2024.11.14
家づくりは一生に一度の大勝負です。人気のある間取りや流行りの間取りが良いわけではなく、意外な落とし穴がある場合もあります。そこで、今回は施主のことを考えている良いプランナーであれば提案しない時代遅れの間取りを11個紹介します。使いやすさや機能面だけではなく、将来的にも後悔しない間取りを作る参考にしてください。
これから家を建てる人はもちろん、リフォームをしようと思っている人、将来的に家を建てたいと思っている人が、あらかじめ心得ておきたい知識を紹介しますよ。
今回は以下を詳しく解説していきます。
目次
①リモートワークスペース
「リモートワークのスペースは確保すべき」という話は多いですが、最近では出社の企業も増えています。リモートワークスペースを作ること自体は良いですが、「これからはリモートワークだ!」「出社しないからめちゃくちゃ田舎に建てよう!」と張り切って考えるのはやめた方が良いです。
「せやまどり」で執務スペースを作るのは?
「せやまどり」では執務スペースを作っています。これはリモートワークをする場合だけを想定しているのではなく、会社以外でも仕事をすることを考慮しています。帰ってから勉強やさらなる仕事をして給料を上げる人のためのスペースです。そのため、最低限の執務スペースを作っていくことは推奨しています。
子どもの勉強スペースは?
子どもの勉強スペースは作っても良いですが、「子ども専用!」として広く作る必要はありません。執務スペースと兼用にするなど、将来的には大人が作ることを想定して作ってください。
子どもが勉強スペースを使う時期は短く、小学校の高学年になるといずれは自室で勉強するようになります。勉強スペースは小学校の低学年くらいまでしか使いません。
②窓が少なすぎる家
高気密・高断熱住宅にするためには、熱の出入りが激しい場所である窓は邪魔者です。「窓をなるべく減らしましょう」というのは正しいです。ただし、やり過ぎは禁物。
窓は高いため、窓を減らすことで住宅会社は原価を下げることができるというメリットがあります。ただし「窓を〇個減らしたので、〇円値下げしました!」なんていう会社はほとんどありません。窓は減らしすぎず、ちょうどいい塩梅にしてください。
窓を付けるべき箇所
リビングとダイニングには、絶対に窓が必要です。大きな窓を付けてください。階段ホールも暗いと微妙なので、小さくても良いので明かり取りの窓を付けてください。
水回りであれば、洗面所に付けるのがおすすめです。脱衣所に付けて人影が外に映ると気持ち悪いので、洗面側や洗面所の近くに付けてください。
その他、各居室にも窓が必要です。2階の部屋が暗くならないように窓を付けてください。
窓が不要な場所
トイレや脱衣所、お風呂には窓は要りません。また、「居室に窓を2個付けたい」という人もいますが、2個は要りません。「2箇所の窓で風を通したい!」という人は付けても良いですが、そんなに広くないので1個で十分です。
その他、東西の窓は避けてください。どんなに高性能な樹脂サッシでトリプルガラスにして断熱性能を上げても、東西に大きな窓を付けたら意味がありません。夏の日射はすごいので、東西に大きな窓は付けないようにしてください。どうしても付けなければならない場合は、絶対に日射遮蔽をしてください。特に2階は遮るものが少ないので、どんどん日射が入ってきますよ。窓は原則として南に付けるか、南が無理なら北に付けてください。東西に大きな窓を付ける場合は、アウターシェードが必須です。
③ファミリークローゼット
「せやまどり」でも導入しているファミリークローゼットは、それ自体が悪いわけではありません。1階に収納を充実させる、1階にウォークインクローゼットを作ることは大正解で、やるべきです。
ただし、ファミリークローゼットだけに集約しすぎている間取りには注意してください。「1階に大きなウォークインクローゼットがあるので、各部屋には全然収納がない」というような間取りはマジでやめた方が良いです。子どもが小さい時は良いですが、成長したら自分の部屋で着替えたり、自分で部屋を管理します。
収納は、原則として分散させてください。さらに、「隙あらば収納」の考え方が大事です。衣類だけに限らず、トイレや洗面、キッチンや玄関などにも収納を散りばめてください。子ども部屋にも最低限のクローゼットは付けていくことが大切ですよ。
④ウォークスルー型収納
回遊動線が好きな人は多いですが、通路が多くなるということは有効スペースが減るということなので注意してください。通路は通ることしかできず、そこには物を置けません。通路はなるべく短くしてください。
「どうしてもウォークスルー型収納にしたい」「回遊動線にしたい」という場合は良いですが、なんでもウォークスルー型にするのはおすすめしません。
たとえばシューズクロークをウォークスルー型にして「お客さん用のゾーンと家族用のゾーンに分ける」なんてしても、家族みんなお客さん用を通ります。ウォークインクローゼットもウォークスルー型にこだわっていると間取りが難しくなって無駄なスペースが増えてしまいます。こだわりすぎないでくださいね。
靴を脱いだ状態で取りに行ける方が良いのでは?
確かに靴を脱いだ状態で取りに行ける方が便利ですが、それをするとスペースが広くなることがあります。スペースに余裕がある場合は玄関ホールからアクセスできるシューズクロークにしても良いですが、難しい場合は小さめのシューズボックスを付けてホール側からアクセスするようにするのがおすすめです。
⑤洗面所にトイレを付ける
お風呂の近くや洗面所周りにトイレを作るのは良いことです。ただし、洗面脱衣が分かれていないのに洗面からトイレに入る動線にするのはおすすめできません。洗面脱衣が一緒の状態でトイレを作ると、誰かがお風呂に入っている時に気を遣います。1階にトイレがあるのに2階のトイレに行かなければならなくなりますし、トイレ中に誰かが洗面に入ってきて出づらくなることもあります。
洗面からトイレの動線にする時には、必ず洗面と脱衣を分けてください。そうすれば、誰かがお風呂に入っていても出入りできますよ。
玄関からのトイレは来客時に困らない?
玄関ホールにトイレがあると「来客時に出られなくて困りませんか?」と聞かれることがありますが、そんなにお客さんは来ません。来客が玄関に長居をすることはほぼないので、そこまで気にしなくて良いですよ。
玄関と洗面のどちらにトイレを付けるのかは好みで決めて良いです。ただ、玄関の方が効率良く、スペースを無駄にせず配置しやすい傾向にあります。
⑥エアコン1台の空調システム
エアコン一台で家中の空調をするのは危険です。
パターン1:全館空調システム
大きな業務用エアコンを使ったり、空調室を作って集中的に空気を暖めたり冷やしたりして、そこの空気をダクト経由で各部屋に持っていく形式です。これはやめた方が良いですよ。
特殊なエアコンの場合は初期費用もかかりますし、修理代も高くなります。修理まで時間がかかる場合にエアコンが1台しかないと、真夏なんかは大変なことになります。ダクトの中に汚れが蓄積してもメンテナンスできないので、全館空調「システム」はおすすめできません。
ただし、「全館空調」という考え方は大切です。全館空調というのは、家中の温度を均一にしていく大切な考え方です。全館空調システムを使わずに、これを実現してください。
パターン2:ホールエアコン
ホールエアコンとは、2階のホールを冷やして各部屋に空気を循環させる考え方です。上手くいけば良いですが、前提として各部屋のドアを開けて過ごす必要があります。せっかく個室を作ったらドアは閉めますよね。ドアを開けることを前提とした空調システムはやめた方が良いですよ。
推奨する空調計画は?
BE ENOUGHでは、一家に2台のエアコン設置を推奨しています。1階は大きな空間なので、14畳200Vのリビングエアコンを付けてください。
2階は各部屋にエアコンを付けても良いですが、部屋の広さを考えるとオーバースペックになるので屋根裏エアコンを推奨しています。
リビングエアコンを床下エアコンにするパターンもありますが、そこまではやらなくて良いです。システムとしては良いですが、高気密・高断熱の住宅なら壁掛けエアコンで十分です。
2台のエアコンがあれば、冬は1階のエアコン1台で家全体が暖かくなるので、1台で回すことができます。夏は屋根裏エアコンを使って2台で回してください。これなら、最悪1台のエアコンが壊れても、もう1台の方でなんとかできますよ。
屋根裏エアコンに関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。
関連記事:2階はエアコン1台でOK!夏の暑さ対策に最適な「せやま式屋根裏エアコン」とは?
⑦将来仕切る前提の子ども部屋
最初は繋げておいて、成長後に仕切る前提の子ども部屋は、結局工事しないことが多いので非推奨です。たくさんの物があるので、それを全部片付けて工事するのは面倒です。思春期になって「繋がってるのが嫌だからカーテンを付けよう」「本棚を置こう」と対策しても、これでは音が漏れてしまいます。プライバシーは音で守られる部分が大きいので、音漏れがあるのは良くないですよ。
「将来的に絶対に工事する自信がある!」という人以外は、最初から仕切っておくことを推奨します。
⑧軒ゼロ
軒ゼロの家は雨漏りのリスクも高く、日射遮蔽もできません。最近は廃れてきたと思っていましたが、未だにやっている住宅会社もあります。特に建築家のデザイン住宅に多いので注意してください。
軒ゼロにするとしゅっとしてデザインがかっこ良くなります。また、外壁を黒にするとさらにかっこ良くなります。賃貸経営の基本として、外壁が黒い方が入居率が高くなります。さらに、住宅会社としてはオシャレに見えるだけではなく軒ゼロにすることでコストも落ちるので、「安くて契約も取りやすい」と、一時期は流行っていました。ただ、前述のリスクがあるので非推奨です。
軒ゼロでも防水処理をしていれば大丈夫?
もちろん防水処理はしているとは思いますが、軒がある場合とゼロの場合を比べると、軒ゼロの方が雨漏りのリスクが高いです。日射遮蔽ができないことも明らかです。ここはデザインを優先させるところではありません。日射遮蔽ができないと夏は暑いですし、雨漏りしたら家の寿命が縮まりますし、シロアリが来て壊れてしまいますよ。
⑨総2階
1階と2階のサイズが一緒の家は、コストを落とすことができます。15坪+15坪で30坪の家の方がコストが安く、「せやまどり」のように1階が20坪で2階が10坪の1階完結型の間取りにするとコストが上がります。
お客さんは「30坪で何円、坪単価は何円」と計算するので、売る側からすると総2階の方が契約しやすくなります。余談ですが、仮間取りが成立して契約した後に設計士から「間取りが変わると200万円高くなりますよ」なんて言われることもあるので、必ず間取りを確定させてから契約してくださいね。
このように総2階間取りを勧める住宅会社もありますが、やめた方が良いです。1階が充実している家の方が絶対に良いですよ。総2階にすると充実させるべき1階が不足し、2階のスペースが余ってしまいます。
1階を大きくすると割高になるのでは?
確かに1階完結型の間取りにするとコストは上がりますが、コストを下げるために住みづらい家を建てるのはおすすめしません。なんのために家を建てているのか分からなくなりますよ。
「コストが上がるなら家をコンパクトにすれば良い」という気持ちで、とにかく1階はめいっぱい作り、2階を極力コンパクトにしてください。
⑩2階建てなのに2階リビング
住宅会社からすると、2階リビングにすることで「狭い土地でも素敵な注文住宅が建つ!」と施主に思わせることができます。2階には玄関がないですし、なんなら水回りを全て1階にすれば2階に素敵なリビングを作ることができます。「2階の方が景観が良くて明るくなります」「バルコニーを付けたら洗濯動線も楽です」なんて言いますが、これは安易です。年をとると2階に上がるのが辛くなるので、2階リビングはやめてください。
若いうちだけなら良いのでは?
「年を取ったら引っ越すから大丈夫」と割り切るのは良いですが、若いうちだけでも2階リビングは大変です。玄関に下りて忘れ物に気付いて上り下りを繰り返すのは面倒です。
基本的に、リビングは1階にしてください。1階リビングでも道路側の空いているスペースを使えば明るいリビングを作れます。抜けている方向に窓を取って明るいリビングを作ってください。「日中に電気を付けずに過ごしたい」なんてことにこだわらず、電気を付けて過ごすのも悪くはないです。完璧を目指すと予算のところが0点になりますよ。
⑪バルコニー
バルコニーは雨漏りのリスクや建築コストが高くなる上に、ほとんど使いません。基本的にバルコニーは付けず、作る場合でも必要最低限にしてください。
屋上バルコニーは本当に使わないので、絶対にやめた方が良いです。付けるコストがかかり、メンテナンス費用も大変です。さらに屋上は暑いので、バーベキューなんて何回もやりませんよ。
それでも外に洗濯物を干したい!
どうしても外に洗濯物を干したい人はやっても良いです。私が「やめておいた方が良い」というのも、絶対にダメなわけではありません。まずデメリットを理解した上で、それでもやりたいのであれば後悔しません。最終的にどうするかは、施主の皆さんが幸せに暮らせるように決めてくださいね。ただし、デメリットは知っておいてください。
ちなみに、外に洗濯物を干したいだけなら、リビングやダイニングの大きな掃き出し窓の外に物干し金物を付ける方法もあります。このような折衷案を考えてコスト面と相談しながら、バルコニーを付けるかどうか決めてくださいね。
まとめ
時代遅れの間取り11選
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リモートワークスペース
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窓が少なすぎ
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ファミリークローゼット
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ウォークスルー型収納
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洗面所にトイレを付ける
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エアコン1台の空調システム
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将来仕切る全体の子ども部屋
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軒ゼロ
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総2階
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2階建て2階リビング
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バルコニー