2024.11.30
目次
高気密住宅のデメリットは「換気不足が生じやすい」こと
高気密高断熱住宅と聞くと、「冬暖かくて夏は涼しい!」、「年中快適な住環境を実現する」といった良いイメージが浮かびませんか?
これはもちろん合っていますし、間違いありません。
しかし高気密高断熱住宅は、家が密閉されているがゆえに「換気不足が生じやすい」というデメリットがあります。
そこで今回は、高気密住宅のデメリットとして、換気が不足してしまうとどういった問題が生じうるのか?について、解説していきます。
高気密と換気はセットだよ!
実際にどういった換気システムを選ぶべきか?という内容については、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:『第一種換気はマスト?換気システムの種類や選び方、メンテナンスについて徹底解説!』
高気密高断熱住宅で換気が不足してしまうと…?
(出典:ダイソン)
まず高気密高断熱住宅で換気が不足してしまうと、以下のような問題が生じます。
- ①二酸化炭素濃度が高くなり、頭痛・倦怠感・不眠につながる
- ②アレルギー性疾患が悪化してしまう
それぞれ詳しく解説していきましょう。
①二酸化炭素濃度が高くなり、頭痛・倦怠感・不眠につながる
なぜ二酸化炭素濃度が上昇してしまうのか?
突然ですが、縁起でもない話をします。練炭自殺の手順を思い浮かべてください。
- 目張りをする(気密化)
- 練炭を焚く(一酸化炭素を発生させる)
目張りは、車の外に空気が漏れないように「車の隙間」を埋めていく作業です。次に練炭を焚きますが、発生させるのは一酸化炭素(CO)です。このように気密化された車内で一酸化炭素を発生させると、車内にいる人は「一酸化炭素中毒で死に至る」というわけですね。
勘のいい方は、すでにお分かりかもしれませんが、住宅の高気密化は練炭自殺の目張りと全く同じです。
家の場合は一酸化炭素(CO)ではなく「二酸化炭素(CO2)」ですが、空気の逃げ場のない高気密住宅の中で人間が暮らすと、二酸化炭素中毒(酸欠状態)になってしまうわけです。
二酸化炭素濃度の上昇は、なぜ身体に悪いのか?
二酸化炭素濃度が高い家は、満員電車の環境に近い
二酸化炭素(CO2)は、一酸化炭素(CO)ほど強い毒性はありませんが、確実に身体へ悪影響を及ぼします。
まず、満員電車や窓を閉め切った会議室をイメージしてください。どんな症状が出ますか?
気分が悪い、空気が悪い、息苦しい、頭が痛い、集中できない、こんな感じではないでしょうか?この症状こそが、二酸化炭素濃度の上昇(酸欠状態)による身体への悪影響と考えてもらえばOKです。
酸欠状態になると、「睡眠の質」にも影響が出る
<約3人に2人は睡眠に何らかの問題を抱えている>
(出典:厚生労働省)
酸欠状態になると、脳は生命維持のため、活動を抑えようとします。その結果、頭がぼーっとしたり、眠くなったりすると言われています。酸欠状態は、「脳のCPUが下がる」なんて言い方もしますね。
酸欠状態の主な症状は以下の通りです。
- 睡眠の質が下がる
- 頭がぼーっとする
- うとうと眠くなる
- 疲れが取れない
- 集中できない など
この中でも最大のデメリットとなるのが、「睡眠の質が下がること」です。
ほぼ毎日家で寝ますよね?つまり、高気密住宅で換気システムを間違えてしまうと、その家に住む限り一生「睡眠の質が低いまま」になってしまうんです。
二酸化炭素濃度の適正値は?
では、実際にどのぐらいの二酸化炭素濃度が適正値なのでしょうか?
結論から言いますと、「1,000ppm以下」での維持が必要です。外気が450ppm前後ですので、外気の2倍強ですね。
1,000ppmくらいまでは、健康への悪影響はないとされており、大きなオフィスビルなどに適用される「ビル衛生管理法」でも、「二酸化炭素濃度は1,000ppm以下」と規定されています。
以下、二酸化炭素濃度と健康への影響の関係性です。以外と身近な環境でも、1,000ppm以上になっていることが分かりますね。
(出典:NEWS PICKS 産業医/大室正志先生)
②アレルギー性疾患が悪化してしまう
2つ目は、ハウスダスト環境が悪化することによるアレルギー性疾患の悪化です。
高気密住宅は、その名の通り高気密で隙間が少ないので、換気をしない限り、ハウスダストが十分に外に排出されません。 そのため高気密住宅は、人間のみならず、ダニにとっても住みやすい環境になってしまっているとも言えます。
「住宅の高気密化」がアレルギー患者数を増加に
(出典:文部科学省)
近年のアレルギー患者の増加は、住宅の高気密化が要因の一つと言われています。
特に、空気環境と関係性の強い小児喘息(ぜんそく)は、高気密高断熱住宅が普及し始めた1980年代(昭和50年代後半)から、増加傾向にあることが見てわかります。皮肉にも、高気密高断熱住宅のデメリットが数字で示されてしまった格好ですね。
なので、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎を持っている人が、換気システム選びに失敗してしまった高気密住宅に引っ越すと症状がひどくなる…ということもあり得るわけです。
【結論】高気密住宅は「換気システム選び」が重要!
(出典:マーベックス)
先述した2つの高気密高断熱住宅のデメリットを解消するためにも「適切に換気を行っていきましょう!」ということなんですが、窓を24時間開けたままにするのは不可能ですから、これらのデメリット解消のためには常時換気を行ってくれる「24時間換気システム」、その選び方が重要になってきます。
換気システムの導入自体は、平成15年から義務化されていますので、今から新築を建てるのであれば必ず導入することになるわけですが、中には換気性能が不足しているものもあるので、詳しい選び方については以下記事を参考にしてください。
関連記事:『第一種換気はマスト?換気システムの種類や選び方、メンテナンスについて徹底解説!』
ナイチンゲールに学ぶ換気の重要性
(出典:ウィキペディア)
ナイチンゲールと言う人物をご存知ですか?
近代看護の母と呼ばれ、看護師の教科書である「看護覚書」を遺した人物です。そんなナイチンゲールが遺した「看護覚書」の冒頭に登場する言葉は、“保温と換気”です。
つまり、「身体を冷やさずに、新鮮な空気を体内に取り込み続けることが、健康の基本だよ!」とナイチンゲールは説いているわけです。ナイチンゲールは、クリミア戦争にて“保温と換気”を中心とした、病棟の環境改善に取り組み、野戦病院の兵士死亡率を激減させました。
現代というストレス社会で生きる私たちは、心身の健康の土台となる“保温と換気”の大切さを、今こそ改めて認識すべきではないかと思います。
まとめ
高気密住宅のデメリット、そしてそれに対する対処法については以下の通りです。
高気密高断熱住宅のデメリットは?
- 高気密住宅のデメリットは、「換気が滞りやすい」こと
- 換気を怠った際に生じる「2つの問題」
- ①二酸化炭素濃度の上昇(酸欠状態)
⇒酸欠状態になることで、慢性的な睡眠不足や偏頭痛を引き起こす。 - ②アレルギー性疾患の悪化
⇒ハウスダストを室外に排出できず、アレルギー疾患を悪化させる。
- ①二酸化炭素濃度の上昇(酸欠状態)
- 【結論】高気密住宅は「換気システム選び」が肝!!!
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