失敗リスクの高い夏のエアコン計画3選|全館空調の問題点とは?

失敗リスクの高い夏のエアコン計画3選|全館空調の問題点とは? | 家の性能

2階の部屋の暑さ対策は難しいですよね。空調の方法としては、ホールエアコン・屋根裏エアコン・ダクト式全館空調・各部屋エアコン・せやま式屋根裏エアコンといった色々な方法があります。それぞれのパターンのメリット・デメリットを知り、良い方法を知っていきましょう。

夏の夜も快適に過ごしましょう!

本記事の内容は、YouTube動画でも分かりやすく解説していますので、こちらもご覧ください!


参考動画:失敗リスクの高い夏のエアコン計画3選|全館空調の問題点とは?

2階の冷房計画、5つの方法とは?

2階の空調計画は、めちゃくちゃ難しいんです。一番良い方法を探るために、私は自宅で3年間かけて実験しました。だからこそ自信を持って言いますが「机上の計算ではすまない!」というのが2階の空調計画です。夏は暑い日だけではなく、ちょっと涼しい日もあります。湿度の高い日もあれば、子どもがたくさん泊まる日もありますよね。そういったワンシーズンを試してみないと、良い方法は分かりません。

そのように実験をした結果、私としてはやはり「せやま式屋根裏エアコン」が一番良いという結果に達しました。ですが、意外と採用しない人が多いんです。もちろん正しい知識を持った上で採用しないというなら個人の自由ですが、そういった知識なく、夏の熱帯夜をぐっすり眠れるチャンスをなくすのはもったいない!

というわけで、今回は2階の空調計画の主な5つの方式について紹介していきます。今回紹介する5つの方式は、こちら!

  1. ホールエアコン
  2. 屋根裏エアコン(ファンなし)
  3. ダクト式全館空調
  4. 各部屋エアコン
  5. せやま式屋根裏エアコン

それぞれ、おすすめできるもの、無難なもの、非推奨のものがあります。まずはその理由や、各方法のメリット・デメリットを確認していきましょう。

夏のエアコン計画に関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。
失敗しない夏のエアコン計画|5つの方法を徹底比較!

 

①ホールエアコン

非推奨の方法の一つ目は、ホールエアコン。ホールエアコンとは廊下にエアコンをつけて、廊下を冷やすことで、その冷気を各部屋に送る方式です。壁にファンをつけることで、横方向に冷気を動かし、各居室に冷気が入っていくんですね。

 

ホールエアコンのメリット

ホールエアコンのメリットとしては、屋根裏などは関係ないので屋根形状を自由に決めることができます。また、2階のエアコンが1台で済むので、室外機も1台で済みますし、適切なサイズのエアコンを設置することができます。

 

ホールエアコンのデメリット①思ったより冷えない

ホールエアコンは、結構難しい方式なんです。まずはそもそも、暖気は上の方にいきますが、冷気というのは下の方に落ちていく性質がありますよね。なので、壁のファンの位置をかなり下の方につけなければなりません。ただし、そうすると部屋の足下ばかりが冷えてしまいますし、部屋の中の空気は輻射熱で暑くなってしまうリスクがあります。だからといって、上の方にファンをつけても、廊下は下の方が冷えているので、部屋の中は思ったよりも冷えません

 

ホールエアコンのデメリット②プライバシーの問題

上手く冷気が各部屋に入らないと、ドアを開けて対策するという人も多いですよね。ですが、それだと各部屋のプライバシーが守られません。しかも寝る時はドアを閉めるので、やっぱり冷気が入らなくなるんです。

 

ホールエアコンのデメリット③冷気が1階に落ちる

冷気は下にいく性質があるので、2階のエアコンで冷やした冷気は階段から落ちてしまいます。1階が冷えるのはいいんですけど、2階の部屋が冷えずに効率が悪くなりますよね。それを防ぐためには冷気止めといったストッパーが必要になってきます。

 

ホールエアコンのデメリット④間取りの制限

エアコンは基本的に外壁側につけなければなりません。そのため、ホールエアコンを付ける場合は、廊下を外壁側に持ってこないといけないんです。こういった間取りの制限が生まれてしまうのも、ホールエアコンのデメリットです。

壁側にエアコンがあるから廊下は長くなるし、間取りは制限されます。これでお金がかかってしまうくらいなら、いっそ各部屋にエアコンをつけた方が…ということになります。

 

②屋根裏エアコン(ファンなし)

ファンのない屋根裏エアコンは、屋根裏の空気を冷やし、穴を各部屋の天井に開けておく方式です。冷気が下に落ちるので、自然に部屋が冷えるのではないか、と考えた方法ですね。

 

屋根裏エアコンのデメリット①思ったより冷えない

私も実際にこれをやってみたのですが思ったより冷えずに失敗しました。7月の頭くらいまでの初夏までは大丈夫だったのですが、7月の下旬とか8月とかお盆明けとかの暑い時期は、全然冷えません。なので、ファンなしの屋根裏エアコンも、やはり非推奨です。

 

屋根裏エアコンのデメリット②ショートサーキット現象が起きる

ファンなしの屋根裏エアコンは、ショートサーキット現象が起きやすくなります。エアコンの近くに給気口をつけて、2階の部屋から屋根裏に空気を持って行きますよね。すると、その給気口とエアコンの間だけ空気がグルグル回ってしまって、屋根裏全体が冷えないんです。奥の方が冷えないと、エアコンの近くにない部屋は全く冷えないですよね。

このショートサーキット現象を防ぐために給気口をエアコンに直結させる方法もあるんですが、そうするとめちゃくちゃお金がかかってしまい現実的ではありません。

 

③ダクト式全館空調

非推奨方式の3つ目は、全館空調です。

 

ダクト式全館空調のデメリット①初期コストが高い

ダクト式全館空調は家のどこかに大きな業務用エアコンを設置し、その空気をダクトで全部屋に持って行きます。なので、その業務用エアコンを購入するコストがめちゃくちゃかかります

 

ダクト式全館空調のデメリット②故障時の修理費用も高い

さらに、エアコンが故障した時の修理費用もめちゃくちゃ高いんです。なので、高すぎて故障しても修理せず、壁掛けエアコンにする人も多いほど。

それ自体は良いのですが、全館空調は換気システムの役割も兼ねているので、換気が止まっちゃうんです。このリスクが生まれてしまうのが、業務用エアコンを使った全館空調システムです。

 

ダクト式全館空調のデメリット③ダクト内の汚れが心配

さらにダクト式全館空調は全部屋までのダクトが汚れてしまうので、その汚れも心配になってきますよね。また、換気システムの熱交換システムの近くにフィルターがあるんですが、外からそのフィルターまでの経路はめちゃくちゃ汚れるんです。埃や花粉やPM2.5でドロドロになるので、そんなダクトを通った空気を吸いたいですか?という話ですね。構造的な問題ですが、こういう全館空調はそもそもおすすめできません。

全館空調がおすすめできない理由に関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。
全館空調システムをおすすめしない理由|致命的なデメリット

 

④各部屋エアコン

一方、無難な方法としては各部屋エアコンですね。その名の通り、各部屋に1台ずつエアコンを設置していく方式です。シンプルに各部屋に1つずつつけていきます。

 

各部屋エアコンのメリット①確実に冷える

各部屋にエアコンを設置することで、確実に部屋を冷やすことができます。これが各部屋エアコンのなによりのメリットですよね。

 

各部屋エアコンのメリット②間取りの制限もない

また、間取りの制限もほぼなく、自由にエアコンを付けれることもメリットです。

 

各部屋エアコンのデメリット①冷えすぎる

ただし、各部屋にエアコンをつけてしまうと、冷えすぎるんです。6畳用のエアコンは、現代の基準なら30畳~35畳くらいまではいけるくらいのスペックです。なので、それをつけることで冷えすぎて寒くなってしまいますし、だからといって消すと暑くなってしまいます。こういう温度調整が難しく、エアコンで風邪をひいてしまう恐れがあるのが各部屋エアコンのデメリットです。

エアコンの適正サイズに関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。
何畳用のエアコンが最適か?一瞬で計算する方法|エアコン容量早見表

 

各部屋エアコンのデメリット②室外機が邪魔

各部屋にエアコンを置くので、室外機もたくさんできてしまいます。なので土地が狭い場合には、室外機を置く場所に困ってしまうなんてこともあります。

 

⑤せやま式屋根裏エアコン

一番おすすめできるのが、このせやま式屋根裏エアコンです。先ほど紹介した屋根裏エアコンとは違い、ファンを使って部屋を冷やしていきます。費用的にはエアコンを3台つけるくらいでできるので、コスト的にもいい塩梅ですよ。

 

せやま式屋根裏エアコンのメリット①適度に冷える

せやま式屋根裏エアコンなら、部屋を適度に冷やすことができます。冷えすぎず、暑すぎず、ちょうど良い塩梅で部屋を冷やしていくことができます。

 

せやま式屋根裏エアコンのメリット②体感温度が下がる

さらにせやま式屋根裏エアコンなら天井が冷えてくれるので、輻射熱の効果によって自分の熱が天井に奪われていきます。また、空気が2階と屋根裏で回るので、気流感も生まれます。

実は人間の体感温度は、温度・湿度・輻射熱・気流といった4つで決まるんですが、せやま式屋根裏エアコンならこの4つをバランス良く改善することで、体感温度を下げることが可能です。人間の身体に優しい環境でゆっくり眠れるのは、最大のメリットですよね。

 

せやま式屋根裏エアコンのメリット③室外機が1個で、適度なスペック

また、せやま式屋根裏エアコンなら室外機が1個だけですみます。また、エアコンも適度な6畳~8畳といったスペックで、2階全部をカバーすることができます。オーバースペックということもないので、効率良く運転できますよね。

 

せやま式屋根裏エアコンのデメリット①設計方法を間違えると失敗する

もちろん、せやま式屋根裏エアコンにもデメリットはあります。これが致命的なんですが、設計方法を間違えると失敗してしまいます。そんなに難しい設計ではありませんが、やはりコツ・ツボといったものがあるんですね。

これをミスると不安なので、私の方からマニュアルを渡しているせやま印工務店で導入してほしいと思っています。

せやま式屋根裏エアコンに関しては、ぜひこちらの記事もご確認ください。
せやま式屋根裏エアコン 設計マニュアル 概要版|夏の暑さ対策

 

せやま式屋根裏エアコンのデメリット②電気代がかかる

屋根裏エアコンは基本的にはつけっぱなしにしておかないといけないので、どうしても電気代がかかってしまいます。家のサイズなどにもよりますが、月に2,000円~3,000円はかかってしまいます。屋根裏エアコンをつけるのは大体3ヶ月~4ヶ月なので、年間で1万円くらいは光熱費がかかるんですね。

ただ、私としては年間1万円で快適な睡眠が得られるなら、それは余裕で投資回収できると思います。健康でいられるということ自体が価値なので、検討してみてください。

 

せやま式屋根裏エアコン、よくある質問は?

ここからは、せやま式屋根裏エアコンに関して、よくある質問に回答していきます。

 

Q1. 夏型結露が心配ですが、大丈夫ですか?

夏型結露・逆転結露を心配する人は多いですね。これは何かというと「家の結露といえば冬!」というイメージがありますよね。ですが、実は夏も結露するんです。ビールジョッキをイメージしてみてください。そのように、冷えすぎたモノを置いておくと、夏でも結露してしまいます。

つまり、屋根裏エアコンで屋根裏を冷やしすぎると、結露するんじゃないかと不安に思う人もいるんです。ただし、絶対とは言い切れませんが、結露のリスクは極めて低いです。

条件としては、家の外側には透湿性の低い「構造用合板」という外部構造用面材を使用して、断熱材はA種3ウレタン160mmと同等の屋根断熱性能を確保してください。それに加えて、屋根裏エアコンの設定温度を22度くらいまでにして、エアコンの周りを閉鎖的にしないでください。

そういう条件を守れば、結露をするリスクは非常に低いと思います。既に20軒以上導入していて、夏の回数で言えば延べ30回くらい越していますが、結露した事例は1件も出ていません。37度になるような地域でも結露はしていませんし、結露計算をしても露点温度は20度という計算になっています。なので、エアコンの設定温度を22度くらいまでにしておけば、夏型結露のリスクは計算上も実績上も低いでしょう。

 

Q2. ショートサーキット現象は起きないんですか?

ファンのない屋根裏エアコンのところで紹介したショートサーキット現象を心配する人もいるんですが、これもファンがあるせやま式屋根裏エアコンなら、ほぼ起きません。

なぜかというと、せやま式屋根裏エアコンの場合はファンがあるので、強制的に空気が屋根裏から2階の部屋に排気されるんです。そのため、自然と給気口→ファンといった空気の流れができ、そこにエアコンの冷気を乗せるイメージになります。なので、ショートサーキット現象はファンがついている屋根裏エアコンの場合は心配する必要はありません。

ショートサーキット現象がよく起きるのは床下暖房なんですが、たぶんこれと混同している人が多いのかと思います。なので、ここは勘違いをしないように注意してください。

 

Q3. 本当に冷えるんですか?

「そもそも本当に冷えるんですか?」と気にする人も多いんです。もちろん人によって体感温度は個人差があるので「絶対に大丈夫!」とは言えません。ただ、設計方法を間違わなければ冷えます。私の家はもちろん、導入した家でも満足しているので、冷えます。そこはご安心ください。

ただし、設計を間違えると上手くいきません。上手くいかない事例としては、大体以下のような4パターンです。

 

失敗事例①エアコンとファンの位置が遠すぎる

上手くいかない事例としては、大体がエアコンとファンの位置が遠すぎるんです。8mとか10mとか離れてしまうと、なかなかききません。なので、そこまでの距離をとらないように注意してください。

 

失敗事例②ファンの位置が悪い

また、エアコンの冷気が届かないような場所にファンを設置すると、やっぱり効かないんです。こういう場合も注意してください。

 

失敗事例③窓の位置が悪い

部屋の窓の位置も重要です。たとえば部屋の北東とか北西に大きな窓があると、朝日とか西日でギャンギャンに暑くなってしまいます。こうなると、屋根裏エアコンで頑張って冷やしても、太陽の熱に負けちゃうんですね。

こういうパターンは確かにあるので、屋根裏エアコンとか関係なく、北東・北西方向にはなるべく大きな窓をつけないように意識してほしいな、と思います。

 

失敗事例④屋根裏空間が低すぎる

屋根裏空間が低すぎて、エアコンの場所が低い場合も失敗します。エアコンを低い場所につけると冷気がすぐに下に落ちてしまい、ファンまで冷気が届かないことがあるんです。なので、屋根裏空間は規定通りにある程度の高さをとって、その位置にエアコンを設置し、ファンまで冷気を届けていくようにしてください。

 

Q4. 部屋ごとの温度調整はできますか?

「僕だけ暑がりなんですが、部屋ごとの調整はできますか?」という質問もよくあります。こういう場合は、一応各部屋ごとにファンのオン・オフができるようになってるので、暑い人は常にオンにしておいて、寒い人はたまに消す、というように調整ができます。

あとはもちろん、エアコン自体の設定温度を変えることでも調整はできますが、エアコンを18度設定にするような超暑がりの人だと、屋根裏エアコンでは物足りなくなるでしょう。なので、そういった超暑がりの人が多い家庭では、屋根裏エアコンではなく各部屋エアコンがおすすめです。

ただ、暑がりの人が1人だけというケースでは、他の家族は屋根裏エアコンにした方が快適・健康的に過ごせるでしょう。なので、そういうパターンでは屋根裏エアコンを導入した上で、各部屋にエアコンをつけるコンセントを付けておいてください。屋根裏エアコンで満足できない時に、念のためそういったコンセントをつけておくと対処ができて安心です。

 

Q5. メンテナンスが大変じゃないですか?


屋根裏エアコンのメンテナンスを心配する人もいます。確かに、フィルター掃除の時には梯子をあがらなきゃいけないので、ちょっと大変ですね。ただし月に1回くらいですので、特別なメンテナンスは必要ありません。

特に屋根裏は人が動かないので、埃はそんなにたたないんです。だからもしかしたら、状況を見ながら、フィルター掃除も2~3ヶ月に1回でも良いかもしれません。これは普通のエアコンと似たようなものですので、そんなに気にしなくて良いでしょう。

また、各部屋エアコンとは違い、エアコンは1箇所だけです。そう考えると「屋根裏エアコンだから」と、特段面倒臭いことはないと思います。ただし、給気口と排気ファンのところには多少埃が溜まってきますので、そこはシャッ!と掃除してもらえればと思います。

メンテナンスに関しては「故障した時に特殊な工事が必要なのか?」と気にする人もいますが、もちろんそんなこともありません。街の電気屋さんで修理可能というように、修理費用がかからないのも、ちょうどいい塩梅の家づくりのコンセプトです。

 

まとめ

夏の2階の冷房計画5つの方式

  • せやま式屋根裏エアコン:強く推奨
  • 各部屋エアコン:無難
  • ホールエアコン:非推奨
  • ファンなし屋根裏エアコン:非推奨
  • 全館空調方式:非推奨

PROFILE

失敗リスクの高い夏のエアコン計画3選|全館空調の問題点とは? | 家の性能

せやま大学の人

瀬山 彰

大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。

「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。

娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。

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