です。

そしてこの天空光は、東西南北関係なく降り注いでいるため、北側に大きな窓を付ければ天空光で十分明るい空間を作ることができるんです。

しかも直射日光の場合は、陽が当たっている場所を明るくすることができる反面、陽が当たらない場所を暗く感じさせてしまうという特性があります。

トンネルに入った瞬間を想像してもらえるとわかりやすいんですが、人間は「明るさ」と「暗さ」に差があると、暗い方をめちゃくちゃ暗く感じるという特性があるんです。なので直射日光が入ることで、同時に「入らない部分を暗く感じてしまう」こともあるんです。

一方で天空光は、光の明暗差が少なく、身体に優しいんです。なので、北側リビングとか北側窓による採光は個人的におすすめです。(美術館でも、直射日光が入ると作品が見えないから、敢えて北側に窓を付けているところもあるくらいです。)

ただし、北東・北西側には要注意!

ただし、「北東」と「北西」には注意が必要です。

朝日は「北東」から上り、夕日は「北西」に沈みます。つまり、真東・真西よりも北側に太陽が来るので、北東や北西に大きな窓があると、思いっきり朝日や夕日の影響を受けてしまいます。

北側に窓をとるなら、「真北」にとるのが原則です。

Q. トイレ/風呂/玄関に窓は必要?

窓の設置を考える際、「トイレやお風呂や玄関にも、窓をつけた方がいい?」と迷う人もいると思いますが、これは原則「窓を付けない方が良い」です。それぞれ理由は以下の通りです。

トイレの窓について

特に「東側」や「西側」に窓を付けてしまうと、夏にめちゃくちゃ暑くなってしまいます。(2階のトイレは要注意)

またトイレのように狭い空間は、すぐに暑くなってしまうので、断熱性能を落とさないためにも窓をつけないようにしましょう。

お風呂の窓について

結露しがちな風呂場の窓

お風呂は、湿度がめちゃめちゃ高くなるため、窓を付けてしまうと絶対に結露します。

窓サッシの記事でもお話ししたように、窓が結露してしまうと内部結露(壁内結露)の原因にもなりますので、お風呂についても窓をつけるのは避けた方が良いでしょう。

窓選びで重視すべきは「結露対策」!

窓が結露してしまうと、当然「窓サッシ(枠部分)」や「窓ガラス」が濡れますよね。

窓サッシが濡れてしまうと、サッシと接触している「壁の内側」も同様に濡れてしまいます。さらに壁の中は通気性も悪いため、周辺の木材を腐食させ、木材が腐るとシロアリをおびき寄せてしまいます。

このように「窓の結露」は、家の寿命を縮めることにもつながってしまうので、窓選びの際は「結露させないために」から考えるべきです。

玄関の窓について

窓がついているタイプの玄関ドア

玄関に関しては、トイレと同じように狭いため、窓を付けると夏場はすぐ暑くなってしまうのに加え、冬は土間によって冷えやすいため寒くなってしまいます。

「明るさをとりたいから…」と玄関に大きめの窓を付けちゃう人もいますが、どうしてもつけたいのであれば、「D2K2」という寒冷地仕様の玄関ドア(ガラス入り)がいいと思います。この寒冷地仕様の玄関ドアあれば、ガラス部分もLow-Eガラスになっていますから、断熱性能的にも問題ないでしょう。

関連記事:『温暖地も”寒冷地仕様”を推奨!断熱性能・利便性から考える「玄関ドア」の選び方は?

②どの種類(タイプ)の窓にするか考えよう

窓の種類/タイプは、大きく分けて「6種類」

窓の種類(全6種)

窓には、上記の通り「FIX窓」・「縦滑出し窓」・「横滑出し窓」・「引き違い窓」・「掃き出し窓」・「上げ下げ窓」と、大きく分けると6種類存在します。

それぞれの特性について紹介していきますので、設置箇所と設置目的も踏まえ、「どういう窓にしたらいいのか?」を考えていきましょう。

種類(タイプ)別の特長

FIX窓

気密性に優れたFIX窓(はめ殺し)

FIX窓は、開閉できない採光に特化した窓になります。「FIX(フィックス)」や「はめ殺し窓」、サイズによっては「ピクチャーウィンドウ」と呼ばれることもあります。

このFIX窓については、「開け閉めができない」というのもあり、窓の中では断熱性能も一番優秀です。

そのため、「開け閉めする予定はないが、明かりだけとりたい!」という場所には、このFIX窓を使うと良いでしょう。(比較的コストも安めです)

優先すべきは「窓の性能」

FIX窓の断熱性能・気密性能が高いといっても、あくまで他の窓と比べて…というだけ。

「FIX窓で断熱性能を担保する」というよりも、「そもそも断熱性能の高い窓の仕様を選ぶ」という方が圧倒的に優先度が高いため、窓の性能についてまだ抑えれていない場合は、先に窓のサッシ、スペーサー、ガラス(中空層)の質をしっかり担保しておきましょう。

関連記事:『アルミor樹脂?断熱性能から考える「窓サッシ」の種類と選び方を紹介!』
関連記事:『窓ガラスよりも重要!?見落としがちな「スペーサー」の種類と選び方を紹介!』
関連記事:『断熱性能から考える「窓ガラス・中空層」の種類と選び方を紹介!』

※優先度は、「窓サッシ」>「スペーサー」>「窓ガラス」です。

縦滑出し窓・横滑出し窓

横滑り出し窓

「窓としては開けたいけど、小さめで良い」ということであれば、「縦滑出し窓」「横滑出し窓」がおすすめです。

引き違い窓・掃き出し窓などにありがちな「時間が経つにつれて隙間ができる」なんてこともないので、開閉式の窓の中では断熱性能・気密性能的にも優れています。

滑出し窓のデメリットは「網戸」の使い勝手!

滑り出し窓の網戸

(出典:YKK AP)

縦滑出し窓・横滑出し窓は断熱性能・気密性能、共に優れているのですが、「網戸が扱いづらい」というのが欠点。

通常のレバーで開けるようなタイプの縦滑出し窓・横滑出し窓だと、網戸が「ロール式」になっちゃうんです。ロール式の網戸は、当然丸めなければいけないので、その分網が粗いんですよね。個人的には、虫が挟まったままロールで収納するのもなんか気持ち悪いのでちょっと抵抗ありますね。
滑り出し窓のオペレーターハンドル

(出典:YKK AP)

私みたいに「ロール型の網戸が嫌だ」という人は、ちょっとお金がかかりますが、オペレーターハンドルにすることでFIX窓と同じ網戸にすることができます。「網戸つきで、窓を開けたい!」という人は、ちょっと高くなりますが、このタイプがおすすめですよ。

ただし、このタイプでも窓の内側に網戸がくるので、網戸に虫がくっついている場合にそのまま窓を閉めてしまうと、窓と網戸の間にずっと虫が住んでいる状態になってしまいます。なので、閉める前には軽く網戸を叩いて、虫を落とす必要がありますね。

引違い窓・掃き出し窓

引き違い窓と掃き出し窓(出典:YKK AP)

「大きな開口がほしい」とか「窓から外に出たい」という場合には、「引違い窓」か「掃き出し窓」がおすすめです。(腰までの高さで出入りができないのが「引き違い窓」、対して出入りが可能な窓が「掃き出し窓」です)

これも昔に比べると、隙間もできづらくなっていますし、気密性能も上がっているので採用しても良いでしょう。

ただし断熱性能・気密性能に関しては、「縦滑出し窓」や「横滑出し窓」よりも劣ってしまうため、「どこもかしこも引違い窓」にするのではなく、大きな開口をとりたいところだけ引違い窓・掃き出し窓にして、小さい開口で良い場所は断熱性能・気密性能に優れた「縦滑出し窓」・「横滑出し窓」を使うのがおすすめです。

上げ下げ窓

上げ下げ窓

可愛らしい外観にしたい場合には、「上げ下げ窓」も有効です。

ただ汚れが付きやすいのと、掃除が面倒なので、私としてはあまりおすすめしません。

連窓

「FIX窓」と「滑り出し窓」が一体となった「連窓」

(出典:YKK AP)

大きな開口の中でも、「FIX窓」と「滑出し窓」を組み合わせた「連窓」というものもあります。(引違い窓だと窓枠が真ん中になりますが、連窓の場合、上記のように枠が中心からズレる形になります)

どちらも断熱性能・気密性能的には優れた窓なので、「大開口を作りたいけど、断熱・気密性も重視したい」という場合には、この「連窓」がおすすめですね。

ウインドキャッチ窓

「FIX窓」と「滑り出し窓×2」が一体となった「ウインドキャッチ窓」

(出典:YKK AP)

真ん中に「FIX窓」、両側に「縦窓」がある「ウインドキャッチ窓」というタイプもあります。

ウインドウキャッチ窓は、少しコストがかかってしまいますが、先ほどの連窓同様、「大開口が取れて、気密性能・断熱性能も担保できる」という非常に優れた窓です。

みんながみんな採用できるわけではないと思いますが、「ちょっとコストが上がっても大丈夫」という場合にはぜひ採用してみてください。

網戸はどうやって選べばいい?

窓に設置する網戸の種類

(出典:YKK AP)

網戸にも網目のサイズによって色々なタイプがあります。

もちろん目が細かい方が良いとは思いますが、多少コストアップになってしまうので、「コスト」と「好み」に合わせて好きな方を選んでいただいて問題ないと思います。

「窓」だけじゃなく、『壁の断熱性能』も重要!

「熱」はどこから逃げる?

「アルミサッシ+ペアガラス」の場合

アルミサッシ+ペアガラスの場合の「熱の流出状況(冬)」

上記の通り、アルミサッシ+ペアガラスの場合は、「窓(開口部):50% 外壁:20%」という数値で熱が逃げてしまいます。

「オール樹脂サッシ+Low-Eペアガラス」の場合

オール樹脂サッシ+Low-Eペアガラスの場合の「熱の流出状況(冬)」

図は異なりますが、オール樹脂サッシ+Low-Eペアガラスにした場合、上記の通り「窓(開口部):21% 外壁:57%と、外壁から熱が逃げているということが分かります。

つまり、家全体の断熱性能を考えるならば、窓より『壁の断熱性能』を上げた方が良いということになります。これらを踏まえると結論は、以下の通り。

  • 窓際の寒さを解決したい! ⇒ 『窓』の断熱性能UP
  • 家全体の断熱性能を上げたい ⇒ 『壁』の断熱性能UP
  • お金が余っとる! ⇒ 『両方』の断熱性能UP

当然ながら、1~4地域に限らず、Low-EペアガラスよりLow-Eトリプルガラスの方が断熱性能が上であることは間違いありませんので、予算に応じてさらに上を目指すのはOKです。

関連記事:断熱等級5を推奨!UA値の基準値と断熱性能の上げるために抑えるべき点を徹底解説!

まとめ

窓の設置箇所、設置する窓の種類を考える際、抑えておくべきは以下の5点。

「窓の設置箇所/設置する窓」に対する考え方は?

  • 優先すべきは「夏の日射遮蔽」
    ⇒Low-Eペアガラスは、すべて「日射遮蔽型」を推奨
  • 方角別での「窓の設置」は以下の通り
    南側:多めに設置すべき(軒・庇は「50~60cm」程度で)
    東側・西側:設置しない方がいい(つけるならアウターシェードを!)
    北側:明るくしたいなら付けるべき(北東・北西は要注意)
  • トイレ・お風呂・玄関は、原則「窓ナシ」を推奨
  • 採光目的であれば、断熱性能に優れた「FIX窓」を!
  • 引き違い窓・掃き出し窓は、「滑出し窓」よりも気密性能でやや劣る
    小さい開口で良い場合は、「縦滑出し窓」・「横滑出し窓」で!
  • 家全体の断熱性能を上げたいなら、窓だけでなく『壁』の断熱性能UPも必要!

PROFILE

【方角別】日射取得/遮蔽を踏まえた「窓の設置場所」と「窓の種類」を解説! | 家の性能

せやま大学の人

瀬山 彰

大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。

「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。

娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。

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