2024.09.07
今回は、太陽光パネルのマキシオンジャパンの小西 龍晴社長(2024年9月1日より、M-IBCの代表取締役に就任)と対談した内容を紹介します。マキシオンはアメリカで株価が低迷していたり、日本での拠点がなくなるのではないかという噂があったりします。そうした内容を直接確認しにM-IBC(マキシオンの日本総代理店)に来ました。
マキシオン以外の太陽光パネルを考えている人にも役立つ話が含まれているので、ぜひ参考にしてくださいね。
今回は以下を詳しく解説していきます。
目次
株価低迷の理由は?40年保証は大丈夫?
アメリカの本社では株価が数年低迷しているというニュースを見て「マキシオンは大丈夫か」「40年保証はすごいけど、そこまで会社がもつのか」と心配している人が多いので、その点を聞いてきました。
太陽光パネル業界の状況
小西社長:現在は太陽光パネルの業界自体が厳しい状況になっています。というのも、太陽光に人気が集まっているため、パネルが不足しています。それを受けて各メーカーが製造キャパを増やした結果、需要に対して供給が倍くらいになってしまいました。それにより、現在は各社ともに数百億円の赤字が出てしまっている状況です。
そのため、マキシオンに限らず各社が苦しい状況です。この状況は2~3年ほど続き、その後は需要と供給のバランスが取れるでしょう。
マキシオンの赤字について
小西社長:このような状況で、マキシオンも赤字を出しています。その中で、TCLというウエハーメーカーから約150億円(1ドル=150円で計算)の融資を受けました。これによりマキシオンの経営基盤は安定しました。
この借金に対しては、新規の株を発行することで切り替えていきます。2024年5月の時点では2ドルほどでしたが、2024年8月時点では0.2ドル前後です。そのため「株価が暴落しているけど大丈夫?」と聞かれることがありますが、実は時価総額はさほど変わりません。
分かりやすく言うと、株価は下がっていても会社の価値としては変わっていないんです。
株の発行総数が増えたため1株あたりの価値は下がり株価が落ちていますが、会社の価値は落ちていないので問題はありません。
株価が落ちても問題ない理由を分かりやすく解説!
資金調達の方法について
- エクイティファイナンス
株式発行により資金を調達
メリット:返済義務がない
デメリット:株価下落リスク - デットファイナンス
借金=返済義務あり
資金調達にはエクイティファイナンスとデットファイナンスという2種類があり、一般的に「借金」と呼ばれるのは返済義務のあるデットファイナンスです。一方、今回のマキシオンは株式を追加発行することによって資金調達をするエクイティファイナンスを行いました。
エクイティファイナンスのメリットは、借金のような返済義務がないこと。一方、一株あたりの価値が下がるため、株価が下落したり既存の株主に怒られたりするリスクがある、というのがデメリットです。
今回、マキシオンが行ったのはエクイティファイナンスだから返済義務はない!
ただ、「マキシオンの財務状況は今後安泰」「万全で100%倒産しない」というわけではありません。それは誰にも分からないことです。ただし、株価の下がり方程財務状況は悪化していないこと、むしろ今回の資金調達で財務状況が安定したことは事実です。
TCLからマキシオンへの融資による影響
小西社長:太陽光パネル(太陽電池)の原材料はポリシリコンです。それからインゴットを作りウエハーにして、パネルメーカーがセル自体を作ってモジュールにします。
TCLは、インゴットとウエハーを作っている世界一のメーカーです。TCL単体で約10兆円の売上があり、グループ全体では約50兆円の売上があります。このTCLが原材料の部分でもマキシオンと提携していくことによって、将来的に価格競争力も含めて成長していくと考えています。
マキシオンの株について
小西社長:大株主であるTCLが50.1%保有することになります。そのため、もともと大株主であったTCLが、今後はよりマキシオンの経営に介入する可能性があります。
ただし、これをデメリットにするのではなく、プラスにしていきたいと考えています。TCLは太陽光パネル業界の専門家たちですし、TZE(TCL)のトップの人たちはバックコンタクト(詳細は後述)を推進しています。
さらに、TCLには1,000以上の取得済み特許があるため、マキシオンはその点にも期待しています。単に金額だけではなく、技術革新の可能性が一番高いTCLに投資をしてもらっているため、良いパートナーができたと考えています。
マキシオンが日本から撤退?アフターメンテナンスは?
マキシオンのユーザーから「マキシオンは日本から撤退する?」「アフターメンテナンスの対応が悪くなるのでは?」と聞かれることが多いため、その点も小西社長に確認してきました。
マキシオンは日本から撤退する?
小西社長:マキシオンジャパンの撤退予定はありません。マキシオンジャパンの中には、マーケティング、サプライチェーン、販売などの部隊があります。今回、販売部隊は独立してM-IBC(マキシオンの日本総代理店)という会社を立ち上げましたが、マーケティング部隊などはそのままマキシオンジャパンに残っています。
マキシオンは「40年保証」が一番の売りですが、これはマキシオンの本体が出しているもので、マキシオンジャパンはあくまで窓口です。日本語で問い合わせが来たものを日本人が対応し、マキシオンジャパンが本社と対応しながら保証を提供しています。その窓口がマキシオンジャパンからM-IBCになっただけで、マキシオンジャパンは撤退しません。
どうしてM-IBCを作ったの?何か裏の事情があるのでは?
小西社長:マキシオンはパネルメーカーなので、太陽光パネルを売ることがメインの業務です。本社ではコンテナに数百万枚入れて販売に届けて、それぞれの販売店が売っていくビジネス形態です。
ただ、日本では各住宅に合うシステムを作り上げて、メーカーが提供する形が一般的です。そのため、本社と日本ではメインのビジネス形態が異なり、時間がかかってしまいます。そのため、新しいサービス形態が生まれた時の対応が遅くなる恐れがあります。
そこで、販売部隊をM-IBCという形で独立させることで、お客さんの要望に合うシステムを組み、スピーディに提案することができるようになりました。これがM-IBCの強みであり、独立によるメリットです。
エンドユーザーからすれば、独立後も何も変わらない?
小西社長:その通りです。独立によって日本のニーズに特化した対応ができるようになります。ベースは変わりません。
M-IBCは本社の方から色々なサポートを受けています。たとえば、一番負荷がかかる、安定供給のための在庫ストックはマキシオン本社がサポートしてくれています。このようなサポートがあるため、M-IBCは非常に強い体制です。
製品保証と出力保証の違いとは?
40年保証の経緯
小西社長:マキシオンは保守的な会社ですが、業界で初めて25年の製品保証・25年の出力保証を出しました。他社の保証期間が5~10年の中で、色々な試験の結果を元に25年の保証期間にしました。
その後も、39年の歴史の中で蓄積したデータから「過去のものが壊れていないか」という調査や、第三者機関による劣化率などの数百箇所の項目に対する調査を経て「これであれば40年保証が可能」と判断しました。
もともと、加速劣化試験も通常であれば2000時間のところを、マキシオンは8000時間でテストしていました。それでも問題ない結果が出たことや、実際のデータから40年保証にしています。
これは、世界中で裁判になることも多いポイントです。消費者が「25年保証じゃないの?」と言っても、メーカー側から「製品保証は10年だから対象外です」と答えることもあります。つまり、「保証」といっても、消費者としては「製品保証なのか出力保証なのか分からない」というケースが結構多いんです。
マキシオンとしては混乱させたくないので、一緒にしています。何があった場合でもメーカーが悪いので、両方40年にしています。
製品保証と出力保証の違いは?
小西社長:「製品に全く異常がなければ、これだけの出力が出る」というのが出力保証です。「コネクタにちょっと異常がある」「ジャンクションボックスが外れて出力が下がった」というケースは、出力保証では保証されません。
ただし、実際には物が壊れたために出力が下がります。そこで、必要になるのが製品保証。たとえば太陽光パネルのフレームが外れて水が入ってショートした場合、出力保証では対象になりませんが、製品保証では保証されます。
不具合が起きたり発電が下がったりした時、
保証を使うためにはどのような流れで対応・相談すれば良いの?
小西社長:マキシオンは相談の連絡先がホームページにあるので、そこから連絡してください。その上で、実際の状況を確認して不具合の原因を突き止めます。パネル以外が原因の不具合であれば、他の機器メーカーのところに連絡しますし、パネルが原因であればマキシオンの方で調査して回答します。
不具合の調査で費用負担はあるの?
小西社長:不要です。
出力保証の対象になるために、出力が落ちていることを証明しなければならない?
小西社長:出力が落ちていることを一般ユーザーが計測して証明するのは、ほぼ不可能です。工場や第三者機関に持ち込まなければなりませんし、計測結果が正確かどうかも一般ユーザーには分かりません。
マキシオンでは、事象を聞き取ったうえで出力が下がっていると判断すれば、交換をします。
昔は太陽光パネルのクオリティもメーカーごとにバラつきがありましたが、機械産業になったことでクオリティが安定しました。それにより、「物さえ壊れていなければ、出力はそれほど下がらない」という作り方ができるようになりました。
そういう意味では、出力は大丈夫なので製品保証に注目するのがおすすめです。
N型パネルとP型パネルの違いとは?
少しマニアックな話になりますが、太陽光パネルはP型パネルからN型パネルという流れになってきています。今までは主流ではなかったN型パネルですが、取り組む会社も増えています。そこで、N型パネルとP型パネルの違いや、マキシオンの優位性を小西社長に紹介してもらいます。
N型パネルとP型パネルの特徴の違いは?
小西社長:N型パネルは、光が弱くてもある程度の発電ができます。「曇っていても発電します」というのは、N型パネルの特性です。
また、もう一つの特徴は温度特性が優れていること。太陽光パネルは暑い日には発電量が落ちるものですが、N型パネルは温度計数をある程度低く保つことができます。
N型パネルが、曇っている時でも発電できる理由は?
小西社長:光を電気に変えられる時間が、P型パネルよりN型パネルの方が長いです。この時間が長いほど発電できます。
昔はN型パネルを作っているメーカーが少なかったので、高価でした。ただし、参入するメーカーが増えたことでN型パネルの値段も下がってきています。
LID現象については?
小西社長:LID(Light Induced Degradation)現象とは、いわゆる初期劣化です。たとえばP型パネルの場合、パネルを設置して1ヶ月~半年以内のところで、2~3%くらい出力が落ちます。つまり、100Wの太陽光パネルなら、97Wになってしまいます。
ただし、N型パネルは基本的にそれがありません。P型パネルは光が当たると不純物ができて劣化しますが、N型パネルはリンを使っているので、その要素がありません。
マキシオンパネルの特徴とは?
バックコンタクト技術
マキシオンパネルは、他社製品とどのような違いがあるの?
小西社長:マキシオンの太陽光パネルは特許によって変換効率の限界値が高いです。2024年8月現在の変換効率は22.6%ですが、マキシオン7は24%で、将来的には25%を目指しています。
バックコンタクトとは?
小西社長:従来の太陽光パネルは、電極が表面と裏面に分かれています。表面と裏面のそれぞれに電気を取り出す部分があり、そのために電線のようなものが必要です。
小西社長:一方、バックコンタクトの表面には電気を取り出すところがなく、裏で取り出せるような半導体の作り方をしています。表面に電気を取り出す部分があると光を遮ってしまい、反射してしまう量が多く発電効率が悪くなります。ただし、バックコンタクトは全面で光を受けられるため、変換効率が高いです。
また、バックコンタクトの中でも耐久性が高く、マキシオンのパネルは40年保証が可能です。これは、裏面を銅メッキにすることで全体の強度を支えています。つまり、割れても発電することができます。
実際に第三者機関で計測したところ、他社の太陽光パネルは割れたら価値が下がりますが、マキシオンの場合は割れても価値が下がりません。こういった点も、他社と異なる特徴です。特許をとっているため、この技術はマキシオンでしかできません。
また、太陽光パネルにマット感があるため、住宅に取り付けた時に「格好良い」というメリットもあります。
価格が高い
BE ENOUGHが推進している「せやま印工務店プロジェクト」では商流をくくることで、マキシオンパネルをかなり安く購入できるようにしています。しかし、一般的にはマキシオンパネルは高くて手が出せないという消費者も少なくはありません。
価格における企業努力は?
小西社長:確かに、色々な技術を盛り込んでいるためマキシオンパネルは高いです。ただし、だいぶ値段が落ちてきました。
他社の値段が落ちるスピードがマキシオンよりも速いため、マキシオンも頑張らなければなりません。そういった中で、融資してくれるパートナーとしてTCLを選んだり、環境に良いエネルギーをより安く作れる企業努力をしています。
計算してみると、40年という期間でみると経済性は良くなります。ただ、どうしても初期コストは高くなってしまうので、その点については今後も努力していく予定です。
雹(ひょう)対策
マキシオンの雹対策は?
小西社長:マキシオンパネルは、45mmの雹が当たったとしても大丈夫な試験を通過しています。通常は25mmで試験するため、マキシオンパネルはかなり大きな雹が降っても耐えられると考えられます。
1枚あたりの発電量
BE ENOUGHでは、2階を小さくする家づくりを推奨しています。基本的には平屋が良いので、1階完結型の間取りにして2階を小さくしています。
これまで、住宅会社では「原価が落ちてコスパ良く見えるので総2階がおすすめ」と言っていましたが、BE ENOUGHはリビングを広くして収納も1階にまとめた結果、2階の屋根の面積が狭くなっています。つまり太陽光パネルを載せられる面積が小さくなっています。
マキシオンパネルは1枚あたりの発電量が多いので、2階を小さくしても大丈夫?
小西社長:日本は土地の面積が限られていて屋根も小さくなりがちなので、変換効率が非常に大切です。前述の通り、バックコンタクトは変換効率を突き詰めているので、1枚あたり400Wの発電ができます。
最近、保育園から「2階部分に物置として活用していた空間があったので、そこにマキシオンの太陽光パネルを載せたら温度が2~3度下がった」と言われることがあります。その結果、今までは人が暮らせるような温度じゃなかった場所を、子どもの遊び場として使えるようになったようです。
実際、太陽光パネルの有無で天井の表面温度を比較したところ、約6~7度くらいの差があり、空間の温度としては2~3度下がりました。
マキシオンの太陽光パネルは、太陽光のエネルギーを100とすると20%強を電気に変換します。つまり、その熱量が家の中に入らないので、太陽光パネルを付けることで温度を下げる効果が期待できます。これは、実際に専門家に計算を依頼した結果も私たちの理論と一致しています。
ウイグル問題への対応
太陽光パネルの作成に関する人権問題への対応は?
小西社長:これは太陽光業界における問題になっていることです。太陽光パネルはポリシリコンが原材料になっていて、それは中国のウイグル自治区で世界の生産量の半分以上が生産されています。そこで女性や子どもに強制労働させているという話もあります。そうやって生産されたかもしれないものを販売・購入することを問題視する意見もあります。
ただ、マキシオンは全てのパネルについてウイグル自治区の材料を使っていません。つまり、人権問題が絡まないパネルとして利用していただけます。
小西社長の今後の展望
小西社長:マキシオンだけではなく業界自体が伸びていってほしいと思っています。また、太陽光パネルは良いものですので、皆さんに取り入れてほしいです。
その「なぜ入れた方が良いのか」という理由を伝えていきたいとも考えています。
M-IBC代表取締役 小西社長、ありがとうございました!