2024.10.19
家の資金計画の内訳は、「建物+追加費用+土地+造成費用+諸費用」で成り立っていますが、今回は「造成費用」について解説していきます。 土地価格+造成費用=実質の土地価格なので、造成費用を確認せずに土地を購入してはいけません。
目次
安い土地にはワケがある
一見相場より安く見える土地は、必ずと言っていいほど余分な費用がかかります。安い土地にはワケがあるということです。
土地の売買を担当する不動産屋さんは、造成に関する知識が乏しいことが多く、造成費用を細かくシミュレーションしてくれませんので、頼るべきは住宅営業マン。施主自身ですべて計算するのは、まず無理です。
すべて細かく理解しなくても大丈夫なので、住宅営業マンに「●●の費用は見ておかなくて大丈夫ですか?」と質問できるレベルにはなっていきましょう。
金額相場も記載しておきますが、地域や状況によって費用は変わりますので、参考程度に考えておいてください。また、①上下水道負担金以外は価格交渉可能ですが、あまり交渉しすぎると住宅会社も嫌気がさしてくるので、ほどほどに。
関連記事:新築住宅の「資金計画」を立てる方法<完全保存版>|リアル資金計画書の使い方
【結論】土地購入前に確認すべき6つの土地造成費用|安い土地にはワケがある
土地購入前に費用を確認すべき6つの土地造成費用は以下の通りです。
①上下水道負担金(加入金・市納金)
②上下水道工事費
③電気/ガス工事費
④高低差処理費
⑤解体費
⑥地盤改良費/地盤保証料
①上下水道負担金(加入金・市納金)
水道を使う権利金で、市町村ごとに決まっており、交渉はできません。金額は、口径ごとに違います。
その土地に初めて家を建てるのであれば、全額負担。以前家が建っていて、口径を大きくする場合(13mm→20mm等)は、差額を払えばOK。
一般家庭で多い20mmの負担金は、平均10~20万円くらいですが、100万円くらいかかる市町村もあるので、土地探しの際には注意してください。必要なメーター口径は、家の水道数で決まります。
<上下水道負担金>
(出典:吹田市)
②上下水道工事費
水道を引き込んだり、古くなったメーターを改修したりする費用です。
以前家が建っておらず、初めて水道を引き込む場合は、いちから工事が必要です。道路の水道本管の位置や、前面道路の状況によって費用は変わりますが、60~100万円程度になることが多いでしょう。
<駐車場に家を建てる場合、いちから水道引き込み工事が必要>
以前家が建っていた場合は、メーター口径を大きしたり、排水マスを改修するなどの改修工事が必要。金額は改修程度によりますが、10~70万円程度が多いでしょう。
整備された分譲地等であれば、上下水道工事は完了しているので、水道工事費用は不要。ごく稀に、水道工事費用を買主が負担する場合があるので、念のため確認を。ちなに、①上下水道負担金は、買主(施主)負担になることが多いです。
<分譲地は上下水道工事費用がかからない>
『水道工事だけ、業者を直接探して依頼してもいいですか?』に対して
強行すれば可能ではありますが、その後の工事のことを考えると、住宅会社経由で依頼してもらう方が良いです。住宅会社も嫌がると思います。強行すると、住宅会社との関係性も悪くなるので、グッシンとしてはおすすめしません。
③電気/ガス工事費
電柱が邪魔で移設したい場合、自分の土地の前への移設であれば、移設できることが多いです。その場合の移設費用は、30~50万円程。
専用通路がある土地(旗竿地)は、電柱から直接電線を引けないため、中継ポール(小さい電柱)が必要になる事があります。中継ポールの費用相場は、サイズにもよりますが15~30万円程です。
また、都市ガスを利用する場合は、敷地内から建物への引き込み費用がかかります。相場は20~25万円程。道路から敷地内への引き込みは、ガス会社が無料でやってくれますので、自己負担はありません。
<邪魔な電柱は移設できることが多い>
『オール電化?ガス併用?どっちが良い?』に対して
光熱費で比較すると、オール電化が有利。ただ、オール電化の料金優遇幅が小さくなってきているので、ガスにする理由がある場合は、オール電化に縛られることはありません。
ガスにする理由で一番多いのが、ガスコンロ。鍋を振りたい!という人は、ガスコンロしかありません。ただ、ガスコンロはIHコンロに比べて、不燃物でレンジフードが汚れやすくなるので、それは覚悟しましょう。
<レンジフードの掃除はみんな苦手>
(出典:サニクリーンアカデミー)
次に、ガス乾燥機。これはいいですね。家事がかなり楽になります。乾燥機だけガスにすれば、ガス引き込み費用も安くすむので、個人的にはおすすめです。
あとは、床暖房。床暖房自体をあまりおすすめしないので、まずは床暖房がなくても寒くない家にすることを優先しましょう。
<1時間以内で洗濯物が乾くガス乾燥機(1回あたり約50円)>
(出典:リンナイ)
④高低差処理工事費
道路と高低差がある場合は、駐車場部分の土砂を削ったり、土が崩れてこないように擁壁を作ったりする必要があります。
高低差処理費用には、土砂処分、擁壁工事、深基礎、アプローチ階段、手すりなどの費用が含まれます。予算感は、現場の状況によるので一概には言えませんが、おおよその目安だけ記載しておきます。
道路との高低差が1mの場合、
駐車場1台分+α → 60万円
駐車場2台分+α → 100万円
駐車場3台分+α → 140万円
くらいを目安にしてください。
意外と費用がかさむので、なるべく高低差の少ない土地を選ぶことをおすすめします。また、歳をとると、玄関までの階段もしんどくなってきますしね。
<道路との高低差のある土地>
『道路と2m以上の高低差がある土地は避けた方が良い?』に対して
がけ崩れなどの自然災害を防ぐための「宅地造成工事規制法(通称、宅造-たくぞう)」に関する話ですね。
宅地造成工事規制区域に定められているエリア内での「2m超の高低差がある土地の造成工事」には、都道府県等の許可が必要になり、時間も費用も余計にかかるため、2m超の高低差がある土地は避ける方が多いです。
<宅地造成工事規制区域の2m規制>
(出典:SUUMO)
⑤解体費
古家の解体や外構・植栽の撤去、駐車場のアスファルト撤去などにかかる費用です。土地探しの際は、解体費用も計算に入れた上で、購入するかどうか決定するようにしてください。
解体費の相場は、
木造:坪35,000円+α(植栽撤去費用等)
鉄骨:坪45,000円+α(植栽撤去費用等)
くらいです。
延床面積30坪の木造住宅なら、ざっくり105万円+αくらい。ただ、地域や家の状況にもよるので、あくまで参考程度に。解体費(特に廃棄物処分費用)は、年々上がってきているように感じます。
<費用が上昇しつつある解体工事>
『古家付き土地の売買で、建物は所有権移転しない方が良い?』に対して
建物所有権移転登記費用の節約テクニックに関する話ですね。結論、売主が協力してくれるなら良いと思いますが、ローンを組む銀行への事前確認は必要です。NGを出す銀行もあります。
建物は、購入後にすぐ取り壊すのに、所有権移転するのは費用がもったいないので、建物は契約に含まないという特約事項を盛り込んで、売買契約を交わすというテクニック。
ただし、解体後の滅失登記費用は買主負担。建物の所有権は売主のままなので、「売主が滅失登記の書類作成に協力する」という約束を契約書に盛り込むことで、このテクニックを使うことができます。
不動産屋さんは慣れていると思うので、相談してみてください。
⑥地盤改良費/地盤保証料
地盤改良費の金額は、土地購入前に正確に把握することはできませんが、近隣の地盤データを確認すれば、おおよその金額予想は立つので、必ず住宅営業マンに地盤データを見せてもらうように依頼しましょう。(地盤データ閲覧はプロ専用サイト)
<近隣の地盤データが見れるプロ専用サイト>
(出典:ジャパンホームシールド)
地盤改良費の予算は、家の大きさや工事内容によって異なります。ザックリの相場は、表層改良であれば20~40万円程、5m以内の柱状改良であれば40~70万円程、5m以上の柱状改良であれば70~120万円程です。
地盤改良が必要無いと判定された場合は、地盤保証料だけでOK。地盤保証料は、請負工事に含まれている場合と、別途必要な場合に分かれます。別途必要な場合の相場は、10年保証で3~8万円程です。
<地盤改良工事の様子>
『地盤改良費用が高い。安くする方法はないですか?』に対して
地盤改良費用が高すぎる場合は、セカンドオピニオンが有効。別途費用はかかりますが、地盤改良工事会社とつながっていない「独立系の地盤調査(保証)会社」であれば、地盤改良費用が安くなる可能性があります。
ただ、住宅会社によっては、地盤調査会社が指定されていて、セカンドオピニオンに依頼できない場合もありますので、住宅会社に確認してみてください。
関連記事:「地盤改良工事・基礎工事」の適正な強度とコストを抑える方法|地盤改良費用はコストカットできる!?
<独立系の地盤調査(保証)会社が行うセカンドピニオン>
(出典:地盤ネット)
まとめ
土地購入前に費用を把握しておくべき6つの土地造成費は以下の通りです。
①上下水道負担金(加入金・市納金)
②上下水道工事費
③電気/ガス工事費
④高低差処理費
⑤解体費
⑥地盤改良費/地盤保証料
【文責:瀬山彰】