2024.11.30
外壁材とシーリングのメンテナンス費用を安くするコツについて、解説していきます。
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目次
外壁材・シーリング選びは、メンテナンス費用を抑える重要ポイント
メンテナンス費用の負担は、持ち家の大きなデメリットです。特に、外壁材・シーリングは、メンテナンス工事に足場を組まないといけないので、メンテナンス費用が高くなりがち。
家を建てる時の外壁材選びで、メンテナンスフリーの期間を倍以上に伸ばすことができるので、しっかりと勉強していきましょう。また、外壁材ばかりに目が行きがちですが、意外と重要なのは、シーリングの選び方だったりします。
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「住宅会社の●●年保証」と「建材メーカーの●●年保証」の違いが重要
メンテナンスと言えば「●●年保証」をイメージする方が多いと思いますが、「住宅会社の●●年保証」と「建材メーカーの●●年保証」には大きな違いがあります。この違いを理解しないと、住宅会社の思うツボになるので、冒頭に解説しておきます。
まず、「住宅会社の●●年保証」は、ほぼ意味ないです。実質、施主に全てを負担させ、住宅会社はリスクを背負わず、なんとなくの安心を演出する住宅会社の営業戦略と言えます。全てではないですが、「住宅会社の●●年保証」は、だいたいこんな感じ。
完成から10年後に有料メンテナンス工事をしてくれたら、次の10年保証を延期します。20年後に有料メンテナンス工事をしてくれたら、また次の10年保証を延期します。それを繰り返して最大●●年まで保証します。もし有料のメンテナンス工事をしなければ、保証は打ち切ります・・・
10年ごとにちゃんと工事すれば、そりゃ保証できるでしょって話。しかも、それを施主の負担でやるんだから、住宅会社の保証でも何でもありません。そして、メンテナンス工事を行うのは、もちろん住宅会社のグループ会社限定で、相見積もりはとれないので、金額交渉もできません。
<長期保証制度と聞けば、イメージは良いが・・・>
(出典:SUUMO)
一方、「建材メーカーの●●年保証」は、建材選びの参考になります。メーカーの保証は、無難な年数(まず壊れないであろう年数)に設定されています。例えばテレビのメーカー保証は、だいたい1年です。1年では、まず壊れないですよね?
また、建材メーカー保証年数は、製品の質に比例しています。同じメーカーの製品でも、保証無・10年保証・15年保証・・・とあります。「建材メーカーの●●年保証」は、製品の質に比例、かつ無難な設定になっているので、建材選びの参考になるというわけです。
<建材メーカーの保証年数は、製品の質に伴って長くなる(例:外壁材の保証年数)>
(出典:ニチハ)
【結論】ちょうどいい塩梅の『外壁材・シーリング』は?
ちょうどいい塩梅の「外壁材・シーリング」は、以下の通りです。
①外壁材 ⇒ 15年塗膜保証の窯業系サイディング(セルフクリーニング機能付)
②シーリング ⇒ 15年ひび割れ保証の高耐久シーリング
※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。
①外壁材の種類
まずは、外壁材の種類を、ざっと解説します。
(出典:外壁塗装110番)
・窯業系サイディング
最も一般的な外壁材ですね。メリットは、デザイン性・メンテナンス性・コストなど、全体バランスが良いことがあげられます。
デメリットは、外壁表面の汚れ対策やシーリングの選び方を間違えると、メンテンナンス費用がかさむことです。窯業系サイディングの中でも、種類がたくさんあるので、細かい選び方は、後半でご紹介します。
・塗り壁(塗装、左官)
メリットは、デザインでしょう。デザインにこだわる方が、外壁材に塗り壁を好む傾向があるように思います。デメリットは、初期コストとメンテナンス費用の高さです。デザインと引き換えになるので、何を優先するか?という判断になってきます。
・金属サイディング
昔はデザインがダサかったので敬遠されていましたが、最近はラインナップが増えて、少しずつ人気がでている外壁材と言えます。メリットは、デザイン性・軽さによる施工のしやすさです。
一方、デメリットは、サビや部分交換の難しさなどのメンテナンス性の悪さです。外壁材は、窓などの「穴が開いている部分」が多いので、どうしても切り口が多くなってしまい、そこからサビが発生してしまうリスクが高まります。
・ALC
メリットは、防火性です。デメリットは、なんといっても、表面塗膜が落ちると急激に水に弱くなることです。形状がスポンジ状になっていますので、外壁材の塗膜メンテナンス意識を強く持っておく必要があります。
・タイル
メリットは、基本的に外壁材の表面汚れに関するメンテナンスが不要だということです。
デメリットは、初期費用の高さと耐震性。外壁材の下地が劣化すると、地震等のよって落下する恐れがあります。また、タイルといえど窓回り等にはシーリングが必要なので、シーリングの選び方には注意してください。
「15年塗膜保証の窯業系サイディング(セルフクリーニング機能付き)」を推奨する理由
ちょうどいい塩梅の「外壁材」は、15年塗膜保証の窯業系サイディング(セルフクリーニング機能付き)です。以下、外壁材のメリット・デメリットをまとめました。
塗り壁は、デザイン性は高いですが、初期コストが高く、10年に1回程度の表面汚れのメンテナンスが必要。この事を理解した上で、外壁材に塗り壁を採用するのはOKですが、ちょうどいい塩梅とは言えません。
金属系サイディングは、窯業系サイディングの次にバランスのとれた外壁材と言えます。もう少しコストが下がってくるといいですね。
タイルは、初期コストが高い点と、シーリングの選び方次第でメンテナンス費用がかさんでしまう点が懸念です。良い外壁材なので、予算に余裕があれば、検討してみてください。
ALCは、メンテナンスをしなかった場合の雨漏りリスクが高いことが懸念です。防火性が高い外壁材ですが、デメリットの方が大きいと判断します。
<塗り壁は表面汚れが目立つ>
ということで、どの外壁材も一長一短がありますが、窯業系サイディングが、最もバランスのとれた外壁材と言えます。ただし、窯業系サイディングは、タイルに比べて、表面汚れが付きやすいので、「セルフクリーニング機能」と「15年塗膜保証」が必要です。
「セルフクリーニング機能」と「15年塗膜保証」の必要性
窯業系サイディングなら何でも良いというわけではなく、表面汚れの対策「セルフクリーニング機能」が必要です。
15年塗膜保証の窯業系サイディング(セルフクリーニング機能付)であれば、およそ20年は外壁ノーメンテナンスで美観を維持することが可能。もちろん、この15年塗膜保証は「外壁材メーカーの保証」です。
ちなみに、塗膜保証30年のサイディングもありますが、コストがぐんと上がるので、“ちょうどいい塩梅主義”の考えに基づき、あえて15年保証の外壁材で止めておくのが賢明と考えます。
<セルフクリーニング機能付きの窯業系サイディング>
(出典:ニチハ)
セルフクリーニングの種類には、主に「水タイプ」と「光タイプ」があります。
「水タイプ」は、外壁材に水がつかないと汚れが落ちないので、庇の下の部分などの雨が吹き込まない部分は、定期的に水をかけるなどの対策が必要です。
「光タイプ」は、隣家の影などで外壁材に光があたらないと汚れが落ちないため、立地によっては効果を十分に発揮しません。住宅密集地では避けたほうが良いかと思います。
よって、汎用性が高いのは「水タイプ」と言えます。
『タイル=メンテナンスフリーではないの?』に対して
タイルが、優れた外壁材であることは間違いありません。基本的に表面汚れに関して心配がいらない点が、他の外壁材にはない特徴です。
ただし、タイル以外の部分のメンテナンスが必要になるので、安易にタイル=メンテナンスフリーと考えてはいけません。タイル以外の部分とは、シーリングや下地材などです。また、タイル外壁材を採用する場合は、正確な施工はもちろん、適切なメンテナンスがされないと、タイル落下などの重大事故につながります。
つまり、タイルは、表面汚れに関しては基本メンテナンスフリーな外壁材ですが、タイル外壁全体がメンテナンスフリーというわけではないということです。また、初期費用がそれなりに高いので、予算と相談しながら、タイル外壁を採用するか決定してください。
(出典:吉野聡建築設計室)
『塗り壁で、30年メンテフリーとPRしている工務店もあるけど?』に対して
さすがに、それは言い過ぎですね。現状、30年メンテフリーな塗り壁は存在しません。紫外線による変色を防ぐ「耐候性」については、30年効果持続を期待できる外壁素材はありますが、それでも表面に汚れは付きますので、30年メンテフリーは無理でしょう。
ただし、塗り壁も年々進化していて、高耐久タイプの商品が各メーカーから発売されていますので、多少高価格でも高耐久タイプの採用をオススメします。また、外壁面の裏に通気層を作る「通気工法」の採用を推奨します。昔ながら「直塗り工法」だと、カビや雨漏りのリスクが高くなります。
<外壁の通気工法イメージ(塗り壁)>
(出典:富士川建材株式会社)
『外壁材メーカーの保証も、あやしくないですか?』に対して
確かに、「外壁材メーカーの保証」も、免責事項や保証対象かどうかの判断にあいまいな部分はあります。なので、「外壁材メーカーの保証」も100%信頼できる(年数以内だと絶対に保証してくれる)わけではありません。
しかし、「外壁材メーカーの保証」は、製品の質に比例するので、外壁材選びの基準として参考にすることは可能。つまり、営業戦略的な「住宅会社の●●年保証」より「外壁材メーカーの●●年保証」を参考にした方が、賢明な判断ができるんだと考えてもらえればと思います。
<100%信頼するのではなく、外壁材の品質基準として参考にするのが賢明>
(出典:神島化学)
②「15年ひび割れ保証の高耐久シーリング」を採用すべき理由
ちょうどいい塩梅の「シーリング」は、15年ひび割れ保証の高耐久シーリングです。
外壁材の汚れ以上に、メンテナンス工事の原因になりやすいのが、シーリング(コーキング)の劣化。シーリングにも素材別に様々な種類がありますが、素材の選択は専門業者が適切に行ってくれるので、施主が意識すべきは「シーリングメーカーの保証年数」です。
<シーリング選びは、外壁材のメンテンナンス費用を抑える重要ポイント>
通常のシーリングを選択すると、10年に1回程度のメンテナンスが必要になります。これを、「15年ひび割れ保証の高耐久シーリング」を選択することで、おおよそ20年以上はノーメンテナンスで外壁の美観を保つことが可能です。
<外壁シーリングの15年保証タイプと通常タイプの比較>
(出典:ニチハ)
通常シーリングから、「15年保証の高耐久シーリング」へのグレードアップ費用は、10万円以下でしょう(坪数による)。さらに、外壁材メーカー品ではなく、非外壁材メーカー品(ノーブランド品)であれば、さらにコストは安いのでご検討を。
「15年保証の高耐久シーリング」を採用することで、外壁のメンテナンス期間が10年から20年に伸びるため、足場工事などのメンテナンス費用を考えると、十分元が取れるグレードアップになります。
<費用対効果の高い“非外壁材メーカー”の高耐久シーリング>
(出典:サンライズ)
『シーリングレス(コーキングレス)外壁材にすればいいのでは?』に対して
最近、シーリングが不要の「シーリングレス外壁材」が話題になっていますが、結論から言うと、おススメしていません。理屈上は確かに、シーリング不要のため、外壁のメンテナンス費用を削減できるのですが、問題は雨漏り対策・施工の難しさです。
シーリングレス外壁材は、目地がないため、「遊び」がありません。なので、精度の高い施工がなされないと、隙間ができてしまい、雨漏りの原因になるのです。また、家は沈んだり動いたりしますので、その動きによって外壁材の間に隙間が生じるリスクがあります。
複数の外壁職人に「自分の家にシーリングレス外壁材を採用するか?」と質問しましたが、全員「採用しない」との回答でした。
また、窓枠周りなどには、どうしてもシーリング処理が必要なので、完全にシーリング0にはなりません。つまり、シーリングのメンテナンスがやっぱり必要で、雨漏りリスクを高めてしまう外壁材と言えるで、現段階ではあまりおすすめしません。
<シーリングレスの外壁材は魅力的だが、リスクもある>
(出典:ニチハ)
まとめ
ちょうどいい塩梅の「外壁」は、以下の通りです。
①外壁材 ⇒ 15年塗膜保証の窯業系サイディング(セルフクリーニング機能付)
②シーリング ⇒ 15年ひび割れ保証の高耐久シーリング
※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。
【文責:瀬山彰】