2024.11.14
住宅の「材質」と「断熱性能」、「窓サッシ」などに関して、営業マンのトークを鵜呑みにしていないでしょうか。
その情報、実は自社商品を売り込むための間違った情報かもしれません。
情報を正しく見極めるためにも、窓の材質について原料を知り、不要なコストをかけすぎない家づくりを学んでいきましょう。
サッシだけでなく、窓の部材などを含めた全体的な内容について知りたい方は、先に以下記事から参考にしてみてください。
関連記事:「窓の種類(サッシ/ガラス/スペーサー)と失敗しないための選び方を解説!」
施主として知識を身につけてください!
本記事の内容は、YouTube動画でも分かりやすく解説していますので、こちらもご覧ください!
解説動画(YouTube):『営業マンの嘘トーク|樹脂サッシは劣化?アルミ樹脂でも結露しない?』
目次
「正しいサッシ選び」は断熱性能向上の鍵
「サッシ」は窓ガラスの周りの枠のことで、窓の中で「最も冷えやすく」「最も熱くなりやすい」場所であるため、結露や断熱性能に大きく影響を与えます。
つまり、適切なサッシ選びは高気密高断熱住宅への近道といえますね。
また、窓の結露は「内部結露」を引き起こし、家の寿命を縮めてしまうため、窓は建材の中でも最もお金をかけるべき部分といっても過言ではありません。
【結論】ちょうどいい塩梅の『窓サッシ』は?
BE ENOUGHがおすすめするちょうどいい塩梅の「窓サッシ」は、「オール樹脂サッシ」です。
ちょうどいい塩梅の「●●」とは?・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。
建材選びに迷ったら『せやま基準一覧表』
BE ENOUGHでは、住宅会社選びのための補助ツールとして、「せやま性能基準」と「せやま標準仕様」の2つからなる「せやま基準一覧表」を無料配布しています。
「せやま性能基準」を使えば、今回紹介するようなサッシはもちろん、各建材について「完全に不足→少し不足→ちょうどいい塩梅→余裕が余れば」と家づくりで抑えておくべき性能レベルを検討できます。
ダウンロードページ:『せやま基準一覧表|お役立ちツール|BE ENOUGH』
詳しい使い方に関しては、下記リンク先の記事をご覧ください。
合わせて読みたい記事:『営業マンより「家の性能」に100倍詳しくなる方法|せやま性能基準』
解説動画(YouTube):『家づくりの超実践ツール「せやま基準一覧表」の使い方<総集編>』
上でも触れた通り、サッシ(窓枠)は結露や断熱性能に大きく影響を与えるので、間違えると取り返しがつきません。
だからこそ窓サッシの中でも、断熱性能に優れた「オール樹脂サッシ」の採用を推奨しているのですが、このオール樹脂サッシに関して、営業マンが嘘を言うこともあるんです。
そんなよくある嘘トークは、主に以下の3つ。
- 樹脂サッシは、洗濯バサミと一緒で劣化しやすい!
- 樹脂サッシは、紫外線で変色してしまう!
- アルミ樹脂複合サッシでも結露しない!
これら嘘も踏まえ、BE ENOUGHが「オール樹脂サッシ」を推奨する背景について、詳しく説明していきます。
窓サッシに関する営業マンの嘘トーク
嘘①:樹脂サッシは、洗濯バサミと一緒で劣化しやすい!
営業マンから「樹脂サッシは劣化する」と、聞いた人も多いのではないでしょうか。
実はこれ、「ほぼ嘘」です。
現在の日本で主流となっている、外側:アルミ、内側:樹脂の「アルミ樹脂複合サッシ」というサッシを使っている住宅会社の中には、
「外側はアルミの方が良いですよ!外側が樹脂だと劣化するんです」
↓
「樹脂って、洗濯ばさみやペットボトルと同じ素材だから劣化するのも納得ですよね」
なんて流れのトークをする営業マンもいます。
ですがそもそも、窓のサッシに使われている樹脂が洗濯ばさみやペットボトルのようにパリパリいっていたら大問題ですよね。
なんなら下の画像のように、世界的に見るとアルミサッシを使用している方が珍しく、樹脂サッシの方が一般的になっているくらいです。だから、パリパリなんてしないんですね。
<世界的には樹脂サッシの使用が一般的>
樹脂サッシはどういう樹脂でできてる?
樹脂サッシは、塩ビ(PVC)という非常に強い素材でできており、この塩ビはたとえば、「電線の被覆材」「水道管」「自動車部品」にも使われています。
同じ「樹脂」ではあるんですが、ペットボトルは「ポリエチレンテレフタレート」、洗濯ばさみは「PP(ポリプロピレン)」と廉価な代わりに劣化しやすい素材なんです。(これはどちらも消耗品のため、劣化を前提としています)
このように、そもそも樹脂サッシと洗濯ばさみでは、同じ「樹脂」ではあるものの大きく性質が異なるので、「樹脂サッシが劣化しやすいわけではない」というわけですね。
住宅会社のトークに騙されないよう、施主の方が詳しくなっておきましょう。
嘘②:オール樹脂サッシは、紫外線で変色してしまう!
これもよくある、ほぼ嘘の営業トークです。
現在日本全国で見ると、オール樹脂サッシの採用率は20%くらいになっていますが、これが変色してたら大変な問題になっています。
オール樹脂サッシには、「アクリル積層」という特殊な加工が施されているのですが、この加工技術が進化しているので、紫外線で樹脂サッシが変色することはほぼないんです。
「アクリル積層」とは?
紫外線による変色・劣化を防ぐ特殊な加工のこと。
オール樹脂サッシには、この紫外線による変色・劣化を防ぐためのアクリル積層が使用されているため、「樹脂サッシはすぐに変色する」というハウスメーカーの営業トークは誤りです。
例外的にオール樹脂サッシが変色するケース
上で話した通り、紫外線で樹脂サッシが変色することはほぼありませんが、以下のような条件に当てはまる場合には、一部変色してしまうケースもあるようです。
- 「住んでいる場所が特殊な環境で、夏は40度で冬は-30度になる」
- 「塗ってはいけない特殊な薬剤を表面に塗ってしまった…」
ただしどちらも特殊な条件ですし、一般的な環境下で普通に使用する分には変色はほぼ起きません。
ただそれでも、「どうしても変色が心配なんです!」という場合には、外部サッシの色を白にすると良いでしょう。黒・茶色などになると、ほぼゼロといっても少なからず色落ちなどの変色リスクがあるため、外部サッシを白にしておけばさらに安心です。
ちなみに最近では、「オール樹脂サッシ」も「アルミ樹脂複合サッシ」も、価格自体はそこまで変わらなくなってきているので、安心してオール樹脂サッシを選んでください。
アクリル積層技術は、「耐候性の向上」にも一役買っている
「アクリル積層技術」の試験では、屋外暴露もしっかり行われているため、30年前に設置されたオール樹脂サッシであっても、今も現役で使用されています。
ですので「オール樹脂サッシ」を採用した場合、おそらくサッシよりも先に金物が傷むと思われますが、金物の傷みは「アルミ樹脂複合サッシ」も同じですね。
嘘③:アルミ樹脂複合サッシでも結露しない!
「アルミ樹脂複合サッシでも結露しませんよ!」という営業トークがありますが、これも嘘です。
「アルミ樹脂複合サッシ」は結露しますし、なんならオール樹脂サッシでも結露のリスクはあります。
そもそも結露は、「室内の湿度が極度に高い」、「外が極度に冷えている」場合に発生しますが、どちらもありふれた条件ですので、「結露しない」なんて断言はできないわけですね。
「結露」の可能性が高くなる環境は?
- 「外気温が0℃近く」の環境
- 「室温が20度で、湿度は50%」の環境
上記のような環境下では、「窓サッシ部分の露点温度(結露し始める温度)」を下回るリスクが高まってしまいます。そのため、結露の可能性も高くなると言えるでしょう。
本当に「アルミ複合サッシ」でも結露しないのか?
冒頭でも話した通り、窓の結露は「内部結露」を引き起こし、家の寿命を縮めてしまいます。
そのため窓サッシ選びでは、「結露しづらいものを選ぶ」のがポイントなわけですが、営業マンがいう「アルミ樹脂複合サッシでも結露しない」は本当なのでしょうか。
「アルミ樹脂複合サッシ」、「オール樹脂サッシ」でそれぞれ結露するのか?を検証したデータがあるのでこちらを紹介します。
<検証条件>
【冬】室内温度20℃/室外温度0℃/相対湿度50%
露点温度(この温度を下回ると結露が始まる) ⇒ 9.3℃
冬によくある環境条件です
「アルミ樹脂複合サッシ」は結露した?
<アルミ樹脂複合サッシは結露してしまった>
(出典:YKK AP)
アルミ樹脂複合サッシの場合、結露しました。
窓サッシの温度が、露点温度である9.3℃を「下回った」ということです。表面温度を確認しましょう。
<アルミ樹脂複合サッシの表面温度>
(出典:YKK AP)
検証条件場合、露点温度は「9.3℃」ですが、アルミ樹脂複合サッシだと表面温度が最低「1.8℃」まで下がっています。
その他の箇所でも結露し始める「9.3℃」を下回っている箇所は多く、アルミ樹脂複合サッシだと結露するのは明らかですね。
ただしこの実験は、オール樹脂サッシを推奨しているYKK APが行ったものなので、その点を多少割り引いて考える必要があります。
と言えどこの結果からも、「アルミ樹脂複合サッシだと、結露する可能性は高い」と言わざるを得ません。
「オール樹脂サッシ」は結露した?
<オール樹脂サッシは結露しなかった>
(出典:YKK AP)
対するオール樹脂サッシでは、結露しませんでした。
これはつまりサッシの表面温度が、露点温度の9.3℃を「上回っている」と言うことです。表面温度を詳しく見てみましょう。
<オール樹脂サッシの表面温度>
(出典:YKK AP)
上の図の通り、オール樹脂複合サッシの場合、表面温度だけでなくすべての部分で露点温度である「9.3℃」を上回っており、一番低い箇所でも「10.4℃」でした。
これなら結露しませんね。
「アルミ樹脂複合サッシ」vs「オール樹脂サッシ」の検証結果
「アルミ樹脂複合サッシ」と「オール樹脂サッシ」の差は歴然で、オール樹脂サッシの方が圧倒的に高い結露耐性を持っている、という結果となりました。
一方アルミ樹脂複合サッシは、『室内温度20℃・室外温度0℃(相対湿度50%)』という、冬の“よくある条件”でも結露してしまうことが分かりましたね。
アルミ樹脂複合サッシだと結露しちゃうよ!
室外が0℃以下になることなんてある?
「そもそも、室外が0℃以下になることなんてある?」という疑問が出てくると思いますが、比較的温暖な気候が多い「大阪府の気温データ」を見てみましょう。
<2018年1月の大阪市の気温データ>
(出典:気象庁)
少し前のデータにはなりますが、比較的寒くなさそうな印象がある大阪府(6地域)であっても、意外と0℃を下回る日があるとわかります。
結露のリスクは、5℃前後を下回ると高くなってしまうため、上記検証結果を踏まえると、アルミ樹脂複合サッシの場合、冬のほとんどの日で結露発生リスクを抱えてしまうと推察できます。
まとめ
「アルミ樹脂複合サッシ」と「オール樹脂サッシ」に関する、営業マンの嘘トークを紹介しましたが、「オール樹脂サッシを採用した方がよい」が結論です。
この結論に至るまでの考え方としては、以下の通りです。
- 窓サッシは、「結露」に大きく影響する
- 「内部結露」は、家の寿命を縮めてしまう
- アルミ樹脂複合サッシだと結露リスクが高い
- 温暖地域であっても「オール樹脂サッシ」が推奨
また、「窓サッシだけでなくその他建材についても、どれを選ぶべきか知りたい!」という場合には、各建材の性能面について「完全に不足→少し不足→ちょうどいい塩梅→余裕が余れば」と網羅的にまとめた『せやま基準一覧表』がおすすめです。
登録なし・無料ですぐ使えるので、建材選びに迷ったら使ってみてください。
建材選びに迷ったら『せやま基準一覧表』
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「せやま性能基準」を使えば、今回紹介したようなサッシはもちろん、各建材について「完全に不足→少し不足→ちょうどいい塩梅→余裕があれば」と家づくりで抑えておくべき性能レベルを検討できます。
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詳しい使い方に関しては、下記リンク先の記事をご覧ください。
合わせて読みたい記事:『営業マンより「家の性能」に100倍詳しくなる方法|せやま性能基準』
解説動画(YouTube):『家づくりの超実践ツール「せやま基準一覧表」の使い方<総集編>』