ダクトレス一種換気システムをおすすめしない理由|致命的デメリット

ダクトレス一種換気システムをおすすめしない理由|致命的デメリット | 家の性能

住宅の換気システムには色々な種類があります。ダクト式の場合は汚れてしまったダクト内を掃除するのが困難。そんなダクトも無く、熱交換ができる「ダクトレス一種換気」が気になる人も多いでしょう。ですが、私としてはこのダクトレス一種換気はあえておすすめしません。その理由を紹介していきます。

ダクトレス一種換気のメリット・デメリットをチェックしましょう!

本記事の内容は、YouTube動画でも分かりやすく解説していますので、こちらもご覧ください!

参考動画:ダクトレス一種換気システムをおすすめしない理由|致命的デメリット

ダクトレス一種換気のメリットは?


ダクトレス一種換気のメリットは、もう明確です。ダクトがレス(ない)ことがメリットですよね。一種換気と三種換気を比較すると、熱交換がある一種の方が有利です。とはいえ、一種はダクトがあるのがデメリットですよね。

なので、一種換気であってもダクト給気型、すなわちダクトの中を通って各部屋に空気を送っていくタイプは、ダクトの中が汚れてしまうと、その汚れが全て部屋の中に供給されてしまいます。そういうことがあるので、「ダクト給気型」はおすすめできません。フィルターがあるとはいえ、フィルターも劣化しますし、フィルターを透過するダストもあるんです。

といっても、ダクトを全てなくせるわけではありませんよね。適切な換気をするためには、ダクトの使用は仕方ないので、ダクト排気型の一種換気がおすすめです。

この流れでいうと、一番理想的なのはダクトがないダクトレス型です。そもそもダクトがないので汚れることもない。これがやっぱりダクトレス換気型の一番のメリットです。

 

ダクトレス一種換気のデメリットを4つ紹介!


ダクトが汚れないという大きなメリットがあるダクトレス一種換気ですが、それ以上にデメリットや注意点もあるんです。そのため、私としては現段階では推奨していません。

では、ダクトレス一種換気にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。それは、こちらです。

  1. 適切に換気されないリスク
  2. ダストの逆流
  3. 熱交換機能の効果が低下
  4. トイレ/洗面は三種換気になる

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

 

デメリット①適切に換気されないリスク

空気が適切に換気されないことが、ダクトレス一種換気の一番大きなデメリットです。ちょっとややこしいのですが、そもそもダクトレスの一種換気とはどのようなシステムか、という説明をします。ダクトレス一種換気は、70秒ごとに給気と排気が入れ替わるシステムです。

たとえば、70秒の間、右から部屋の中に空気を取り込む給気をしていたら、その間は左は部屋の中の空気を捨てる排気をします。それが70秒経つと役割が逆になり、左から給気して右から排気する空気の流れになるんですね。これを70秒ごとに繰り返すことで、換気をしていく、というのがダクトレス一種換気というシステムです。

ですが、実は70秒間に入ってくる空気って、やっぱり少ないんです。家の中の全体の空気を考えると、本当にちょっとしか入ってきません。ちょっとしか入ってこないのに、70秒経つと切り替わって、給気の場所が変わってしまいます。つまりどういうことかというと、換気システムの周りは、しっかり換気されます。ただし、換気システムの70秒前後(65秒~75秒)なんて、部屋の中に空気が入ってきた瞬間に排気に切り替わってしまうんです。

この現象は「ショートサーキット現象」と呼ばれ、換気システムの周りは換気されやすいのに、部屋の真ん中あたりの中央部の空気は動きづらいという性質があります。給気と排気がずっと同じ方向であれば空気が全部入れ替わりますが、ダクトレスはちょっとずつ給排気を繰り返すので、真ん中あたりの空気が入れ替わりづらいリスクが高いんです。

こうなってくると、換気システムの一番大事な「2時間に1回の換気をし続ける」という役割が果たされないリスクが高いので、ここが一番のデメリットということになります。

 

デメリット②ダストの逆流

ダクトレス一種換気では、空気を排気する箇所にフィルターがあります。このフィルターに部屋の中のダストを吸着させ、ダストをカットします。

ですが70秒間の排気をしてここに溜まったフィルターのダストが、70秒後には外からの給気になるので、その際に溜まったホコリが戻ってきちゃうんです。排気が給気に変わるので、これは当然ですよね。なので、せっかくフィルターでダストを除去したのに、そのダストが逆流しちゃうんです。

そもそも、換気の目的は大きく2つあります。1つ目は二酸化炭素濃度を低下させて、部屋の中に酸素をしっかり取り込むこと。そしてもう1つは、部屋の中のダスト(埃やダニの死骸)を適切に外に出すことです。にもかかわらず、ダストが逆流してしまうと、換気の役割が失われるリスクが高まります。

同じ場所で給気や排気を行うというダクトレス一種換気の機構上、仕方がないことではあるんですが、やっぱりダストの逆流は許容できないデメリットですよね。

 

デメリット③熱交換機能の効果が低下

3つ目のデメリットは、熱交換機能の低下です。カタログ上は熱交換を90%くらいしますよ、という風に書かれています。

これはどういう仕組みかというと、ダクトレス一種換気は先ほど説明した通り70秒間で給気と排気が入れ替わります。その時、排気側で70秒間空気を捨てると、夏であれば冷たい空気を捨てるので、この中がキンキンに冷えるわけです。それが給気に変わると、外から暖かい空気が入ってくる時に冷たいトンネルを通ってくるので、外の熱い空気がちょっと冷やされて熱交換ができるんですよね。

この仕組み自体は素晴らしいのですが、よく考えてみましょう、70秒後の、給気と排気が切り替わった瞬間は、トンネルはキンキンに冷えています。ですが、熱い空気がどんどんそこを通り抜けると、トンネルがだんだん暖まるんです。なので、初期値としては90%の熱交換ができても、50秒・60秒経過することで熱交換の数値は下がっていくはずです。このように熱交換の仕組を考えると、カタログ値ほどの高い効果は発揮しない可能性が高いでしょう。

実際に実験した論文等も書かれていますが、そこでもやっぱり40%~50%くらいの熱交換率になるのでは、と言われています。それでももちろん致命的な数値ではありませんが、80%~90%を期待すると、そこまでの体感は得られないことを理解しておいた方が良いでしょう。

 

デメリット④トイレ/洗面は三種換気になる

こういった水回りは、基本的に三種換気になってしまいます。仕組上、水回りはダクトレス一種換気は付けられないので、トイレとかは三種換気になります。つまり、普通の換気扇がつくんですね。

もちろんそれ自体は悪いことではないのですが、やっぱり換気扇をそこだけに付けてしまうと、負圧状態になり部屋の中の気圧が下がってしまいます。実はこの負圧状態が、問題になるんです。

ダクトレス一種排気では、給気と排気の換気システムが1:1という同じ量で給排気をしていくことが重要です。しかし、トイレ等がダクトレス一種排気とは別に換気扇によってたくさん空気を捨ててしまうので、部屋の中の気圧がその分どうしても下がってしまうリスクがあります。

これは、高気密住宅でキッチンのレンジフードを回した時も起きる現象ですよね。キッチンのレンジフードはたくさんの空気を捨てるので、気密が高い家だとキッチンで換気扇を使っている時は玄関ドアが開きにくくなったり、外壁の水を吸って雨漏りの原因になったりすることがあります。これは高気密・高断熱住宅の一種の宿命です。その負圧現象の対策として、差圧給気口や同時給排気レンジフードを使うという方法があります。

これと同じ現象が、ダクトレス一種排気では常に起きてしまうという面は、仕方がないもののデメリットとして覚えておいた方が良いでしょう。

 

まとめ

ダクトレス一種換気のメリット・デメリットは?

  • メリット:ダクトがないので汚れない
  • デメリット①:適切に換気されないリスクがある
  • デメリット②:ダストが逆流してしまう
  • デメリット③:カタログほどの熱交換機能は期待できない
  • デメリット④:トイレや洗面は三種換気になり、負圧状態になるので対策が必要

PROFILE

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せやま大学の人

瀬山 彰

大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。

「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。

娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。

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