2024.11.14
熱中症リスクは誰にでもつきもの。あなたが大丈夫だと思っている暑さ対策も、実は間違っているかもしれません。どれだけ高性能な家にしても良いクーラーを入れても、今日紹介する内容を知らないと家の中がめちゃくちゃ暑くなります。家を建てる前に考えなければいけないこともありますし、家を建てた後の過ごし方がポイントになることもあります。「エアコンは冷房運転が良いのか除湿運転が良いのか」「つけっぱなしが良いのか、こまめに消した方が良いのか」ということが気になる人も多いでしょう。
そこで、この記事では暑さ対策の失敗例と、おすすめのエアコンの運転方法も詳しく紹介します。「最近の家は断熱性能が高くエアコンの性能も高くなっているので、夏はとても涼しく過ごせます」のような営業マンのトークに騙されてはいけません。今回紹介する知識を知っておかないと、電気代が爆上がりしますし、家の中が暑くなります。しかもクーラーの運転方法に関しては、マンションでも戸建でも賃貸でも持ち家でも使える知識です。暑い夏を乗り越えるテクニックを確認していきましょう!
今回は以下を詳しく解説していきます。
目次
暑さ対策失敗例7選
暑さ対策失敗例①東西の窓が大きい
太陽光の暑さを舐めてはいけません。東西に大きな窓を作るのは極力避けてください。東は朝日、西は夕日がめちゃくちゃ暑いです。熱量的にはストーブを置いているようなものなので、東西にはなるべく窓を付けないようにしましょう。付けても小さい窓にするのが原則です。
「東道路もしくは西道路で、東か西に窓を付けないと明るくできない」という場合は、付けてもOKです。ただし、アウターシェードを付けてください。アウターシェードとは、窓の外側に付けるロールスクリーンのような日よけです。これがあれば日射をかなりカットできますし、紫外線もカットできます。しかも部屋の内側からの視界はある程度確保してくれます。東西に大きな窓を付けるなら、必ずアウターシェードを付けましょう。
暑さ対策失敗例②軒・庇(ひさし)がない南窓
軒・庇(ひさし)がない南窓はやめてください。太陽の位置はだいぶ高いですが、東や西だけではなく南側からも日差しが入り、暑くなります。しかも、一番暑い時期は7~8月ですが、この時期は既に夏至を過ぎているため太陽の角度が浅く、日射がしっかり入ってきます。南側は軒・庇を出して太陽光をカットしましょう。
軒・庇の長さの目安
軒や庇の長さの目安は、窓の高さの1/3です。たとえば2mの窓なら、60cmくらい軒や庇を出しておけば、6月の夏至の時に太陽光が家の中に入りません。
ただ、一番暑い7~8月は太陽の角度が浅いです。また、真南を向いている家ばかりではありません。そのため少し浅い角度から太陽光が入ってくることも想定して、約70cmくらいの軒や庇を付けることをおすすめします。
もちろん80~90cmのように伸ばした方が日射遮蔽の面では良いので伸ばすのもアリです。ただし、伸ばせば伸ばすほど部屋の中が暗くなるので、その点はバランスを見ながら決めてください。BE ENOUGHでは、600+100(樋)の700mmくらいを目安にしています。
質問:南側にアウターシェードを付けるのは?
東西だけではなく南側にアウターシェードを付けるのは、非常に良いので推奨しています。庇とか軒によって太陽の直射日光を防ぐことはできますが、部屋の中に入ってくる熱は直射日光だけではありません。天空光といって、空の上で乱反射する光や、アスファルトや土に反射して跳ね返ってくる光なども入ってきます。それらの熱を含めて部屋の中が暑くなる原因になるので、南側もアウターシェードを付けるのが理想的です。
ただし南側にアウターシェードを付けると予算が上がります。軒や庇があるのなら、そこまでやらなくても良いでしょう。ただ、庇が出ていなかったり、システム庇を付けるのに3~4万円かかったりするくらいなら、8~10万円のアウターシェードを付けるという判断もアリです。
暑さ対策失敗例③上部断熱と壁の断熱が同等
2階の暑さも舐めてはいけません。上部(天井・屋根)の断熱は、壁の断熱よりも強力にしてください。壁の断熱と同等にするのは絶対にいけません。
太陽は上から降り注ぐので、上の方が暑くなります。マンションでは最上階が一番暑いです。同様に、戸建に住むと最上階である2階が一番暑いです。階段を上がっている途中で空気が変わるのが分かるくらい暑いので、とにかく天井断熱・屋根断熱を分厚くしてください。
壁の断熱をしっかりしている場合は2倍にこだわる必要はありませんが、目安としては天井断熱・屋根断熱は壁の断熱の2倍です。それでも2階は暑くなるくらい、上からの熱はすごいです。
天井断熱 vs 屋根断熱
これは良し悪しがありますが、推奨としては屋根断熱です。屋根裏空間はめちゃくちゃ暑くなるので、屋根断熱の方が良いです。
また、屋根断熱を推奨する理由の一つは、BE ENOUGHが推奨しているせやま式の屋根裏エアコン。せやま印工務店であれば、私が直接サポートしながら導入できますよ。
せやま式屋根裏エアコンに関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。
関連記事:2階はエアコン1台でOK!夏の暑さ対策に最適な「せやま式屋根裏エアコン」とは?
暑さ対策失敗例④窓・玄関ドアを開けっぱなし
子どもが玄関前で遊んでいるなどの理由で、玄関ドアを開けっぱなしにするのは仕方のないことです。ただし、そうじゃない時に玄関ドアを開けっ放しにするのはやめましょう。蚊のような虫だけではなく、熱もめちゃくちゃ入って来ます。
外気温は36~37度ですし、絶対湿度も23~24g/㎥を超えています。めちゃくちゃジトジトしていますし、暑いです。そんな空気が部屋の中に入ってきたら、一瞬で部屋の中が暑くなります。
換気システムがちゃんと入っていてフィルター掃除をきちんとしていれば、窓を開けなくても換気はできます。必要以上に窓や玄関ドアを開けっ放しにしないことは、地味ですが効果的な暑さ対策です。
暑さ対策失敗例⑤熱交換なしの換気システム
いわゆる第三種換気は、ダメではありませんがおすすめしません。換気システムの目的は換気なので、三種でも一種でも良いです。ただ、夏の三種換気は暖気が直接入ってくるので暑いです。
しかも、「暑い!」といって換気を閉めるのは一番ダメですよ。冬も同じ。三種換気でも絶対に換気を止めないでください。
これから家を建てる人であれば、熱交換式の第一種換気にするのがおすすめです。一種換気の方がメンテナンスが大変だったりコストが上がったりするデメリットはあります。ただ、ちゃんとした換気システムを選んでメンテナンスをすれば問題ありません。
熱交換式の換気なら、「顕熱」というものを80~90%くらい熱交換してくれるものが多いです。また、全熱交換というものを選ぶと、「潜熱」という湿度のようなものも交換してくれます。交換率としては約50%です。顕熱より交換率は低いですが、部屋の中の冷たい空気を捨てる時に、外から入ってくる温かい空気と熱だけ交換します。湿度だけを交換することによって、綺麗な空気ながらちょっと冷えて除湿された空気が入ってきます。これが全熱交換型です。
顕熱交換型だと温度だけしか交換してくれず、外からのジメジメとした湿度が入ってきてしまうので、全熱交換型の方がおすすめです。
BE ENOUGHでは「sumika(24時間全熱交換型換気システム)」を推奨しています。一種換気ならなんでも良いですが、sumikaは一番外側にフィルターが付いています。そのまま屋外で清掃すれば、フィルターに付着した虫や花粉を室内に持ち込むこともありません。
さらに、sumikaは部屋の中の排気口が床に付いているため、ハウスダストが集まりやすいですし、フィルターの掃除もしやすいです。他の一種換気では上に付いているので、掃除しづらくなります。フィルターの掃除をしっかりしないと換気システムが詰まるので、注意してください。
暑さ対策失敗例⑥エアコンの間欠運転
クーラーの使い方を間違えないようにしましょう。つけたり消したりする間欠運転はおすすめしません。
電気代だけなら、つけっぱなしよりも間欠運転の方が若干安くなるでしょう。ただし、そもそも冷房は暖房に比べると電気代が安いです。暖房は0度から20度くらいまで温度を上げるのに対し、冷房は36度から26度くらいまでの10度くらいしか下げません。そのため電気代は暖房ほどかからず、月に何千円も増えません。
エアコンの連続運転を推奨する理由
壁の側が熱いと、輻射熱でじわじわと暑くなります。部屋の中の空気をいくら冷やしても、天井や壁が熱いと人間は不快感を抱きます。体感温度は温度・湿度・気流・輻射熱の四つの要素で決まります。温度や湿度を気にする人は多いですが、実は夏は輻射熱が一番大きな要素だと言われています。
そのため、とにかく壁や天井を暖めず冷たい状態にしておくことが非常に大切ですので、連続運転がおすすめ。外出時にもったいないと考える人もいますが、月にプラス1,000~2,000円で快適に過ごせる方を私は選びます。余分な買い物を少し控えればペイできるので、連続運転にしておきましょう。
間欠運転のデメリット
間欠運転の場合、エアコンが止まっている時間が長いので、内部の結露水でカビる原因になります。エアコン内部の多少のカビは仕方ないですが、風をぐるぐる回しておいた方がカビの予防にもなるので、こういった面でも夏は連続運転にしておく方をおすすめします。
暑さ対策失敗例⑦エアコンの弱風運転
風量が少ない弱風運転にすると、なかなか冷えません。「強風運転にすると冷気が身体に当たって不快」という人もいるかもしれません。そういう人はエアコンを弱運転にして、サーキュレーターを使ってください。
エアコンの弱運転とサーキュレーターを組み合わせて、空気の流れを作ってください。これで、体感温度を決める要素の一つである気流が生まれます。エアコンの連続運転で輻射熱を抑えながら、気流を作るのがおすすめです。
エアコンの強運転、もしくはエアコンの弱運転+サーキュレーターのどちらかを採用してください。サーキュレーターを回すだけでも体感温度は下がりますよ。ただし、首振りにしないでくださいね。首振りにすると気流が乱れて、一定方向に気流が流れなくなります。サーキュレーターを使う場合は一定方向で使いましょう。ただし、扇風機の場合は首振りにして、風を身体に当ててください。
オススメのエアコン設定
間取りやエアコンの機種により、最適なエアコンの運用方法は異なります。ただし、あまり細かいことを意識したくないという人たちのために、基本の運用方法を紹介します。
オススメのエアコン設定
- 温度:26度前後
快適自動運転を使わない - 風量:やや強め
または弱風+サーキュレーター - 連続運転
間欠運転は輻射熱で暑くなる
温度は暑さによって決めて良いですが、26度前後がおすすめです。最近のエアコンは高性能なので、これくらいで良いです。快適自動運転は使わないでください。高性能すぎてすぐに止まってしまうので、普通の冷房運転にしてくださいね。
風量に関しては、やや強めがおすすめ。ただし、冷気が身体に当たるのが苦手な人は、前述の通り弱風+サーキュレーターにして気流を生み出してください。
間欠運転にすると輻射熱で暑くなるので、連続運転にしてください。熱が伝わる方法は触った時の伝導と、空気を介す気流と、側からの輻射熱です。この3つの中で一番身体に優しいのは輻射熱です。外側を冷やしていくことで洞窟や木陰のように涼しくなります。このように、連続運転にして輻射熱を抑えてくださいね。
質問①:湿度を下げる方法は?
前述の通り、体感温度は温度・湿度・気流・輻射熱の四つの要素で決まります。このうち、温度はエアコンを使って下げ、気流はサーキュレーターで生み出します。輻射熱は連続運転で抑えるのも紹介した通り。そうなると、湿度の下げ方が気になる人もいますよね。
ただし、湿度を下げる方法はめちゃくちゃ難しいです。個人的には無理に下げる必要はないと考えています。気温・気流・輻射熱で十分体感温度は下がりますし、非常に楽です。湿度を下げることを意識しない体感温度の下げ方が、誰でも使えるやり方ですよ。
どうしても湿度を下げたい場合
それでも湿度を下げたい時は、エアコンをさぼらせないことが大事。エアコンは、設定温度まで下がると「サーモオフ」といって送風運転に変わります。送風運転になると湿度を吐き出しますし除湿もしないので、どんどん湿度が上がってしまいます。
そこで、湿度を下げるためには設定温度を下げてください。21~22度に設定するのがおすすめです。ただし、その空気を遠くに送ると寒くなるので、超弱風設定にしてください。そうすれば除湿できます。エアコンはすごく優秀な除湿機なので、どんどん湿度が下がります。
ただ、この方法は人によってはちょっと寒いです。エアコン周りが結構冷えて、個人的には辛く感じました。そのため、除湿をする冷やし方はあまりおすすめしません。とはいえ除湿の方法は色々な人が紹介しているので、試して自分に合うやり方を探すのもアリです。
ちなみに、エアコンの除湿運転も同じです。除湿運転はエアコンの中をキンキンに冷やしているため、室温が下がりがちです。これで快適なら良いですが、苦手な人も多いと思うので、こういう運転方法が苦手な人は除湿を目指した運転方法はやめた方が良いですよ。
エアコンの機種によっては「再熱除湿」といって、キンキンに冷やして除湿しつつ、部屋の中に出す空気を少し温めているという機種もあります。ちょっとコストや電気代は上がりますが、除湿を重視したい人は検討してください。
質問②:除湿機はどう?
除湿機も良いですが、エアコンの方が除湿能力が高いのでリビングなどに置く必要はないです。それよりも玄関ドアを開けないなどの対策の方が重要ですよ。
ただ、ランドリールームのような狭い空間の場合は除湿機も使えます。また、除湿機のデメリットである音や熱も気にならないので、ランドリールームで使うのはアリです。ちなみにエアコンも除湿の際に熱が出ますが、それを部屋の中ではなく外に排出してくれていますよ。
質問③:エアコン内のカビ対策は?
エアコン内部のカビを完全に防ぐのは無理です。エアコンの中にはドレンパンという、水がぽたぽた落ちる場所があります。そこから勾配で外に水を押し出していますが、どうしても残ってしまい、これがカビの原因になります。また、エアコンの中にホコリが入っていると、その中の腐朽菌がカビのエサになることもあります。色々なカビを防ぐ機能がありますが、それでもカビをゼロにするのは難しいです。
エアコンのカビ対策
- 連続運転
- フィルターの掃除を怠らない
- 電源OFFボタンを二度押ししない
- シーズン後は半日暖房 or 送風
- プロに掃除を依頼する
1年~数年に1回
それでもエアコンのカビ対策をするなら、やはり連続運転をすること。間欠運転にするとエアコン内部の空気が止まる時間が増えてしまいます。空気が回っているとカビは生えにくいので、連続運転にしてください。
また、ホコリがエアコン内部に入るとカビるので、フィルターの掃除を怠らないことも大切です。
間欠運転をする場合、停止した後に少し動いているのを二度押しで止める人もいますが、あれはダメです。エアコンは止めた時に内部の結露水を乾かしているので、二度押しオフは絶対にやめてくださいね。
夏が終わってエアコンを切る時に、すぐ切ると結露水が内部に残ってしまいます。半日くらいは暖房もしくは送風運転をしてください。そうすることで中の結露水が乾燥します。これをやらないと中でカビて冬に運転を開始する時にカビが放出されるので注意してくださいね。
エアコン掃除は自分でせずにプロに任せるのがおすすめ。15,000~20,000円くらいかかりますが、リビングに1台+せやま式屋根裏エアコンが1台の2台くらいなら、それほど大きな負担ではありません。ケチらずに掃除してもらえばピカピカになりますよ。できれば1年に1回、もしくは数年に1回はプロに掃除を頼むことも検討してくださいね。
まとめ
暑さ対策失敗例7選
- 東西の窓が大きい
- 軒・庇がない南窓
- 上部断熱が壁と同等
- 窓・玄関ドアを開けっぱなし
- 熱交換なしの換気システム
- エアコンの間欠運転
- エアコンの弱風運転
湿度は無理に下げる必要なし