2025.03.12
SNSや住宅展示場で「素敵だな」「オシャレだな」と感じるデザイン住宅。でも実は、その中に意外な落とし穴が潜んでいることもあるんです。実際、「SNS映えする家にしたい」「みんなに褒められる家を建てたい」と思って進めた結果、住んでから後悔する方も少なくありません。
たとえば「窓をたくさん付けて、明るい空間にしたい!」と考えたのに、夏は暑すぎたり、家具の置き場所に困ったり…。「明るすぎる照明は嫌だな」と控えめにしたら、今度は暗すぎて使いづらい空間に…というケースもよくあります。
そこで今回は、これまで1,000件以上の間取りを描いてきた私の経験をもとに、「オシャレだけど、暮らしやすさもきちんと備えた家づくりのポイント」をご紹介します。ありがちな“デザイン住宅の落とし穴”とあわせて、後悔しないためのヒントをお伝えします。
今回は以下を詳しく解説していきます。
目次
デザイン住宅の落とし穴7選
①大きな窓をたくさん付ける
「大きな窓をたくさん付けて明るい空間にしたい!」というデザイン住宅は多いですが、落とし穴がたくさんあります。
窓を付けるほど断熱性能が落ちることを理解していない住宅会社は多いです。特に東西の窓は太陽の熱が入ってきて、ストーブを焚いているような状態になって暑くなるので、原則設置しないでください。付けたとしても小さくするのが基本です。
天井までピッタリ付けるH2,400mmのハイサッシにしたがるデザイン住宅の会社もありますが、これをやると窓の枠にアルミ樹脂複合サッシという結露しやすく壁内結露のリスクも高まるサッシしか使えません。このデメリットを理解していない住宅会社が多いので、注意してください。
アルミ樹脂複合サッシではなく、オール樹脂サッシを採用してください。H2,200mmまでしかありませんが、カーテンを天井から付けるなどの工夫でオシャレにできます。安易にアルミ樹脂複合サッシを採用しないでくださいね。
さらに、窓が多いと家具が置けません。壁が多いと圧迫感があるのは事実ですが、壁がないと家具が置けません。家具を置く場所をきちんとシミュレーションしてください。その場所には敢えて窓を付けず、壁を残すことが重要です。家具は住んだ後に置くので、それを想定して窓を適切に配置してくださいね。
②大空間リビング
リビングは優先した方が良いですが、その結果収納が不足しては意味がありません。デザイン住宅の一番の不満は「思ったより収納が少ない」「足りない」ということです。特に1階が重要です。広い土地がなかなかない中で、1階をリビングに振り切って収納を2階に上げてしまうことがよくありますが、これはダメです。
1階の収納を充実させる1階完結型の考え方が住みやすい家です。特に水回りに収納が少なかったり、1階にウォークインクローゼットが少ない家は住みにくいです。リビングも大事ですが、同様に1階の収納もしっかり確保することを意識してください。
また、リビングを大きくしようとするあまり2階リビングにするのもおすすめしません。どうしても無理な場合は仕方ないですが、帰宅や出かけるたびに階段を上下しなければならないという大きな不便を抱えることになります。リビングは原則1階に配置してください。
③軒ゼロでスタイリッシュに
キューブ型デザインでスタイリッシュな外観にすることは、一時期流行りました。住宅会社としてもコストが落ちますし、確かにキューブにすると格好良く見えます。
ただ、やはり軒ゼロというのはやめた方が良いです。止水処理をしても雨漏りのリスクが高くなりますし、日射遮蔽ができずに夏に暑くなります。原則、軒がある家にしてください。その上で、南側は600~700mm程度の軒を出して日射遮蔽をすることが重要です。
南側に軒が取れない場合は庇(ひさし)を出して日射遮蔽をすることも覚えておいてください。
住宅会社は「売れれば良い」という考えで「10年間雨漏りがなければ問題ない」というところがあります。ただし、家に住むのは施主自身なので、自分で知識を付けて対応してくださいね。
④暗めの照明で落ち着いた空間に
トーンを落として大人っぽい落ち着いた雰囲気にするデザイン住宅が多いです。これも悪いことではないですが、デメリットを理解していない人が多いので注意が必要です。
明るさの感じ方は人によって全然違いますし、大人と子どもでも違います。大人は目の機能が落ちてくると光を眩しく感じやすくなりますが、子どもたちは暗く感じてしまうので明るくしてあげる必要があります。そのため、大人目線で暗い空間を作ると、子どもたちが勉強する時や日中遊ぶ時に暗すぎてしまい、追加で照明を付けなければならないことがあります。
そのため、照明は調光機能を付けたり、メインと間接照明の回路を分けて付けたり消したりできるようにしておいてください。
間接照明も格好良いですが、注意が必要です。間接照明を採用する場合、壁や天井に不陸(ふりく)と呼ばれる凹凸があると目立ちます。下地の凹凸やビスの頭が見える場合があります。ここまで配慮して施工できるデザイン住宅会社なら良いですが、意外と後悔する人が多いです。
また、凹凸があるような間接照明はホコリが溜まってめちゃくちゃ汚くなります。間接照明をする場合は壁や天井の不陸が出ないような下地やクロスを選んだり、ホコリが溜まりにくい形状にするなどの配慮が必要です。
凹凸を作らなくても器具で間接照明ができる場合もありますし、ダウンライトの眩しさが苦手ならソフトグレア照明・ノングレア照明などのパターンもあります。少しコストは上がりますが、間接照明以外の選択肢も検討してくださいね。
⑤唯一無二のデザイン
誰もやったことがないデザインというのは住宅会社の施工部もやったことがないので、想定外の事故が起きやすくなりますし、収まりも難しくなります。デザイナーが作る図面上は収まっていても、現場では収まらないということもあります。チャレンジをするのは良いことですが、施工性に配慮したデザインにするのがおすすめです。デザイナーや設計をやる人は施工を無視しがちなので、現場監督側の意見も交えながら奇抜なデザインをするという観点は持っておいてくださいね。
⑥デザインに予算を割く
デザインばかり重視すると、性能面が疎かになりがちです。「めちゃくちゃ結露する」「寒いし暑い」「換気ができない」「大空間を取りすぎて耐震等級が1」「構造計算もまともにできてない」なんて家はダメです。
家は命を守り健康的に過ごすためのツールです。ダサいとテンションは下がりますが、オシャレというのは快適に過ごせた上にあるものです。まずは窓、断熱、気密、換気、耐震、シロアリ対策をしっかり確保した上で、オシャレにお金をかけてください。予算には上限があり「住んだ後に貧乏で旅行に行けない」「狙っていた家具も買えない」となっては意味がないです。
ベースの家をシンプルにしつつ、オシャレな家具や食器やインテリアを入れていき、コスパ良くオシャレにする方がバランスが良いですよ。住宅会社のPRに乗っからず、住んだ後にお金を残し、支払いが厳しくならない程度にしてください。住んだ後の家族の思い出づくりにかけるお金の方が絶対に大事ですよ。
⑦人に褒められるための家づくり
「オシャレな家を建てて友達を呼んでみんなに褒められたい」「SNSに情報をアップして褒められたい!」という承認欲求は悪いものではありませんが、承認欲求のために家を建てるのはおすすめしません。「見てもらうため」「褒めてもらうため」「驚かせたい」ということが第一目的になると、後悔しますよ。
そういったものは一過性のものですが、だんだん日常に戻ってお客さんも来なくなりますし、SNSにアップする箇所も限られているので、アクセスが減って落ち込むことになります。
人のために家を建てるのではなく、自分たち家族が楽しむための家を建ててください。どうか冷静に「自分たちが良ければ良い」「人の意見なんて聞きすぎる必要はない」という割り切った自分たち本位な家づくりの考え方を忘れないでくださいね。
まとめ
デザイン住宅の落とし穴7選
- 大きい窓をたくさん付ける
- 大空間リビング
- 軒ゼロでスタイリッシュに
- 暗めの照明で落ち着いた空間に
- 唯一無二のデザイン
- デザインに予算を割く
- 人に褒められるための家づくり