2024.11.30
窓ガラスの性能は、「ガラスの枚数」と「ガラスとガラスの間に入れる気体(中空層)」によって変わります。
窓サッシほど重要ではありませんが、窓周辺の冷えや夏場の暑さなどにもかかわってくるので、しっかり押さえておきましょう!
実際の実験結果も踏まえて紹介するよ!
「窓について、抑えておくべき知識を網羅したい!」という場合は、以下記事を参考にしてみて下さい。
関連記事:『【完全攻略】新築の「窓選び」最適解は?窓の種類・性能・設置すべき方角/配置など徹底解説!』
目次
【結論】”ちょうどいい塩梅”の「窓ガラス(中空層)」は?
窓ガラスは、「ガラス」と「中空層」の組み合わせから成るのですが、BE ENOUGHが推奨している窓ガラスは「Low-Eトリプルガラス×アルゴンガス」、「Low-Eペアガラス×アルゴンガス」の2つ。
「窓ガラス×中空層」の性能ランキング
- Low-Eトリプルガラス×クリプトンガス
- Low-Eトリプルガラス×アルゴンガス(推奨)
- Low-Eペアガラス×アルゴンガス(推奨)
- Low-Eペアガラス×空気
今やほとんどの住宅会社がLow-Eペアガラスを採用しているので、「シングルガラス」や「ペアガラス」を採用する会社は、かなり時代に取り残されていると思ってもらってOKです。
ガラスと中空層の組み合わせによって、性能が変わってくるので、「ガラスの枚数」と「中空層」それぞれ解説していきます。
窓ガラスの要素①:ガラスの枚数
ガラス枚数によるグレードは「4つ」!
ガラスには枚数によって、「Low-Eトリプルガラス」、「Low-Eペアガラス」、「ペアガラス(複層)」、「シングルガラス(単板)」と4つのグレードに分けられます。
性能が低いものから順に、それぞれ説明していきましょう。
シングルガラス(単板)
この1枚だけのガラスが一番下のグレードですね。これを注文住宅で使う会社は、なかなかないでしょう。
ペアガラス(複層)
次のグレードが、2枚のペアガラスですね。複層ガラスと呼ばれることもあります。
Low-Eペアガラス(Low-E複層)
上から2つ目のグレードが、BE ENOUGHが推奨する「Low-Eペアガラス(Low-E複層)」です。
このLow-Eペアガラスは、その名の通り「2枚のガラス」から成るのですが、その2枚のガラスの内側に「Low-E」という金属の皮膜、つまり断熱性能を高める特殊な膜が貼られています。
Low-Eトリプルガラス(Low-E三層)
一番上のグレードが「3枚のガラス」から成るLow-Eトリプルガラス。
ガラスの枚数が3枚と多いため中空層も2層あり、さらにはLow-Eの金属皮膜もあるスペシャルなガラスなので、性能が高い分、コスト的にもかなり高くつきます。
日射遮蔽型?日射取得型?
ちょっとマニアックな話ですが、Low-Eペアガラスにも「日射遮蔽型」と「日射取得型」の2種類があります。
日射遮蔽型は、Low-Eのフィルムが外側についているので日射を遮蔽してくれて夏に強い窓です。一方で、日射取得側の窓はLow-Eのフィルムが内側についているので冬に強い窓ですね。
よく「南側には日射取得型、東西には日射遮蔽型をつけましょう」と言われますが、私としては全部「日射遮蔽型の窓」にするのがおすすめです。
なんで「Low-Eペアガラス」で十分なの?
Low-Eトリプルガラスは費用対効果が高くない
もちろん断熱性能的には「Low-Eトリプルガラス」の方が優秀なんですが、「Low-Eぺアガラス」から「Low-Eトリプルガラス」にグレードアップした場合、性能面・費用面は以下のような形になります。
「Low-Eペア」⇒「Low-Eトリプル」にした場合
- 断熱性能:1~2割程UP
- 費用面:2~3万円/坪
もちろん仕入れ価格にもよりますが、坪2~3万円ということは延床30坪の家であれば、60万円以上コストが上がってしまうわけです。
「断熱性能が1~2割アップする」とはいえど、結構費用がかさんでしまいますよね。
実際にLow-Eペアガラス」で検証してみた(冬)
実際に私の自宅も「Low-Eペアガラス」を採用しているので、「窓の表面温度がどれくらいになるのか」、「本当にLow-Eペアガラスで十分なのか?」、以下の条件で計測してみました。
<計測条件>
【冬】室外温度:6℃/室内温度:20℃/相対湿度:50%
露点温度:9.3℃(9.3℃以下になると結露が発生する)
<検証結果>
窓の表面温度は「18.6℃。」
このように、Low-Eペアガラスであっても窓の表面温度は「18.6℃」と室内温度の20℃にほぼ近い数値が出ました。(ちなみに2回冬を過ごしていますが、風呂窓以外結露の発生は一度もないです。)
先ほどの費用対効果と、上記検証結果を踏まえると「Low-Eペアガラスで十分」だと思います。
ただし、「省エネ地域区分1~4地域(寒冷地)に住んでいる」、「資金に余裕がある!」という場合は、Low-Eトリプルガラスを検討するのもありだと思います。
関連記事:『断熱等級5を推奨!UA値の基準値と断熱性能の上げるために抑えるべき点を徹底解説!!』
Low-Eペアガラスであれば結露を防げる?
結露の話になると、「Low-Eトリプルガラスの方が良いんじゃないですか?」「Low-Eペアガラスだと結露が心配なんです」と言われることもありますが、もちろんLow-Eトリプルガラスの方が性能も高いので、予算上問題なければ「Low-Eトリプルガラス」にして良いと思います。
ただし、Low-Eペアガラスでも絶対湿度計で9~10g/㎥の湿度にコントロールしておけば、結露のリスクは非常に低いです。
もちろん結露の可能性はゼロではありませんがリスク自体は低いので、ここにお金をかけてLow-Eトリプルガラスにするくらいなら「その分サッシにお金をかける」というのが得策です。
以下動画で結露のメカニズムについてお話ししていますので、こちらも併せて参考にしてみてください。
参考動画(YouTube):『窓の結露が起きる仕組みと効果的な2つの対策|絶対湿度と窓サッシ』
窓ガラスの要素②中空層
(出典:AGC)
単板ガラス以外は、ガラスが2枚になるのですが、このガラスとガラスの間のことを「中空層」といいます。
この中空層に「どんな気体が入っているか?」によって断熱性能が変わるのですが、中空層については以下3種類です。(ちなみに「真空」という選択肢もありますが、これはちょっと特殊なので今回は除外します。)
性能が低いものから順に、それぞれ説明していきましょう。
空気
一番下のグレードは「空気」です。(「ドライエアー」と呼ばれることもあります)
アルゴンガス
2つ目のグレードは、BE ENOUGH推奨の「アルゴンガス」です。
空気(ドライエアー)でも悪くはないんですが、アルゴンガスにしても30坪の家で5~6万円くらい、対して断熱性能は10~20%上がるので費用対効果としてはかなり優れていると思います。
クリプトンガス
一番上のグレードは「クリプトンガス」。
これは確かにアルゴンガスよりも性能が高いんですが、アルゴンガスとそこまで変わらないので費用対効果は低めだと思います。
性能を考えるなら「クリプトンガス」?
ここで「クリプトン」や「真空」に変更すると、またぐんと費用がかさみますので、「アルゴンガスで止めておく」というのが賢明な判断といえます。
ただし何度も言いますが、窓はとても重要な建材。凝ったデザインにお金をかけるくらいなら、窓にお金をかけるのは賛成です。
<空気・アルゴンガス・クリプトンガスの断熱性能比較>
(出典:エクセルシャノン)
”窓ガラス”のよくあるQ&A
まとめ
窓ガラス・中空層を選ぶにあたって抑えておくべきは以下の4点です。
ちょうどいい塩梅の「窓ガラス・中空層」の選び方
- 窓ガラスは「枚数」×「中空層」で選ぶ!
- 「Low-Eペアガラス×アルゴンガス」が推奨!
(寒冷地の場合は、「Low-Eトリプルガラス」も視野に) - Low-Eは、「全て日射遮蔽型」がおすすめ!
- 窓の断熱性能を上げると、熱は「壁」から逃げるように!
性能で迷ったら「せやま基準一覧表」
BE ENOUGHでは、住宅会社選びのための補助ツールとして、「せやま性能基準」と「せやま標準仕様」の2つからなる「せやま基準一覧表」を無料配布しています。
「せやま性能基準」を使えば、上記で紹介したように各建材について、「完全に不足→少し不足→ちょうどいい塩梅→余裕があれば」と家づくりで抑えておくべき性能レベルを検討できます。
詳しい使い方に関しては、下記リンク先の記事をご覧ください。
ダウンロードページ:『せやま基準一覧表|お役立ちツール|BE ENOUGH』
合わせて読みたい記事:『営業マンより「家の性能」に100倍詳しくなる方法|せやま性能基準』
解説動画(YouTube):『家づくりの超実践ツール「せやま基準一覧表」の使い方<総集編>』