2024.11.30
「ハウスメーカー」と「工務店」、両者の違いについて疑問を抱く方も多いかもしれませんが、実はこれらに明確な定義はありません。
強いていうのであれば、総合展示場に出展しているような規模感がある住宅会社を「ハウスメーカー」、小規模+地元密着で経営している住宅会社を「工務店」と呼ぶイメージです。
「工務店」も「ハウスメーカー」も本質は特に変わりません。
目次
「工務店orハウスメーカー」で悩むのはあまり意味がない!
<性能と価格からみた住宅会社の比較>
上でお話ししたように、ハウスメーカーと工務店の間には明確な定義もありませんから、
- ハウスメーカーが良いのか?
- 工務店が良いのか?
と考えても本質的には意味がありません。
とはいえそれぞれ「ある程度の傾向」がありますので、ざっと解説していきます。最終的にはそれぞれの住宅会社を見極めるほかありませんので、あくまで傾向をつかんでもらう目的でご覧ください。
関連記事:『後悔しない住宅会社の選び方<完全保存版>|契約までの5つのSTEPを公開』
【タイプ別で見る】「ハウスメーカー」のメリット・デメリット
まずハウスメーカーは、以下の5つに分類されます。タイプ別にそれぞれメリット・デメリットを見ていきましょう。
あくまで全体の傾向であり、全ての住宅会社に当てはまるものではありません。
- 大手ハウスメーカー
- 性能特化型ハウスメーカー
- FC系ハウスメーカー
- ローコスト系ハウスメーカー
- 新興系ハウスメーカー
①「大手ハウスメーカー」のメリット・デメリットは?
大手ハウスメーカーは、「誰でも知っている住宅会社」ですね。日本全国の総合展示場にある住宅会社と思ってもらえればOKです。
具体的なメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット:知名度が高く、サービス体制が安定
やはり、一番の特長は「知名度」。
建築中に“●●ハウスの看板”がかかれば、「●●ハウスで建てるんだね~」と言われますし、例えば二世帯住宅や、団塊の世代から資金面を援助してもらう際には、こういった「住宅会社の知名度」が役に立つこともあるでしょう。
また大手ハウスメーカーは、事業規模も大きいので人員も豊富です。
住宅展示場に行ったら、ぜひ営業マンの人数を数えてみてください。だいたい5人以上はいると思います。
家づくりの打ち合わせにも、「営業」だけでなく、「設計士」や「デザイナー」が同席することもありますし、比較的サービス体制がしっかりしている会社が多いですね。
デメリット:価格は割高+肝心の「性能面」で劣る
大手ハウスメーカーは、利益率が一般工務店の「1.5~2倍」に設定されているのでかなり割高です。(メリットであげたサービス体制を維持するためには、必要な利益率と考えられますが……)
大手ハウスメーカーが高いのは、CMなどの広告費のせい?
「大手ハウスメーカーは、CMなどの広告費が高いからその分価格が高い!」とよく言われますが、これはおそらくウソです。
<広告宣伝費ランキング(企業/広告費/売上/対売上広告費率)>
(出典:東洋経済 ※一部加工)
大手ハウスメーカーの広告宣伝費は、上の表からもわかる通り「売上高の1%前後」です。2,000万円の家を20万円の広告宣伝費で売ったら、かなり効率良いですよね。
一方工務店の場合、広告宣伝費は「売上高の3~5%」と言われていますので、同様に2,000万円の家であれば「広告費は60~100万円」ということになります。
このように広告宣伝費だけで考えるのであれば、大手ハウスメーカーよりも工務店の方が“お金をかけている”わけです。
また大手ハウスメーカー最大のデメリットは、最も大切な『家の性能』が抜け落ちているという点です。
大手ハウスメーカーは、上で紹介したような「知名度」や「サービス体制」など家に直接的に影響しないメリットは大きいのですが、このように肝心な「家の性能」が抜け落ちてしまっているため、BE ENOUGHではオススメしていません。
ただ「親が大手ハウスメーカーでないとお金を出してくれない」や、「資金に余裕があるので、知名度やサービス体制を最優先に考えたい」など、具体的な理由がある場合には、選択肢に入ってくるかと思います。
<親からの資金援助>
(出典:SUUMO)
関連記事:『大手ハウスメーカー神話崩壊は間もなく』〜大手ハウスメーカーで家を建てるメリットを考える〜』
②「性能特化型ハウスメーカー」のメリット・デメリットは?
ハウスメーカーの中でも、「性能を重視した住宅会社」です。
「知名度のある住宅会社で絶対に建てたいけど、性能面も考慮したい」という方向けですね。
メリット:断熱性など「性能面」で優れている
大手ハウスメーカーに比べ、断熱性などに優れており住環境は良好です。
特に、棟数が多い会社であればあるほど気密測定は嫌がられるため、「全棟気密測定」を実施している住宅会社が見つかればラッキーでしょう。
<気密測定は高気密高断熱住宅に必要不可欠>
とはいえ、断熱以外の性能面となるとアンバランスになるため、標準仕様そのままで建築すると危険です。
特に「基礎」「屋根」「換気システム」あたりは、コストカットされている場合が多いので注意してください。
デメリット:高価になりがち+デザイン性が低い
価格については、大手ハウスメーカーと遜色ないレベルですね。
恐らく大手ハウスメーカーと比較して、「同じ価格で性能が高いのであれば〜」と選択肢に入れる方もいるんじゃないでしょうか。
また性能特化型ハウスメーカーは、デザインにあまり力を入れていない印象があります。もっとも施主からすると、「重視するところ」と「重視しないところ」がはっきりしているのは分かりやすいですけどね。
また冒頭のように、「住宅会社の知名度が必須!」と考えるのであれば、大手ハウスメーカーよりも「性能面」が期待できる分、性能特化型ハウスメーカーは比較的賢い選択ではあると思います。
ただ、「知名度が必須でない」という場合には割高な選択肢と言えるでしょう。
③「FC系ハウスメーカー」のメリット・デメリットは?
「●●ホーム○○店」など、「FC(フランチャイズ)に加盟して看板を上げている工務店」を指します。中には直営店もありますが、ほとんどが加盟店(運営母体は工務店)ですね。
メリット:大手よりも安く、性能もまずまず
母体は工務店なので、「多くの人員を抱えていない=固定費が安い」という点から、価格は大手ハウスメーカーよりも安い傾向にあります。加えて性能もまずまず高い、というのもメリットでしょう。
デメリット:家の質は「加盟工務店」次第
ただFC系ハウスメーカーの場合、標準仕様の最終判断は「FC本部」ではなく「加盟工務店」が行います。
そのため良い工務店に出会うことができればラッキーですが、工務店が悪ければ、家の性能も劣悪になってしまう…というのは覚えておきましょう。
また比較的経営基盤も弱いため、FC系ハウスメーカーで家を建てる場合には、「完成保証への加入」がオススメです。
注意してほしいFC本部の販促
FC本部は、集客のために、「さほど効果が確認されていない商品」や「メンテナンスリスクの高い新商品」を発売することがあります。
さらにこれらは「キャンペーン」と言いながらも、見積りにいくらか上乗せされていたり…と、本当にお得になることはあまりありませんのでご注意を。
④「ローコスト系ハウスメーカ-」のメリット・デメリットは?
総合展示場にも出展し、「そこそこの知名度で、コストメリットを訴求している住宅会社」です。大手ハウスメーカーの「低コスト+知名度:中」版と考えて差し支えありません。
当然コストを重視する分、性能面は他ハウスメーカーに劣るためオススメはしませんが、「予算が少ないが、ある程度知名度のある住宅会社で建てたい」という人にとっては、選択肢になるかと思います。
⑤「新興系ハウスメーカー」のメリット・デメリットは?
ここ数年勢いがあり、「総合展示場への出展が加速している住宅会社」です。
「販売力が高い=営業マンの対応がいい」という可能性もありますが、急速に成長している分、「技術部の体制が追い付いているか?」が不安要素となります。【タイプ別で見る】「工務店」のメリット・デメリット
工務店は、大きく分けて以下の2つに分類されます。タイプ別にそれぞれメリット・デメリットを見ていきましょう。
あくまで全体の傾向であり、全ての住宅会社に当てはまるものではありません。
- 化石工務店
- スーパー工務店
①「化石工務店」のメリット・デメリットは?
勉強することなく、昔のやり方にこだわる工務店です。化石工務店のメリットは「近くにあること」くらいで、あとはデメリットのみ。
特に以下のフレーズは、化石工務店がよく言いがちなので、これを聞いたらすぐに退散しましょう。
化石工務店が言いがちなこと
- 「高気密にすると息苦しくなる」
古家が朽ち果てているのは低気密住宅だったからです。気密の低さは、木材の結露と腐敗に繋がるのです。
家の住環境のみならず、家の寿命を考えたときに、高気密化は必要不可欠なのですが・・・ - 「家は職人の腕が全て」
昨今はプレカット技術が進んで、経験の浅い職人でも家が建てられるようになっています。もちろん職人の腕は大切ですが、職人がすべてではありません。(まずは、建材選びが大切なのですが・・・) - 「自然素材にしないと不健康になる」
「自然素材を使えばなんとなくそれで済む…」と思っている典型的な化石工務店の発言です。
ホルムアルデヒドなどの化学物質を多量に発生する建材は姿を消し、適正な換気をすれば問題ないのですが・・・ - 「換気システムは機械なので、使わないほうが良い」
換気システムの導入が義務化されたことすら知らない、化石工務店の発言です。これは本当にあった話です。機械=悪だと思い込んでいるんでしょう・・
②「スーパー工務店」のメリット・デメリットは?
日本の住宅基準の甘さに危機感を覚え、日々勉強し、良い家を追究する工務店です。性能バランスやコスト面で「ベスト!」とまでは言えないですが、オススメできる住宅会社でしょう。
具体的なメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット:「性能×価格」のバランスが優秀
スーパー工務店は住宅基準に関しての知識が豊富なため、性能面での十分なパフォーマンスが期待できるでしょう。
また価格面でも優れており、スーパー工務店の中には「窓」「断熱」「気密」「換気システム」の基準をクリアしながらも、30坪の家で2000万円以内で家を建てられる工務店もあります。
<高気密高断熱住宅に必要不可欠な気密測定現場>
ちなみに、こんなことを言っている工務店はスーパー工務店である可能性が高いですね。工務店を選ぶ際には参考にしてみてください。
スーパー工務店あるある発言
- 「オール樹脂サッシは当然」
- 「全棟気密測定は当たり前」
- 「日本の住宅基準は甘すぎる」
- 「換気は健康の基本」
デメリット:価格が高くなる場合もある
良い家を追究する分、マニア的に性能を上げすぎて価格が高くなってしまうこともあります。何事もちょうどいい塩梅がベストです。やりすぎは禁物。
またスーパー工務店の場合、ハウスメーカーのように教育体制が整っていないので、営業マンやプランナーの対応が悪いこともしばしば。どれだけ家が素晴らしくても、営業マンやプランナーの対応が悪ければ家づくりは台無しです。
関連記事:『優秀な「プランナー」を見極める方法|優秀なプランナー20の特徴』
関連記事:『信頼できる「営業マン」を見極める方法|信頼できる営業マン20の特徴』
「不動産系分譲ビルダー」のメリット・デメリットは?
不動産系分譲ビルダーとは、「大型分譲などを手掛ける、不動産業を基盤とした住宅会社」です。
具体的なメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット:「立地の良さ」と「価格の安さ」
不動産系分譲ビルダーは不動産業が基盤なので、土地の仕入れ力が最強です。
また利益率についても比較的低めに設定しているため土地の価格が安い傾向にあります。いい土地に安く住めるというわけですね。
このように不動産系分譲ビルダーが取り扱う土地は優良かつ安価であるため、特に都心部で家を建てる際には有力候補になる場合が多いでしょう。
デメリット:性能が低く、設計自由度も低い
不動産系分譲ビルダーも様々なPRをしていますが、不動産系分譲ビルダーであれば家の性能は大抵低いです。また「自由設計」とPRされていることがよくありますが、これも実際は制限が設けられているため、自由度が高いというわけでもありません。
とはいえ、「土地と価格で勝負するのが不動産系分譲ビルダー」ですから、当然のデメリットですね。
以下は、国土交通省が公表している「注文住宅」と「分譲住宅」の棟数データですが、分譲住宅が半数近くを占めているのがわかります。
<持家(注文住宅)と分譲住宅の棟数>
(出典:国土交通省)
このように戸建の半数弱を占める分譲住宅の性能が上がれば、おのずと日本全体の住宅レベルも上がっていくはずなので、不動産系分譲ビルダーにも頑張ってほしいですね。
関連記事:注文住宅の土地探しを成功させる5つのコツ|土地探しの失敗パターンを紹介
「設計事務所」のメリット・デメリットは?
<設計事務所の手がけたデザイン住宅>
(出典:フリーダムアーキテクツ)
設計事務所で家を建てる場合は、主に設計事務所が計画を行い、その計画をもとに住宅会社が施工します。(ここまで紹介した住宅会社は、「計画」と「施工」を兼任しています。)
具体的なメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット:「唯一無二」の家がつくれる
設計事務所はデザインの自由度が高いため、唯一無二の家がつくれます。家づくりを「人生に一度の作品づくり」と考える人にとっては、有用な選択肢になり得るでしょう。
家を「ひとつの作品」としてこだわり抜き、この世に二つとない自分だけの家づくりができますし、当然独自のデザインも可能です。
デメリット:機能性との両立が困難+価格が高い
家を作品と考えると、どうしても機能性と矛盾する場面が出てきます。
「海を一望できる大開口の窓」なんかは典型的な例ですね。窓が大きいとデザイン性は高くなりますが、性能的には小さい窓の方が優れているのです。
また設計事務所では、量産品に限らず独自のデザインを家づくりを採用できます。
ただそうなると「0から設計する工程」が必要になるため、費用が膨れてしまうのは避けられません。
加えて設計事務所では、基本的に施工は住宅会社に任せるので「アフターサービス」を行いません。そのため設計事務所で家を建てる場合は、施工後のトラブルが起きやすいという点にも要注意でしょう。
まとめ
「工務店」「ハウスメーカー」「不動産系分譲ビルダー」「設計事務所」のメリット・デメリットを紹介しましたが、「質(性能)」と「価格」において、『ちょうどいい塩梅』をめざすのであれば「スーパー工務店」がおすすめです。
ただ特に性能面については、その工務店の標準仕様を含めしっかりチェックすべきなので、ぜひ無料で配布している家の性能に関するチェックシート『せやま基準一覧表』も活用してくださいね。(工務店に記入してもらうだけで、家の性能レベルが見える化できます)
せやま基準一覧表とは?
せやま基準一覧表とは、「せやま性能基準」と「せやま標準仕様」の2つのシートからなる住宅会社選びのための補助ツール(エクセルファイル)です。
「せやま性能基準」では、家の性能を決める建材に対し、それぞれ「完全に不足→少し不足→ちょうどいい塩梅→余裕があれば」の順番に性能レベルを検討でき、「せやま標準仕様」では契約前にチェックすることで、契約後の追加オプション費用を抑えることができます。
詳しい使い方に関しては、下記リンク先の記事をご覧ください。
ダウンロードページ:『せやま基準一覧表|お役立ちツール|BE ENOUGH』
合わせて読みたい記事:『営業マンより「家の性能」に100倍詳しくなる方法|せやま性能基準』
解説動画(YouTube):『家づくりの超実践ツール「せやま基準一覧表」の使い方<総集編>』