2024.11.14
「快適な家づくり」に不可欠な気密性能ですが、この担保のためには現地での計測(気密測定)がマストです。
そこで今回は、
- 気密測定はどのように実施されるのか?
- 測定結果のどこを見ればいいのか?
- 結果が悪かった時の対処法は?
など詳しく解説していきますので、営業マンに言いくるめられないためにもしっかり勉強しておきましょう!
目次
そもそも「C値」とは?
C値とは、「家の大きさに対して、どれくらいのスキマがあるのか?」をもとに気密性能を表す数値で、このC値が小ければ気密性能が高い、C値が大きいと気密性能が低いとなります。
そしてこのC値を計測するのが、今回お話しする「気密測定」というわけですね。
「気密性能の重要性」や「C値で目指すべき水準」については以下記事でお話ししていますので、まだの方は先にこちらから読むことをおすすめします。
関連記事:『C値(気密性能)の測定基準・推奨レベルはどのぐらい?|よくある質問にも回答!』
「気密測定」を行うべき3つの理由
カタログ・モデルハウスの数値は参考にならない!
営業マンにC値について確認すると、「カタログ値ならこれぐらいですね~」とか「モデルハウスはこれぐらいなので、そのぐらいだと思ってもらえれば~」とか言われると思いますが、正直これは全く当てにならないです。
というのもC値は、「家にどのぐらいのスキマがあるのか?」をもとに数値化されたものであり、この「スキマ」は職人の施工品質によってめちゃめちゃ変わってくるからです。
そのため高気密高断熱住宅を目指すのであれば、必ず「自分の家」で気密測定を行うようにしましょう。
「手抜き工事」のリスクを抑えられる
気密測定を行えば、施工品質がダイレクトに数値化されるため、職人からすると手抜きができなくなります。あとでバレてしまいますからね。
実際に、「気密測定を行う現場」と「そうでない現場」とでは現場の緊張感が全然違いますから、気密測定は手抜き工事のリスクを下げることにもつながる、と覚えておいてください。
数値悪くても、「手直し」が可能
気密測定を行って、計測結果が悪かったとしても、その時に「手直し」を行えば気密性能の担保が可能です。
ただ建物が完成してしまうと手直しできなくなってしまいますので、万が一悪い結果だとしても手直しができるよう、断熱施工後に測定を行う方針で依頼しておきましょう。
気密測定は、いつ、何回実施すべき?
もちろん「断熱施工後」と「完成後」の計2回が理想ではありますが、手直しできるのは「断熱施工後」まで。つまり完成後に再度測定を行ったとしても、コストがかかる上に、悪かったとしても手直しができないんです。
そのため、気密測定は「断熱施工後に1回」が理想です。(手直しを行った場合は、補修効果が出てるか?を確認するためにも再度測定しましょう)
実際の「気密測定~手直し」の流れは?
①開口部(玄関ドア・窓)をすべて閉める
断熱工事が終わったら、玄関ドアや窓などの「空気が漏れる箇所」をすべて閉めます。
玄関ドアがまだ搬入されていない場合には、測定用に「仮のドア」が入っていることがありますが、この場合は仮ドアによる隙間を「目張り」で塞ぎます。
「目張り」とは、ガムテープや養生用のテープなどで隙間を埋める作業のこと。
仮ドア+目張りで「正しい数値」が測定できる?
確かに仮ドア+目張りだと、100%正確な数値は出ません。
しかし玄関ドアが設置されてから気密測定を行ってしまうと、先にお話ししたように「手直し」ができなくなってしまいます。
そのためBE ENOUGHでは、断熱施工後に「仮ドアを目張りをして測定する」のが最適だと考えています。特に玄関まわりは、多少の目張りは仕方がないことですから、その点は許してあげてくださいね。
ただし、どこもかしこも目張りで対応する業者は要注意!
②気密測定を行い、「C値」と「n値」を確認する
隙間を埋め終わったら、実際に「気密測定器」を使って計測していきます。
測定が終わると、写真のような紙に『C=〇〇㎠/㎡』と数値が表示されるのですが、この部分が「C値」になります。
BE ENOUGHが推奨しているちょうどいい塩梅の気密性能は『C値=0.7以下』ですので、この数値が「0.7(0.5以下を目指す)」を下回っていれば、気密性能は十分に担保できていると言ってもよいでしょう。
関連記事:『C値(気密性能)の測定基準・推奨レベルはどのぐらい?|よくある質問にも回答!』
隙間の大きさを表す「n値」も確認しよう!
少しマニアックな話ですが、余裕があれば「n値(隙間特性値)」も確認するようにしましょう。
このn値とは「隙間の密度」を表す数値で、「1に近いほど隙間が小さく、手直しのしようがない良い状態」を示します。逆に、2に近い状態(1.8や1.9)というのは、どこかに大きな穴が空いている状態ということですね。
なので、ざっくり「1に近ければ手直しの必要はないし、2に近ければ手直しの余地がありますよ〜」という基準で覚えておいてください。
③必要な箇所に「手直し」を行う
C値やn値の結果から手直しが必要な隙間が見つかった場合は、発泡ウレタンガンなどを使って隙間を埋めていきます。
手直しがすべて完了したら、再度気密測定を行い、元の数値よりも良くなっていることを確認して完了です。
手直しは1回だけで十分?
基本的に数値が悪かった場合の手直しは、1回だけで十分です。
2回、3回と行ってもあまり変化はないですし、目張り(換気口などに一時的なスキマを埋めるためのテープ)の隙間のせいで数値が上がっている場合もあります。
初回の数値が悪かった場合には、「手直し(1回)+再測定」。これで十分かと思います。
「気密性能の担保」と併せて知っておくべき注意点は?
「気密性能」と「換気性能」はセットで考えよう!
気密性能が低い家の場合、当然スキマから外気が入り込んでしまいますが、これは逆に言えば「ある程度換気ができている状態」。
一方で高気密住宅の場合は、「家がスキマなくしっかり密閉されている」わけですから、強制的に空気を入れ替えてあげないと、室内の空気はどんどん澱み、CO2濃度は上がり、ハウスダストは増え…、と健康被害にもつながりかねません。
そのため高気密住宅を目指す際には、気密性能(C値)でなく、平行して「換気性能の担保」についても怠らないようにしてください。
換気は、「24時間換気システム」があればOK?
結論、24時間換気システムがあれば全く問題ないです。ただこれは、「その換気システムがしっかりメンテナンスされている」という前提での話です。
というのも、換気システムの多くは換気口が「壁の高い位置」や「天井」に設置されるため、フィルター掃除などの定期的なメンテナンスがしづらいんです。メンテナンスがしづらいと掃除も億劫になりますから、気づかぬうちにフィルターが目詰まりしていて、実はぜんぜん換気されていなかった…というようなことにも。
もちろん定期的に掃除できるのであれば問題ありませんが、メンテナンスのしやすさを考えると、「床近くに換気口があるタイプの換気システム」が推奨ですね。
「負圧対策(部屋の気圧)」も考えておこう!
高気密住宅では、家が密閉されているわけですから、例えば締め切った状態でレンジフードの換気扇を回して室内の空気が外に排出すると、排出した分だけ「室内の気圧」が下がるため、玄関ドアが家に張り付いて、ものすごく重たくなってしまいます。
これを「負圧」と言うのですが、気密性能が高いとこの「負圧問題」も考えておかないといけません。
対策としては、排出と給気を同時に行う「同時給排気型のレンジフード」にするか、「差圧給気口」の設置が最適です。
「負圧対策」については、以下の記事で詳しくまとめていますので、こちらも併せて参考にしてみてください。
関連記事;『【高気密住宅の負圧問題】同時給排気型レンジフードと差圧給気口を徹底比較!あなたに最適な選択肢とは?』
まとめ
気密性能(C値)や気密測定について、抑えておくべきは以下の4点です。
気密測定について抑えておくべき点
- カタログ・モデルハウスの「C値」は参考にならない!
⇒必ず「自分の家」で気密測定を行おう! - 気密測定は、「手抜き工事」のリスク軽減にも有効!
⇒万が一悪くても、「断熱施工前」であれば手直しも可能! - 「気密性能」と「換気性能」はセットで考えよう!
⇒気密性能が高いまま、換気がされないと劣悪な環境に… - 気密性能を高めた分、「負圧対策」も頭に入れておこう!
性能で迷ったら「せやま基準一覧表」
BE ENOUGHでは、住宅会社選びのための補助ツールとして、「せやま性能基準」と「せやま標準仕様」の2つからなる「せやま基準一覧表」を無料配布しています。
「せやま性能基準」を使えば、上記で紹介したように各建材について、「完全に不足→少し不足→ちょうどいい塩梅→余裕があれば」と家づくりで抑えておくべき性能レベルを検討できます。
詳しい使い方に関しては、下記リンク先の記事をご覧ください
ダウンロードページ:『せやま基準一覧表|お役立ちツール|BE ENOUGH』
合わせて読みたい記事:『営業マンより「家の性能」に100倍詳しくなる方法|せやま性能基準』
解説動画(YouTube):『家づくりの超実践ツール「せやま基準一覧表」の使い方<総集編>』