2024.11.14
「費用的には中古がいいよね?」「中古だとボロいんじゃない?」「やっぱり新築?でも予算たりなくない?」
今回は、そんな誰しもが通る「新築vs中古」問題について、「住環境」と「資産性」の観点から解説していきます。
購入時の注意点も解説するよ!
目次
日本人は「中古」より「新築」を好む
<総住宅数からも新築至上文化が見て取れる>
(出典:日本経済新聞)
私も含め、現代の日本人には、心のどこかに「新築至上文化」のような「中古より新築が良い」という固定概念が染みついているように思います。
実際に上記データを見ても、総住宅数、空き家数はどちらも増加傾向ですし、「日本人は新築を好む」というのは事実とみてよいでしょう。
そこで今回は、一旦新築至上主義を忘れていただいて、「新築と中古、どちらが合理的なのか?」を数値的に検証していきたいと思います。
【結論】「マンションは中古、戸建は新築」が推奨
結論としては、「住環境」と「資産性」を踏まえると、「マンションは中古、戸建は新築」が推奨です。
せやまがこう考える理由は、以下の通り。
「住環境・資産性から考える新築or中古
- 「マンションは中古」をおすすめする理由
- ①中古でも住環境は悪くない
- ②新築マンションは含み損リスクが高い
- 「戸建は新築」をおすすめする理由
- ①中古の場合、住環境が悪すぎるためやむなく新築
それでは、それぞれについて詳しく解説していきますね。
「マンションは中古」をおすすめする理由は?
①中古でも住環境は悪くない
「マンション=RC造」なので性能もそこそこ
実はマンションの場合、住環境においては、「中古」と「新築」の間にそこまで差がないんです。
<住宅構造別の気密性能概要>
(出典:「住宅の次世代省エネルギー基準と指針」次世代省エネルギー基準解説書編集委員会編)
上記は、各住宅構造毎の気密性能をまとめたグラフです。
このデータからも分かる通り、マンション(RC造)の場合だと、「標準的な施工仕様」だったとしても、隙間相当面積(C値)がその他工法よりも結構低いですよね。
つまり、マンション(RC造)であれば、断熱・気密性能はそこそこ高い状態なので、中古だろうと新築だろうと住環境的にはそこまで変わらないというわけです。
「隙間相当面積(C値)」とは?
C値とは、「家の大きさに対して、どれくらいのスキマがあるのか?」を表す数値で、このC値が小ければ気密性能が高い、C値が大きいと気密性能が低いとなります。
②新築マンションは含み損リスクが高い
次に資産性ですが、これは「中古がお得」というよりも「新築が割高」です。(「新築プレミアム」と言ったりもします)
新築マンションの場合、超人気エリアや物価上昇時を除いて、人が住み始めて数年で価値が急激に落ちてしまいます。
では、「含み損とはどういうことなのか?」解説していきましょう。
「含み損リスクが高い」ってどういうこと?
以下は、マンションの「資産価値(緑)」と「ローン残債(黄)」の推移イメージを重ねたものです。
資産価値は言わずもがなですが、ローン残債については、序盤に金利負担額が大きいため、残債はやや緩やかに推移、後半になると金利負担が減る分、残債がぐっと減っていきます。
そして含み損というのが、この「青矢印部分」。
ここは「資産価値がローン残債よりも低い状態」ですから、この状態でマンション売却⇒戸建に住み替えをすると、「マンションを売っても残債が残る状態(含み損)」になってしまうわけです。
中古マンションだとどうなる?
当然新築プレミアムがなくなった後に購入できれば、その後資産価値の低下は緩やかですから、その分「含み益」が出やすい状態、つまり売却時に手元にお金が残る状態になりやすくなります。
中古マンション購入時のチェックポイントは?
マンション(RC造)の場合、「中古だろうと新築だろうと、断熱・気密性能には大きな差はない」とお話ししましたが、住環境に違いが出るとしたら、「窓」、「防音」、「防水」、「耐震性」あたり。
そのためマンションを中古で購入する際には、以下の4つを確認しましょう。
①:アルミ樹脂複合サッシを採用しているか?
<アルミ樹脂複合サッシを採用したマンションの公式HP>
(出典:和田興産)
「窓際が寒い」というのは、大抵窓サッシが原因。
もちろん、性能的には「オール樹脂サッシ」が理想ですが、オール樹脂サッシを採用したマンションはほぼありませんから、最低でも「アルミ樹脂複合サッシ」にしたいですね。
またアルミサッシだった場合には、購入前に「アルミ樹脂複合サッシの内窓を設置してもいいか?」を確認しておくと確実でしょう。
併せて、窓の建てつけも確認しておくとよいですね。
関連記事:『【完全攻略】新築の「窓選び」最適解は?窓の種類/性能/配置など徹底解説!』
注意点②:壁・床の防音仕様はどうか?
防音性能はマンションによって大きく異なるので、壁・床の防音仕様を確認するとともに、可能であれば現地に行ってみて、実際に確かめておくといいですね。
注意点③:過去に水漏れ・雨漏り被害はないか?
水漏れ・雨漏りなど、一度水の被害を受けると、その悪影響はずっと残ります。
めちゃめちゃ重要な要素なので、どうしても不動産業者が信頼しきれない…という場合は、インスペクターなどの住宅調査の専門家への依頼も検討した方が良いですね。
<インスペクターによる調査は有効>
(出典:日本ホームインスペクターズ協会)
注意点④:新耐震基準後に申請を受けているか?
耐震性能の観点からは、新耐震基準が制定された「1981年6月以降に確認申請を受けたマンション」を選ぶようにしましょう。
もちろん理想は、直近改正の「2006年以降に確認申請を受けたマンション」ですが、最低限の基準としては「1981年6月」を目安と考得てもらえれば良いでしょう。
注意点⑤:最上階・1階でないか?
これは新築・中古関係ないですが、最上階は避けましょう。
最上階は、太陽の影響をもろに受けるので、夏暑くなりますし、屋上からの空き巣侵入も多いため、防犯上もよろしくないですね。
逆に1階の場合、太陽の影響を受けづらいですが、空き巣侵入のリスクは最上階よりも上がると思われるので、こちらも防犯の観点から避けた方が無難でしょう。
注意点⑥:窓がやたら多くないか?
<特に西日が要注意>
窓は「壁に穴を開けている状態」ですから、窓が多ければ多いほど、冬は寒く、夏は暑くなります。
特にマンションの高層階は、日光を遮るものがないので、夏の暑さ、中でも西日は地獄ですから、無駄に窓が多いマンションは選ばないようにしましょう。
「戸建は新築」をおすすめする理由は?
中古戸建はとにかく「住環境が悪い」から
新築戸建をおすすめするのは消去法的に…
戸建で新築をおすすめする理由は、ただ一つ。中古戸建の住環境が悪いからです。
資産性で言えば、マンション同様戸建も中古一択なのですが、中古戸建はとにかく住環境が悪い。
これはせやまがいつも言っていることなのですが、家族で住む以上、家は「資産性」よりも「快適性(住環境)」を優先すべきです。
つまり、理想は「住環境の整った中古戸建」なんだけど、今は存在しないので、やむなく新築…と消去法的に「戸建なら新築がおすすめ」というわけです。
新築戸建における「日本の水準」は低い!
<日本の窓の性能基準は最低レベル>
(出典:YKK AP)
ただ、将来的には「戸建も中古!」と言えるようにしたい、とは思っています。
そのために今、住環境の整った新築戸建を増やしていかなければならないのですが、今の日本の基準は他国よりも低いのが現実…。
例えば、日本では問題なく使用されているアルミサッシも海外では禁止レベルだったり、断熱性能における最低基準の義務化が見送られてしまったり、気密性能の測定義務がなかったり、換気システムの導入が義務化されたもののメンテナンスが無視されていたり…と、もう滅茶苦茶と言っていいレベルです。
そのため新築戸建を建てる場合には、国内の低い水準に合わせるのではなく、家族全員が快適に暮らせるよう、「快適な住環境のつくり方」をしっかりと勉強しておきましょう。
新築戸建を建てる時の注意点は?
新築戸建を建てる時の注意点は、「必ず良い住環境の家にする」ということです。せっかく新築戸建を建てるのに、住環境が最悪では意味がありませんからね。
快適な住環境のつくり方は、家の基本性能となる「窓」・「断熱」・「気密」・「換気」の4要素の性能をしっかり担保することです。
ざっくりですがそれぞれ、最低でも下記水準以上になるようにしましょう。
基本性能の及第点は…?
- 窓 ⇒ オール樹脂サッシ+Low-E複層ガラス(アルゴン)+樹脂スペーサー
- 断熱性能 ⇒ UA値0.6以下(地域区分4~7の場合)
- 気密性能 ⇒ C値0.7以下
- 換気システム ⇒ メンテナンス可能な第1種換気システム
これだけクリアしてもらえれば、住環境としてはまず及第点でしょう。
実際そこまでコストもかからないんですが、日本国内でこの最低限の水準を満たした家は、恐らく「100棟に1棟あるかないか」ぐらいのレベルです。
この項目をクリアせずに新築を建ててしまうと、「せっかく新築を建てたのに、住み心地は中古並み…」というような残念な結果につながってしまいますから、絶対に勉強してくださいね。
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まとめ
「住環境」と「資産性」から考えると、「マンションにするなら中古で、戸建にするなら新築」がおすすめです。理由は、以下の通り。
「住環境・資産性から考える新築or中古
- 「マンションは中古」をおすすめする理由
- ①中古でも住環境は悪くない
- ②新築マンションは含み損リスクが高い
- 「戸建は新築」をおすすめする理由
- ①中古の場合、住環境が悪すぎるためやむなく新築