2024.11.30
家を建てる時、固定資産税のことをどれくらい考えているでしょうか。少しの知識の差で、5年以内に数十万円、一生で考えると100万円以上支払う税金額に差が出てきます。家を建てる前に固定資産税に関する知識をしっかりつけて、固定資産税が安くなる方法を会得してください。具体的には、引き渡しを年内にするのか年明けにするのか、カーポートは固定資産税の検査が終わった後にするのかといった内容を紹介します。住宅会社の営業マンから言われることもありますが、その営業マンも正しくルールを理解せずに伝えている可能性があります。固定資産税を実際に払うのは施主自身です。自己防衛できるよう、正しい知識を身につけてくださいね。
今回は以下を詳しく解説していきます。
目次
固定資産税とは
固定資産税とは、土地や建物などの固定の資産の所有者にかかる税金で、毎年4~5月くらいに通知が来て支払います。「固定資産税」とまとめて言いますが、正確には「固定資産税」と「都市計画税」の2つがあり、まとめて「固都税」と言われることもあります。
この固定資産税の支払い通知が来るのは毎年4~5月ですが、実は固定資産税を賢くコストカットするためには年末年始が大事な時期です。
そのため、これから家を建てる人や建て替えを検討中の人は、しっかり知識をつけてください。
また固定資産税に関するより詳しい解説については、以下記事で解説していますので、こちらも併せて読んでみてください。
関連記事:『裏ワザも紹介!新築戸建ての「固定資産税」の計算方法・安くするための7つの方法を紹介!』
固定資産税のよくある勘違い5選
①カーポートは後付けが良い
これはほぼ間違いです。そもそも、カーポートは固定資産税の対象外です。固定資産税の対象となるものは、大きく分けて以下の3つの条件を満たしています。
固定資産税の課税対象の条件
- 4方向のうち、3方向以上壁で囲まれている
- 土地に固定されている
- 居住、作業、貯蔵等に利用できる
この3つが揃わないと固定資産税の対象になりませんが、カーポートは4方向が抜けていることが多いので固定資産税の対象になりません。3方向囲まれているガレージのようなカーポートは固定資産税の対象になりますが、一般的なカーポートは対象になりません。
勘違いが生まれた理由
これは恐らく、カーポートは固定資産税の対象にならないものの建ぺい率に含まれる性質を持っていることが勘違いされる理由です。
(出典:SUUMO)
建ぺい率とは、土地の中で家を建てられる割合です。土地があまり広くなくて建ぺい率ギリギリまで家を建てたい場合にカーポートを先に作ると、建ぺい率に含まれてしまうので結果的に家が小さくなります。そのため建物の完了検査の後にカーポートを建てた方が良い、という話が派生して「固定資産税の検査後にカーポートを建てないと税金が上がる」という話が生まれたと考えられます。
ただし、建ぺい率を回避するために検査の後にカーポートを建てるのも、厳密に言うとダメな話です。とはいえ現実的にこのようにしている場合もあるので、細かい話は工務店に確認してください。
②インナーガレージは課税対象外
インナーガレージ(ビルトインガレージ)は固定資産税がかからないのでお得、というのは間違いです。インナーガレージは建物なので、固定資産税の対象になります。
勘違いが生まれた理由
これは恐らく、ビルトインガレージは容積率の緩和がきくことが理由です。
ただし、ビルトインガレージはおすすめしていません。前述の通り固定資産税の課税対象ですし、建物と変わらないくらいコストがかかります。しかも両側が壁に囲まれるため、一般的な駐車場よりもスペースを広く取る必要があります。たまにギリギリのビルトインガレージを見かけますが、使いづらいですよ。
屋根を付けたい場合はビルトインガレージではなく駐車場にカーポートを設置するのが、コスパも良いのでおすすめです。
③建物の固定資産税はいつか0円になる
残念ながら、何年経っても建物の固定資産税は0円になりません。経年減価補正率といって、年々資産価値の目減りによって固定資産税が下がっていく規定があります。
木造住宅の場合、築27年で評価額が20%に減少し、それ以降は下がらない仕組みになっています。つまり20%分の建物の固定資産税は一生かかってしまいます。
ちなみに、木造住宅と鉄骨住宅を比べると、鉄骨住宅の方が固定資産税が高くなります。経年減価補正率が違い、鉄骨住宅やRC住宅の場合は20%まで下がるのに45年かかります。価値の目減りが少ないとされているので、鉄骨住宅はより固定資産税を負担しなければならないというデメリットがあります。
質問①:木造より鉄骨の方が長持ち?
固定資産税の減価補正率や減価償却の年数は、実際の建物の耐久性とはズレてきています。昔の木造住宅は傷みやすかったですが、今は木造住宅でもしっかり気密を取って耐震性を高め、シロアリ対策や雨漏り対策をすれば27年で価値が20%になることはありません。税法上は木造住宅の方が有利です。木造住宅の方が断熱・気密も取りやすく熱橋(ヒートブリッジ)もできませんし、固定資産税も安いので、2~3階建ての戸建住宅に関しては木造住宅がおすすめです。
質問②:建物の固定資産税に対する減税措置は?
基本的に、新築から3年間は建物の固定資産税が半分になる制度があります。長期優良住宅の場合、3年間ではなく5年間に延びます。固定資産税の減税措置や、2024年であれば子育てエコホーム支援事業といった住宅に関する支援事業のように長期優良住宅を条件にしている補助金が結構あるので、現段階では長期優良住宅を取得するのがおすすめです。
現状では2026年の3月まで固定資産税に対する減税措置が延長されているので、これから家を建てる人は長期優良住宅を取って固定資産税の減税措置をもらいながら、補助金ももらってください。一部、登記費用が安くなる場合もあるので活用してくださいね。
④年明けに入居した方が得
これは必ずしも言いきれず、ケースバイケースです。「1月1日時点で建物がない方が、建物の固定資産税が浮いてお得では?」と思うかもしれませんが、土地の固定資産税に適用される減税措置も考慮する必要があります。
小規模住宅用地の特例
- 土地の上に建物がある場合
固定資産税は約1/6
都市計画税は約1/3
※200㎡を超えると減税分は半分
小規模住宅用地の特例といって、上記のように土地の上に建物があるとすごく大きな減税措置を受けられます。
確かに1月1日時点で建物がない場合、建物の固定資産税はかかりません。ただし、建物がないと土地の固定資産税の減税措置が使えないため、固定資産税は約6倍、都市計画税は約3倍になってしまいます。
逆に1月1日に建物がある、つまり年内に建物を完成させていた方が、土地の固定資産税の減税措置がききます。一方、建物の固定資産税がかかってしまいます。
つまり、建物の固定資産税の金額と、土地の固定資産税の減税額を比較して選ぶ必要があります。一概に「1月1日時点で建物がない方が得」と思わないようにしてください。
質問①:解体のタイミングは?
解体のタイミングも同様に考えることができます。年内に解体を始めると1月1日時点で土地の上に建物がないので、土地の固定資産税が上がります。一方、年明けに解体を開始すると1月1日時点で建物が残っているので、建物の固定資産税がかかります。
解体のタイミングは、建物の固定資産税を回避する方が得か、土地の減税措置を優先する方が得かを比較して検討してください。
ただし、解体するような建物は経年減価補正率で固定資産税が20%になっているケースが多いので、建物の固定資産税はだいぶ安くなっているはずです。都市部であれば建物の固定資産税を支払う、すなわち年明けに解体する方が得なケースが多いです。逆に、地方であれば土地の固定資産税がめちゃくちゃ安いこともあるので、比較して解体のタイミングを決めてください。
ただ、建て替えする場合は特別ルールがあります。建て替えの場合、1月1日時点で建物がない状態であっても、ある条件をクリアすれば土地の減税措置を適用することができます。
いくつか条件はありますが、1月1日時点で新しい家の工事に着手していれば減税措置を受けられます。逆に1月1日時点で計画段階の場合、特別ルールは適用されません。このような条件があるので、建て替えになる人は1月1日を意識して、小規模住宅用地の特例が適用されるようなスケジュールで進められるよう、工務店と連携してください。
質問②:二世帯住宅の場合は?
二世帯住宅の場合、小規模住宅用地の特例条件が2つの世帯で認定されると200㎡ではなく400㎡になります。さらに、新築住宅の場合は建物の固定資産税の減税も延床面積の上限が120㎡ではなく240㎡になります。
二世帯住宅を建てる時は、住宅が完全分離の二世帯だと認定されるような家の建て方を意識してください。認定される条件は市町村によって微妙に異なりますが、構造や利用上の独立、玄関やキッチン、トイレの分離、間の経路に鍵付きの扉があることが条件になっています。2つがちゃんと分離されている家だということを示す図面の提出が求められます。ハウスメーカーや工務店の人も知らないことが多いですし、市町村によって分離とみなされる条件が異なっているので、ここは調べながら慎重に進めて減税措置を受けてください。
⑤豪華な設備を使わないことが最重要!
これは間違いではありません。タイルの外壁や床暖房、業務用エアコンを用いる全館空調や天井カセットエアコンなどは、固定資産税が上がります。ただし、建物の固定資産税の評価を最も上げる要因は家の大きさです。固定資産税を上げないためには、家を大きくしすぎないことが大切です。延床面積30坪前後で十分ですよ。どれだけ贅沢しても34~35坪で良いです。40坪や45坪の家は大きすぎます。
なんなら20坪台でも良い家を作ることはできます。大きな家にしすぎないことが、固定資産税を抑える一番効果的な対策です。もちろん建築費も下がるので、ぜひ家を大きくしすぎない努力をしてください。
ただし、手狭な家にしてはいけません。リビングと収納が充実した、1階完結型の家にしてください。一方、廊下や通路、広すぎる子ども部屋のような部分を削って、無駄をなくしてください。その上で、大事なところに予算とスペースを与えていくような、コスパの良い「せやまどり」で家を建ててくださいね。
20坪台の素敵な間取りに関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。
関連記事:【せやまどりNo.81】「狭小住宅でも収納充実、明るく開放的な家にするテクニック満載の家」の間取り図
まとめ
固定資産税に関する勘違い5選
-
カーポートは後付けが良い
そもそも固定資産税の対象外 -
インナーガレージは課税対象外
建物なので対象になる -
固定資産税はいつか0円になる
経年減価補正率によって下がるが20%から減らない -
年明けに入居した方が得
ケースバイケース -
豪華な土地を使わないことが最重要
一番大きな要因は家の大きさ