2024.11.14
雨漏りを防ぐためには、「雨漏りしやすい箇所」を把握したうえで、「雨漏り対策として適切な対応」を知っておくことが重要です。
もちろん、今回紹介する話が全てではありませんし、「施主が指摘せずとも、工務店が正しく対応してくれている」というのが理想ですが、中には「やっておかないと瑕疵担保責任の対象外になってしまう…」というものもあるので、しっかり押さえておきましょう。
新築でも雨漏り対策は大事!
また本記事の内容は、先に「雨漏りしやすい箇所」を抑えてもらってから読んだほうがより理解が深まりやすいので、まだの方はまずは以下記事から読んでみてください。
関連記事:『屋根選びの前に!新築で「雨漏りの原因」になりやすい箇所はどこ?』
目次
施工チェックの前に知っておいてほしいこと
10年以内の雨漏りなら「瑕疵担保責任」の対象に
法律上、「10年間以内に雨漏りが発生した場合には、工務店側がちゃんと保証しなさいよ」という決まりがあるのですが、これを「瑕疵担保責任」と言います。
ただこの瑕疵保証については、無条件で全ての家が対象になるわけではなく、「瑕疵担保責任を適用するために守らないといけない施工上のルール」というのが存在し、これらをすべて網羅できた家のみに「10年間の雨漏り保証」が付与される形となります。
そのため、万が一雨漏りが起こってしまったときに保証を適用させるためにもしっかり抑えておきましょう。
あまり目くじらを立てすぎるのもNG!
ただ今回ご紹介するチェックポイントについては、瑕疵保証適用のために必要なもの以外もありますから、ちゃんとやられていないという場合にも「なんでやってないんだ!」と目くじらを立てないようにしてくださいね。
大切なのは「雨漏りを対策すること」ですから、もし以降ご紹介するチェックポイントから漏れているものがあれば、「その代わりにどんな施工の、どんな雨漏り対策をされていますか?」と確認して、工務店や現場監督さんとの関係値がこじれてしまわないよう気をつけましょう!
雨漏り対策で抑えておくべき施工チェックポイント
チェックポイント①:「棟」部分
まずチェックしておくべきは「棟」ですね。棟とは、切妻とか寄棟でいう「一番上」の部分。
別記事でも「ここの部分というのは雨漏りしやすい」とお話ししましたが、施工上のチェックポイントとしては以下の2つです。
対策①:ルーフィングを250mm以上重ねる(瑕疵担保責任の条件)
棟頂部分は、屋根の「面」と「面」の接合部に当たりますので、屋根の中でも隙間ができやすく、雨漏りの原因になりやすい箇所です。
そのため棟部分については、ルーフィング(屋根材の下に引く防水シート)を棟頂部分にしっかり覆いかぶせる形で敷いてあげる必要があるんですが、この時「棟頂部分のルーフィング」と「屋根の面に敷いたルーフィング」とが250mm以上重なっていないといけません。
これがしっかりやられていないと「瑕疵保証の対象外」になってしまう部分なので、工務店の人からすれば、「やるのがあたり前」というレベルのことなんですが、悪い会社はもしかしたらやってないかもしれないので、一応覚えておいて損はないでしょう。
対策②:通気穴を確保し、板金を被せる
2つ目が「棟部分の通気口」についてですね。
棟には、屋根材の裏部分に溜まった湿気を棟部分の通気口から抜くような仕組みになっているんですが、この通気口がないと屋根材の裏側に湿気がどんどん溜まっていき、木材が腐って最悪シロアリ被害にもつながってしまいます。
だからこそ棟部分の通気口は重要なのですが、ごく稀にここの施工を忘れてしまう業者がいるようです。
ここを忘れる業者はよっぽどいないと思いますが、通気口施工については「棟部分にルーフィングを被せる⇒通気口部分に穴を開ける⇒雨が入り込まないように板金をかぶせる」という施工が“正”となりますので、一応こちらも覚えておきましょう。
チェックポイント②:「屋根の“面”」部分
屋根の”面”においてもチェックすべきは「ルーフィング」になるわけですが、以降ご紹介する内容については「全ての屋根形状」に通ずる内容となりますのでしっかり押さえておきましょう。
対策①:ルーフィングは「水下側」から貼っていく
こちらも当たり前レベルの内容になりますが、ルーフィングは水をブロックするためにも水下から水上に向けて重ねていくのが基本になります。
またルーフィングを固定する際には、「タッカー」というホッチキスのような工具を使うのですが、このタッカーも右から左に~というように「左右方向」に向かって打ち込むのではなく、「水上⇒水下」に向かって打ち込んだ方がルーフィング部分に水が溜まりづらくなるので、防水性能も高くなりやすいです。
ルーフィングについては、このように「屋根材の隙間から水が入ってくること」を前提に、水が入ったとしても、ちゃんと「水上⇒水下」に水が抜けるよう配慮するのが理想ですね。
対策②:ルーフィングは100~200mmを重ねる
ルーフィングは、重ねる方向によって「何mm以上重ねないといけないのか?」が明確に決まっています。
こちらも「できていて当たり前」の部分ではありますが、具体的には以下の通りですので、施主側もざっくり把握しておきましょう。
- 水下から水上に被せる場合:「100mm以上」重ねる
- 横方向に被せる場合:「200mm以上」重ねる
チェックポイント③:片流れ屋根の「水上部分・ケラバ」部分
上図は、片流れ屋根の「水上部分」の拡大の図ですが、この赤〇部分は通気部材などで完全に密閉することが難しいので、青矢印のように雨が伝うことで、赤〇部分から雨漏りが発生しやすいんです。
そのため片流れの場合は、ここの赤〇部分の対策が重要になってくるわけですが、具体的な対策方法としては以下の2つ。
対策①:水上側の軒をしっかり出す
まず一つ目が「軒をしっかり出す」ということ。
軒を出せば出すほど、先ほどの赤〇部分に水が入りにくくなりますので、軒ゼロよりもある程度軒を設けておいた方が良いですね。
対策②:透湿防水シートをしっかり張り上げる
水上部分の軒をしっかり出したとしても、傾斜になっている以上水が伝ってきてしまう可能性が十分考えられます。
そのため水が中に入ってきてしまうことを想定して、上図青線部分に最後の砦として「透湿防水シート」をしっかり屋根の垂木の部分まで貼っておきましょう。
またこの透湿防水シートを「外壁側だけでなく、ぐるっと屋根部分まで施工した方がいいんじゃ…?」という意見もあると思いますが、この場合施工的にも難しいので、「透湿防水シートをしっかり垂木部分まで貼りあげる」という形で対策していきましょう。
対策③:野地板と粗破風の接合部を板金で覆う
また片流れ屋根の場合、ここの「野地板(赤線部分)」と「粗破風」の間からも水が入ってきやすいと言われています。
ここについては、板金で覆ってしまうなどいくつか方法がありますので、ちょっと心配な方は工務店さんに「この対策どうされてるんですか?」って聞いてみてもいいかなと思います。
チェックポイント④:「1階の屋根」と「2階の外壁」との接合部
2階よりも1階がデカい場合、「1階の屋根」と「2階の外壁」との接合部(赤〇部分)から結構雨漏りするケースが多いです。
ここの施工上のチェックポイントは2つありますが、正直どこの工務店・HMでもやっていることだと思うので、一応参考までにお話ししておきます。
対策①:ルーフィングを2階外壁部まで250mm立ち上げる(瑕疵担保責任の条件)
まず一つ目は、「1階部分の屋根」と「2階の外壁」の間に対して覆いかぶせるようにルーフィングを貼り、「2階外壁側に原則250mm以上立ち上げる」というのがルールになってます。
また以下の屋根形状の記事でも、「1階部分の屋根を急勾配にしすぎると、2階に窓をつけれなくなる」とお話ししましたが、同様に1階屋根が急勾配+窓を付けてしまうと、窓の下にこのルーフィング分の250mmが確保できなくなってしまいます。
そのためあまり1階部分の屋根は、あんまり急勾配にしない方が良いですね。
対策②:屋根の左右に「捨てルーフィング」を貼る
捨てルーフィング(先張りルーフィング)というのは、念のためルーフィングを貼る面積を増やしておくことですね。
特に屋根の左右については、水が滴る部分になりますので、ここの防水施工はしっかりやっておきましょう。
またこの捨てルーフィングを行う際にも、先にお話ししたルーフィングの貼り方同様、上から雨が伝ってきても中に入りづらいよう、「家の下から上に向けて、重ねていくような形」で貼っていく必要があります。
チェックポイント⑤:バルコニー部分
対策①:立ち上がりを250mm(サッシ側は120mm)以上確保(瑕疵担保責任の条件)
バルコニーも先ほどと似たような話で、「フェンス側の立ち上がりは250mm以上、バルコニーに出入りする窓のサッシ側の立ち上がりは120mm以上」というのがルールとなっています、
バルコニーに出入りするときって、サッシ部分をよっこらしょと言って跨ぎますよね。あれは「防水層を確保する為」なんですね。
奥行を広くしすぎると、サッシを跨ぐのが大変に…
バルコニーというのは、雨水を外に出すためにも少し傾いて作られます。
そのため奥行が広いバルコニーを作ってしまうと、バルコニーの縁から窓サッシまでどんどん勾配をあげていって、サッシにぶち当たったところからさらに120mm以上確保する形になるので、奥行を広くすればするほどサッシ部分が高くなり、バルコニーへの出入りが大変になってしまいます。
だから~というわけでもありませんが、こういった点も考えるとバルコニーは必要な方のみで、作るなら最小限のサイズでというのが理想ですね。
まとめ
雨漏り対策を考える際、施工上押さえておくべきチェックポイント・対策は以下の通り。
雨漏り対策で抑えておくべきポイントは?
- ①:「棟」部分
- ルーフィングを250mm以上重ねる瑕疵担保責任の条件
- 通気穴を確保し、板金を被せる
- ②:「屋根の“面”」部分
- ルーフィングは「水下側」から貼っていく
- ルーフィングは100~200mmを重ねる
- ③:片流れ屋根の「水上部分・ケラバ」部分
- 水上側の軒をしっかり出す
- 透湿防水シートをしっかり張り上げる
- 野地板と粗破風の接合部を板金で覆う
- ④:「1階の屋根」と「2階の外壁」との接合部
- ルーフィングを2階外壁部まで250mm立ち上げる
瑕疵担保責任の条件 - 屋根の左右に「捨てルーフィング」を貼る
- ルーフィングを2階外壁部まで250mm立ち上げる
- ⑤:バルコニー部分
- フェンス側の立ち上がり:250mm以上瑕疵担保責任の条件
- サッシ側の立ち上がり:120mm以上
瑕疵担保責任の条件
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