新築住宅の「資金計画」を立てる方法<完全保存版>|リアル資金計画書の使い方
投稿日 2019.12.13 / 最終更新日 2023.02.22

資金計画は、施主が自分で作るのがベスト。営業マンが作った資金計画書だけでは、契約後の思わぬ出費による予算オーバーを防ぐことができません。では、一つずつ勉強していきましょう!
【記事内で使うツール】
リアル資金計画書
標準仕様チェック表
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目次
「リアル資金計画書」を使えば、自分で資金計画が作れる
ほぼすべての必要資金を網羅した「リアル資金計画書」を使えば、施主自身で資金計画書を作れるようになります。「リアル資金計画書」のエクセルデータは無料公開していますので、ダウンロードしておいてください。
<リアル資金計画書>
【結論】新築住宅の「資金計画」を立てる方法<完全保存版>
新築戸建住宅の資金計画をつくる方法は、以下の通り。家の資金計画は、「①建物費用+②契約後の追加費用+③土地実質費用(土地価格+造成費用)+④諸費用」で構成されます。
①建物費用をシミュレーション
②契約後の追加費用をシミュレーション
③土地実質費用(土地価格+造成費用)をシミュレーション
④諸費用をシミュレーション
⑤住宅ローンと自己資金のバランスを計画
⑥月々支払い額とボーナス払いのバランスを計画
⑦理想と現実をすり合わせる(妥協)
①建物費用をシミュレーション
まず、建物の金額です。細かくは住宅会社からの見積額を入力しますが、とりあえず住宅会社の契約坪単価を参考にして、ざっくり入れてみましょう。以下条件で金額を入れると、こんな感じ。
<条件>
・延床面面積32坪
・契約坪単価60万円くらい
・準防火地域ではない
・太陽光発電システムは設置しない
32坪×60万円=1,920万円ですね。本体工事と付帯工事の線引きは、住宅会社ごとにあいまいなので、適当に割り振ってOK。合計金額が大切です。消費税10%を加えて、2,112万円となります。
『坪単価はあてにならないって言ってませんでした?』に対して
そうですね。坪単価は、住宅会社の営業戦略的な要素が強いので、ほぼあてにはなりませんが、最初の資金計画の目安として使う分には問題ないと思います。
契約が近づいてきた時に注意すべきは、「契約時の坪単価」と「完成時の坪単価」には差があるということです。その違いを意識してもらうために、契約時の坪単価を「契約坪単価」、契約後の追加オプション費用を含めて計算した坪単価を「完成坪単価」と呼んでいます。
②契約後の追加費用をシミュレーション
次に、契約後の追加費用(いわゆるオプション費用)です。契約時の見積に含まれる標準仕様が不足していた場合、契約後の仕様打ち合わせで、どんどん追加費用が増えていきます。
まずは最初の資金計画なので、ざっくりでいきましょう。契約坪単価と完成坪単価の差額平均は坪3万円程なので、こんな感じになります。
32坪の家なので、32坪×3万円=96万円となり、消費税10%を加えて、1,056,000円です。
グッシンの考える理想形は、契約後の追加費用を0円にすること。そのためには、契約する前に、見積に含まれている仕様が十分なのか?を十分に見極めてください。不足している部分があれば、契約前に見積に入れてもらう事が必要です。
営業マン的には、見積金額が高くなると契約をとりにくくなるので、細かい見積を嫌がるかもしれませんが、焦らず頑張って下さい。
『見積に不足している仕様を見極めるのって、難しくない?』に対して
そうですね。見積に不足している仕様を見極めるのは、とても難しいので、「標準仕様チェック表」というツールを公開します。「標準仕様チェック表」に載っている仕様が見積書に含まれいるのか?を一つずつチェックしていけばOKです。
関連記事:住宅会社の「性能」を見極める方法|11のチェックポイントを完全網羅
関連記事:住宅会社の「標準仕様」を見極める方法|標準仕様チェック表を使えば超簡単!
<標準仕様チェック表>
③土地実質費用(土地価格+造成費用)をシミュレーション
建物と建物追加費用の次は、土地実質費用について。土地実質費用は、土地価格+造成費用で構成されます。
造成費用は、市町村や現場状況によって異なり、最初の段階で正確にシミュレーションするのは不可能。まずは、以下条件に当てはめて、概算で計算してみましょう。
<条件>
更地
道路との高低差無し
水道口径13mm(以前家が建っていた)
軟弱地盤(5m超の地盤改良が想定される)
境界明示あり
土地価格:1,500万円
上下水道負担金13mm→20mmの差額:10万円
上下水道工事費(メーター改修、マス改修等):60万円(税込)
地盤改良費:90万円(税込)
土地実質費用で大切なのは、土地探しをする時に、「~万円までの土地を探そう!」ではなく「造成費用も含めて、土地実質費用~万円までの土地を探そう!」と意識することです。
関連記事:土地購入前に確認すべき6つの「土地造成費用」|安い土地にはワケがある!?
『古家付き土地って割高ですよね?』に対して
確かに、解体費用が余計にかかりますが、その分安く買えたら割高にはなりません。解体費用がかかることを理由に、売主に強気に価格交渉することもできますし、更地より人気がないので、むしろ狙い目と考える事も出来ます。
ただし古家付き土地は、解体費用のみならず、水道工事などの造成費用がかかることが多いので、住宅会社と密に連携しながら、「土地実質費用」を正確にシミュレーションしながら進めてください。
関連記事:注文住宅の土地探しを成功させる5つのコツ|土地探しの失敗パターンを紹介
<空き家率上昇が続き、古家付き土地は今後も増える>
(出典:日本経済新聞)
④諸費用をシミュレーション
諸費用は、住宅ローンを組む銀行等によって変化しますが、最初はよくあるパターンで計算しておきましょう。初期設定で諸費用を入力していますので、そのまま使ってもらってもOKです。以下条件です。
<条件>
仲介手数料:満額必要
外構工事:駐車場2台必要
住宅ローン:りそな銀行 りそな保証(融資手数料型)
つなぎ融資:りそな銀行のつなぎ融資を利用
地鎮祭:実施する
認定など:次世代住宅ポイントを取得
火災保険:風災・水災含めて加入
耐火構造:省令準耐火構造(T構造)
■契約関連
・仲介手数料
(1,500万円×3%+60,000)×1.1=561,000円となります。
・固定資産税精算金、印紙代
固定資産税精算金は、土地決済時期によって異なるので、ざっくり3万円。土地・建物契約時の印紙代は、ほとんどの場合、それぞれ1万円です。
■入居準備
・外構工事
駐車場2台分の土間コンクリート、アプローチ、門柱セット(表札、ポスト、インターホン)くらいであれば、100万円以内におさまるでしょう。少し多めにみて、100万円としておきます。
・アンテナ工事、エアコン・家具・家電・引越等
全て資金計画に入れ込むことが理想ですが、これはすぐに決められない人が多いので、別に現金が必要だということを認識していれば、別途計上でもOKです。だいたいの金額が分かる人は、入力しておきましょう。
■ローン関連
・事務手数料、保証料/融資手数料、印紙代
事務手数料は33,000円。融資手数料型なので保証料は0円、融資額を3,870万円とすると、融資手数料が3,870万円×2.2%=851,400円。印紙代は、多少変わりますが、だいたい20,000円くらいです。
・分割融資/つなぎ融資費用
難しい場合は、詳細を理解しなくてもOKです。以下条件です。
<条件>
融資手数料:11万円
土地分割融資の金利:0.47%、融資期間:5カ月
着工金つなぎ融資の金利:2.475%、融資期間:4カ月、支払い額:請負金額の30%-契約金
中間金つなぎ融資の金利:2.475%、融資期間:3カ月、支払い額:請負金額の40%
契約金:100万円
融資手数料は、11万円。
土地分割融資費用は、1,500万円×0.47%÷12カ月×5カ月=29,375円。
着工金つなぎ費用は、(21,120,000円×30%-1,000,000)×2.475%÷12カ月×4カ月=44,022円
中間金つなぎ費用は、(21,120,000円×40%)×2.475%÷12カ月×3カ月=52,272円
全て合わせると、235,669円となります。一部でも一旦現金で建替えると、土地分割/つなぎ融資費用を節約することができます。
■登記費用
・所有権移転登記/抵当権設定登記
所有権移転登記費用は、報酬額30,000円+日当など諸経費+登録免許税(土地価額×1.5%)くらい。土地価額は土地価格とは異なり、正確に計算するのはややこしいので、ざっくり20~25万円くらい見ておきましょう。
抵当権設定登記費用は、報酬額25,000円+諸経費+登録免許税(担保設定金額×0.4%)くらい。借入金額によって、おおよそ概算することが可能ですが、ざっくり15~20万円くらい見ておきましょう。
・滅失登記/表題登記/所有権保存登記/追加担保設定登記
解体がないので、滅失登記費用は0円。表題登記費用は、相場の77,000円。所有権保存登記費用は、ざっくり50,000円、追加担保設定登記費用は、ざっくり30,000円。細かい計算式はありますが、そこまで理解する必要はなく、ざっくり計画できればOKです。
■イベント
・地鎮祭
テントや椅子・結界や盛砂の地鎮祭準備費用が、35,000円+税で38,500円。玉ぐし料は神社によって異なりますが、平均的な40,000円で計画します。
■申請・保険
・建築確認申請費/公的証明発行費用/火災保険費用
建築確認申請費は、一般的に2階建てなので86,000円。次世代住宅ポイントを取得するため、公的証明発行・手続き費用が100,000円。
火災保険は、省令準耐火構造(T構造)で、風災・水災含めると、ざっくり(①建物費用+②契約後の追加費用)×0.6%で計算でき、133,056円と試算。
諸費用は合計で、3,715,425円となりました。営業マンの資金計画では、諸費用の項目が漏れやすいので、施主自身で全体像をつかんでおくことが大切です。
関連記事:注文住宅で必要な「諸費用」一覧と金額相場まとめ|諸費用は価格交渉できるのか?
『細かすぎて良く分からない!』に対して
ですよね。もう面倒な場合は、諸費用400万円くらい見ておいてください。だいたい収まるかと。もしくは、「リアル資金計画書」の初期設定をそのまま使ってください。そんなにずれないと思います。
最初はざっくりでいいので、全体像をつかんでもらえればOKです!
⑤住宅ローンと自己資金のバランスを計画
全ての費用が出揃いましたので、費用合計を確認しましょう。
思ったより高い金額を目の当たりにして、テンションを落とす人が多いですが、それで正解。まずは、現実を知ることが大切です。リアルな資金計画を営業マンが嫌がるのも理解できると思います。
では次に、自己資金と住宅ローンのバランスを考えていきます。以下条件だと、こんな感じ。
<条件>
諸費用分だけ現金
残りは住宅ローン
①建物費用+②追加費用+③土地実質費用=38,776,000円なので、38,700,000円のローンを借りて、①②③の残り分と諸費用分を自己資金とします。きりよく自己資金を400万円とすると、20万円くらい余裕がある資金計画となりますね
グッシン的には、住宅ローンの低金利・ローン控除制度や、手元に現金を置いておくことの効果を踏まえ、できるだけ自己資金を使わないことを推奨していますが、手元現金が潤沢な方は自己資金を増やしてもOKです。
逆に、諸費用分も自己資金をなるべく使いたくない人は、諸費用も含めて融資してくれる銀行もあるので、検討してみてください。
参考記事:住宅ローンの基礎知識と失敗しない銀行の選び方(前半)|5つのパターン別に解説
『手元に現金を置いておくことの効果なんてあるの?』に対して
多いにあります。
まず、精神的な安心感。貯蓄がなく毎月ぎりぎりの生活だと、精神的に安定しません。
次に、保険費用の削減。学資保険や医療保険などは、数百万円の貯蓄があれば、不要になることが多いため、家計を改善することができます。
冠婚葬祭や親の介護、こどもの教育費などの急な出費にも対応できますね。手元に残した現金で、ローン金利より高い利回りで運用できれば、ローンを借りた方が得ということにもなります。
もちろん、どうしても手元に現金が余っているのであれば、ローン金額を減らしたり、繰り上げ返済するのはOKです。ダメなのは、手元に現金があまりないのに、無理して拠出してしまうことです。
<医療保険の支給額は数十万円程度なので、貯蓄があれば削減できる>
(出典:産経ニュース)
⑥月々支払い額とボーナス払いのバランスを計画
3,870万円借りると月々支払いはいくらになるのか?ボーナス払いはどうするか?という点を確認していきましょう。
<条件>
借入金額:3,870万円
ローン条件:35年0.475%
ボーナス払い:0円
月々支払いは10万円弱になりました。変動金利であれば、0.5%前後は割と出やすいです。
ボーナス払いは、グッシン的には推奨していません。するとしても、1回あたりの支払いは5万円程度、多くても10万円以内にするようにしましょう。ボーナス支給は不透明なので、月々支払いだけで可能な計画にすることをおすすめします。
ボーナス払いを検討する方は、1番下の「ボーナス払い分の合計」に金額を入れると、上から3段目の「ボーナス払い金額/回」に1回当たりの支払い金額が計算されますので、数字を入れてみてください。
『ローン支払いは、月々手取りの何%くらいが適正?』に対して
これは難しい質問です。収入や家族構成、エリアや土地の有無などによって大きく変わるので、「人によって適正な%は変わる」としか言えません。
全員に共通して言えるのは、住宅ローンの支払いだけに注目するのではなく、家計全体で考えるべきだという事。例えば、ローン支払いを月々1万円削減するのは大変ですが、携帯電話を格安SIMに変更して1万円削減するのは超簡単です。
住宅ローンの支払いを削減するために、住み心地の悪い家を建ててしまっては、本末転倒ですよ。
参考記事:家を建てる前にやっておきたい家計改善の3STEP|誰でもできる具体的な方法を紹介
<住宅ローン平均借入額>
(出典:ARUHI)
⑦理想と現実をすり合わせる(妥協)
最初の資金計画で「全て理想通り!」という人は、ほぼいないので、いろいろ問題点が出てくるはずです。例えば、
・もっと便利な場所が良い!
・もっと大きな家がいい!
・キッチンにこだわりたい!
・月々支払いが高い!
・自己資金そんなに出せない!
などなど。で、何を妥協するか?という話合いになります。具体的な妥協例は、以下の通り。
■具体的な妥協例
・土地
少し不便な場所へ
土地を小さくする ★
南向きにこだわらない ★
・建物
コンパクトサイズにする ★
家の性能を下げる
住宅設備のグレードを下げる
知名度は気にしない ★
・お金
月々支払いを上げる
自己資金を増やす
親に援助を相談する ★
★は、まず妥協を検討すべき項目です。逆に、土地のロケーションや家の性能は妥協すべきではありません。
家づくりは、土地×建物×お金の妥協の産物とも言えますので、優先度の低い項目を妥協しつつ、理想と現実のすり合わせを行っていきましょう。
<土地を購入するときに重視した要素>
(出典:SUUMO)
『固定資産税や修繕金はどれくらいかかる?』に対して
土地や建物の価額にもよりますが、だいたい月々1.5万円くらい必要です。固定資産税は、4年目をピークに少しずつ減っていきますが、年間平均10万円程はかかります。
関連記事:「賃貸VS持ち家」タイプ別に徹底比較!あなたはどのタイプ?|経済性と住環境で比べると!?
また、修繕金を抑えるためには、屋根材・屋根下葺き材・外壁材・シーリング・バルコニー防水の選び方が大切です。うまく選べば、20年間はメンテナンス不要、失敗すれば、10年ごとにメンテナンスが必要です。
関連記事:「メンテナンス性能」について|記事まとめ
まとめ
新築戸建住宅の資金計画をつくる方法は、以下の通り。家の資金計画は、「①建物費用+②契約後の追加費用+③土地実質費用(土地価格+造成費用)+④諸費用」で構成されます。
①建物費用をシミュレーション
②契約後の追加費用をシミュレーション
③土地実質費用(土地価格+造成費用)をシミュレーション
④諸費用をシミュレーション
⑤住宅ローンと自己資金のバランスを計画
⑥月々支払い額とボーナス払いのバランスを計画
⑦理想と現実をすり合わせる(妥協)
【文責:瀬山彰】
PROFILE

せやま大学の人
瀬山 彰
大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。
「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。
娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。