2024.11.30
「建て替えVSリフォーム」問題に明確な正解はないのですが、いくつか判断基準を取り上げますので、参考にしてください。
「リフォームしたい!でも、費用結構かかる?なら、いっそのこと建て替える?でもまだ使えるんじゃない?」こんな方向けの内容です。
目次
早急に改善すべき致命的な古家の問題点とは?
「建て替えVSリフォーム」問題以前に、とにかく早急に改善すべき古家の問題点が2つ。地震対策とヒートショック対策です。
まず、地震対策。後で詳しく述べますが、1981年6月以前に確認申請を受けた家は、旧耐震基準なので、地震にとても弱いです。震度6強~7で倒壊する危険性が高いので、早急に対策が必要です。
次にヒートショック対策。昔の家は無断熱住宅が多いため、夏暑く冬寒くなります。年間15,000人以上がヒートショックで命を落としているというデータもあり、こちらも早急に対策が必要です。
【結論】「建て替えVSリフォーム」タイプ別に徹底比較!あなたはどのタイプ?
5タイプ別に建て替えorリフォームの選び方を紹介しますが、最優先すべきは、地震対策とヒートショック対策であることをお忘れなく。
①1981年6月以前に確認申請認可を受けた ⇒ ほぼ建て替え
②雨漏り・シロアリ被害が大きい ⇒ ほぼ建て替え
③間取りを大きく変更したい ⇒ ほぼ建て替え
④家の寒さ・暑さを改善したい ⇒ 建て替えorリフォーム
⑤外壁、壁紙、水回りの設備をきれいにしたい ⇒ リフォーム
①1981年6月以前に確認申請認可を受けた
ほぼ、建て替えで良いでしょう。
1981年6月以前に確認申請認可を受けた家は、旧耐震基準なので、耐震性能が不足している可能性が高いです。南海トラフ地震含め、大地震発生確率が高まっているため、早急に対策が必要。
耐震リフォームを行う方法もありますが、旧耐震基準から新耐震基準並みに補強すると、かなり費用がかかり、耐震補強以外のリフォームも行うとなれば、新築並の費用になってくると予想されます。
<旧耐震基準(1981年6月以前)と新耐震基準の違い>
(出典:SUUMO)
実際に、1981年6月以前の家は、大地震で倒壊しているのか?について、触れておきます。
以下、「熊本地震」の被害データです。最も揺れの強かった益城町にて、1981年6月以前の家の約50%が倒壊・大破。1981年6月と2000年6月の耐震基準改正ごとに、被害確率が下がっている事がよく分かります。
<熊本地震での確認申請時期別の倒壊確率>
(出典:国土交通省 国土技術政策総合研究所)
また、2018年に起きた「大阪北部地震」の最大震度は6強でしたが、9棟が全壊。1981年以降の新耐震基準の家の倒壊データが発表されていないため、倒壊はすべて1981年以前の家と推定されます。
1981年以前の家は、震度6以上の揺れで倒壊する可能性が十分にあるという事です。
関連記事:本当に必要な7つの「地震対策」|耐震性能は、耐震等級ではなく設計士の質で決まる!?
<大阪北部地震 被害状況>
(出典:内閣府 ※一部加工)
『大地震の発生エリアは限られているのでは?』に対して
そんなことはありません。震度6以上の発生エリアは、以下の通り日本全国に分布しています。
2000年4月~2019年4月の20年間で、震度6以上の地震は、日本全国で31回起きています。(近隣震源地・3日以内発生地震は非カウント)
<震度6以上の震央分布図>
(出典:気象庁)
ちなみに、2018年大阪北部地震の原因になったとされる「有馬高槻断層」による地震発生確率予想は、「30年以内にほぼ0%~0.03%」とされていましたが、実際に地震は起きました。
地震予測はとても難しく、私たちは常に地震発生リスクにさらされていると言えるでしょう。
<大阪北部地震発生以前に発表されていた地震発生確率>
(出典:政府 地震調査研究推進本部)
『1981年6月以降の新耐震基準なら大丈夫?』に対して
大丈夫かどうかは明確に答えは無いですが、1981年5月以前よりは強く、2000年6月以降より弱いことは確かです。2000年6月は、直近での建築基準法改正が行われたタイミングです。今一度、熊本地震の倒壊率データをご覧ください。
<熊本地震での確認申請時期別の倒壊確率>
(出典:国土交通省 国土技術政策総合研究所)
倒壊確率は、1981年6月以前に比べたら圧倒的に低いですが、2000年6月以降に比べると高いことが分かります。耐震リフォームだけであれば、100万円以下で実施できる工事もありますので、1981年6月~2000年5月の家の場合は、検討してみてください。
<耐震補強工事>
(出典:木耐協 監修・発行「木造住宅 耐震百科」)
②雨漏り・シロアリ被害が大きい
雨漏りやシロアリの被害が大きい場合は、ほぼ建て替えで良いでしょう。
もちろん、雨漏りを止めたり、シロアリを駆除することはできますが、一度被害を受けると家の強度は著しく低下し、強度を回復することは難しくなります。特に、シロアリ被害は床下に集中するため尚更です。
以下、阪神淡路大震災のシロアリ被害と家屋倒壊の相関性を示すデータです。シロアリ被害があると、明らかに家屋の倒壊リスクが高まっているのが分かります。
関連記事:新築時の適切な「シロアリ対策」|防蟻剤だけではシロアリ被害を防げない!?
<阪神淡路大震災で倒壊した家のシロアリ被害率>
(出典:日本建築学会 近畿支部 -木造建物の被害-)
『地盤沈下して、家が傾いている場合は?』に対して
地盤沈下(正確には不同沈下)で家が傾いている場合は、程度によりますが、建て替えを選択するケースが多いでしょう。
不同沈下を元に戻すリフォーム工事がありますが、費用も高く、そもそも家の重さに耐えられない地盤に家が建っているので、再発の危険性があります。地盤調査が義務化になった2000年以前の家は、地盤調査されていない可能性が高いので要確認です。
関連記事:「地盤改良工事・基礎工事」の適正な強度とコストを抑える方法|地盤改良費用はコストカットできる!?
③間取りを大きく変更したい
間取りをガラッと大きく変更した場合は、リフォーム費用が建て替え費用に近づくため、建て替えになることが多いでしょう。
TV番組「ビフォーアフター」などで紹介される大規模リフォームは、余裕で費用が1,000万円を超えています。費用は掛かってでも、リフォームにこだわる理由がある場合はいいですが、それ以外は、建替えに分があります。
本当に、大きな間取り変更が必要か?を今一度考えつつ、最優先すべきは、地震対策とヒートショック対策であることをお忘れなく。
<大改造!!劇的ビフォーアフターの一コマ>
(出典:大改造!!劇的ビフォーアフター)
『建て替えると、規制で家が小さくなるのですが?』に対して
建築時にはなかった建築規制により、建て替えると家が小さくなる場合があります。土地に余裕があれば、建築規制の範囲内で建て替えてもいいですが、そうでない場合は、リフォームを選択せざるを得ないでしょう。
同じサイズの家が建たないどころか、そもそも再建築不可ということもあります。
④家の寒さ・暑さを改善したい
地震と同じく、最優先で対策すべきヒートショック対策。窓リフォーム程度であれば、リフォームで十分。窓・断熱・気密など含めて改善したい場合は、費用次第で建て替えとなります。
家が寒いということは、壁内部の結露も予想されるので、躯体が傷んでないかも合わせてチェックしましょう。躯体が傷んでいる場合は、雨漏り・シロアリ被害が大きい場合と同様、家の強度が低下しているので、建て替えが有力になります。
断熱に関する法律が初めて制定されたのが1980年なので、1980年以前の家は無断熱で寒いのは当然です。なので、見た目をきれいにするリフォームより、命を守る断熱リフォームを優先すべきです。
<年間15,000人以上がヒートショックで亡くなっている>
(出典:東京都健康長寿医療センター)
断熱リフォームは、地震と同じく最優先ですが、断熱リフォームで最優先なのは、「窓リフォーム」です。今の窓を取り外さずに工事できる「リフォーム用の内窓」もあるので、検討してみてください。
窓以外の壁や床も断熱リフォームが可能です。1980年代以前の無断熱住宅であれば、窓・壁・床を断熱リフォームすれば、かなりの違いを感じられるはず。「冷えは万病の元」ですから、ヒートショックのみならず、健康的な暮らしのために、断熱リフォームの検討を。
もちろん、脱衣所を暖房器具で暖めておくなど、リフォーム以外でもヒートショック対策もお忘れなく。
関連記事:「窓」の種類と失敗しない選び方|サッシ・窓ガラス・スペーサーの推奨レベル
<今ある窓をそのままにリフォームできる断熱内窓>
(出典:YKK AP)
『ヒートショックで亡くなるのは高齢者でしょ?』に対して
ヒートショックと言えば、高齢者・お風呂と言うイメージがあると思いますが、実は働き盛りの世代も注意が必要です。20代30代の男性が、「就寝中に布団の中で亡くなる」というケースです。
お風呂でのヒートショックは、急激な温度変化に脳が耐えきれず、意識を失い溺死しますが、布団でのヒートショックは、肺に取り込まれた冷気が心臓にショックを与え、心臓発作で亡くなると言われています。
若い世代は肺活量が多く、冷気による心臓へのダメージが大きいためと考えられ、スポーツ選手の不幸も多くみられます。電気代を節約するために、就寝中はエアコンを止めて、冷気の中で布団にくるまって寝るのは、リスクが高いので絶対にだめです。
<体力のあるスポーツ選手も例外ではない>
(出典:FOOTBALL CHANNEL ※一部加工)
⑤外壁・壁紙・水回りの設備をきれいにしたい
外壁・壁紙・水回りの設備をきれいにしたい場合は、リフォームで十分。程度にはよりますが、300~700万円程度におさまるでしょう。1981年6月以降に確認申請認可を受け、少しくたびれてきた感じの家が該当してきます。
(出典:ニチハ)
『ローンは、建て替えとリフォームのどっちが有利?』に対して
圧倒的に、建て替えが有利です。建替えであれば、期間35年変動金利0.5%クラスの住宅ローンを使うことができます。
一方リフォームの場合は、期間は長くて15年程、金利は良くても2%程で、かなり不利です。上限金額も1,000万円くらい。ただし、ローン控除などの税制優遇は、リフォームでも受けることができるので、使えるものはしっかりと使ってください。
<リフォームローン例>
(出典:三菱UFJ銀行)
まとめ
5タイプ別に建て替えorリフォームの選び方を紹介しますが、最優先すべきは、地震対策とヒートショック対策であることをお忘れなく。
①1981年6月以前に確認申請認可を受けた ⇒ ほぼ建て替え
②雨漏り・シロアリ被害が大きい ⇒ ほぼ建て替え
③間取りを大きく変更したい ⇒ ほぼ建て替え
④家の寒さ・暑さを改善したい ⇒ 建て替えorリフォーム
⑤外壁、壁紙、水回りの設備をきれいにしたい ⇒ リフォーム
【文責:瀬山彰】