2024.11.14
新築を建てる時、玄関も悩むポイントですよね。引き戸が良いのか開き戸が良いのかなど、悩む人も多いでしょう。玄関ドアは一日に何度も使う場所なので、失敗すると本当に後悔します。人から見られる場所なのでデザイン面を気にする人は多いのですが、機能面のポイントを見落としてしまう人が多いんです。
「スペースを有効活用したくて引き戸にしたけど、致命的な弱点があった」「屋根が思ったより短くて、雨の日に傘を畳んだら濡れてしまう」「玄関ドアのせいで玄関がめちゃくちゃ寒い」なんて後悔をする人が多いんです。
言われてみれば納得することも多いのですが、事前に少し知識を持っているかどうかで家の住み心地は大きく変わります。毎日を快適に過ごすためにも、勉強していきましょう。
そこで、今回は
- 失敗しない玄関ドアの選び方のポイント7つ
- 失敗しない玄関ドアの選び方Q&A
など詳しく解説していきます。リフォームをする人にも参考になる情報です。なるべくコストを抑えながら機能面を確保できるように選びましょう!
目次
■失敗しない玄関ドアの選び方ポイント7つ
玄関ドアの選び方①引き戸 vs 開き戸
ベビーカーや車椅子がある場合や、玄関ポーチを広く取れない場合には引き戸が便利です。とはいえ、個人的には引き戸はおすすめしません。開き戸一択です。
引き戸は気密性能が低いんです。メーカー各社も「気密性能が高い引き戸」を出していますが、それでも開き戸に比べると気密性能は低く、玄関が寒くなる原因になります。車椅子などの事情がない場合は、開き戸がおすすめです。
引き戸にするより開き戸の方が安いので、気密性能だけではなくコスパも良くなります。「スペースを使ってしまう」「開けづらいのでは?」と言う人もいますが、慣れれば問題ありません。
玄関ドアの選び方②親子扉 vs ノーマル片開き扉
親子扉というのは、メインの扉の横に細いドアが付いているタイプの玄関ドアです。ここも開けることができるため荷物を搬入する時に楽で、昔は結構採用されていました。
ただし、大きな荷物はリビングの掃き出し窓から搬入できます。子扉が開く機会は10年に1度程度ですし、掃除も面倒でコストも高くなります。親子扉ではなく、通常のノーマル片開き扉で十分です。
また、「片袖FIX」といって、開かないガラスが入っていて玄関内を明るくできる玄関ドアもあります。ただ、これも高いのでやめた方がいいですよ。
玄関ドアの選び方③採光あり vs 採光なし
「採光あり」の玄関ドアは、ドアの中にガラスがあって、そこから光が入ってくるパターンです。これは絶対ダメというわけではないですが、原則的には採光なしの玄関ドアがおすすめです。
玄関ドアに入っているガラスは、ある程度性能が担保されているものの、窓のガラスに比べると断熱性能が低いんです。そこから熱が逃げたり入ったりして結露などの原因になりがちです。
ただ、「日中に電気を付けずに玄関を明るくしたい」という人もいますよね。そういう人は、大きなガラスが付いているものではなく、小さめのガラスが付いているものを選びましょう。
また、これは後ほど紹介しますが、玄関ドアにも断熱性能があります。このポイントをしっかり押さえれば、小さめのガラスが付いている採光ありのドアでもOKですよ。
玄関ドアの選び方④通風あり vs 通風なし
通風とは、ドアの一部を開けて風を通せる機能です。これは気密性能も落ちますし、コストも上がるので要りません。そもそも、換気のために窓を開けるということは原則ありません。人が多かったり空気が悪かったり、気候が良い時であれば窓を開けても良いでしょう。ただ、そういった状況でも玄関まで開ける必要はありません。
玄関やシューズクロークの臭いが気になって換気したいという人は、換気システムの排気口を一つ設置しましょう。特にシューズクロークは臭いがこもりがちなので、排気口を一つ付けて空気を回すのがおすすめです。
臭いが発生するのは仕方のないことです。ただ、空気を動かすことで勝手に臭いは抜けていきます。「空気が臭い!」というのは、臭いの発生源があることだけが原因ではなく、換気不足も原因です。だから玄関ドアの通風タイプで臭い対策をするのではなく、排気口で対策しましょう。
玄関ドアの選び方⑤断熱性能
これは【せやま基準一覧表】にも載っています。YKK APならD4とかD2とか言います。LIXILだと、K4とかK2とか言います。どのメーカーであっても、D2やK2クラスの玄関ドアを選んでください。D4やK4クラスは結露するので避けましょう。
D4やK4は温暖地仕様になっていて、D2やK2は寒冷地仕様になっています。それで「寒冷地仕様だから、D2やK2はオーバースペックかな」と思いがちですが、数値を見たら全然そんなことはありません。温暖地でもD2やK2クラスの玄関ドアを選んでください。
先ほどの採光ありタイプの玄関ドアの窓に関しても、D2やK2クラスの玄関ドアだとペアガラスが使われています。このように、玄関ドアだけではなくガラスの性能値も上がります。だからこそ、ガラスを付ける場合も含めて、必ずD2やK2クラスにしてください。それほどコストも高くないですよ。
さらに上のグレードで、各社から「超ハイスペック超高断熱玄関ドア」というのが出ています。たとえば、YKK APだとイノベストという商品です。これはめちゃくちゃ暖かいですし、重厚感もあってかっこいいです。ただ、個人的にはあまりおすすめしません。寒冷地だったら入れてもいいかもしれませんが、めちゃくちゃ高いんです。何十万円も高くなりますし、なによりも重量があります。大人なら問題ありませんが、小さい子どもだと開けられないかもしれません。
しかも高気密住宅の場合、レンジフードを回していると負圧状態になります。同時給排気とか差圧給気口を動かして緩和するものの、完全に負圧状態を避けることはできません。この状態でイノベストを開けようとすると、とても大変です。というわけで、イノベストまでは採用せず、D2やK2クラスで良いでしょう。その上で断熱性能が気になるという人は、窓ガラスがない採光なしタイプの玄関ドアを選ぶのがおすすめです。
玄関ドアの選び方⑥鍵のタイプ
鍵のタイプには、鍵穴・タグキー・カードキー・リモコンキー(ポケットキー)・顔認証キー・スマホ連動型キーというパターンがあります。個人的には、ポケットキータイプがおすすめです。鞄やポケットにキーを入れておけば、玄関ドアのボタンで開錠/施錠ができます。
鍵穴でもカードキーでも、慣れれば特に手間ということはありません。ただ、その「鍵を探す」という一つのアクションがなくなるのが便利なんです。玄関ドアは使う頻度が多いので、リモコンキータイプがおすすめです。
YKK APだと「ポケットキー」という商品を選べば良いでしょう。LIXILに関しては「FamiLock」という商品の中に「リモコン」があるので、これを付けてください。FamiLockにした場合、リモコンが2個か1個か0個から選べます。工務店の標準仕様は、コストを下げるために「FamiLockのリモコンキーなし」になっていることが多いので注意してください。大人がそれぞれ持った方が良いので、リモコンは2つ必要ですよ。
スマホ連動型のスマホキーも各社から出ているので、導入しても良いでしょう。ただ、スマホキーはスマホの充電が切れた時に困りますし、探す手間があるので、やっぱりリモコンキーの方が便利です。
顔認証キーに関してはショールームで試してみましたが、カタログよりも認証範囲が狭いので注意してください。背が高い大人や子どもの場合、認証されるために面倒かもしれません。ただ、それほど高くないので、こういったデメリットを理解した上で導入するのはアリだと思いますよ。
玄関ドアの選び方⑦玄関ポーチ
玄関ドアとは関係がないですが、失敗する人が多いので玄関ポーチに関しても紹介します。
まず玄関ポーチの広さに関しては、基本は1,200mm×1,200mmがおすすめです。玄関の中と同じように1.5P×1.5P(1P=91cm)の広さが確保できていれば大丈夫でしょう。色々な記事では「1,800mm(2P)くらいあった方が良いですよ」と書いているものも多いです。もちろん広いのが理想ですが、土地が狭かったりするとそこまでの広さは取れないことの方が多いでしょう。とりあえずは1,200mm×1,200mmの広さを確保して、余裕があれば幅1,800mmにするというくらいで良いでしょう。ただし、広くするとその分コストもかかります。コストをあまりかけずにジャストサイズにすることも意識してくださいね。
ポーチの段差の高さに関しては、150~180mmがおすすめです。これ以上でもダメではありませんが、少し段差が高い印象になります。逆にこれ以下の低さも上がりづらくなります。「段差は低いほど上がりやすいんじゃないの?」と思う人も多いですが、脚に障害があるような人を除いて、低すぎるのも意外と上がりづらくなるんです。適度な高さがある方が良いので、150~180mmにしてください。
「将来、車椅子になった時のためにスロープを付けておこう」と考える人もいますが、スロープはすごくなだらかにしないと上がれないので、めちゃくちゃスペースを取ります。車椅子のような事情がある人は必須ですが、「将来のために」という考えで事前にスロープを付けるのは、ちょっとやり過ぎかもしれません。
将来、どうしてもスロープが必要になった時には、角度は急になりますが台を付けるようなリフォームをして「人に押してもらったら上がれる」という状態にすることはできます。全然スロープの必要がないうちから作っておく必要はないでしょう。
雨対策として、ポーチのところに出ている屋根の広さも紹介します。こちらも原則ポーチと同じで、1,200mm×1,200mmにしましょう。ポーチの一番上の段が雨で濡れないようにしておけば大丈夫です。
時々、奥行き900mmぐらいの屋根しか付いていないケースを見ますが、これだと濡れてしまいます。もし奥行きが900mmしかない場合は、追加で300~400mmぐらいの庇(ひさし)を設置しましょう。それだけで雨の日のストレスが激減しますよ。
こうした対策は、庇の他にオーバーハングといったパターンもあります。ベーシックなのはオーバーハングパターンです。デザイン的にもかっこいいのでおすすめです。ただ、「絶対にオーバーハングにしよう!」とすると間取り制限もかかってきます。
オーバーハングができない場合は、アーム式のシステム庇もシンプルでかっこいいですよ。アームが嫌いという人は、奥行き1,200mmくらいまでであればアームなしのタイプもあります。ただ、アームなしタイプは結構高いですし、積雪地域の場合は注意が必要です。積雪が150cmくらいまでなら対応できるものもありますが、ちゃんとしたものを選ばないと雪の重みで折れてしまうので注意してくださいね。
失敗しない玄関ドアの選び方Q&A
質問①:玄関ドアのおすすめのメーカーは?
玄関ドアのメーカーは特に「ここがおすすめ!」というところはありません。YKK APでもLIXILでも、好きなところを選んで良いでしょう。ただ、鍵には注意が必要です。前述の通り、LIXILのFamiLockを選ぶ場合はリモコンの数に注意してください。また、断熱性能も重要です。D2やK2クラスの玄関ドアを選んでくださいね。
その他の点はコスト的にも似ていますし、両社ともに重厚感のあるかっこいいデザインを取り揃えています。個人的にはYKK APのデザインの方が好きですが、そこまで気にするほどではないでしょう。
質問②:玄関をおしゃれにするためのデザイン的なポイントは?
インテリアコーディネーターと相談して、外観との調和を考えましょう。たとえば家全体のテーマが和風なのに、玄関ドアだけ可愛いタイプとかはやめた方が良いです。逆に玄関ドアは濃い茶色なのに、外構が薄い色というのもやめた方が良いでしょう。家全体のイメージから決めても良いですし、好きな玄関ドアを選んでから家全体のデザインバランスを統一していく方法もおすすめです。
インテリアは全体のバランスが大切です。色を使いすぎないとか、テイストが揃っているということが重要です。デザインは結構好みが出るところなので、玄関ドアの好みから全体の方向性を決めていくパターンもありですよ。
また、デザインではないですが、凹凸の多い玄関ドアは掃除しづらいのでやめた方が良いですよ。凹凸があるとかっこいいですが「この部分は手が入らなくて掃除できない!」となりかねませんし、虫が巣を作ってしまうこともあります。デザイン性だけではなく、メンテナンス性も重視して選んでください。
まとめ
玄関ドアの種類と特徴・選び方のポイント
- 失敗しない玄関ドアの選び方7つ
①引き戸 vs 開き戸→開き戸一択
②親子扉 vs ノーマル片開き扉→ノーマル片開き扉で十分!
③採光あり vs 採光なし→採光なしを推奨
④通風あり vs 通風なし→通風ありでOK
⑤断熱性能→D2やK2クラス必須
⑥鍵→リモコンキー(ポケットキー)推奨 ※FamiLockはリモコンの数に注意
⑦玄関ポーチ→広さは1,200mm×1,200mm推奨 - 玄関ドアのメーカーは、どこでもOK
- デザインは全体の調和を考えながらメンテナンスしやすいものを!