2024.11.14
今回、太陽光パネルのマキシオンジャパン小西 龍晴社長(2024年9月1日より、M-IBCの代表取締役に就任)に、昨今の太陽光パネル業界の状況やマキシオンジャパンの経営状況について、お伺いしてきました!
直接社長にインタビューできる機会は非常に貴重なので、特に、太陽光発電の導入を検討している方はぜひ最後まで読んでみてください!
動画で見たい!という方は、対談動画からご覧ください。
関連動画(YouTube):『【緊急対談】太陽光パネルのマキシオンジャパン社長に株価暴落の真相を追求!40年保証など今後どうなる?』
目次
今回対談に至った背景について
そもそも「マキシオン」って?
よくせやまの動画や記事を読んでくれている施主であれば、すでに知っているかもしれませんが、「マキシオン」とはせやまが推奨している太陽光パネルのこと。
他社太陽光パネルに比べ、
- 耐久性に対するテストがかなり厳しい
- パネル1枚あたりの発電量が規格外(通常の約1.5〜2倍)
- 15~25年の製品保証が一般的な中、他を圧倒する40年製品保証
といった魅力から推奨しています。
きっかけは「マキシオン(アメリカ本社)の株価低迷
出典:『マキシオン・ソーラー・テクノロジーズ【MAXN】: – Yahoo!ファイナンス』
そんなマキシオンですが、上画像のようにここ数年株価が低迷…といった背景もあって、「日本拠点がなくなってしまうのではないか?」という噂があったりします。
そこで今回、2024年9月1日よりマキシオンジャパン(日本総代理店)である「M-IBC株式会社」の代表取締役に就任された小西 龍晴社長に、直接真相をお伺いしてきました。
株価低迷の理由は?財務状況は大丈夫…?
Q.昨今の太陽光パネル業界の状況は?
小西社長:
現在、業界自体が結構厳しい状況になっていますね。
というのも、一時期は太陽光パネルへの注目が過熱したことで、パネルの供給不足に陥ったんですが、それを受けて各社製造キャパを増やしたんです。
しかしその結果、供給量が「需要の倍」くらいになってしまい、各社数百億円規模の赤字が出てしまっている状況です。
そのため太陽光パネル業界としては、「マキシオンに限らず、各社苦しい状況」という状態ですね。
ただ、需要と供給は両社のバランスですから、ここから2~3年は続くものの、次第にバランスが取れていくのではないか、と思っています。
Q.マキシオンの赤字状況はどうなの?
小西社長:
もちろん、このような状況ですから、マキシオンも赤字を出しています。
ただその中で、「TCL」というウエハーメーカーから約150億円(1ドル=150円で計算)の融資を受けたため、現在マキシオンの経営基盤としては安定状態にあります。
TCLはテレビメーカ―としても有名だね!
Q.じゃあなんで株価が下がったの?本当に大丈夫?
TCLからの融資は「新規株の発行」で返済
このTCLからの融資については、「新規の株」を発行することで返済に充てています。
新規株を発行することで、当然「株の発行総数」が増えるため、1株当たりの株価は下がりますが、実は会社としての「時価総額」はさほど変わっていない、つまり株価は下がっていますが、「会社の価値」は変わっていない状態なんです。
会社の価値が落ちていれば問題ですが、今回の場合「会社の価値」自体は落ちていないので、特に経営的な問題はありません。
せやまからの補足
資金調達にも、
- エクイティファイナンス
- デットファイナンス
があり、今回のような新規株発行による調達は「エクイティファイナンス」という返済義務がない資金調達になります。
これをやると、今回のように株価が下がってしまうため、株主に怒られたり…というデメリットがありますが、時価総額自体は変わらないため、経営的安定性は維持される、というメリットがあります。
ただ、だからと言って「今後も安泰」「100%倒産しない」というわけではありません。それは誰にも分からないこと。
なので、あくまで「株価の下がり方ほど、財務状況は悪化していない」「むしろ、今回の資金調達で財務状況が安定した」という認識に留めておきましょう。
今後マキシオンの展開はどうなる?
Q.TCLから融資を受けたことで何か変わる?
小西社長:
まず、太陽光パネル(太陽電池)の原材料は「ポリシリコン」です。
難しい話ですが、このポリシリコンからインゴットを作り、ウエハーにして、パネルメーカーがセル自体を作って太陽光パネル(モジュール)を作ります。
そしてTCLは、このパネルを作るまでの過程で使用する「インゴット」と「ウエハー」を作っている世界一のメーカー(単体売上10兆、グループ売上50兆)です。
そのため今後は、このTCLと原材料部分でも提携することによって、さらに価格競争力を上げることにもつながると考えています。
Q.マキシオンの株保有率はどうなってる?
小西社長:
TCLは元々マキシオンの大株主だったわけですが、今回の融資を機に、TCL側の株式保有率が50.1%になりました。
これにより、今後はよりTCLがマキシオンの経営に介入する可能性がありますが、我々としては、これをデメリットとして捉えるのではなく、プラスにしていきたいと考えています。
TCLは太陽光パネル業界の専門家ですし、TCLのトップの人たちはマキシオンの強みでもある「バックコンタクト(詳細は後述)」を推進しています。
加えてTCLには、1,000以上の取得済み特許があるため、その点での連携にも期待していますね。
こういったところからも、単に金額部分だけでなく、「技術革新の可能性」が一番高いTCLに投資をしてもらって、我々としても良いパートナーができたと考えています。
Q.マキシオンは日本から撤退しないよね?
小西社長:
マキシオンジャパンの中には、マーケティング、サプライチェーン、販売などの部隊があり、今回その中の販売部隊だけが独立して「M-IBC株式会社(マキシオンの日本総代理店)」という会社を立ち上げたわけですが、マーケティング部隊などはそのままマキシオンジャパンに残っていますし、撤退予定はありません。
Q.40年保証は大丈夫なの?
小西社長:
マキシオン一番の売りである「40年保証」ですが、これはマキシオンジャパンではなく、「マキシオンの本体」が出しているものです。
マキシオンジャパンは、あくまでこの窓口でして、その窓口がマキシオンジャパンからM-IBC株式会社と独立しただけなので、仮にマキシオンジャパンが撤退したとしても、マキシオン本体が存続する限り、保証は継続します。
Q.どうしてわざわざ販売部隊だけ別会社にしたの?
小西社長:
マキシオンはパネルメーカーなので、「太陽光パネルを売ること」がメインです。
本社ではコンテナに数百万枚を入れて販売店に輸送し、それをそれぞれの販売店が売っていく、というようなビジネス形態ですなのですが、これが日本ではやや異なります。
これにより、新しいサービス形態が生まれた場合に、その後の対応に出遅れてしまう恐れがあるんです。
そこで、販売部隊を「M-IBC」という別会社として独立させることで、よりスピーディーにお客さんの要望に合うシステムを提案できる体制にした、という背景があります。
Q.エンドユーザーからしたら特に何も変わらない?
小西社長:
その通りです。
先述の通り変化としては、独立により、さらに日本のニーズに特化した対応ができるようになる、といった点でしょうか。
またM-IBCでは、パネルの安定供給のための在庫ストックについても、マキシオン本社が直接サポートしてくれていますから、供給体制についても非常に安定したと思います。
マキシオンの製品保証・出力保証について
Q.「40年保証」の実現に至ったまでの経緯は?
出典:『マキシオン住宅用太陽光発電システム | M-IBC株式会社』
小西社長:
昔は、太陽光パネルの保証期間は「5~10年」が一般的だったのですが、マキシオンでは色々な試験の結果を元に、業界で初めて25年の製品保証・25年の出力保証をはじめました。
今はこの「25年保証」が標準になりつつありますが、マキシオンはその後も、39年間蓄積してきた数百箇所におよぶ調査データをもとに、「この結果であれば40年保証が可能」と判断し、再度保証期間の引き上げを行った経緯があります。
Q.「製品保証」と「出力保証」の違いは?
小西社長:
「製品に異常がなければ、これだけの出力が出る」というのが出力保証です。
ただし、「コネクタにちょっと異常がある」「ジャンクションボックスが外れて出力が下がった」というケースは出力保証では保証されません。
そこでこのように、物が壊れたために出力が下がってしまった際に必要になるのが「製品保証」。
例えば、太陽光パネルのフレームが外れて、水が入ってショートしてしまった場合、出力保証では対象になりませんが、製品保証で保証される形となります。
この出力保証・製品保証の話は、消費者側が「25年の出力保証の対象」だと思っていたが、メーカー側からは「製品保証は10年なので対象外」というように、認識の食い違いから裁判になることも多いんです。
そのため、混乱を招かないためにも、マキシオンでは、どちらも保証期間を40年としています。
Q.実際不具合が起こったらどうすればいいの?
小西社長:
ホームページに相談窓口が用意してありますので、まずはそこから連絡してください。
その上で、実際の状況を確認し、パネル以外が原因であれば、他の機器メーカーに連絡しますし、パネルが原因であればマキシオンの方で調査して回答させていただいています。
また不具合時の調査については、費用負担は一切不要ですから、「おかしいな…」と思ったらまず我々に問い合わせいただくのがいいと思います。
不具合時の相談窓口(マキシオンジャパン):『お問い合わせ』
※保証を受けるためには、同サイトからの保証登録が必須になります
Q.出力保証の利用のためには、出力低下の証明が必要?
小西社長:
正確に出力低下を判断するためには、工場や第三者機関に持ち込まなければなりませんから、出力が落ちていることを一般ユーザーが計測して証明するのは、ほぼ不可能です。
そのためマキシオンでは、事象を聞き取ったうえで「出力が下がっている」と判断されれば交換対応させていただいています。
昔であれば、パネル自体のクオリティに多少バラつきがありましたが、機械産業になったことでクオリティが安定したので、昨今のように「物さえ壊れていなければ、出力はそれほど下がらない」という作り方ができるようになりました。
そういう意味では、製品保証に注目するのがおすすめですね。
マキシオンの太陽光パネルについて
Q.N型パネルとP型パネルの違いとは?
少しマニアックな話になりますが、太陽光パネルは「P型パネル」から「N型パネル」という流れになってきています。
今までそれほど普及してこなかったN型パネルですが、昨今取り組む会社も増えていますので、小西社長に「N型パネル・P型パネルの違い」や、「マキシオンの優位性」についてもお伺いしました。
「N型パネル」の特長は?
小西社長:
N型パネルは、光が弱くてもある程度の発電ができます。「曇っていても発電します」というのは、N型パネルの特性です。
また、もう一つの特徴は温度特性が優れていること。太陽光パネルは暑い日には発電量が落ちるものですが、N型パネルは温度係数をある程度低く保つことができます。
N型パネルの方が発電量も多くなる?
小西社長:
Nパネルの場合、曇っていても発電できるわけですから、P型パネルよりN型パネルの方が光を電気に変えられる時間が長いため、発電量も多くなります。
昔はN型パネルを作っているメーカーが少なかったのでその分高価でしたが、昨今では参入メーカーも増えてきて、徐々にN型パネルの値段も下がってきていますね。
LID現象とは?
小西社長:
LID(Light Induced Degradation)現象とは、いわゆる「初期劣化」です。
たとえばP型パネルの場合、パネルを設置して1ヶ月~半年以内のところで、2~3%くらい出力が落ちます。つまり、100Wの太陽光パネルなら、97Wになってしまいます。
ただし、N型パネルは基本的にそれがありません。P型パネルは光が当たると不純物ができて劣化しますが、N型パネルは「リン」を使っているので、その要素がありません。
Q.具体的に他社製品とどのような違いがあるの?
小西社長:
マキシオンの太陽光パネルは、特許によって変換効率(発電効率)の限界値が高いです。
2024年8月現在の変換効率は22.6%ですが、マキシオン7は24%で、将来的には25%を目指しています。
色んな特許のおかげで発電効率の伸びしろがあるってことだね!
Q.なぜ他社パネルよりも変換効率が高いの?
<太陽光パネルの表面>
小西社長:
従来の太陽光パネルは、電極が表面と裏面に分かれているのですが、表面と裏面のそれぞれに「電気を取り出す部分」があり、そのために電線のようなものが必要になります。
<太陽光パネルの裏面(バックコンタクト採用)>
小西社長:
一方、マキシオンが採用する「バックコンタクト」では、太陽光を受ける表面には電気を取り出す箇所がなく、裏面から電気を取り出すような作りになっています。
このように、表面に「電気を取り出す箇所」を設けないことで、太陽光を遮ったり、反射させることなく、太陽光を全面で受けることができるため、変換効率が高いわけです。
Q.バックコンタクトの場合、耐久性は大丈夫?
出典:『マキシオン住宅用太陽光発電システム | M-IBC株式会社』
マキシオンのパネルは、40年保証なわけですが、これは耐久性が高いからこそです。
具体的にはパネルの裏面に「銅メッキ」を採用することで、全体な強度を底上げしています。
また第三者機関で計測したところ、他社の太陽光パネルであれば、パネルが割れたらその分発電量は下がってしまいましたが、マキシオンの場合、ここに特許技術を使っているので、パネルが割れても発電量は下がりませんでした。
こういった点も、他社のパネルとは大きく異なる特徴ですね。
Q.価格における企業努力はどう?
BE ENOUGHが推進する「せやま印工務店プロジェクト」では、商流をくくることでマキシオンパネルをかなり安く購入できるようにしています。
しかし一般的には、「マキシオンパネルは高くて手が出せない」という消費者も少なくはありません。そこで、価格面に対する企業努力についても伺ってみました。
小西社長:
確かに、マキシオンパネルは色々な技術を盛り込んでいるため高いです。とは言っても、だいぶ値段も落ちてきましたが…。
ただし、他メーカーの値段が落ちるスピードがマキシオンよりも速いため、マキシオンも頑張らなければ…と思っています。
そういった中での取り組みとしては、先にも話に挙がった融資してくれるパートナーに「TCL」を選んだり、環境に良いエネルギーをより安く作れる企業努力をしていますね。
40年という期間で計算してみると経済性は良くなりますが、どうしても初期コストは高くなってしまうので、その点については今後も努力していく予定です。
Q.雹(ひょう)対策についてはどうですか?
小西社長:
マキシオンのパネルは、45mmの雹が当たったとしても大丈夫な試験を通過しています。
一般的には、「25mm」で試験することが多いため、マキシオンのパネルはかなり大きな雹が降っても耐えられると考えています。
Q.マキシオンパネルの発電量は?
BE ENOUGHでは、生活のほとんどを1階で完結させるためにも、「2階を小さくする家づくり」を推奨していますが、2階を小さくすると気になるのは「十分に発電できるのか?」という話。
そこでマキシオンパネルの発電効率についても聞いてみました。
出典:『マキシオン住宅用太陽光発電システム | M-IBC株式会社』
小西社長:
日本は土地面積も限られていて屋根が小さくなりがちなので、「パネルの変換効率(発電効率)」が非常に重要です。
一般的なパネルだと、「1枚あたり200~250W程度」ですが、マキシオンパネルは前述の通り、変換効率を突き詰めた「バックコンタクト」を採用しているので、「1枚あたり400W」と発電効率も非常に高くなっています。
またマキシオンのパネルは、太陽光のエネルギーを100とすると「20%強」を電気に変換します。
つまり「電気に変換された20%強の熱量」が家の中に入らなくなるため、太陽光パネルを付けることで体感温度を下げる効果にも期待できるんです。
実際に、太陽光パネルの有無で天井の表面温度を比較したところ、約6~7度くらいの差があり、空間の温度としては2~3度下がった事例があります。
Q.ウイグル問題(人権問題)への対応については?
小西社長:
これは太陽光業界における問題になっていることですね。
先にもお話ししたとおり、太陽光パネルは「ポリシリコン」が原材料で、全世界のポリシリコンの生産量の半分は、中国の「ウイグル自治区」で生産されています。
そこでは、女性や子どもに強制労働させているという話もありまして…。このようにして生産されたかもしれない製品を販売・購入することに対して問題視する意見もあります。
ただマキシオンについては、「ウイグル自治区」で生産されたポリシリコンを使っていません。そのため、懸念されているような人権問題が絡まないパネルとして利用していただけます。
貴重な機会をありがとうございました!
せやま:
今回は、貴重な機会をありがとうございました!
最後に今後小西さんが思う今後の展望などについてお聞かせいただけますか?
小西社長:
まず、私としてはマキシオンだけではなく、太陽光パネル業界自体が伸びていってほしいなと思っています。
ただ皆さんに取り入れてもらうためにも、今後も「なぜ太陽光パネルを導入した方が良いのか?」という部分をしっかりと広めていきたいなと考えています。
小西社長、ありがとうございました!