工務店は教えてくれない!高気密・高断熱住宅/GX志向型住宅でも寒くなる家の共通点 | 「住宅設備」の選び方を知りたい

GX志向型住宅を建てても、冬に寒い家になってしまう恐れがあります。UA値や断熱等級のように、断熱性能を高めるための指標を知っている人は多いですが、それらは暖かい家を建てるための要素の一部でしかありません。しかも、残りの部分は、特定の工務店・HMにとって不利になる可能性があるため、それを伝えることで契約が取れなくなることを恐れ、隠してしまう場合もあります。

施主としては「断熱等級が良い家」を建てたいのではなく、「冬でも暖かい家」にしたいですよね。そのためには工務店・HMが教えてくれないことも知っておかないと、住んだ後に寒くて後悔する恐れがあります。そこで、そうならないために工務店・HMがあまり教えてくれない高性能住宅でも冬が寒くなる原因と対策を網羅的に紹介します。

今回は以下を詳しく解説していきます。

UA値とは

「UA値」とは、家の中の熱が窓や屋根、壁から外に逃げる熱量を意味する値です。つまりUA値が低ければ低いほど、断熱性能が高いということになります。

UA値に付随して「断熱等級」というものがあります。断熱等級4が、いわゆる省エネ基準として2025年4月から義務化になるものです。温暖地であればUA値0.87以下(断熱等級4)、ZEH基準であればUA値0.6以下(断熱等級5)、HEAT20 G2基準であればUA値0.46以下(断熱等級6)、HEAT20 G3基準であればUA値0.26以下(断熱等級7)というように定義されています。このように、低ければ低いほど良いのがUA値です。

ただし、UA値には問題点が3つあります。

①UA値は机上の数値

UA値は、あくまで計算数値です。「この断熱材と窓、屋根を使えばUA値は〇〇」になるという数値なので、現場での施工精度を無視しています。どんなに良い材料を使っても雑な施工では暖かい家はできません。

②UA値は平均値

UA値のAは「Average」のAです。つまり、UA値は平均値なので「ここのUA値が良くても、ここは悪い」という家でも全体としてはまぁまぁのUA値が出てしまいます。つまり、一部分ですごく弱い部分が出るリスクがあります。

また、UA値は換気による熱損失を加味していません。空気がどんどん入ってくるところでは冷気が入ってきて寒くなりますが、この部分は加味されません。

③住んだ後は考慮せず

UA値は、住んだ後のことは考慮していません。実際に施主がどのように暮らしているかはUA値の算出条件に入っていないので、どんなに良い家を建てても住み方・暮らし方を間違えると寒くなってしまいます。

このような問題点があるので、UA値や断熱等級を気にしたりGX志向型住宅にするだけでは、冬に寒い家になってしまうケースがあります。この前提を押さえておいてください。

高性能住宅性も寒くなる失敗7選【施工精度編】

①気密性能を担保せず失敗!

気密性能とは、家の隙間があるかどうかで決まります。隙間が多いと隙間風が入ってきて寒くなるので、気密性能は絶対に担保しなければなりません。

気密測定は必ず行う!

気密性能は施工精度によって大きく数字が変わります。同じ材料を使っても、違う職人がやると違う数値が出るので、きちんと測らなければなりません。気密測定をしない時点で大失敗です。また、計測した結果C値が2.0以上の場合も大失敗です。測ってみてもC値が1.0~2.0の場合、もう少し頑張ってほしい水準です。

C値1.0以下というのが、いわゆる高気密住宅の定義です。とはいえ、徐々に隙間は出てきてしまうので、【せやま基準】ではC値0.7以下を必須としています。慣れていればC値0.4以下も出るので、できれば0.4以下を目指してください。基準としては、C値0.7以下は絶対に守ってくださいね。

計算して出すUA値と、現場施工の現場数値であるC値を掛け合わせることで、高断熱・高気密住宅になります。気密測定をしなければ「高断熱・高気密かもしれない住宅」になるので注意してください。

質問①:そんなに重要なら国の基準に入っているのでは?

BE ENOUGHとしては入れるべきだと考えていますが、入っていません。恐らくハウスメーカーが反対をしていると考えられます。というのも、鉄骨住宅は気密性能が低いです。そのため、鉄骨住宅をやっている大手ハウスメーカーとしては、気密数値を基準に入れられると困るので、反対している可能性があります。

「高断熱やりなさい」「高性能住宅にしなさい」と言うような専門家も「どうして気密性能が基準にないんだ」とは言いません。これを言うとハウスメーカーから文句を言われる可能性があるからでしょう。国側と専門の人が大手ハウスメーカーに忖度している可能性があります。このような理由から「気密性能を国の基準に入れるべき」と主張する人は、なかなかいません。

業界全体で見るとビジネス上は仕方ない部分かもしれませんが、施主目線で考えると一生に一回の家で失敗はできないので、気密性能は担保していくべきです。

高性能住宅性も寒くなる失敗7選【バランス編】

②窓選びで失敗!

壁の断熱性能を高くしても、窓の性能を担保しないと家が寒くなります。窓の性能が低いと窓際で寒さを感じますし、結露にも繋がります。そのため、窓の性能を担保することを第一優先にしてください。その上で、壁などの断熱性能も整えてUA値を取ってください。窓が一番大事で、その他を揃えて全体の断熱性能を担保していく順番が正しいです。

特に窓は一番結露しやすいサッシをオール樹脂サッシにしてください。

質問②:アルミ樹脂複合サッシはダメなの?

アルミ樹脂複合サッシもダメではありませんが、非推奨です。やはり冷えやすいですし、壁とくっついている部分がアルミなので、少しでも隙間があると空気が入って結露して壁内結露を引き起こすリスクがあります。基本的にはオール樹脂サッシにしてください。どうしてもデザインの面などの理由でアルミ樹脂複合サッシにする場合は、窓周りの気密性能をしっかり担保してください。

アルミ樹脂複合サッシにして気密測定をしないなんてことは、絶対にダメです。アルミ樹脂複合サッシにする場合、窓周りの気密を完璧にしてください。それでも枠が冷えやすくて結露のリスクは樹脂サッシより高くなります。樹脂サッシ一択でおすすめします。

質問③:樹脂サッシは劣化するのでは?

樹脂サッシは塩ビという素材を使っているので、問題はありません。紫外線による劣化に対してもアクリル積層という技術を使っているので心配ありません。外から物が飛んできた場合、アルミニウムより衝撃に弱いかもしれませんが、ガラスが割れて窓ガラス交換になるのでアルミサッシでも樹脂サッシでも変わりません。

このような理由から、耐久性を気にして樹脂サッシをアルミ樹脂複合サッシにする必要はありません。

窓選びに関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。

関連記事:寒い冬の大敵!結露を防ぐ家の建て方5選!【高性能住宅でも結露する】

③玄関ドア選びで失敗!

D4・K4クラスの玄関ドアを選ぶのは大失敗です。D2・K2クラスのドアを選んでください。玄関ドアも窓と同じですが、結構軽視する人が多いです。しかもD4・K4クラスは「温暖地仕様」と書いていて、D2・K2クラスは「寒冷地仕様」と書いているため、選び間違えがちです。とはいえ、寒冷地仕様が「温暖地の冬を暖かくする仕様」と考えてください。

これ以上のクラスのドアもありますが、重いですし価格も高くなるのでD2・K2クラスを選ぶのがおすすめ。必ず玄関ドアの断熱性能も気にしてくださいね。

④足元の断熱で失敗!

足元の断熱方法は、基礎断熱と床断熱の2種類があります。

基礎断熱

BE ENOUGHの推奨は基礎断熱。床下も一緒に暖められますし、後述の換気システム「sumika」を入れられることが理由です。

床断熱

床断熱も悪くはありません。床断熱で気密性能が担保されていないのがヤバいです。床断熱にする場合、なおさら気密性能の担保を意識して、気密測定を絶対にしてください。そうすれば底冷えを防ぐことができます。

BE ENOUGHのおすすめは、気密性能を担保した上で、換気システムの「sumika」を入れることです。ただし、底冷えを防ぐという意味では床断熱で気密性能を担保すれば問題ありません。「気密性能を担保しないこと」が冬の寒さの根本原因だと覚えてください。

質問④:上部の断熱は?

冬はあまり関係ありませんが、夏は日射で上が熱くなります。壁よりも屋根の断熱を2倍以上にしてください。屋根断熱に加えて屋根裏空間も断熱して、そこで屋根裏エアコンを設置するのがBE ENOUGHの推奨パターンです。BE ENOUGHが推進している「せやま印工務店」で家を建てる人は、屋根裏エアコンの導入を検討してください。

⑤換気システム選びで失敗!

換気によって空気を入れ替えることで、外の冷たい空気が入ってくるのは仕方のないことです。

ダクトレス換気

ただし、「ダクトレス第三種換気」はおすすめしません。ダクトレス第三種換気にすると冷たい空気がそのまま入ってきますし、プロペラファンなので換気力も弱く適切な換気ができないリスクがあります。

ダクトレス第一種換気は熱交換で、外の冷たい空気を少し温めてから家の中に入れてくれます。ただし、プロペラファンなのできちんと換気できないリスクが高いため推奨しません。

ダクト給排気型の第一種換気

ダクト給排気型の第一種換気は、悪くはないですが注意が必要です。シロッコファンという強いファンを使っているので換気の面では良いですが、外部のゴミが付くフィルターが家の中にあります。

外からフィルターまでのダクトが汚れてしまいますし、フィルターを掃除する時に部屋の中でやるので抵抗感があります。そのため、一番空気が入ってくる場所に自前でフィルターを付けるのがおすすめです。

(出典:東洋アルミ)

ダクト排気型の第三種換気 or ダクト排気型の第一種換気

おすすめは、日本住環境のルフロやピアラ、ガデリウスのJBDGといったダクト排気型の第三種換気。ただし冷たい空気が入ってくるので、必ず空気が入ってくる場所にエアコンなどを付けて冷気対策をしなければなりません。

さらにおすすめなのが、ダクト排気型第一種換気のマーベックスのsumika。熱交換で空気を温めてから屋内に入れてくれますし、フィルターも一番外にあります。内部の排気フィルターも床面にあって掃除しやすいというメリットもあります。

ただし、sumika以外でも対策を十分にすれば問題ないので、しっかり知識を付けて「寒くなくて換気もできる家」を建ててくださいね。

質問⑤:寒い時は換気を止めても良い?

寒い時でも換気を止めないでください。換気を止めると寒くなりませんが、二酸化炭素濃度が上がって、変な時に眠くなったり眠りの質が下がったり、頭痛や肩こりの原因になります。ちゃんと空気を入れ替えてください。ハウスダストが外に出て行かないことでアレルギー疾患の原因にもなるので、換気は必ず十分に行ってくださいね。その上で冷気対策もしていくことが、ちょうどいい塩梅の換気の考え方です。

高性能住宅性も寒くなる失敗7選【住まい方編】

⑥エアコン運転方法で失敗!

エアコンは連続運転にしてください。間欠運転にすると電気代は下がるものの、壁や窓や天井が冷えて、すぐに暖まりません。空気を温めてもなかなか暖かくなりませんし帰宅時に寒いので、連続運転が推奨です。せやま基準をクリアしていれば、1階のエアコンだけ運転しておくと2階まで十分に暖まりますよ。

質問⑥:エアコンなしでも日射取得で暖かいって本当?

晴れている日はそれでも良いですが、曇りや雪の日は暖まりません。また、日射がどんどん入ってくるような広い土地の家ばかりではないので、基本的にはエアコンを使って温めてください。もちろん日射取得がある日はエアコンを少し弱めても十分に暖かいですが、基本的にはエアコンを使うようにしてください。

⑦加湿器の使い方で失敗!

温度だけ上げても加湿せずに乾燥すると体感温度は下がってしまいます。絶対湿度を9~10g/㎥にしてください。相対湿度50~60%だと、適切に湿度コントロールできません。「みはりん坊」や「SwitchBot」などを使って絶対湿度でコントロールしてください。絶対湿度が7~8g/㎥だと乾燥しますし、絶対湿度11~12g/㎥だと窓が結露しやすくなりますよ。

質問⑦:おすすめの加湿器は?

おすすめの加湿器は、ダイニチ製です。私も愛用している良い加湿器なので、これから買う人は参考にしてください。

加湿器の選び方に関して、詳しくは以下の記事もご確認ください。

関連記事:加湿器マニアが選び方と冬の乾燥対策を徹底解説!湿度を%で管理したらダメ!

質問⑧:のどを痛めない方法は?

のどを痛めないためには、寝る時に就寝用マスクを着用するのがおすすめです。吸い込む空気が冷えていると喉に負担がかかるので、就寝用マスクを使ってください。さらにマフラーなどを巻いて首・喉を温めると、さらに良いですよ。

また、咳だけがしつこく残っている人は、耳鼻科ではなく呼吸器科を受診してください。予防も含めて、早めに咳喘息を疑うことも効果的です。乾燥する冬を乗り越えてくださいね。

どれくらいのUA値を目指せば良いの?

UA値は0.6以下必須です。2024年の春からはせやま基準もHEAT20 G1基準に合わせて0.56以下にしようかと思っていますが、0.56もしくは0.6以下は絶対に下回ってください。それ以上はやめてください。

目標としては、温暖地はG2つまりUA値0.46くらいを目指してください。0.5前後を目指すのがコスパが良いですし、体感的にもすごく暖かくなります。ただし、0.45や0.4、0.3と目指していくと、結構コストが跳ねあがります。

ちょうどいい塩梅としては、UA値0.5前後です。ただし、子育てグリーン住宅支援事業でGX志向型住宅(G2クラス)にして太陽光パネルを載せると、補助金が80万円増えます。太陽光を載せる予定の人は、G2クラスを狙うのもアリです。断熱性能をG1からG2に上げるために80万円はかかりませんよ。ただ、太陽光パネルを載せようと思っていない人はG2クラスを敢えて狙う必要はありませんし、補助金がないのであればUA値は0.5前後で十分です。

子育てグリーン住宅支援事業に関して、詳しくはこちらの記事もご確認ください。

関連記事:【速報!】「子育てグリーン住宅支援事業(GX志向型住宅)」の概要と条件・申請ポイントを分かりやすく解説!

私自身、断熱等級6の家から断熱等級3や2の家まで住んだ経験があります。その経験から、断熱等級が3から4、あるいは4から5になると格段に変わると実感しています。外の寒さに気付かず、外に出て初めて寒いと気付くレベルなのが断熱等級5(HEAT20 G1基準)や6(HEAT20 G2基準)です。G2クラスになると家だけ異空間ですし、G3クラスになるとそれ以上の神の領域です。

とはいえ、G2クラスやG3クラスにするためのコストが光熱費でペイすることは、まずないです。昭和基準からG2クラスにしたらペイしますが、G1クラスからG2クラスにしたところで、光熱費でペイすることはありません。

G2クラスやG3クラスは「より良い環境にしたい」という面では良いですが、費用対効果や快適さを考えると、そこまでやる必要はないですよ。

まとめ

高性能住宅でも寒くなる失敗7選

  1. 気密性能を担保しない
  2. 窓選び
  3. 玄関ドア選び
  4. 足元の断熱
  5. 換気システム選び
  6. エアコン運転方法
  7. エアコン運転方法
せやまが

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せやま印工務店とは?

PROFILE

工務店は教えてくれない!高気密・高断熱住宅/GX志向型住宅でも寒くなる家の共通点 | 「住宅設備」の選び方を知りたい

せやま大学の人

瀬山 彰

大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。

「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。

娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。

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