新築で後悔…家の音問題を徹底検証!6つの音漏れ実験で分かった真実とは?

新築で後悔…家の音問題を徹底検証!6つの音漏れ実験で分かった真実とは? | 「住宅設備」の選び方を知りたい

「高気密住宅は静かで快適に暮らせるはずだ」と思っている人も多いのではないでしょうか。しかし、引き戸やリビング階段に音漏れのリスクがあることは意外と知られていません。高気密住宅の弱点ともいえる「家の中の音の響きやすさ」の対策をせずに家を建てると後悔する人が多いです。

今回は引き戸と開き戸の音漏れの程度の差を実験したり、音漏れしにくいリビング階段の形状などを検証していきます。今回の内容をしっかり学んで、音漏れの少ない静かで快適な家を建ててくださいね。

今回は以下を詳しく解説していきます。

扉の音漏れ実験

引き戸と開き戸の音漏れ問題を検証します。また、引き戸の中でも下にレールがついているタイプ、アウトセット、上吊り戸の3種類があるので、それぞれ検証しました。

実験で使う音は、話し声やトイレの流す音に近いと言われる60dBの音を使用しました。その騒音レベルがどれくらい軽減されるのか、「ピンクノイズ」という音源を使って実験しています。これくらいの騒音がドアを挟むことで、何dBまで下がるのか比較しました。

開き戸

扉を閉めた場合、開き戸では25dBくらい低減され約35dBになりました。かなり音としては小さくなっています。

引き戸(下レールタイプ)

下レールタイプの引き戸では、17~18dB低減され、約42dBになりました。ある程度の防音効果はありますが、開き戸に比べると音漏れはあります。

引き戸(アウトセット)

アウトセットの引き戸では、19~20dB低減され、約41dBになりました。

引き戸(上吊り戸)

上吊り戸の引き戸では、17~18dB低減され、約42dBになりました。

扉の音漏れ実験結果

  • 開き戸:-24~25dB
  • 引き戸(下にレール):-17~18dB
  • 引き戸(アウトセット):-19~20dB
  • 引き戸(上吊り戸):-17~18dB

このように、扉は開き戸の方が防音対策に適していることが分かりました。引き戸と比べると5~6dBくらい音が軽減されています。数字で見ると少しの差に見えますが、実際に実験すると5dBは違いを実感します。引き戸同士でも数字は異なりますが、これは体感としては誤差の範囲です。

質問①:開き戸と引き戸の選び方は?

プライバシーを優先する場所に関しては、開き戸を優先するのがおすすめです。一方、開き戸はスペースを取るので、省スペースを優先する場合には引き戸にしてください。5dBの差は意外と大きいので開き戸を優先しつつ、省スペースを優先するのであれば引き戸でもある程度の音漏れ対策はできますよ。

質問②:引き戸の使い分けは?

音漏れに関して、引き戸はどれも誤差です。

引き戸の使い分け

  • 下レール
    〇:壁に収まる、コスト低
    △:レールにゴミが溜まる、耐力壁がとれない
  • アウトセット
    〇:下レールの掃除不要、耐力壁がとれる
    △:上レールの掃除必要、壁から出っ張る、少しぐらつく
  • 上吊り戸
    〇:掃除が楽、壁に収まる
    △:コスト高、耐力壁がとれない、少しぐらつく

下レールタイプは壁に収まることとコストが低いことがメリットです。一方、レールにゴミが溜まることと、耐力壁がとれないことが弱点です。

アウトセットは下レールの掃除が不要なことと、耐力壁がとれることがメリットです。ただし、上レールの掃除が必要なことと、壁から出っ張るので家具を置く時に邪魔になることが弱点です。

上吊り戸に関しては下にレールがなく、上にもアウトセットのような出っ張りがないので掃除が楽で、壁に収まります。ただしコストが高くなる可能性が高いことと、耐力壁がとれないことが弱点です。

また、アウトセットと上吊り戸は上にレールがあるため、少しぐらつくというデメリットがあります。

これらのメリットとデメリットを比較して決めてください。BE ENOUGHとしては下のレールがない上吊り戸かアウトセットを推奨しています。耐力壁が必要な場所はアウトセットにすれば、下のレールはなくなりますよ。

トイレドアの音漏れ実験

BE ENOUGHが推奨しているアッパーカットトイレドアは、sumika(24時間全熱交換型換気システム)の床面排気と組み合わせることで、うんちの臭いが気になりにくくなります。一方、上に隙間があるため音漏れしやすいんじゃないかと心配する人も多いです。

そこで、通常のアンダーカットの開き戸との音漏れの違いを実験しました。

アンダーカットトイレドア

通常のアンダーカットのトイレドアでは、23~24dB低減されました。

アッパーカットトイレドア

アッパーカットトイレドアの場合、20dB強の低減ができています。

アンダーカットとアッパーカットトイレドアの比較

  • アンダーカット(通常の開き戸):-23~24dB
  • アッパーカットトイレドア:-22~23dB

アッパーカットトイレドアの方が1dBほど音漏れがありますが、気になるレベルではありません。体感としても、全く変わりはありませんでした。アッパーカットトイレドアを採用した際の音漏れの心配は必要ありません。

トイレの音漏れ実験

トイレの音漏れ対策としてリビングとトイレの間に2枚の扉を挟むのはどれくらいの効果があるのか実験しました。その結果、2枚の扉を挟むのは効果的でしたが、必ずしも2枚挟む必要はないパターンもあったので参考にしてください。

開き戸を1枚挟んだ場合

開き戸を1枚を挟んだ場合、音の低減は22~23dBほど、約37dBになりました。

開き戸+引き戸を挟んだ場合

これに引き戸を1枚挟むと、30dB以下になり数値が出ません。体感としても微かに音が聞こえる程度です。扉を2枚挟むことの有効性が確認できました。

開き戸1枚+5m離れた場所

開き戸を1枚挟んだ状態で、トイレの扉から5mくらい離れました。扉から離れれば離れるほど音はかなり減ります。扉を2枚挟んだ状態で30dBを下回っていましたが、扉1枚であっても5~6m離れることで音が下がる結果が出ました。

引き戸1枚の場合

トイレのドアを引き戸にすると15~16dBしか低減できません。引き戸の場合、やはり音が漏れやすくなります。

引き戸2枚の場合

ただしリビングに入る前に引き戸がもう1枚あると、24~25dBほど低減できます。開き戸よりは音は聞こえますが、引き戸であっても2枚挟めば25dBくらい低減できるので、音はほとんど気になりません。

リビングとトイレ間の扉の枚数

  • 開き戸:-23~24dB
  • 開き戸+引き戸:-30dB以上
  • 開き戸+5m:-29~30dB
  • 引き戸:-15~16dB
  • 引き戸+引き戸:-24~25dB

このように扉を2枚挟まなくても、トイレからリビングが離れている場合には音が低減できます。扉の枚数だけではなく、距離も大切なことが分かります。

ただ、引き戸の場合はそもそも音漏れが大きいので、トイレを引き戸にする場合にはリビングまでに扉を2枚挟むことが必須です。原則として開き戸の場合も2枚挟むことが重要ですが、トイレが開き戸かつリビングまで距離がある場合は、最悪2枚の扉を挟まなくても音対策はできるかもしれないという数字上の結果は出ました。

窓・玄関ドアの音漏れ実験

「高気密住宅は音漏れが少ない」と言われていますが、どれくらいシャットアウトできるのかを検証しました。

窓の防音性能

YKK AP製のオール樹脂サッシ、Low-Eペアガラス、中空層がアルゴンガス、スペーサーが樹脂の場合、25dBほど低減して35dB前後になりました。オール樹脂サッシでLow-Eペアガラスを使っていることだけが要因ではなく、家全体の気密性能が非常に高いので家の外からの音はかなり遮断できています。

玄関ドアの防音性能

玄関ドアを閉めた場合、20~25dBくらい低減して、35dB前後になりました。

窓・玄関ドアの防音性能

  • 窓:-24~25dB
  • 玄関ドア:-23~24dB

窓と玄関ドアの結果が同じくらいなので、外部からの音はかなりのレベルで遮音できています。一番ライトな防音室で約30dB低減するので、それに近いくらいの性能があることが分かります。

今回、測った家はC値が約0.2で、窓はYKK AP製のAPW 330というLow-Eペアガラスの樹脂サッシを用いています。玄関ドアはD2クラスです。これで玄関ドアがもっと上のクラスの場合、さらに遮音性能が高くなります。

このようにライトな防音室程度の遮音効果があるのは、高気密住宅のメリットだと言えるでしょう。このように高気密住宅は外から中への音はシャットアウトできますが、中の音が響きやすいので扉やリビング階段の配置には注意してください。

リビング階段の音漏れ実験

リビング階段の形状によって音漏れが違うのかどうか検証しました。

ほぼストレートな階段

ほぼストレートな階段の場合、2階で計測すると15dBくらい低減して約44dBになっています。今回、少しL字になっている階段なので、完全にストレートな階段だともう少し音が聞こえるかもしれませんが、誤差でしょう。このように音漏れがするのがリビング階段の弱点です。

コの字型階段

コの字型の階段の2階で計測すると、25dBほど低減して約36dBと割と小さくなっています。

コの字型階段+5m

コの字型階段から奥に5mほど進んだ場合、30dBほど低減して約30dBになります。ここまで来ると、音は全く気になりません。リビング階段は音漏れが弱点になりますが、階段から離れるほど音は小さくなります。音が気になる部屋は少し奥に持っていく対策をしてください。

リビング階段の音の響き方

  • ほぼストレート階段:-15~16dB
  • コの字階段:-23~24dB
  • コの字階段+5m:-29~30dB

リビング階段でも、形状によって大きく結果が異なりました。ストレート階段やオープンデザインの手すりでリビングと繋がっている場合、体感としてもほぼ普通に音が聞こえます。数値上では15dBくらい低減されていても、声はそのまま聞こえてしまいます。

一方、コの字階段はかなり音が小さくなります。「リビング階段にしたいけど音の響きが心配」という人には、コの字階段にするのがおすすめです。このような階段形状を意識すると、リビング階段でも音が割と響きにくい家にできますよ。

まとめ

6つの音漏れ実験の結果

  • 引き戸 vs 開き戸
    開き戸の方が5~6dB小さい、引き戸同士の差はほぼなし
  • アッパーカットトイレドア
    音漏れの心配なし!
  • リビングとトイレ間の扉の枚数
    引き戸の場合は扉2枚必須
    開き戸の場合も、原則は2枚挟む。距離が離れている場合は最悪1枚もアリ
  • 窓・玄関ドアの防音性能
    ライトな防音室くらいの効果
  • リビング階段の音の響き方
    音が気になる人はコの字階段に!
せやまが

厳選した工務店のみを紹介

性能 × 価格 × × 会社を厳しくチェックし、
"ちょうどいい塩梅の家づくり”が実現できる工務店のみを紹介します!

せやま印工務店とは?

PROFILE

新築で後悔…家の音問題を徹底検証!6つの音漏れ実験で分かった真実とは? | 「住宅設備」の選び方を知りたい

せやま大学の人

瀬山 彰

大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。

「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。

娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。

当社ウェブサイトでは、お客様に提供するサービスの向上・改善、お客様の関心やニーズに応じた情報・機能提供のためにお客様が当サイト使用する際に取得した情報を、当社分析パートナーと共有します。
詳しくは、個人情報保護方針をご確認ください。

OK