ハウスメーカー・工務店・分譲ビルダー・設計事務所のメリット・デメリット

ハウスメーカー・工務店・分譲ビルダー・設計事務所のメリット・デメリット | 住宅会社選び

ハウスメーカーと工務店の分類方法に、正確な定義はありませんが、ある程度の規模感があって、総合展示場に出展しているような住宅会社を「ハウスメーカー」。小規模で、地元密着で経営している住宅会社を「工務店」と呼んでいる感じです。

大手ハウスメーカーの家を見学できる総合住宅展示場

(出典:ABCハウジング

「ハウスメーカーが良い?工務店が良い?」という悩みにあまり意味はない

ハウスメーカーが良いか?工務店が良いか?と考えても、本質的には意味がありません。なぜなら、ハウスメーカーの中にも、良いハウスメーカーと悪いハウスメーカーがあり、工務店の中にも、良い工務店と悪い工務店があるからです。当然といえば当然。

とはいえ、それぞれのある程度の傾向はありますので、ざっと解説していきます。最終的には、それぞれの住宅会社を見極めるほかありませんので、あくまで傾向をつかんでもらう目的で、ご覧ください。

関連記事:後悔しない住宅会社の選び方<完全保存版>|契約までの5つのSTEPを公開

<ハウスメーカー/工務店の性能と価格のバランス>
住宅会社の性能と価格のバランス(ハウスメーカー・工務店)

【結論】ハウスメーカー・工務店・設計事務所のメリット・デメリット

※あくまで全体の傾向であり、全ての住宅会社に当てはまるものではありません。

【ハウスメーカー】
①大手ハウスメーカー
メリット:知名度による安心感、豊富な人員によるサポート体制
デメリット:性能に対する価格が割高

②性能特化型ハウスメーカー
メリット:大手ハウスメーカーより性能が高い
デメリット:価格が高い、デザインが微妙

③FC系ハウスメーカー
メリット:大手ハウスメーカーより価格が安く、性能もそこそこ高い
デメリット:良くも悪くも、運営母体の工務店次第

④ローコスト系ハウスメーカー
メリット:価格の安さと知名度
デメリット:家の性能が低い

⑤新興系ハウスメーカー
メリット:営業マンのレベルが高い、コスパがそこそこ高い
デメリット:会社の成長に、技術部の体制が追い付かないことがある

総合住宅展示場大手ハウスメーカー
(出典:毎日ハウジング

【工務店】
⑥化石工務店
メリット:ほぼない、近所にあるくらい
デメリット:知識がない、性能が低い、その割に価格が高く、経営が不安定

⑦スーパー工務店
メリット:性能が高い、知識豊富、職人との距離が近い
デメリット:日本に数少ない、価格が高い場合がある

【不動産系分譲ビルダー・設計事務所】
⑧不動産系分譲ビルダー
メリット:便利できれいな分譲地に住める、利益率が低いのでお得
デメリット:家の性能が低い、自由度が低い

⑨設計事務所
メリット:唯一無二の作品ができる、デザイン自由度が高い
デメリット:性能が低い、価格が高い

ハウスメーカー・工務店・分譲系不動産ビルダー・設計事務所の種類がある

 

①大手ハウスメーカー

大手ハウスメーカーは、誰でも知っている住宅会社ですね。日本全国の総合展示場にある住宅会社と思ってもらえればOKです。

メリットは、何といっても知名度です。建築中に“●●ハウスの看板”がかかれば、「●●ハウスで建てるんだね~」と言われます。二世帯住宅や、団塊の世代から資金援助をもらう際には、知名度が役に立つことがありますね。

また、人員が豊富なので、サービス体制がしっかりしています。展示場の営業マンの人数を数えてみてください。だいたい5人以上はいると思います。打ち合わせに、設計やデザイナーが同席したりします。アフター体制もしっかりしている会社が多いです。

大手ハウスメーカーの打ち合わせは、参加人数が多い

デメリットは、性能の割に価格が高いということです。かなり割高です。利益率は、一般工務店の1.5~2倍に設定されているので当然と言えば当然ですが、メリットであげたサービス体制を維持するためには、必要な利益率と考えられます。

また、「CMなどの広告費が高いから、大手ハウスメーカーは価格が高い」とよく言われますが、これはおそらくウソです。

大手ハウスメーカーの広告宣伝費は、売上高の1%前後です。2,000万円の家を20万円の広告宣伝費で売ったら、かなり効率が良いですね。

一方、工務店の広告宣伝費は、売上高の3~5%と言われますので、2,000万円の家を60~100万円の広告宣伝費で売っていることになります。工務店の方がむしろ、大手ハウスメーカーより“広告にお金をかけている”ということです。

<広告宣伝費ランキング(企業/広告費/売上/対売上広告費率)>
広告宣伝費ランキング
(出典:東洋経済 ※一部加工)

グッシンは、基本的に大手ハウスメーカーをおススメしません。なぜなら、家に直接的に影響しない部分のメリットが大きく、家の大切な性能が抜け落ちているためです。知名度とサービス体制は、いわば契約を取るための“接待”部分と言えます。

とはいえ、「大手ハウスメーカーでないと親がお金を出してくれない」などの具体的な理由がある場合はあり。また、資金に余裕があって、知名度やサービス体制を最優先に考える方にとっては、選択肢に入ってくるかと思います。

関連記事:『大手ハウスメーカー神話崩壊は間もなく』 ~大手ハウスメーカーで家を建てるメリットを考える~

<親からの資金援助>
住宅購入に関わる親からの資金援助
(出典:SUUMO

②性能特化型ハウスメーカー

ハウスメーカーの中でも、「性能」を重視した住宅会社。知名度のある住宅会社で絶対に建てたいけど、性能面も考慮したいという方向けです。

メリットは、性能面。大手ハウスメーカーに比べると、断熱性などに優れ、住環境は良好です。特に、全棟気密測定を実施している住宅会社は、えらいですね。棟数が多い会社であればあるほど、気密測定は嫌がられるものです。

とはいえ、断熱以外の性能面ではアンバランスも目立つので、標準装備そのままで建築すると危険です。特に、基礎、屋根、換気システムあたりでコストを抑えている印象があるので、注意してください。

<よくあるコストカット例:不同沈下リスクの高い布基礎(木造の場合)>
性能をPRするのに布基礎でコストカット
(出典:SUUMO

デメリットは、価格とデザイン。まず価格ですが、大手ハウスメーカーと遜色ありません。同じ価格で性能が高いなら、いいかなと考える方もいると思います。

次に、デザイン。これは好みですが、あまり力を入れていない印象があります。重視するところとしないところがはっきりしていて、施主からすると分かりやすいですけどね。

冒頭にも言った通り、住宅会社の知名度は必須!と考える人であれば、一般の大手ハウスメーカーで建てるより賢い選択になると思います。一方、知名度が必須ではない人にとっては、割高な選択肢となります。

③FC系ハウスメーカー

FC(フランチャイズ)に加盟して「●●ホーム○○店」と看板を上げている工務店。中には直営店もありますが、ほとんどが加盟店(運営母体は工務店)です。

メリットは、大手ハウスメーカーより価格が安く、性能はまずまず高いという点。

運営母体が工務店なので、そこまで多くの人員を抱えておらず、固定費が安い。また、家の建材メーカーを絞って、かつ大量仕入れしていることが、割安感の理由と考えられます。

<フランチャイズ系ハウスメーカーの運営母体は工務店>
フランチャイズ(FC)系ハウスメーカーの母体は工務店
(出典:SUUMO

デメリットは、家の良し悪しが、工務店の力量に左右される点です。

標準仕様は、FC本部がセレクトしていますが、最終判断は工務店が行うので、微妙に仕様が異なります。また、間取りづくりや施工も工務店次第。経営基盤が弱い点もデメリットです。工務店で建てる場合は、完成保証への加入をおススメします。

なので、良い工務店、良い営業マンに出会うことができれば、FC系ハウスメーカーは良い選択になる可能性がありますね。

関連記事:信頼できる「営業マン」を見極める方法|信頼できる営業マン20の特徴

ただし、FC本部が販売を推進してくる「新商品」「キャンペーン」にはご注意を。

FC本部は、集客のための「新商品」を出そうとするあまり、さほど効果が確認されていない商品やメンテナンスリスクの高い商品を発売することがあります。「キャンペーン」も、結局見積に価格が上乗せされていたりで、本当にお得になることは多くありません。

④ローコスト系ハウスメーカ-

総合展示場にも出展し、そこそこの知名度を持ち、コストメリットを訴求している住宅会社です。

メリットは、価格の安さとそこそこの知名度。デメリットは、性能面です。おススメしませんが、予算が少ないけれど、知名度のある住宅会社で建てたい人にとっては、選択肢になるかと思います。

<ローコスト住宅の広告 ※坪20万円はさすがに無理でしょう…>
坪単価をPRするローコスト住宅の広告
(出典:SUUMO

⑤新興系ハウスメーカー

ここ数年の勢いがあり、総合展示場への出店を加速している住宅会社です。販売力が高い=営業マンの対応が良い可能性が高いですが、急な会社の成長に技術部が追い付いているか?が心配です。

近年急成長を見せる新興系ハウスメーカー

⑥化石のような工務店

勉強することなく、昔のやり方にこだわる工務店です。絶対にやめた方がいいです。化石工務店がよく言うフレーズです。これを聞いたら、すぐに退散しましょう。

知識のない工務店は絶対におすすめしない
「高気密にすると息苦しくなる」
昔の家が低気密住宅だったから、結露して、木が腐って、今の古家は朽ち果てています。家の住環境のみならず、家の寿命を考えたときに、高気密化は必要不可欠なのですが・・・

「家は職人の腕が全て」
プレカット技術が進んで、経験の浅い職人でも家が建てられるようになっています。もちろん職人の腕は大切ですが、職人がすべてではありません。まずは、建材選びが大切なのですが・・・

「自然素材にしないと不健康になる」
自然素材を使えば、なんとなくそれで済むと思っている典型的な化石工務店の発言です。ホルムアルデヒドなどの化学物質を多量に発生する建材は姿を消し、適正な換気をすれば問題ないのですが・・・

「換気システムは機械なので、使わないほうが良い」
換気システムの導入が義務化されたことすら知らない、化石工務店の発言ですね。これは本当にあった話です。機械=悪だと思い込んでいるんでしょう・・・

化石工務店のメリットは、近くにあることくらいで、あとはデメリットのみ。できるだけ、いや、絶対に避けましょう。

知識のない勉強しない工務店は絶対におすすめしない

⑦スーパー工務店

日本の住宅基準の甘さに危機感を覚え、日々勉強し、良い家を追究する工務店。性能バランスやコスト面で、ベスト!とまでは言えないですが、グッシンがおすすめできる住宅会社です。

こんなことを言っている工務店は、スーパー工務店である可能性が高いですね。

「オール樹脂サッシは当然」
「全棟気密測定は当たり前」
「日本の住宅基準は甘すぎる」
「換気は健康の基本」

<高気密高断熱住宅に必要不可欠な気密測定現場>
高気密高断熱住宅に必要不可欠な気密測定風景

メリットは、性能の高さとハウスメーカー程高くない価格です。窓、断熱、気密、換気システムの4つの基準をクリアしながらも、30坪の家で2000万円以内で家を建てられる工務店もあります。

関連記事:第1章 「断熱・気密・換気性能」について|記事まとめ

デメリットは、マニア的に性能を向上させすぎて、価格が高くなってしまうことがある点です。良い家を追究するのはいいのですが、やりすぎは禁物。何事も、ちょうどいい塩梅がベストです。

また、ハウスメーカーのような教育体制が整っていないので、良くも悪くも営業マンやプランナー次第。どれだけ家が素晴らしくても、営業マンやプランナーの対応が悪ければ、家づくりは台無しです。

関連記事:優秀な「プランナー」を見極める方法|優秀なプランナー20の特徴

家づくりにやりすぎは禁物

⑧不動産系分譲ビルダー

大型分譲などを手掛ける、不動産業を基盤とした住宅会社です。

分譲系不動産ビルダーの広告・建売
(出典:SUUMO

メリットは、土地と価格の安さです。

まず、不動産業を基盤としているので、土地の仕入れ力は最強です。さらに、利益率設定が低く、価格が安いです。良い土地に住めて価格が安いので、特に都心部では、不動産ビルダーが有力候補になる場合が多いかと思います。

整備された分譲地の人気は高い

デメリットは、家の性能の低さと自由度の低さです。

様々なPRをしていますが、ほぼ全ての住宅会社で、家の性能は低いです。土地と価格で勝負するのが不動産ビルダーですから、これは当然と言えます。また、自由度は低いです。「自由設計」とPRしていますが、実際の自由度は制限されます。

以下、注文住宅と分譲住宅の棟数です。分譲住宅は半数近くありますね。

<持家(注文住宅)と分譲住宅の棟数>
注文住宅と分譲住宅の割合
(出典:国土交通省

戸建住宅の半数弱を占める分譲住宅の性能が上がれば、おのずと日本全体の住宅レベルも上がっていくはず。不動産系分譲ビルダーにも、頑張ってほしいと思っています。

関連記事:注文住宅の土地探しを成功させる5つのコツ|土地探しの失敗パターンを紹介

⑨設計事務所

設計事務所が主導して計画を行い、その計画をもとに住宅会社が施工をするというパターンです。①~⑧は、住宅会社が設計事務所の役割を兼任して進めています。

メリットは、唯一無二の作品ができること、デザイン自由度が高い点です。ひとつの作品としてこだわり抜き、この世に一つだけの家を作ることができます。当然、独自のデザインも可能です。

<設計事務所による作品>
設計事務所による作品的な家
(出典:フリーダムアーキテクツ)

デメリットは、まず性能が低い点。家を作品と考えると、どうしても機能性と矛盾する場面が出てきます。「海を一望できる大開口の窓」なんかは典型例ですね。窓は大きい方が作品性は高く、小さい方が機能性は高いです。

次に、価格が高い点。設計士がかける時間も相当なものですし、デザイン性を重視すると量産品はあまり採用されないので、仕方ありません。また、基本的に設計事務所はアフターサービスを行わない(施工業者が行う)ので、トラブルが起きやすいとも言えます。

家づくりを「人生に一度の作品作り」と考える人にとっては、選択肢になり得ます。

<設計事務所が設計した邸宅>

【重要】グッシンの最終目的

グッシンの最終目的は、以下の通りです。

 

「ちょうどいい塩梅の家」を建てられる住宅会社を増やし、日本中の施主が「ちょうどいい塩梅の家」を建てる事ができるようにする。

「ちょうどいい塩梅の家」とは?
基本性能(窓/断熱/気密/換気システム)、メンテナンス性能、地震・シロアリ・災害対策の全てにおいて、ちょうどいい塩梅基準をクリアし、標準仕様が充実していて契約後の追加費用がかからない家のこと。価格は「延床面積30坪で坪60万円」を目指します。

※ちょうどいい塩梅基準・・・やりすぎずやらなさすぎず、最もコスパの高い性能レベルの基準のこと

<ちょうどいい塩梅基準一覧(標準仕様チェック表)> → ダウンロードはこちら(標準仕様チェック表)

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「ちょうどいい塩梅の家」は、工務店・ハウスメーカー関係なく、グッシンの考えに賛同してくれる住宅会社と一緒に広めていきますので、ご期待ください。

今すぐ家を建てたい方へ

「そんなに待ってられないよ!」という方は、以下参考にしてください。できる限り無料で情報提供しますが、特定企業の情報に関しては、コストをかけて調査していますので、一部有料とさせてもらっています。ご了承ください。

■家づくりの知識を学ぶ
記事で学ぶ「グッシン」
https://good-things-committee.com/column/112

動画で学ぶ「youtube」
(撮影中)

セミナーで学ぶ「セミナー名未定」
(関西エリアを中心に、瀬山が出張授業を行う予定)

■住宅会社の情報を集める
【住宅会社別】マニアック性能評価(一部有料)
https://note.mu/seyama_akira/m/m91d1066f3749

【エリア別】基本性能をクリアできる住宅会社(一部有料)
https://note.mu/seyama_akira/m/mdc756f096933

まとめ

※あくまで全体の傾向であり、全ての住宅会社に当てはまるものではありません。

【ハウスメーカー】
①大手ハウスメーカー
メリット:知名度による安心感、豊富な人員によるサポート体制
デメリット:性能に対する価格が割高

②性能特化型ハウスメーカー
メリット:大手ハウスメーカーより性能が高い
デメリット:価格が高い、デザインが微妙

③FC系ハウスメーカー
メリット:大手ハウスメーカーより価格が安く、性能もそこそこ高い
デメリット:良くも悪くも、運営母体の工務店次第

④ローコスト系ハウスメーカー
メリット:価格の安さと知名度
デメリット:家の性能が低い

⑤新興系ハウスメーカー
メリット:営業マンのレベルが高い、コスパがそこそこ高い
デメリット:会社の成長に、技術部の体制が追い付かないことがある

【工務店】
⑥化石工務店
メリット:ほぼない、近所にあるくらい
デメリット:知識がない、性能が低い、その割に価格が高く、経営が不安定

⑦スーパー工務店
メリット:性能が高い、知識豊富、職人との距離が近い
デメリット:日本に数少ない、価格が高い場合がある

【不動産系分譲ビルダー・設計事務所】
⑧不動産系分譲ビルダー
メリット:便利できれいな分譲地に住める、利益率が低いのでお得
デメリット:家の性能が低い、自由度が低い

⑨設計事務所
メリット:唯一無二の作品ができる、デザイン自由度が高い
デメリット:性能が低い、価格が高い


【文責:瀬山彰】

PROFILE

ハウスメーカー・工務店・分譲ビルダー・設計事務所のメリット・デメリット | 住宅会社選び

せやま大学の人

瀬山 彰

大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。

「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。

娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。