2025.02.08
寒い家で暮らすと、毎日ストレスを感じます。今回は一般社団法人 ZEH推進協議会理事の宜野座(ぎのざ)さんと一緒に、断熱性能が低い家の「リアル」を宜野座さんの自宅で紹介します。
宜野座さんは断熱のプロなので以前は超高性能住宅に住んでいましたが、現在は仕事の都合で戸建賃貸に暮らしています。そこで「どんな生活を送っているのか」「どんなストレスがあるのか」を教えてもらいました。
今回は以下を詳しく解説していきます。
目次
窓の結露
寝室の状況
性能が良くないので結露がすごい上に、窓のサッシと床が同じ高さなので結露が流れてきてしまいます。
結露の理由は?
宜野座さん:
「窓の性能、特に周りの枠の性能が悪いので外との気温差で結露してしまいます。窓の素材は半樹脂(アルミ樹脂複合サッシ)。
外がアルミで中が樹脂でできているサッシですが、外の冷たさが家の中まで伝わってきてしまいます。外は乾燥していて中は湿度を保とうとしているので、結露してしまいます」
一箇所だけではなく、他の窓も同様に結露しています。
結露の対策は?
宜野座さん(妻):
「毎朝、結露をタオルで拭いて朝の洗濯物に入れています。よく見るとカビが生えていることもあるのが気になっています」
窓の上部分も結露しているので、上から雨が降ってくるような状態になっています。
結露のデメリットは?
宜野座さん:
「結露は掃除が大変なだけではなく、家を傷めます」
宜野座さん:
「窓だけではなく壁内結露することで、断熱材や構造材が腐ってしまいます。
見える窓の部分だけではなく、見えない裏側も結露でやばいことになっています。しかも、この家は築1年未満の新築。それでこれだけ結露するので、5年後や10年後は想像するのも怖いです」
結露のリスクに関して、詳しくはこちらの記事もご確認ください。
関連記事:寒い冬の大敵!結露を防ぐ家の建て方5選!【高性能住宅でも結露する】
サーモカメラで窓付近を撮影
窓をサーモカメラで撮ると、上記のようになっています。青い部分が冷たいので、サッシ部分が冷えていることが分かります。サッシ付近は7~8度なので、外気温とそれほど変わりません。
宜野座さん:
「窓際は寒いので、室温に比べて体感温度が低いです。室温は高くても、窓から輻射熱で冷たい空気が来て下に溜まるので、足元が寒いです」
宜野座さん(妻):
「寝室では布団をちょっと窓から離して敷いて、寒くないようにしています」
子ども部屋の状況
宜野座さん:
「子ども部屋には天窓があります。夏は暑いので、自分で購入した突っ張り棒でカーテンを付けました。それにより夏は耐えられましたが、冬は耐えられません。天窓が結露して、上から水が落ちてきます。だから、この下では眠れません。雨漏りのリスクもありますし、天窓は良くないですね」
1階が寒い
高気密・高断熱住宅の弱点は「冷暗所」がないこと。どこも暖かいから、みかんが腐ってしまいます。ただ、現在宜野座さんが住んでいる家は1階に来ると温度が下がり寒さを感じます。
玄関が寒い
玄関周りの足元をサーモカメラで撮ると約13度です。
玄関ドアも8度以下と、非常に寒いです。
エアコンを付けても寒い
宜野座さん:
「下はエアコンを24~25度で付けています。その上で開けっ放しにして暖めないと、寒すぎます。それでもエアコンから遠い部屋は18度くらいになってしまいます。常にエアコンを付けているので、光熱費が高いです。
12月の電気代が、約18,000円でした。オール電化ではなく、給湯やコンロはガスなのでガス代は約8,000円です。セット割を使っても、あまり安くなりません」
洗面&お風呂の状況
宜野座さん:
「洗面にもお風呂にも窓があるので、外のように寒いです。しかも浴槽は高断熱浴槽ではなく通常のFRP浴槽ですし、お風呂の蓋も断熱ではなく通常の巻き蓋です」
お風呂を沸かした直後のお湯の温度は40度ほど。
その後、蓋をして2時間後に温度を測ると35.6度まで下がってしまいました。これではお風呂に入ることができません。
断熱浴槽ではないだけではなく、巻き蓋なことも冷えの原因だと考えられます。
※ちなみに「断熱浴槽」は4時間の湯温降下を2.5度以内にすることが定められています。
脱衣室にセラミックヒーターを設置
宜野座さん:
「脱衣室が寒いので、セラミックヒーターを使っています。電気代はかかりますが、命には代えられません」
「高気密・高断熱住宅でヒートショックを防ごう」と言いますが、別にどんな家でも温めればいいんです。電気代のことなどを考えると性能の高い家にすることが望ましいのですが、特に賃貸の人はこのようにファンヒーターを使ってください。
この家の断熱性能は?
宜野座さん:
「2025年4月から義務化になる省エネ基準(断熱等級4)は満たしていないかもしれません。この家で断熱等級が4だとすると、これを義務化してもあまり意味がありません」
換気について
宜野座さん:
「換気は第3種換気です。ただ、給排気の計画があまりできていないようです。給排気口に手を当てても何も感じません」
給排気計画が上手くいっていないので、二酸化炭素濃度を計測すると1000ppmを超えています。こういう時は窓を開けたり換気扇を回さなければなりません。
これによって二酸化炭素濃度を下げることはできますが、家の中が寒くなってしまいます。
インタビュー
高性能住宅と今の家の違い
部屋ごとの温度差が大きいことに驚きました。以前の家は部屋ごとに温度差はありませんでした。今回の家は新築なので「前の家と変わらないかな」と期待していましたが、意外と温度差があって驚きました。
これから家を建てる人へのメッセージ
性能がいい家のメリット
性能がいい家は睡眠の質が違います。寒い家は冷気が下に溜まるので、ベッドのように少し高いとマシですが、布団で寝ていると寒さを感じてしまいます。この家で寝ていると、旅館のちょっと冷たい布団で寝ている感覚を毎日味わうことになります。自分の体温で温めないと布団の中が冷たいので、大変です。
家にお金をかけるなら、優先順位は?
キッチンや設備関係はゆくゆく変えていけるので、断熱性能が必須です。特に窓をちゃんとしておかないと、結露の掃除が毎日大変です。夏もものすごく暑いです。窓は熱の出入りが激しい場所なので、本当にケチらない方が良いです。
性能が悪い家は床が冷たい
床が冷たくて、電気カーペットと普通のカーペットを両方敷いておかないと、足が冷たくなりすぎます。ただ、電気カーペットを使っているとのぼせたように暑くなりすぎます。そのため普通のカーペットを購入しましたが、家族はこちらで過ごすことの方が多いです。電気カーペットにも良し悪しがあると感じています。敷いていても付けないこともあります。
また、床暖のように「直接身体に接する」暖房はあまり良くないと言われています。直接触れるとカイロや湯たんぽを使っているのと同じような状態になり、長時間の使用には向きません。実際、子どもたちも電気カーペットの上にはあまり座りたがらないことが多いです。次に良くないのが対流(空気)による暖房で、一番理想的なものは輻射熱です。
コールドドラフト現象
窓から「コールドドラフト現象」で冷たい空気が来るので、とにかく不快です。窓の隣で寝ているので、常に冷気が入ってきてしまいます。
まとめ
断熱性能が低い家のリアルな惨状
- 結露がすごく、窓の近くで眠れない
- 天窓から水が落ちてくる
- お風呂は蓋をしても2時間で約4度下がる
- 給排気計画が上手くいかないと、二酸化炭素濃度が高くなり健康に悪影響